共有物分割請求訴訟の進め方|手順・必要書類・つまずきやすい点を解説
共有名義の不動産について、他の共有者と話し合いを重ねても分け方が決まらないまま時間だけが過ぎている。
そんな行き詰まりを法的に解消する手段が、共有物分割請求訴訟です。
訴状をどこに出すのか、書類は何を揃えるのか、費用はいくらかかるのかが分からないまま提訴に踏み切ると、思っていた結末と違う判決が出ることもあります。
本記事では、協議から判決までの6つの手順と必要書類を整理します。
あわせて費用と期間の目安・訴えられた側の対応・訴訟以外の選択肢まで扱う構成です。
読み終えるころには、自分が裁判に進むべきかどうかを判断できるようになります。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
共有物分割請求訴訟とは?共有状態を裁判所の判断で解消する手続き
共有物分割請求訴訟は、共有者どうしの話し合いがまとまらないときに、裁判所が分割方法を決める訴訟です。
請求の権利・手続きの段階・遺産分割との関係という前提から確認します。
共有者はいつでも共有物の分割を請求できる
民法では、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。
請求にあたって相手の同意は必要なく、持分割合の大小も請求の可否に影響しない仕組みです。
たとえば10分の1の持分しか持っていない共有者でも、単独で請求できます。
「持分が少ないから何も言えない」という理解は誤りです。
ただし例外があります。
共有者全員の合意で「5年を超えない期間は分割をしない」という不分割特約を結んでいる場合、特約の期間中は分割を請求できません。
特約は更新もできますが、更新後の期間もその時から5年が上限です。
自分の不動産に特約が付いているかどうかは、共有者間で交わした契約書や遺産分割協議書を確認してください。
特約の有無は登記事項証明書からは分からないため、手元の書面をあたる必要があります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
協議・調停・訴訟の3段階のうち最終手段にあたる
共有物の分割は、協議から始めて、まとまらなければ調停、それでも決まらなければ訴訟という順に進むのが一般的です。
3つの手続きの違いは次のとおりです。
| 手続き | 分割方法の決め方 | 強制力 |
|---|---|---|
| 協議 | 共有者全員の合意で決める | 合意しなければ何も決まらない |
| 調停 | 調停委員が間に入り合意を目指す | 成立すれば調停調書に確定判決と同じ効力がある |
| 訴訟 | 裁判所が判決で決める | 判決に法的拘束力がある |
共有物分割は調停前置主義の対象ではありません。
協議が不調に終わったら、調停を経ずに直接訴訟を提起できます。
それでも調停を挟む事案があるのは、訴訟より費用と時間を抑えられ、関係の悪化も比較的小さく済むためです。
調停を申し立てる先は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所です。
手数料は訴訟より安く、非公開の場で話し合えるため、相手との関係を残したい場合に選ばれています。
協議が不調だった経緯は、書面やメールで残しておいてください。
訴訟では「協議ができなかった事実」が前提になります。
遺産分割が済んでいない相続不動産は先に遺産分割をおこなう
被相続人の名義のまま未分割になっている不動産は、通常の共有とは扱いが異なります。
相続財産が相続人全員の共有になっている状態を遺産共有と呼び、解消は家庭裁判所の遺産分割手続きでおこなうのが原則です。
一方、遺産分割が終わって各自の持分が確定した後の共有は物権共有です。
物権共有は、共有物分割請求訴訟の対象になります。
例外として、共同相続人の1人が持分を第三者へ譲渡した場合は、譲り受けた第三者と他の相続人との関係が共有物分割訴訟で処理されると判断した判例があります。
また2023年施行の改正により、相続開始から10年が経過した遺産共有持分は、共有物分割の裁判でまとめて分割できる余地が生じました。
