共有名義不動産

共有持分を相続したらどうなる?手続きの流れと注意点・解消方法

共有持分を相続したらどうなる?手続きの流れと注意点・解消方法
  • 登記簿を取り寄せたら、亡くなった親の名前の横に「持分3分の1」と記載されていた。
  • 夫婦で買った自宅の名義が半分ずつのまま、配偶者が亡くなった。

共有名義の不動産が遺産に含まれていると、まずその持分が誰にどれだけ移るのかがわかりません。
この記事では、共有持分を相続するのは誰なのかと、自分の持分割合がいくつになるのかを整理します。

あわせて名義を自分に移すまでの手続きと、共有状態から抜ける方法も順に解説します。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

訳あり物件の売却なら
【専門の業者への依頼】がおすすめ!

訳あり物件の買取に強い【ベンナビ不動産売却】なら
他社では扱えないような物件でも 高額査定が期待できます!

\完全無料・約1分で入力!/

24時間受付中! 無料で査定してみる

共有持分の相続とは?亡くなった共有者の持分は残りの共有者には移らない

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有するときの、各人が持つ所有権の割合です。

共有者の1人が亡くなっても、その持分は残った共有者に移りません。
亡くなった人の法定相続人が、他の遺産と同じように引き継ぎます。
相続では、亡くなった人の財産に属した権利義務を相続人が包括的に承継します。

また、共有持分もその対象です。
「共有者の1人が抜けたのだから、残った自分の持分が増えるはずだ」という理解は誤りで、共有名義であることと相続権があることは無関係です。

遺産分割が終わるまでは、その持分を相続人全員で共有する状態が続きます。
たとえば、共有者がもともと2人いた不動産で1人が亡くなり、その人に相続人が3人いたとすれば、共有者は一時的に4人へ増えます。

誰が最終的に持分を取得するかは、遺言書の内容か遺産分割協議で決まります。

共有持分とは1つの不動産を複数人で所有するときの権利の割合

共有持分は不動産全体に対する権利の割合であり、面積で切り分けた区画を指すものではありません

例えば、持分3分の1を持っていても、敷地の南側3分の1を自分だけの判断で使えるわけではありません。
共有者はそれぞれ、共有物の全部について持分に応じた使用ができます。
たとえば、3人で共有する土地なら3人ともが土地全体を使う権利を持ち、その使い方を持分割合に応じて調整します。

そのため、区画を割り当てて別々に所有したいなら、土地を分けて登記し直す必要があります。

共有持分を相続するのは残った共有者ではなく被相続人の法定相続人

亡くなった共有者の持分を引き継ぐのは、残った共有者ではなく亡くなった共有者の法定相続人です。
共有者かどうかは相続権に影響しません。

相続人は、相続開始の時からなくなった人の財産に属した一切の権利義務を承継します。
共有持分も預貯金や有価証券などと同じ相続財産の1つとして扱われるため、遺産分割の対象になります。

たとえば、夫婦共有名義の自宅で夫が亡くなった場合、夫の持分は妻に自動的に移るのではなく、妻と子が相続人として分け合います。
ここを誤解したまま「自分は共有者なのだから、いずれ持分は自分のものになる」と考えて手続きを止めてしまうと、相続登記の期限に間に合わなくなります。

名義がなくなった人のままでは、不動産を売ることも担保に入れることもできません。
例外として、亡くなった共有者に相続人が1人もいない場合には、その持分が他の共有者に帰属することがあります。

ただし他の共有者へ移るまでには先に踏む手続きが必要です。

遺産分割が終わるまで共有持分は相続人全員の共有状態になる

相続が開始してから遺産分割が成立するまでの間、共有持分は相続人全員が法定相続分に応じて共有する状態になります。
この状態を遺産共有と呼びます。

たとえば、もともとの共有者が2人いたのであれば、共有者の数は一時的に4人へ増えます。
この状態では、不動産を売ったり建物を取り壊したりする処分行為に、相続人全員と他の共有者全員の同意が必要です。

当事者が一気に増えるため、遺産分割を先に済ませてから不動産の話を進めるほうが早く決着します。
ただし現状を維持するための修繕や、法定相続分どおりの相続登記は保存行為にあたり、相続人が単独でおこなえます。

例えば、屋根の雨漏りを直すような緊急性の高い対応は、他の相続人の同意を待たずに実行できます。

遺言書がある場合は遺言の内容が法定相続分より優先される

遺言書で共有持分を取得する人が指定されていれば、法定相続分ではなく遺言の内容が優先されます。

そのため相続手続きは、遺言書があるかどうかの確認から始めます。

亡くなった人は遺言で相続分を指定したり、特定の財産を特定の相続人に取得させたりできます。
たとえば、「自宅の持分3分の1は長男に相続させる」と書かれていれば、遺産分割協議を経ずに長男が取得します。

共有名義を1人にまとめたい場合、遺言は有力な手段になります。
自筆で書かれた遺言書は、家庭裁判所の検認を受けてから開封します。

なお、遺言の内容が一部の相続人の遺留分を侵害している場合、その相続人は遺留分侵害額請求として金銭を請求できます。
遺言があれば必ずそのとおりに確定するわけではありません。

共有持分を相続する人の順位と持分割合の計算方法

共有持分は法定相続人が法定相続分に応じて引き継ぎます。

したがって自分が取得する持分は、亡くなっている人が持っていた持分割合に自分の法定相続分を掛けた割合になります。
法定相続人の範囲と法定相続分は次のとおりです。
配偶者は常に相続人になり、そのほかの相続人は順位で決まります。

相続人の組み合わせ配偶者の相続分ほかの相続人の相続分
配偶者と子2分の12分の1
配偶者と直系尊属(父母や祖父母)3分の23分の1
配偶者と兄弟姉妹4分の34分の1
配偶者のみすべて
子のみすべて

具体的には、計算式は「被相続人の持分割合 × 自分の法定相続分 = 自分が取得する持分」です。
同順位の相続人が複数いるときは相続分を人数で等分します。

共有持分を相続する手続きの流れ6ステップ

共有持分を相続する手続きの流れ6ステップ

共有持分の相続は、遺言書の確認から相続税の申告までを順に進めます。
手続きごとに期限が異なり、相続放棄は3ヵ月、相続税の申告は10ヵ月、相続登記は3年が目安になります。
もっとも短い期限から逆算して着手してください。