自分の不動産がどちらにあたるかは、登記名義が被相続人のままかどうかで判断してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有物分割請求訴訟の進め方|協議から判決までの6つの手順

共有物分割請求訴訟は、次の6つの手順で進みます。
提訴から終結まではおおむね半年から1年半が目安です。・
手順1|共有者全員で分割協議をおこない不調の記録を残す
訴訟の前に、共有者全員で分割方法を話し合います。
協議で決めるべき項目は次の3点です。
- どの方法で分けるか(現物・賠償・換価のいずれか)
- 対象不動産をいくらと評価するか
- 誰が誰にいくら支払うか
全員が合意できたときは共有物分割協議書を作成し、持分移転登記まで済ませれば手続きは完了します。
裁判に進む必要はありません。
合意できなかった場合は、不調の経緯を残してください。
話し合いに応じない共有者や連絡が取れない共有者がいるなら、内容証明郵便で分割を申し入れ、応答がない事実を証拠として残しておく方法があります。
残した記録が、後の訴訟で協議が調わなかったことを示す資料になります。
口頭でのやり取りしか残っていない場合でも、内容をあらためてメールで送り直しておけば記録として有効です。
手順2|訴状を不動産の所在地か相手方の住所地の裁判所へ提出する
訴状の提出先は、対象不動産の所在地を管轄する裁判所か、被告の住所地を管轄する裁判所のどちらかです。
原告がどちらかを選べます。
裁判所の種別は訴額で決まります。
訴額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下なら簡易裁判所が管轄です。
共有物分割請求では不動産の価額が大きくなりやすく、実務では地方裁判所へ提出する事案が多くを占めます。
訴額は、対象不動産の固定資産税評価額と自分の持分割合をもとに算定します。
正確な計算方法は裁判所によって運用が分かれるため、提出前に窓口へ確認してください。
訴状の請求の趣旨には、自分が希望する分割方法を明記します。
請求の趣旨の記載がそのまま判決になるわけではありませんが、審理の土台になります。
手順3|訴状が被告に送達され第1回口頭弁論期日が指定される
裁判所が訴状を受理すると、被告へ訴状の副本と呼出状が送達されます。
訴状を提出してから第1回口頭弁論期日が開かれるまでは、おおむね1ヵ月が目安です。
被告が答弁書を出さずに欠席した場合でも、共有物分割請求では原告の主張がそのまま認められるわけではありません。
裁判所が分割方法を判断する必要があるため、審理は続きます。
なお、被告にすべき相手は自分以外の共有者全員です。
1人でも漏れていると訴えが不適法になるため、共有者の確認は提訴前に済ませてください。
手順4|口頭弁論で希望する分割方法を主張・立証する
第1回期日のあとは、おおむね1ヵ月おきに期日が重ねられます。
口頭弁論で争うのは「分割するかどうか」ではなく「どの方法で分けるか」です。
賠償分割で自分が不動産を取得したいなら、取得の必要性と、他の共有者へ支払う金銭を用意できることを示します。
換価分割を求めるなら、土地を分筆すると価値が大きく下がるなど、現物分割が困難である事情を主張します。
裁判所の判断材料になるのは、次のような事情です。
- 誰がその不動産に住んでいるか、事業に使っているか
- 各共有者の持分割合
- 固定資産税や修繕費を誰が負担してきたか
裏づけとなる資料をそろえておくと、主張が通りやすくなります。
固定資産税の納付書や修繕の領収書、住民票などが該当します。
資料がないまま主張だけを重ねても、裁判所の判断を動かすのは困難です。
手順5|不動産鑑定で対象不動産の価格を確定させる
分割方法や清算金の額を決めるために、不動産鑑定士による鑑定がおこなわれることがあります。
鑑定が必要になる典型的な場面は次のとおりです。
- 賠償分割で、取得する側が支払う清算金の額を確定させたいとき
- 現物分割で、分けた土地に価値の差が出て金銭調整が必要なとき
- 当事者間で評価額の主張が大きく食い違っているとき
鑑定費用は、原則として鑑定を申し立てた側が裁判所へ予納します。
判決で訴訟費用の負担が定められる際に、一部が相手方に配分される場合もあります。
鑑定額は市場での売却価格とは別物です。
想定より低く出ることもあるため、提訴の前に売却査定を取って相場感を持っておくと、鑑定結果を冷静に判断できます。