ステップ1:遺言書の有無を確認する

最初にやるべきことは遺言書を探すことです。
遺言書があれば持分を取得する人が指定されている可能性があるため、遺産分割協議に入る前に必ず確認します。

探す場所は次のとおりです。

  • 自宅の金庫・仏壇・書類棚・貸金庫
  • 公証役場(公正証書遺言の有無を全国の公証役場で検索できる)
  • 法務局(自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合)

なお、公正証書遺言は最寄りの公証役場で遺言検索システムを使って有無を調べられます。

法務局に預けられた自筆証書遺言は、遺言書保管事実証明書を請求することで確認できます。
どちらも被相続人が亡くなったことを示す戸籍などが必要です。 法務局の保管制度を使っていない自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けるまで開封できません。

ただし、封を開けてしまうと過料の対象になるため、見つけたらそのまま家庭裁判所へ持ち込みます。

ステップ2:相続人と相続財産・持分割合を調査して確定する

次に、誰が相続人なのかと、対象となる持分がどれなのかを固めます。
相続人を確定するには、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍が必要です。
前の婚姻で子がいた場合や認知した子がいる場合は、戸籍をたどらないと判明しません。

法定相続情報一覧図の写しを法務局で取得しておくと、戸籍の束の代わりに登記や金融機関の手続きで使い回せます。

不動産については、登記事項証明書の権利部で共有者全員と各持分割合を確認します。
法務局の窓口だけでなく、オンライン請求でも取得できます。
市区町村で名寄帳を取り、公図とあわせて所有する不動産を洗い出してください。

ステップ3:遺産分割協議で共有持分を誰が取得するか決める

遺産分割協議では、共有持分を誰がどれだけ取得するかを決めます。
ここで、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方もできます。
遺産分割協議は相続人全員の参加と合意が要件です。

なお、1人でも欠けた協議は無効になります。
協議で選べる分け方は次の4つです。

分割方法内容共有名義が残るか
現物分割不動産や預貯金をそのまま個別に分ける残らない
代償分割1人が不動産を取得し、ほかの相続人に金銭を支払う残らない
換価分割不動産を売却して代金を分ける残らない
共有分割不動産を持分割合で共有する残る

また、相続人に未成年者がいる場合は、親が同じ相続の当事者だと利益が対立するため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。
行方不明の相続人がいる場合は不在者財産管理人の選任が必要です。

ステップ4:遺産分割協議書を作成する

協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書として書面に残します。
相続登記の添付書類になるため、不動産の記載は登記事項証明書のとおりに転記します。

住所表記と登記上の地番は異なるため、住所を書いても不動産を特定したことになりません。

共有持分を対象にする場合は「持分3分の1」まで明記します。

単に「自宅を長男が取得する」と書くだけでは、登記申請の段階で補正を求められます。
遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印の押印、そして全員の印鑑証明書が必要です。

後から預貯金や不動産が判明することもあるため、「本協議書に記載のない財産は長男が取得する」といった条項を入れておくと、協議のやり直しを避けられます。

ステップ5:相続登記を申請して名義を変更する

遺産分割がまとまったら、不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記を申請します。
相続登記は、名義を被相続人から取得者へ変更する手続きです。

申請は法務局の窓口・郵送・オンラインのいずれでもできます。
管轄は不動産の所在地で決まるため、亡くなった人の住所地や自分の住所地とは無関係です。

なお、複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの管轄法務局に申請します。
遺産分割が成立していなくても、法定相続分どおりの相続登記であれば保存行為として相続人が単独で申請できます。

ただしその後に遺産分割が成立すると、あらためて登記が必要になります。
申請から完了までの目安は1週間〜2週間程度です。

そして、完了すると登記完了証と登記識別情報通知を受け取れます。

ステップ6:基礎控除を超えるなら相続税を申告・納付する

遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告と納付が必要です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

たとえば、法定相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円です。
共有持分の評価額は、不動産全体の評価額に持分割合を掛けて算出します。

土地全体の評価額が3,000万円で持分3分の1なら1,000万円です。

申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。
遺産分割がまとまっていなくても、いったん法定相続分で計算して申告します。

【参考】相続税の計算|国税庁

【関連記事】相続手続きの流れ|手順・期限・必要書類をわかりやすく解説

共有持分の相続登記は2024年4月から義務化されている

相続登記の申請期限

相続登記の申請は2024年4月1日から義務になりました。

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。
2024年4月1日より前に相続した未登記の不動産にも義務が及びます。
この場合の期限は2027年3月31日までです。

祖父母の代から名義を変えていない不動産がある家庭は、期限が迫っている状態だと考えてください。

遺産分割によって不動産を取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内という期限も別に定められています。 共有持分は宅地や建物より見落とされやすく、私道の持分だけが被相続人の名義で残っている例も少なくありません。
義務の対象は共有持分も含むため、持分の大きさにかかわらず申請してください。

相続登記を放置すると過料のほかに売却できない不利益も生じる

相続登記を放置すると、過料の対象になるだけでなく不動産を動かせなくなります

次の相続が重なれば、手続きの手間と費用がさらに膨らみます。
正当な理由なく3年以内に申請しなかった場合、法務局から催告を受けます。
それでも応じないと、裁判所が10万円以下の過料を科す可能性があります。

なお、相続人が多数いて戸籍の収集に時間がかかる場合などは正当な理由として考慮されますが、単に忘れていた、面倒だったという事情は認められません。

登記名義が亡くなった人のままだと、共有持分を売ることも、贈与することも、担保に入れることもできません。
買主や金融機関は現在の名義人と取引するため、名義が亡くなった人のままでは手続きが進みません。
放置している間に相続人の誰かが亡くなると、その相続人の相続人も当事者に加わります。

さらに、必要な戸籍が世代分に増え、遺産分割協議に参加すべき人数も増えて、費用と期間の両方が膨らみます。

共有持分の相続登記に必要な書類

相続登記には、全員に共通の書類と、遺産分割協議によるか遺言によるかで変わる書類があります

共通の書類は次のとおりです。

書類取得先備考
被相続人の出生から死亡までの戸籍本籍地の市区町村転籍先の各自治体から取得
被相続人の住民票の除票最後の住所地の市区町村本籍の記載があるもの
相続人全員の戸籍各相続人の本籍地の市区町村相続開始後に取得
不動産を取得する人の住民票住所地の市区町村新しい名義人の住所を証明
固定資産評価証明書不動産所在地の市区町村登録免許税の計算に使う
登記申請書自分で作成法務局の様式を使う

共有持分の相続登記にかかる登録免許税と司法書士報酬

相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額に持分割合を掛けた額の0.4%です。

司法書士に依頼する場合は、この税金とは別に報酬がかかります。

共有持分の場合、計算の順序に注意してください。
たとえば、不動産全体の評価額が3,000万円で持分が3分の1の場合、課税標準は1,000万円です。

具体的には、課税標準の1,000万円に0.4%を掛けて登録免許税は4万円になります。

課税標準は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨てて計算します。

費用の内訳は次のとおりです。

費目金額の目安
登録免許税課税標準(評価額×持分割合)の0.4%
登記事項証明書1通あたり数百円
戸籍・住民票などの取得費1通あたり数百円(通数に応じて増える)
司法書士報酬事務所ごとに異なる(要問い合わせ)

なお、司法書士報酬は事務所ごとに設定が異なります。
複数の事務所に見積もりを取って比べてください。

遺産分割がまとまらないときは相続人申告登記で義務を果たせる

遺産分割が3年以内にまとまらない場合は、相続人申告登記を申し出れば相続登記の申請義務を果たしたものとして扱われます

相続人申告登記は特定の相続人が単独で申し出られます。
自分が相続人であることを法務局に申し出る手続きで、ほかの相続人の協力は要りません。

ただし相続人申告登記は、権利を取得したことを公示する登記ではありません。

名義変更ではないため、不動産を売ることも担保に入れることもできません。
過料を避けるための暫定的な措置です。
遺産分割が成立したら、その日から3年以内にあらためて相続登記を申請します。

共有名義のまま相続するメリット

共有名義のまま相続する利点は、不動産を売ったり代償金を用意したりせずに相続人間の取得額をそろえられる点にあります。

賃料収入がある不動産なら、収益も持分割合に応じて分けられます。
誰かが不動産を取得してほかの相続人に金銭を払う形にすれば、支払う側に資金が必要になります。
売って現金化する形にすれば、住み続けたい人の希望が通りません。

共有は、こうした調整をいったん先送りにしたまま取得額をそろえられる方法だといえます。

ただし公平さと引き換えに、不動産を動かすときの意思決定が難しくなります。
共有を選ぶかどうかは、その不動産を将来どうしたいのかで決めてください。

メリット①:不動産を売却せずに相続人へ公平に分けられる

共有名義にすれば、不動産を売らずに、また金銭のやり取りもせずに、相続人の取得額をそろえられます

たとえば、遺産が自宅だけで、そこに1人が住み続けたいという場合、その1人が自宅を取得すればほかの相続人の取り分がなくなります。
代償分割で解決するには、自宅を取得する人が代償金を用意しなければなりません。

ただし、手元に資金がなければ実行できません。

一方で共有なら、金銭を動かさずに持分割合で公平に分けられます。

また、相続税の申告期限に間に合わせるために、いったん共有で登記しておく方法もあります。
申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月で、遺産分割がまとまらないままでも申告は必要です。

そのため、共有で登記して申告を済ませ、後から分け直すという進め方も実務では取られています。

もっとも、共有は暫定的な解決にとどまります。
そのまま放置すると次の相続で当事者が増えていきます。

メリット②:賃料収入や売却代金も持分割合に応じて受け取れる

共有不動産から生じる賃料や売却代金は、原則として各共有者の持分割合に応じて分配されます。

収益物件を相続した場合、取り分の計算は持分が基準になります。
共有者は共有物の全部について持分に応じた使用と収益ができます。
たとえば、アパートを3人で共有していて持分が3分の1ずつなら、家賃収入も3分の1ずつ受け取る計算になります。

また、売却したときの代金も同じ考え方で分けます。

一方で、固定資産税や修繕費といった管理費用も持分割合に応じて負担します。
収益だけを持分で分けて、費用は誰かが被るという扱いにはなりません。 実際には、賃料の受け取り口座を1人にまとめているうちに分配が滞り、対立に発展する例が目立ちます。

そこで、誰が入金を管理し、いつどの割合で分配し、修繕費をどう精算するかを、共有者間で書面にしておきましょう。

共有名義のまま相続するときの4つの注意点

共有のまま相続する場合と単独名義にする場合の違い

共有名義のまま相続すると、不動産を動かすときに共有者全員の合意が必要になり、費用の負担や共有者の入れ替わりをめぐって対立が生じやすくなります。
以下の4つの注意点があります。

不動産全体の売却や活用に共有者全員の同意が必要になる

不動産全体の売却や建物の取り壊しには、共有者全員の同意が必要です。
1人でも反対すれば実行できません。

共有物に対する行為は、必要な同意の重さで3つに分かれます。

行為の種類具体例必要な同意
保存行為雨漏りの修繕、法定相続分どおりの相続登記各共有者が単独でできる
管理行為短期の賃貸借契約、軽微な変更持分の価格の過半数
変更・処分行為売却、建物の取り壊し、大規模な増改築共有者全員の同意

2023年4月1日に施行された民法の改正で、形状または効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は、持分の過半数で決められるようになりました。

たとえば、外壁の塗り替えのような工事は、全員の同意を待たずに進められます。
それでも売却と取り壊しに全員の同意が要る点は変わりません。
将来売る可能性があるなら、共有のまま相続する判断は慎重に検討してください。

固定資産税や修繕費の負担割合で揉めやすくなる

固定資産税は共有者の1人にまとめて課税されるため、立て替えた分をほかの共有者に請求できるかどうかで対立が生じやすくなります

共有不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務を負います。

ただし自治体の運用では、代表者1人に納税通知書を送ります。
代表者は全額を納めたうえで、ほかの共有者に持分割合に応じた負担を請求します。

固定資産税を立て替えた共有者は、ほかの共有者に対して持分割合に応じた負担を求められます。
請求しても1年以内に負担しない共有者がいる場合、相当の償金を払ってその共有者の持分を取得できる規定もあります。