鑑定が必要になるかどうかは裁判所が判断するため、見込みを弁護士に確認しておいてください。
相場感をつかむ査定は、ベンナビ不動産売却からも依頼が可能です。
手順6|和解または判決で分割方法が確定する
審理の途中で、裁判所から和解を勧められる場面が多くあります。
和解が成立すると和解調書が作成され、確定判決と同じ効力を持ちます。
任意売却で市場価格に近い金額を確保する合意も、和解の段階で可能です。
和解がまとまらなければ判決です。
判決で現物分割か賠償分割が命じられた場合は、判決をもとに登記名義を単独で書き換えられます。
注意が必要なのは換価分割の判決です。
判決が出ただけでは不動産は売却されません。
代金を得るには、判決を根拠に形式的競売を別途申し立てる必要があります。
競売の申立てから配当までは、さらに時間のかかる工程です。
判決が確定してから代金を受け取るまで、半年前後を見込んでおいてください。
早く現金化したいなら、和解の段階で任意売却に合意するほうが結果的に近道になります。
【参考】民事執行法|e-Gov 法令検索
共有物分割請求訴訟に必要な書類と取得先・手数料
訴状のほかに、対象不動産を特定する書類と訴額の算定に使う書類が必要です。
書類そのものの実費は数千円程度に収まります。
| 書類 | 取得先 | 手数料の目安 |
|---|---|---|
| 訴状 正本・副本 | 自分で作成 | ― |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 1通600円前後 |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | 1通450円前後 |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村・東京23区は都税事務所 | 1通300円前後 |
| 住民票・戸籍謄本 | 市区町村 | 1通300〜450円前後 |
※手数料は法務局・自治体が公表している金額をもとにした目安です。
事案によって追加の書類が求められる場合があります。
訴状と副本|被告の人数分を用意する
訴状は裁判所に提出する正本を1通、加えて被告の人数分の副本を用意します。
共有者が3人いて自分以外の2人を被告にするなら、正本1通と副本2通の計3通です。
訴状に最低限書く事項は次のとおりです。
- 当事者(原告と被告全員の氏名・住所)
- 請求の趣旨(希望する分割方法)
- 請求の原因(共有に至った経緯と協議が調わなかった事実)
- 物件目録(対象不動産の所在・地番・地目・地積)
物件目録は登記事項証明書の記載をそのまま書き写します。
1字でも違うと補正を求められます。
副本は正本と同じ内容の写しで十分です。
書式の例は裁判所のウェブサイトで公開されています。
記載に迷う部分があれば、提出前に弁護士へ確認してください。
提出の直前に、被告の人数と副本の通数が合っているか数え直しておくと差し戻しを防げます。
不動産の登記事項証明書・公図・地積測量図
対象不動産を特定し、共有者と持分を確認するために法務局で取得する書類です。
3種類の書類の役割を整理します。
- 登記事項証明書:共有者の氏名と持分割合、抵当権などの権利関係を確認する
- 公図:対象地と隣地との位置関係を確認する
- 地積測量図:分筆できるかどうかを検討する
手数料は法務局が公表している金額で、登記事項証明書が1通600円、公図と地積測量図が1通450円です。
いずれも窓口で交付を受ける場合の金額になります。
オンラインで請求して郵送や窓口で受け取る方法を使うと、窓口で直接請求するより手数料が安くなります。
共有者が多く枚数がかさむ場合は、オンライン請求を検討してください。
発行から3ヵ月以内の書類を求められる場合があるため、提出時期に合わせて取り寄せてください。
固定資産評価証明書と収入印紙・郵便切手
固定資産評価証明書は、訴額を算定する基礎になる書類です。
対象不動産の所在地の市区町村役場で取得します。
東京23区内の不動産については都税事務所が窓口です。
評価額をもとに算出した訴額に応じて、申立手数料の額が決まります。
手数料は収入印紙で納め、訴状に貼付します。
裁判所から当事者へ書類を送るための郵便切手も、納付が必要です。