対立が起きやすいのは、誰が住んでいるかで負担感が変わるためです。
たとえば、実家に長男が住み続けているのに固定資産税を3人で分けるなら、住んでいない2人は納得しにくくなります。

逆に誰も住んでいない空き家では、全員に負担だけが残ります。

共有者が持分を第三者に売却して面識のない人と共有になる

各共有者は、自分の持分をほかの共有者の同意なく第三者へ売却できます

そのため、面識のない第三者と共有関係になることがあります。
不動産全体の処分には全員の同意が必要ですが、自分の持分だけの処分は各共有者が単独でできます。
共有持分だけを買い取る業者も存在し、共有者の1人が現金化を望めば取引は成立します。

一方で、持分を売られた側に拒否権はありません
第三者が持分を取得すると、その第三者から共有物分割請求を受ける可能性があります。

共有不動産に住んでいる共有者に対して、賃料相当額を請求してくる例も見られます。
親族だけで共有していた状態とは、交渉の性質が変わります。

なお、共有者間で「売る前にほかの共有者へ声をかける」と取り決めても、第三者への売却そのものを止める効力はありません。

訳あり物件の売却なら
【専門の業者への依頼】がおすすめ!

訳あり物件の買取に強い【ベンナビ不動産売却】なら
他社では扱えないような物件でも 高額査定が期待できます!

\完全無料・約1分で入力!/

24時間受付中! 無料で査定してみる

相続が重なるたびに共有者が増えて権利関係が複雑化する

共有者が亡くなるたびに、その持分が複数の相続人へ分かれます。

たとえば、共有者3人がそれぞれ子を2人残したとすると、次の世代の共有者は6人になります。
さらにその子がそれぞれ2人の子を残せば12人です。

さらに世代が進むほど、面識のない親族同士が同じ不動産を共有する状態になります。

共有者が増えると、全員の同意を取ること自体が難しくなります
連絡先がわからない人、海外に住んでいる人、判断能力を失っている人が混ざると、売却の話がまったく進みません。

なお、持分が9分の1や27分の1のように小さくなっても、各共有者は処分への同意権を持ち続けます。
変更・処分行為については持分の大きさと同意権の重みが比例しないため、人数が増えるほど意思決定が止まりやすくなります。

相続した共有持分だけを選んで放棄することはできない

相続放棄はすべての遺産を放棄する手続きです。

共有持分だけを選んで放棄することはできません
持分だけを手放したい場合は、いったん相続したうえで譲渡または売却します。

相続放棄と、相続後に持分を処分することの違いは次のとおりです。

項目相続放棄相続後の持分処分
ほかの遺産預貯金などもすべて放棄するほかの遺産は取得できる
期限相続の開始を知った時から3ヵ月期限はない
対価受け取れない売却なら代金を受け取れる
手続き先家庭裁判所相手方との契約と法務局への登記

負債が多い、あるいは遺産が共有持分だけで負担しかないという場合は相続放棄が選択肢になります。
ほかにプラスの遺産があるなら、相続したうえで持分を売る方が手元に残るものが多くなります。

相続放棄はプラスの財産も含めてすべての遺産を放棄する手続き

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとして扱われます。

共有持分だけでなく、預貯金や有価証券といったプラスの財産も一切承継できません
遺産の全体がプラスであれば、放棄は不利になります。
共有持分の管理が負担だという理由で放棄すると、受け取れたはずの預貯金も手放す結果になります。

持分の負担だけを外したいなら、相続したうえで売却や贈与で手放す方が合理的です。
注意したいのは、自分が放棄すると次の順位の相続人へ相続権が移る点です。

たとえば、子全員が放棄すれば被相続人の親へ、親がいなければ兄弟姉妹へ移ります。
事前に知らせていないと、疎遠だった親族が突然共有者の立場に置かれます。

また、相続放棄をしても放棄したときに現に占有していた不動産については、相続人などに引き渡すまで保存する義務が残ります。

相続放棄の期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月

相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月です。
たとえば、疎遠だった親族の債権者から連絡が来て初めて相続を知ったという場合、その時点から3ヵ月です。

つまり、この3ヵ月が熟慮期間です。

申述には相続放棄申述書と被相続人の住民票の除票、申述人の戸籍などを提出します。
調査に時間がかかる場合は、熟慮期間の伸長を申し立てられます。
ただし、期限内でも放棄できなくなる行為があります。

共有持分を売却する、価値のある動産を処分する、建物を建て替えるといった行為をすると、相続を承認したものとみなされます。

持分に手をつける前に放棄するかどうかを決めてください。

【参考】相続の放棄の申述|裁判所

相続した共有名義を解消して単独名義にする5つの方法

共有名義を解消して単独名義にする5つの方法

共有名義を解消する手段は5つあります。
共有者と協議できるかどうかで、選べる方法が変わってきます。

代償分割で1人が持分を取得して他の相続人に代償金を支払う

代償分割は、1人が共有持分をまとめて取得し、ほかの相続人にはその取得分に見合う金銭を支払う方法です。
不動産を売らずに単独名義にできます。
自宅に住み続けたい相続人がいる場合に向きます。

たとえば、長男が実家に住んでいて手放したくないなら、長男が持分をすべて取得し、次男と三男には現金を渡します。

つまり、不動産は残りのほかの相続人も取り分を受け取れます
代償金の額は、不動産の評価額に相手の持分割合を掛けて算定するのが基本です。

ただし評価額の求め方で金額が変わります。
固定資産税評価額を使うのか、路線価を使うのか、不動産会社の査定額を使うのかで差が出るため、どの基準を採用するかを先に合意してください。

換価分割で不動産全体を売却して代金を分ける

換価分割は、共有者全員の合意で不動産全体を売却し、代金を持分割合で分ける方法です。

換価分割は持分だけを売るより高い価格で換金できることが多く、共有関係も解消できます。

誰も住まない実家のように、活用する予定がない不動産に向きます。

手取りの面では5つの方法のうちもっとも有利になりやすい選択です。
持分だけを売る場合、買主は自由に使えない不動産を買うことになるため、市場価格より低い金額になるのが一般的です。
しかし、不動産全体であれば買主は単独で所有できるため、市場価格に近い価格で取引されます。
一方で、共有者全員の同意が必要です。

また売却によって利益が出た場合は譲渡所得税がかかります。
亡くなった人が住んでいた家を相続して売る場合は税額を軽くする特例もあるため、税理士に確認してください。

他の共有者に自分の持分を売却する

自分の持分をほかの共有者に買い取ってもらえば、不動産を第三者に渡さずに共有から抜けられます

当事者2人で完結するため、ほかの共有者全員の同意は要りません。

たとえば、実家に住んでいる兄に自分の持分を買い取ってもらう、というのが典型です。
兄は単独名義に近づき、自分は現金を得て共有から離れます。

また、親族間で完結するため後の関係にも影響しにくい方法です。

一方で、注意したいのは価格です。
親族間の売買で価格が時価から大きく離れると、その差額が贈与とみなされて贈与税の対象になることがあります。
たとえば、時価500万円相当の持分を100万円で譲れば、差額の400万円について贈与として扱われる可能性があります。

ただし、相手に買い取る資金がなければ成立しません。
また、価格の根拠を示せないと、税務上の説明が難しくなります。
不動産会社の査定書を取り、それを基準に価格を決めてください。

自分の共有持分だけを買取業者に売却する

共有持分は、ほかの共有者の同意なく自分だけで売却できます
共有者と連絡が取れない場合や協議が進まない場合でも、持分の買取業者に売却して共有から抜けられます。
兄弟と連絡が取れない状況でも、自分の判断だけで実行できます

ただし価格は下がります。
買主は不動産を自由に使えず、ほかの共有者と交渉する立場に置かれるため、不動産全体を売る場合より低い金額になる傾向があります。
だからこそ、複数の買取業者から査定を取って比べてください。
1社だけの提示額で判断すると、相場より低い価格で手放すおそれがあります。

共有持分や訳あり不動産は「ベンナビ不動産売却」で無料査定できます。
売却後は、買主がほかの共有者に共有物分割請求をおこなうことがあります。

訳あり物件の売却なら
【専門の業者への依頼】がおすすめ!

訳あり物件の買取に強い【ベンナビ不動産売却】なら
他社では扱えないような物件でも 高額査定が期待できます!

\完全無料・約1分で入力!/

24時間受付中! 無料で査定してみる

現物分割で土地を持分割合に応じて分筆する

現物分割は、土地を持分割合に応じて分け、それぞれを単独所有にする方法です。
ただし、土地であれば実行できますが、建物や狭い土地では使えません。
面積が広く、分けても価値が落ちにくい土地に向きます。
たとえば、300坪の土地を3人で共有しているなら、100坪ずつに分けてそれぞれの単独名義にできます。

なお、分けた後は各自が自由に使えるため、共有の制約から完全に抜けられます。
建物は物理的に分けられないため対象外です。

土地についても、分けた結果として道路に接する幅が足りなくなると、建物を建てられない土地が生じます。
分けたことで両方の価値が下がるなら、この方法は選べません。

また、分筆には土地家屋調査士による測量と、法務局への分筆登記が必要です。
測量費用と登記費用がかかり、境界確定に近隣の立会いが必要な場合は数ヵ月かかります。
費用と期間を見積もったうえで検討してください。

共有者と話し合いがつかないときは共有物分割請求で解消する

協議で共有関係を解消できない場合は、共有物分割請求として裁判所に分割を求められます

共有者はいつでも分割を請求でき、ほかの共有者は拒めません。

2023年4月1日に施行された民法の改正で、裁判所が命じる分割の方法と、連絡が取れない共有者がいる場合の対応が整備されました。
これにより、以前より選べる手段が広がっています。

注意したいのは、共有物分割請求と遺産分割の関係です。

相続で生じた共有の状態を解消するには、原則として遺産分割の手続きを使います。
共有物分割請求を使えるのは、遺産分割が済んで通常の共有になった後や、相続開始から10年を経過した場合などです。

まずは遺産分割協議、それが決裂したら遺産分割調停という順序で進めてください。

共有物分割請求は共有関係の解消を裁判所に求める手続き 

共有物分割請求は、協議・調停・訴訟の順に進みます

協議がまとまらない場合、共有物分割訴訟で裁判所に分割方法を決めてもらえます。
各共有者はいつでも共有物の分割を請求でき、ほかの共有者はこれを拒めません。
「共有のままにしておきたい」という主張は通りません。

したがって、共有者の誰か1人が解消を求め続ければ、最終的には裁判所の手続きによって解消される仕組みになっています。
裁判所が命じる分割の方法は次の3つです。

分割方法内容
現物分割土地を分けてそれぞれの単独所有にする
賠償分割1人が取得し、ほかの共有者に持分の価格を支払う
競売分割競売にかけて代金を持分割合で分ける

2023年4月の民法改正で賠償分割が明文化された

2023年4月1日施行の改正で、共有者の1人がほかの共有者に持分の価格を支払って単独所有にする賠償分割が、条文に明記されました。

改正によって、現物分割ができない、あるいは現物分割で著しく価値が下がる場合に、賠償分割を命じられることが明文化されました。

その結果、現物で分けられない不動産でも競売以外の道が開かれました。
競売は市場価格より低い金額で落札されることが多く、共有者全員の手取りが減ります。

住み続けたい共有者がいるなら、その人が取得して代金を払う形のほうが双方に有利になります。
ただし賠償分割では、取得する共有者に支払能力が求められます。

また、価格の算定で当事者の主張が対立すれば、不動産鑑定士による鑑定が必要になり、その費用も発生します。

共有者と連絡が取れないときは所在等不明共有者の持分取得の裁判を使える

2023年4月1日施行の改正で、所在などがわからない共有者がいる場合の手当てが設けられました。
裁判所の決定を得れば、その持分を取得したり、持分を含めて第三者へ譲渡したりできます。

所在等不明共有者の持分の取得は、共有者が裁判所に申し立て、持分の時価相当額を供託して、決定を受けて持分を取得する制度です。
登記簿の住所に住んでいない、戸籍の附票をたどっても現住所がわからないという場合が対象になります。