郵便切手は被告の人数が増えるほど必要額も増えます。
相続や離婚が背景にある事案では、追加の書類を求められることがあります。
相続なら被相続人の戸籍謄本や遺産分割協議書、離婚なら離婚協議書や財産分与に関する取り決めの写しが該当書類です。
どこまで必要かは事案によって変わるため、提出先の裁判所の窓口で一度確認しておくと二度手間を避けられます。
共有物分割請求訴訟で裁判所が選ぶ3つの分割方法

裁判所は、現物分割・賠償分割・換価分割の3つから分割方法を選びます。
実務では換価分割か賠償分割になる事案が多くを占めます。
| 分割方法 | 内容 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 共有物を物理的に分ける | 分筆できる広さの土地 | 建物やマンションでは採用されにくい |
| 賠償分割 | 1人が取得し他の共有者へ金銭を支払う | 特定の共有者が住み続けたい | 取得する側に支払能力が必要 |
| 換価分割 | 売却して代金を持分割合で分ける | 全員が現金化を望む | 判決による場合は競売になる |
現物分割|土地を分筆して物理的に分ける
現物分割は、共有物そのものを持分割合に応じて物理的に分ける方法です。
土地であれば分筆登記をおこない、各共有者が単独名義の土地を取得します。
一方、建物や区分所有マンションでは採用されにくい方法です。
建物を物理的に切り分けると住居として使えなくなり、共有物の価値を著しく損なうためです。
土地でも、分筆すると接道要件を満たさなくなる場合や、極端に細長い土地になる場合は採用されません。
分けた土地に価値の差が出るときは、差額を金銭で調整する部分的価格賠償を併用します。
分筆と金銭調整の組み合わせで、持分割合との公平を保つ形です。
自分の土地が分筆できるかどうかは、地積測量図と接道状況から判断してください。
迷う場合は土地家屋調査士に確認する方法もあります。
賠償分割|1人が取得して他の共有者に持分相当額を支払う
賠償分割は、共有者の1人が不動産全体を取得し、他の共有者へ持分に相当する金銭を支払う方法です。
全面的価格賠償とも呼ばれます。
裁判例では、賠償分割を認めるにあたって次の点が考慮されてきました。
- その共有者が不動産を取得する必要性があるか
- 取得後の価格が適正に評価されているか
- 他の共有者へ支払う金銭を現実に用意できるか
とくに支払能力は重視されます。
清算金を用意できないまま賠償分割を求めても認められません。
預貯金の残高証明や融資の内諾書などで、資力を示す準備が必要です。
2023年施行の改正民法では、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法が条文に明記されました。
条文化により、裁判所が賠償分割を選びやすくなっています。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
換価分割|競売にかけて代金を持分割合で分ける
換価分割は、不動産を売却して代金を持分割合で分ける方法です。
代金分割とも呼ばれます。
現物分割ができず、賠償分割にも適さない場合に選ばれます。
判決で換価分割が命じられたときの売却は、市場での任意売却ではなく形式的競売です。
共有持分の買取を扱う事業者や法律事務所からは、競売の落札価格は市場価格の5割から8割程度にとどまるという情報が公表されています。
5割から8割という水準に公的な統計はないため、あくまで各社の実績にもとづく目安です。
手取りを減らしたくないなら、判決を待たずに和解の中で任意売却へ切り替える方法があります。
任意売却なら市場価格に近い水準で売れる余地が残ります。
自分の持分だけを売却する方法を選べば、競売を経ない現金化も可能です。
【参考】民事執行法|e-Gov 法令検索
共有物分割請求訴訟にかかる費用の内訳
訴訟にかかる費用は、申立手数料・弁護士費用・不動産鑑定費用の3つで構成されます。
弁護士に依頼する場合、総額は数十万円から150万円程度が目安です。
| 費用項目 | 金額の目安 | 出所 |
|---|---|---|
| 申立手数料・印紙代 | 訴額1,000万円程度で4〜6万円 | 不動産買取事業者の公表値 |