不動産全体を第三者へ売却したい場合は、持分の譲渡権限付与の裁判を使えます。

裁判所から権限を与えられた共有者が、不明共有者の持分も含めて買主に譲渡できます。

いずれの制度も、相続で生じた共有では相続開始から10年の経過が要件になる場合があります。
相続から間もない時期には使えません。

共有持分の相続手続きで確認を漏らしやすい4つの項目

共有持分の相続では、後から判明すると手戻りが大きい確認事項があります。

次の4つは、いずれも見落とすと将来の売却や登記で行き詰まります。

  • 私道の共有持分の登記漏れ
  • 数次相続が起きているケース
  • 遺産分割の10年の期限
  • 分譲マンションの敷地を使う権利の扱い

私道の共有持分は相続登記を漏らしやすい

分譲地では前面の私道を近隣住民と共有している場合があります。
宅地だけ相続登記して私道の持分を漏らすと、後の売却で追加の手続きが必要になります。

分譲地や旗竿地では、開発時に造られた通路部分が住民の共有名義になっていることがあります。
宅地と私道は別の地番で登記されるため、宅地の登記事項証明書を見ても私道の存在はわかりません。

見落としやすいのは、公衆用道路として固定資産税が非課税になっている私道です。
非課税の不動産は固定資産税の課税明細書に載らないことがあります。
市区町村で名寄帳を取得し、公図で自宅周辺の地番を確認して、所有する不動産をすべて洗い出してください

また、私道の持分が被相続人の名義のままだと、宅地を売るときに買主から私道の登記も求められます。
その時点で当初の相続人の一部が亡くなっていれば、その相続人まで含めた協力が必要になります。

数次相続が起きているとまとめて登記が必要になる

数次相続は、1つ目の相続の手続きが終わる前に、その相続人について2つ目の相続が発生した状態です。

相続登記をしないうちに相続人が亡くなると数次相続になり、複数の世代分の相続関係をまとめて登記しなければなりません

祖父名義のままになっている持分を、父の代を飛ばして孫の世代が引き継ぐ場面がこれにあたります。
必要な戸籍は世代別に増えます。

たとえば、祖父の出生から死亡までの戸籍と、父の出生から死亡までの戸籍、そして現在の相続人全員の戸籍がそろわないと申請できません。
遺産分割協議に参加すべき人も、祖父の相続人と父の相続人の両方になります。

従兄弟同士で協議するような事態も起こります。
ただし中間の相続人が1人だけの場合は、中間の登記を省略して現在の相続人へ直接名義を移せることがあります。

なお、ケースごとに扱いが変わるため、数次相続だとわかった時点で司法書士に戸籍を見せて確認してください。

遺産分割は10年を過ぎると特別受益・寄与分を主張できなくなる

相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなります

その場合、法定相続分どおりの分割になります。
2023年4月1日施行の改正民法で、相続開始から10年を経過した後の遺産分割には、特別受益と寄与分の規定を適用しないと定められました。

共有のまま長く放置すると、使える主張が減っていきます。
ほかの相続人が生前に多額の贈与を受けていた場合、通常はその分を考慮して取り分を調整します。
しかし、10年を過ぎるとこの調整ができません。
亡くなった人の介護を1人で担っていた相続人も、寄与分としての上乗せを主張できなくなります。

ただし、この10年は相続登記の3年の期限とは別のものです。
相続登記を相続人申告登記で切り抜けても、遺産分割の10年は進みます。
共有のまま置いておくほど、選べる主張も手段も減っていくと考えてください。

分譲マンションの敷地を使う権利には共有者への帰属ルールが適用されない

分譲マンションでは、相続人がいない区分所有者の敷地の共有持分は、ほかの区分所有者に移りません

専有部分とともに、特別縁故者への財産分与を経て国庫へ帰属します。
分譲マンションの部屋(専有部分)と、敷地を使う権利は、原則として切り離して処分できません。
この分離処分が禁止されている場合、共有者が死亡して相続人がないときに持分がほかの共有者へ移るというルールは適用されない扱いになっています。

具体的には、相続人が1人もいない区分所有者が亡くなった場合、敷地の共有持分はほかの区分所有者に移転せず、専有部分とともに特別縁故者への財産分与の対象となり、分与されなかった場合に国庫へ帰属します。

同じマンションの住民が持分を取得できるわけではありません。

戸建ての土地の共有と、分譲マンションの敷地の共有では結論が変わります。
相続した不動産がどちらなのかを最初に確認してください。

なお、登記事項証明書で敷地権の登記があるかどうかを見ればわかります。

【参考】建物の区分所有等に関する法律第24条|e-Gov 法令検索

次の世代に共有の問題を残さないための生前対策

自分が持っている持分について、子の世代に同じ問題を残さない手段は3つあります。
相続が起きてからでは選べる手段が限られるため、生前のほうが選択肢は広くなります。

遺言書で不動産を取得する人を1人に指定する

遺言書で不動産を取得する相続人を1人に指定しておけば、遺産分割協議を経ずに共有名義を避けられます
亡くなった人は遺言で相続分を指定したり、遺産分割の方法を指定したりできます。

例えば、「自宅の持分3分の1は長女に相続させる」と書いておけば、相続開始と同時に長女が取得します。
相続人同士の話し合いを待つ必要がなく、共有状態が生じません。

なお、不動産を1人に集める代わりに、ほかの相続人には預貯金を多めに配分するなど、取得額の釣り合いを取る配分を組んでください。

一方に不動産を全部渡す内容だと、ほかの相続人の遺留分を侵害して遺留分侵害額請求を招きます。
財産の全体を見て割り振ることが要点です。

また、自筆で書く場合は法務局の保管制度を使えば、紛失や書き換えの心配を減らせます。

生前に共有持分を1人に集約しておく

生前に持分を贈与または売買で1人に集めておけば、相続の時点で共有名義そのものが発生しません
方法は贈与と売買の2つです。

贈与では、相続時精算課税制度を選べば累計2,500万円までの特別控除が使え、これとは別に年110万円の基礎控除も適用されます。
婚姻期間20年以上の配偶者へ居住用不動産を贈与する場合は、最大2,000万円の配偶者控除も使えます。

なお、売買であれば時価に近い価格で取引すれば贈与税の問題は生じません。
ただし費用の面では相続より重くなる場合があります。
贈与には贈与税がかかり、登記の登録免許税は相続の0.4%に対して2%です。
相続では課されない不動産取得税も発生します。