| 弁護士費用 | 着手金20〜50万円/報酬金は経済的利益の10〜20% | 法律事務所・専門事業者の公表値 |
| 不動産鑑定費用 | 10万〜50万円 | 法律事務所・専門事業者の公表値 |
※いずれも公的な統計ではなく、各社が自社サイトで公表している金額の幅です。
申立手数料(印紙代)は訴額に応じて決まる
申立手数料は訴額に連動します。
共有物分割請求では、対象不動産の価額と自分の持分割合をもとに訴額を算定し、算定額に応じた手数料を収入印紙で納めます。
共有持分の買取を扱う事業者が公表している例では、訴額1,000万円程度の事案で4万円から6万円程度が目安です。
不動産の評価額が高いほど手数料も上がります。
印紙のほかに、裁判所が当事者へ書類を送るための郵便切手を納めます。
被告が増えるごとに必要額が加算されるため、共有者が多い事案では数千円から1万円程度を見込んでおいてください。
正確な額は提訴先の裁判所によって運用が異なります。
訴状を提出する前に窓口で確認するのが確実です。
収入印紙は訴状に貼付した時点で還付されないため、金額を確定させてから貼ってください。
弁護士費用は着手金と報酬金の2本立てが一般的
弁護士費用は、依頼した時点で支払う着手金と、結果に応じて支払う報酬金に分かれます。
法律事務所や共有持分の専門事業者が公表している金額では、着手金が20万円から50万円程度、報酬金が経済的利益の10%から20%程度という設定が多くみられます。
経済的利益とは、判決や和解によって自分が得た金銭や不動産の価額です。
金額は事案の難易度と不動産の評価額で変わります。
共有者が多い、相続がからんで相続人調査が必要、鑑定で争いが生じるといった要素があると高くなります。
弁護士費用は、訴訟費用の枠外です。
勝訴しても相手方に請求できないため、自己負担になる前提で見積もってください。
着手金の分割払いに応じる事務所もあるので、見積もりの段階で支払い方法まで確認してください。
不動産鑑定費用は鑑定が必要になった場合のみ発生する
不動産鑑定費用は、裁判所が鑑定を採用した場合にだけ発生します。
当事者間で評価額に争いがなければ、鑑定費用はかかりません。
法律事務所や共有持分の専門事業者が公表している金額は、10万円台から50万円程度までと幅のある水準です。
対象不動産の規模や種別、権利関係の複雑さによって変動します。
鑑定は原則として申立てをした側が費用を予納します。
予納額は裁判所が鑑定人と調整して決めるため、鑑定を申し立てる前に見込み額を確認してください。
費用をかけて鑑定した結果が、自分の期待より低い評価になることもあります。
申立ての前に、複数の不動産会社から査定を取って相場を把握しておくと判断が容易です。
鑑定なしで評価額に合意できれば、費用も期間も抑えられます。
共有物分割請求訴訟の解決までにかかる期間の目安
解決までの期間は、どの段階で決着するかによって大きく変わります。
共有持分を扱う事業者が公表している目安は次のとおりです。
| 段階 | 期間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 任意の協議のみ | 1〜3ヵ月 | 全員が合意できた場合 |
| 調停 | 3〜6ヵ月 | 成立しなければ訴訟へ |
| 訴訟 | 6ヵ月〜1年以上 | 争点が多いと2年近くに及ぶ事案もある |
※共有持分の買取を扱う事業者が自社サイトで公表している目安です。
公的な統計ではありません。
長期化しやすいのは次のような事案です。
- 共有者の人数が多く、相続で持分が細分化されている
- 不動産鑑定が必要になり、鑑定結果についても争いが生じる
- 一審の判決に不服があり控訴された
さらに、換価分割の判決が出た場合は、形式的競売の申立てから配当までの半年前後が別途かかります。
訴訟の終結がそのまま現金化ではない点も、見落としやすいところです。
見通しを立てるときは、判決が出るまでではなく現金を受け取るまでの期間で考えてください。
共有物分割で行き詰まったら弁護士への相談も検討しよう
訴訟に進むかどうかの判断は、法律の見通しなしには立てられません。
希望する分割方法が通る見込み、被告にすべき共有者の範囲、訴額と費用の概算は、事案ごとに答えが変わる領域です。
共有不動産の扱いに慣れた弁護士に相談すると、提訴の前に勝ち筋と費用対効果を確認できます。
並行して、自分の持分の査定額も確かめておくと判断が早まります。
訴訟で得られる見込み額と持分売却の手取りを並べて比べられるためです。
ベンナビ不動産売却は、共有持分や訳あり不動産の買取に対応する会社を探して比較できるサービスです。
査定は無料で、他の共有者に知られずに相談できます。
弁護士に依頼するかどうかを迷っている段階でも、数字を先に集めておいて損はありません。
まずは査定から始めてください。
共有物分割請求訴訟を起こすメリット3つ
訴訟には、話し合いでは得られない効果があります。
同意不要の解消・判決の強制力・価格の客観性という3つの効果を確認します。
相手の同意がなくても共有状態を解消できる
分割請求は相手の同意を条件としていません。
そのため、話し合いを拒まれている場合でも、裁判所の判断によって共有関係を終わらせられます。
とくに効果が大きいのは、共有者が話し合いに応じない事案や、連絡そのものが取れない事案です。
協議のままでは何年経っても状態が変わりませんが、訴訟なら手続きを進められます。
共有者の一部が所在不明の場合も、住所の調査を尽くしたうえで公示送達という方法を使えば審理を進めることが可能です。
2023年施行の改正は、所在のわからない共有者の持分を取得する制度も新設しています。
「連絡がつかないから何もできない」という状況を打開できる点が、訴訟がもつ実務的な価値です。
協議のまま動かない状態が続いているなら、検討する価値があります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
判決に強制力があり結論を先送りにされない
判決には法的拘束力があります。
相手が結果に納得していなくても、判決で定められた分割方法に従わなければなりません。
協議は、1人でも合意しなければ何も決まらない仕組みです。
考えておくと言われ続けて、数年が過ぎることもあります。
訴訟なら、審理を終えた時点で結論が示されます。
和解が成立した場合の和解調書も、確定判決と同じ効力です。
相手が和解の内容どおりに清算金を支払わないときは、和解調書を根拠に強制執行を申し立てられます。
登記についても同様です。
判決や和解調書があれば、相手の協力がなくても持分移転登記を単独で申請できます。
結論が出る時期を自分で見通せる点も、協議との大きな違いです。
相手が話し合いを再開してくれるのを待ち続ける必要がなくなります。
鑑定に基づく客観的な価格で清算できる
清算金の額は、裁判所が採用した不動産鑑定士の評価をもとに決まります。
第三者が算定した価格なので、当事者の思い込みによる食い違いを解消できます。
共有者間の協議でよく起きるのが、評価額の主張が噛み合わないという事態です。
取得したい側は低く見積もり、金銭を受け取る側は高く見積もるため、話が前に進みません。
鑑定はこの対立に決着をつけます。
「身内に安く買い叩かれるのではないか」という不安に対しても、鑑定は一定の納得材料です。
鑑定額が自分の期待を下回ることもあります。
鑑定は市場での売却価格とは別の基準で算定されるため、差が出る点は理解しておいてください。
鑑定書は清算金の根拠として記録に残るので、後から金額を蒸し返される心配も小さくなります。
共有物分割請求訴訟でつまずきやすい点4つ
訴訟には想定外の結末やコストがともないます。
分割方法・競売の手取り・被告の範囲・関係悪化という4つの落とし穴を確認します。
希望した分割方法が判決で採用されるとは限らない
分割方法を選ぶのは裁判所です。
訴状の請求の趣旨に書いた方法に裁判所が拘束されるわけではありません。
現物分割を望んでいたのに換価分割の判決が出る事案もあります。
現物分割が困難と判断される典型的な例は次のとおりです。
- 対象が建物や区分所有マンションである
- 分筆すると接道要件を満たさない土地になる
- 分筆によって各区画の価値が著しく下がる
自分の希望を通すには、希望する分割方法が合理的だと示す準備が必要です。
賠償分割を求めるなら取得の必要性と支払能力を、現物分割を求めるなら分筆後も利用価値が保たれることを、資料で裏づけてください。
準備なく提訴すると、意図しない結末になる可能性があります。