そのため、税額を試算してから判断してください。

もう1つ注意したいのは、相続開始前の一定期間内におこなわれた贈与が、相続税の課税価格に加算される点です。
加算の対象になる期間は、令和8年12月31日までに相続が開始した場合は3年以内、令和13年1月1日以後に相続が開始した場合は7年以内で、その間は相続開始日に応じた経過措置が適用されます。
なお、延長された3年超7年以内の贈与については、総額100万円までは加算されません。

家族信託で管理・処分の権限をまとめる

家族信託で受託者に管理と処分の権限を集めれば、共有者が複数いても不動産の意思決定を1人でおこなえる体制を作れます
家族信託は、財産を持つ人が信頼できる家族に管理を任せ、そこから生じる利益を受け取る人を定める仕組みです。

財産を託す人を委託者、管理する人を受託者、利益を受け取る人を受益者と呼びます。
共有者全員が受託者を1人に定めて信託すれば、所有権の割合は変えずに意思決定を集約できます。

大きな利点は、判断能力が低下した後にも対応できる点です。
所有者が認知症などで判断能力を失うと、不動産の売却も賃貸契約もできなくなります。
成年後見人を立てても、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
判断能力があるうちに信託しておけば、受託者の判断で売却まで進められます。

一方で、信託契約書の作成には専門家の関与が必要で、設定の費用がかかります。

共有持分の相続は弁護士・司法書士・税理士のどこに相談すべきか

弁護士・司法書士・税理士の業務範囲

相談先は困っている内容で決まります。

遺産分割で揉めている、共有者と交渉しなければならないという場合は弁護士、相続登記の申請だけなら司法書士、相続税の申告が必要なら税理士が担当します。
士業ごとに法律で業務の範囲が定められています。
いま抱えている問題がどの範囲にあたるかで選んでください。

遺産分割で揉めている・共有者と交渉が必要なら弁護士

相続人や共有者との交渉、遺産分割調停、共有物分割訴訟の代理は、原則として弁護士が受けられる業務です。

争いがある場合の相談先になります。
報酬を得て他人の法律事務を取り扱うことは、法律に別段の定めがある場合を除き、弁護士以外に認められていません。
相手方と条件を詰める、調停を申し立てるといった対応は、いずれも弁護士に依頼します。

弁護士に相談すべき状況は次のとおりです。

  • 遺産分割協議がまとまらず話し合いが止まっている
  • 連絡が取れない相続人や共有者がいる
  • 自分の同意なく共有者が持分を売却された
  • 不動産を1人で使う共有者から賃料相当額を回収したい
  • 生前贈与を受けた相続人がいて取り分の調整を求めたい

相続登記の申請だけなら司法書士

争いがなく相続登記の申請だけを任せたい場合は、登記を扱う司法書士が相談先になります。
相続登記の申請代理は、司法書士に依頼するのが一般的です。

戸籍の収集から登記申請書の作成、法務局への提出までを一括して任せられます。
相続人が遠方に散らばっていて書類集めが難しい場合や、不動産が複数の市区町村にある場合も、まとめて処理してもらえます。

また、遺産分割協議書の作成も、争いがなく分け方がすでに決まっているのであれば司法書士に依頼できます。
登記に使える形式で作成してもらえるため、後の補正を避けられます。

ただし相続人間で意見が対立している段階では、司法書士は代理人として交渉できません。
「兄が実家を渡さないと言っている」という状況で相談しても、書類の作成にとどまります。

そのため、対立が表面化したら弁護士に切り替えてください。

相続税の申告が必要なら税理士

相続税の申告書の作成と提出の代理は、原則として税理士が受けられる業務です

相続税の基礎控除を超える見込みなら税理士に相談します。
税務代理と税務書類の作成は税理士の業務です。弁護士も税理士法第51条の通知をすれば取り扱えますが、司法書士はおこなえません。
相続税の試算だけを頼む場合も税理士が窓口です。

また、共有持分の評価は不動産全体の評価額に持分割合を掛けて算出します。
税額を左右するのが特例の適用で、被相続人が住んでいた宅地に小規模宅地等の特例が使えれば評価額を大きく減らせます。
共有名義では誰が取得するかで適用の可否が変わるため、遺産分割の内容を決める前に相談してください。
申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月で、遺産分割がまとまっていなくても申告は必要です。

期限直前の依頼は受けてもらえない事務所もあるため、早めに動いてください。

共有持分の相続を専門家に依頼したときの費用相場

専門家に依頼したときの費用は、依頼する内容によって構造が変わります
相続登記は定額に近い報酬、遺産分割の交渉や訴訟は経済的利益に応じた報酬になることが多くなっています。

専門家主な依頼内容費用の構造
弁護士遺産分割の交渉・調停・共有物分割訴訟相談料+着手金+報酬金(経済的利益に応じて変動)
司法書士相続登記の申請・遺産分割協議書の作成定額に近い報酬+登録免許税などの実費
税理士相続税の申告・試算遺産総額に応じた報酬(特例の適用などで加算)

なお、初回の相談を無料にしている事務所もあります。
金額の設定は事務所ごとに異なるため、複数の事務所で見積もりを取って比べてください。

  • 弁護士・司法書士・税理士に依頼した場合、別途費用が発生します。金額は事務所ごとに異なります。
  • 本記事の税率・控除額は2026年8月時点の税制に基づきます。最新の取扱いは国税庁の公表資料または税理士にご確認ください。

弁護士に依頼したときの費用

弁護士費用は相談料・着手金・報酬金の3段階で構成されます

着手金と報酬金は、得られた経済的利益の額に応じて変わることが多くなっています。

費目内容発生するタイミング
相談料依頼前の法律相談に対する費用相談時(無料の事務所もある)
着手金依頼時に支払う費用契約時
報酬金結果に応じて支払う費用事件終了時

なお、遺産分割協議の代理と共有物分割訴訟では費用の水準が変わります。
訴訟は長期化しやすく、期日ごとの対応が必要になるためです。
このほか、郵便代・収入印紙代・交通費・不動産鑑定費用などの実費が別にかかります。
見積もりを取るときは、実費を含めた総額で確認してください。

ただし、金額は事務所ごとに異なるため、相場として1つの数字を示せるものではありません。
相続分野の依頼を扱う複数の事務所で見積もりを取り、費用の内訳と支払時期を比べて決めてください。