提訴の前に、自分の希望する分割方法が通る見込みを弁護士と確認しておいてください。
換価分割の判決が出ると競売で手取りが目減りする
判決による換価分割は形式的競売でおこなわれます。
判決が確定しただけでは売却されず、あらためて競売を申し立てる手続きが必要です。
競売の落札価格は、先述の事業者公表値では市場価格の5割から8割程度にとどまるのが目安です。
仮に市場価格3,000万円の不動産が7割で落札されると、代金は2,100万円まで下がります。
持分2分の1なら手取りは1,050万円で、任意売却の場合と比べて数百万円の差です。
競売に至る前であれば、和解による任意売却や、自分の持分だけを売却する方法が残っています。
自分以外の共有者全員を被告にしないと訴えが成立しない
共有物分割請求訴訟は、共有者全員が当事者になる必要がある訴訟です。
一部の共有者を外して提訴すると、訴えが不適法として却下されます。
まず登記事項証明書を取得し、共有者の氏名・住所・持分割合を全て確認してください。
登記に記載された住所から転居している共有者がいる場合は、住民票の除票や戸籍の附票で現住所をたどります。
注意が必要なのは、相続によって共有者が枝分かれしている事案です。
共有者の1人が亡くなっていると、持分は相続人全員に承継されています。
枝分かれしている場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を全員特定しなければなりません。
共有者の数に比例して、調査の負担も重くなる構造です。
調査に漏れがあると、審理の途中で当事者の追加を求められ、期日が先延ばしになります。
共有者との関係が決定的に悪化することがある
訴訟は原告と被告に分かれて争う手続きです。
相手が親族や元配偶者であっても、法廷では対立する当事者として主張をぶつけ合います。
とくに関係が悪化しやすいのは、共有者の1人がその不動産に住んでいる事案です。
換価分割の判決が出れば退去を迫られるため、訴訟の結果が生活そのものに直結します。
明渡しをめぐる争いが加わり、対立が深まります。
判決が出た後も、法要や親族の集まりで顔を合わせる関係はそのままです。
金銭の清算が終わっても、感情のわだかまりが残る点は覚悟しておいてください。
訴訟を起こした側が他の親族から責められ、その後の付き合いが途絶えた事案もあります。
訴訟を選ぶかどうかは、金銭面だけでなく相手との今後の関係まで含めて判断してください。
共有物分割請求訴訟を起こされた側(被告)の進め方
訴状を受け取ったら、拒否も無視もできません。
期限内に答弁書を提出し、自分の希望する分割方法を主張する必要があります。
分割請求そのものを拒否することはできない
共有者には分割を請求する権利が認められているため、請求そのものを拒むことはできません。
「応じたくない」という理由だけで訴訟を止める手段はないと理解してください。
訴状を無視した場合、手続きは原告の主張だけをもとに進み、自分の希望が一切反映されないまま判決が確定します。
住み続けたいと考えていても、換価分割の判決が出れば退去を迫られます。
争えるのは「分割するかどうか」ではなく「どう分けるか」です。
方法によって結果は大きく変わります。
不利益を避けるには、期限内に答弁書を出して自分の希望を主張することが唯一の手段です。
訴状が届いたら、まず第1回の期日と答弁書の提出期限を確認してください。
放置は最も不利な選択になります。
答弁書で希望する分割方法と評価額を主張する
答弁書の提出期限は、第1回口頭弁論期日のおおむね1週間前に設定されます。
呼出状に記載された日付を確認し、間に合うように準備してください。
不動産を手放したくない場合は、賠償分割を求めます。
取得の必要性(居住している、事業で使っているなど)と、他の共有者へ支払う金銭を用意できることを示してください。
資力の裏づけがないと認められません。
現金化してもかまわない場合は、換価分割を求めるほうが早く決着することもあります。
判決による競売は市場価格を下回りやすいため、和解による任意売却を提案する余地も検討してください。
対象不動産の評価についても意見を述べられます。
原告が示した評価額が実勢と離れていると考えるなら、査定書を添えて反論してください。
訴訟を起こす前に検討したい共有持分の売却という選択肢

共有関係から抜けるだけであれば、裁判以外の方法があります。
自分が持っている共有持分だけを第三者へ売却する方法です。
持分の処分は各共有者が単独でできるため、他の共有者の同意も裁判所の手続きも必要ありません。
| 手段 | 期間の目安 | かかる費用 | 他の共有者の同意 | 手取りの特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 共有物分割請求訴訟 | 6ヵ月〜1年半 | 数十万〜150万円程度 | 不要 | 競売になると市場価格を下回りやすい |
| 共有持分の売却 | 数週間〜2ヵ月程度 | 仲介手数料等 | 不要 | 買取価格は単独所有より低くなる |
訴訟に進めば分割方法は裁判所が決めますが、持分の売却なら金額を確認したうえで自分の意思で決められます。
買取価格は単独所有の不動産より低くなるものの、競売による手取りを上回る場合もある水準です。
ベンナビ不動産売却では、共有持分や訳あり不動産の無料査定を受け付けています。
訴訟に進むかどうかを決める前に、いま持っている持分がいくらで売れるのかを確かめてみてください。
数十万円の費用と1年以上の時間をかける価値があるかどうかを、金額で比べられます。
共有物分割請求訴訟に関するよくある質問
共有物分割請求訴訟は調停を経ないと起こせない?
調停前置主義は適用されないため、協議が不調に終わればすぐに訴訟を提起できます。
ただし調停のほうが費用も期間も抑えられ、関係の悪化も比較的小さく済みます。
相手に話し合いの余地が残っているなら、調停の先行も検討に値する選択肢です。
持分割合が少なくても訴訟を起こせる?
持分の大小は請求できるかどうかに影響しません。
10分の1の持分でも単独で提訴できます。
ただし分割方法を判断する段階で考慮されるのは、持分割合や誰が住んでいるかといった事情です。
持分が少ないと、賠償分割で自分が取得する結論にはなりにくい傾向があります。
共有物分割で不動産を売却したら税金はかかる?
換価分割で売却して利益が出た場合は、譲渡所得税と住民税の対象になります。
居住用財産であれば特別控除を使えることもあります。
また賠償分割で著しく低い価格の清算にすると差額が贈与とみなされる可能性があるため、価格設定に注意してください。
具体的な税額は税理士に確認してください。
マンションでも共有物分割請求はできる?
区分所有建物の専有部分を複数人で共有している場合は、分割を請求できます。
一方、マンション全体の敷地については、専有部分と分離して処分することが制限されているため、現物分割は困難です。
実務では賠償分割か換価分割が選ばれます。
共有者間で分割請求を禁止することはできる?
共有者全員の合意があれば、5年を超えない期間について分割をしない特約を結べます。
特約は更新もできますが、更新した時から5年が上限です。
特約がある期間中は分割を請求できないため、共有名義にする際は期間の設定に注意してください。
訴訟中に自分の共有持分を売却できる?
訴訟が続いている間でも、持分そのものを処分すること自体は可能です。
当事者が変わると訴訟手続きに影響が生じます。
売却を検討するなら早い段階で査定を取り、依頼している弁護士とも情報を共有したうえで判断してください。
まとめ|訴訟は最終手段・先に持分の値段を確かめる
共有物分割請求訴訟は、協議から判決まで6つの手順で進みます。
訴状は不動産の所在地か被告の住所地を管轄する裁判所へ提出し、登記事項証明書や固定資産評価証明書を添えます。
費用は数十万円から150万円程度、期間は半年から1年半が目安です。
裁判所が選ぶ分割方法は現物分割・賠償分割・換価分割の3つで、希望した方法が採用されるとは限りません。
換価分割の判決が出ると形式的競売になり、手取りが市場価格を下回る可能性があります。
共有者と争ってでも不動産そのものを取得したいなら訴訟が有効です。
共有関係から抜けて現金化したいだけなら、自分の持分を売却するほうが早く決着します。
ベンナビ不動産売却では、共有持分や訳あり不動産の無料査定を受け付けています。
まずは査定額を確かめたうえで、訴訟に進むかどうかを判断してください。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。