司法書士に依頼したときの費用

相続登記を司法書士に依頼する場合、報酬に加えて登録免許税と書類の取得費が実費としてかかります

費目内容
司法書士報酬登記申請書の作成・戸籍収集・法務局への申請の代行
登録免許税課税標準(評価額×持分割合)の0.4%
戸籍・住民票などの取得費1通あたり数百円(通数に応じて増える)
登記事項証明書取得する通数に応じた手数料

報酬は不動産の個数や相続人の人数で加算される事務所があります。

不動産が3件あれば1件あたりの加算が入り、相続人が5人いれば戸籍の収集にかかる手間の分が加わります。

私道の持分が別の地番になっている場合も個数として数えられます。
自分で申請すれば報酬分は節約できます。

ただし戸籍を各自治体から集め、登記申請書を作成し、補正に対応する手間がかかります。
相続人が多い場合や数次相続が起きている場合は、司法書士に任せたほうが早く終わります。

税理士に依頼したときの費用

相続税申告の税理士報酬は、遺産総額に応じて決まることが多くなっています。

共有不動産の評価や特例の適用で加算される場合があります。
報酬の基準を遺産総額に置く料金体系が一般的です。
遺産総額が大きくなるほど評価する財産の種類も増え、申告書の作成にかかる手間も増えるためです。

加算の要因になるのは、共有不動産や非上場株式のように評価が難しい財産がある場合、小規模宅地等の特例を適用する場合、相続人の人数が多い場合などです。

土地の評価は現地の状況や接道の条件で変わるため、共有持分を含む土地があると作業量が増えます。

申告期限が迫っている状態での依頼は割増になる事務所もあります。
基礎控除を超えそうだとわかった段階で相談しておいてください。

相続した共有持分を手放すならベンナビ不動産売却で売却先を探す

共有持分は、ほかの共有者の同意なく自分だけで売却できます。
共有から抜けたいなら、持分の買取に対応する会社を探して査定を比べてください
共有持分の査定額は会社によって大きく変わります。
持分だけの買取は取り扱う会社が限られ、その会社がほかの共有者との交渉をどこまで見込むかで提示額が動くためです。

1社の提示額だけで判断すると、相場より低い価格で手放すおそれがあります。
「ベンナビ不動産売却」でできることは次のとおりです。

  • 不動産の無料査定ができる
  • 相談は無料で、売却するかどうかを決める前に金額の目安を確認できる(※売買が成立した場合は仲介手数料などの費用が発生します)
  • 弁護士に相談したい場合は「ベンナビ相続」を利用できる

なお、遺産分割がまとまっていない、共有者と交渉しなければならないという段階であれば、売却より先に弁護士へ相談してください。
持分を売った後では、遺産分割で取り分を調整する余地がなくなります。

訳あり物件の売却なら
【専門の業者への依頼】がおすすめ!

訳あり物件の買取に強い【ベンナビ不動産売却】なら
他社では扱えないような物件でも 高額査定が期待できます!

\完全無料・約1分で入力!/

24時間受付中! 無料で査定してみる

共有持分の相続に関するよくある質問

Q

共有名義の土地で片方が死亡したら相続税はどうなる?

A

相続税は共有不動産の全体ではなく、亡くなった共有者の持分に対してかかります。
評価額は土地全体の評価額に持分割合を掛けて算出し、ほかの遺産と合算した総額が基礎控除額を超える場合に申告が必要です。

Q

共有持分を無償で譲渡するにはどうすればいい?

A

ほかの共有者や第三者への贈与として、贈与契約書を作成し持分移転の登記を申請します。
無償でも受け取った側に贈与税がかかる場合があり、登録免許税と不動産取得税も発生します。
持分の放棄もほかの共有者への贈与とみなされることがあるため、税負担を確認してから進めてください。

Q

夫婦で持分を持たせた家は相続の対象になる?

A

亡くなった配偶者の持分は相続財産になり、残った配偶者に自動で移るわけではありません。
配偶者と子がいる場合は配偶者が2分の1、子が2分の1を相続するため、遺産分割協議で配偶者が持分を取得しない限り共有名義が続きます。

Q

相続で不動産を共有するデメリットは?

A

売却や取り壊しに共有者全員の同意が必要になり、1人でも反対すると実行できません。
固定資産税の負担割合で揉めやすく、共有者が持分を第三者に売却して面識のない人と共有になることもあります。
相続が重なるほど共有者が増えて意思決定が難しくなります。

Q

共有持分の相続登記をせずに放置し続けるとどうなる?

A

2024年4月1日から相続登記が義務化されており、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。
名義が被相続人のままでは売却も担保設定もできず、次の相続が起きると必要な戸籍と同意者が増えて手続きが重くなります。

Q

相続した共有持分は他の共有者の同意なしで売却できる?

A

自分の持分だけであれば、ほかの共有者の同意なく売却できます。
ただし不動産全体を売る場合は共有者全員の同意が必要です。
持分だけの売却は全体売却より価格が下がりやすいため、複数の会社に査定を取って比べてください。

さいごに|共有持分の相続は早い段階で進む道を決めよう

共有名義の不動産を相続するときの要点は、次の4つです。

  • 亡くなった共有者の持分は、残った共有者ではなく法定相続人が引き継ぐ
  • 自分が取得する持分は「被相続人の持分割合×自分の法定相続分」で計算する
  • 相続登記は取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、違反すると10万円以下の過料の対象になる
  • 共有名義を解消する方法は、代償分割・換価分割・ほかの共有者への売却・買取業者への持分売却・現物分割の5つ

なお、共有をそのままにしておくと、次の相続で当事者が増え、選べる手段も減っていきます。
相続開始から10年を過ぎれば特別受益や寄与分も主張できません。
いま抱えている問題がどこにあるかで相談先が決まります。
遺産分割で揉めているなら弁護士、登記だけなら司法書士、相続税の申告が必要なら税理士です。

そこで、弁護士を探すなら「ベンナビ相続」、持分を手放すなら「ベンナビ不動産売却で、それぞれ無料相談から始められます。

訳あり物件の売却なら
【専門の業者への依頼】がおすすめ!

訳あり物件の買取に強い【ベンナビ不動産売却】なら
他社では扱えないような物件でも 高額査定が期待できます!

\完全無料・約1分で入力!/

24時間受付中! 無料で査定してみる