共有名義不動産

共有持分の放棄は早い者勝ち?条件・費用・相続時の注意点を解説

共有持分の放棄は早い者勝ち?条件・費用・相続時の注意点を解説

親から相続した山林や空き家の共有持分について、自分は使っていないのに固定資産税だけを払い続けている方は少なくありません。
この負担を誰にも相談できないまま、何年も抱え込んでしまうこともあります。

なお、共有持分の放棄は民法で認められた正当な権利ですが、「早い者勝ち」という言葉が独り歩きしています。

実際には、意思表示だけなら単独でできるのに、登記は他の共有者の協力なしには完了しません。

他の共有者が次々に放棄して最後の一人になると、放棄そのものができなくなります。

そこで本記事では、「早い者勝ち」の正確な射程と、放棄が有効に成立する条件を解説します。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

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共有持分の放棄とは?放棄した持分が他の共有者へ移る仕組み

共有持分の放棄とは、共有名義の不動産について自分の持分だけを無償で手放す法律行為です。
手元に対価は残りません。

放棄した持分は、民法第255条により他の共有者へその持分割合に応じて移ります。

たとえばA・B・Cが3分の1ずつ共有し、Aが放棄したとします。
Aの3分の1はBとCへ移り、両者の持分は各2分の1になります。
土地が物理的に分割されるのではなく、権利の割合だけが動きます。
ただし対外的に主張するには、持分移転登記まで終える必要があります。

【参考】民法第255条(持分の放棄及び共有者の死亡)|e-Gov法令検索

放棄の意思表示は他の共有者の同意なしに単独でできる

共有持分の放棄は相手方のない単独行為とされているため、他の共有者の同意も承諾も必要ありません
単独行為とは、相手の合意を得ずに一方の意思表示だけで法律上の効果が発生する行為のことです。
共有持分を放棄する本人の意思表示だけで効力が生じます。

自分の持分を第三者へ売却することも、同じく単独でできます。

一方で、不動産全体を売却したり土地を分筆したりする行為は、共有者全員の同意がなければ進められません
共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要で、管理に関する事項は持分の価格に従って過半数で決めます。

ただし、同意が不要なのは意思表示の段階までです。
登記の段階では他の共有者の協力が必要になります。

放棄した持分は他の共有者へ持分割合に応じて帰属する

放棄された持分は国や自治体ではなく、残った他の共有者へ移ります
配分は残った共有者の持分割合に応じて割り振られます。

なお、持分が均等でない場合も同じ考え方です。

たとえば、Aが2分の1、Bが3分の1、Cが6分の1をもつ土地でCが放棄すると、Cの6分の1はAとBの持分割合(3対2)で分けられます。
結果としてAは5分の3、Bは5分の2になります。

帰属は法律上自動で起きるため、他の共有者は「受け取りたくない」と拒否できません

そして、この仕組みが持分を受け取った側に贈与税を生じさせ、人間関係の悪化を招く起点になります。

対外的に放棄を主張するには共有持分移転登記が必要になる

意思表示によって持分は移りますが、登記をしなければ第三者にはその移転を主張できません

固定資産税の納税通知も自分に届き続けます。

登記を放置すると台帳の名義も動かないため、納税義務の外形が自分に残ったままになります。
登記名義が残っていると、共有物の管理費用を持分に応じて負担する立場から抜け出せたとは言い切れません。
手続きは、登記の完了までをひとつのまとまりと考えましょう。

【参考元】民法|e-Gov法令検索

共有持分の放棄が「早い者勝ち」と言われる3つの理由

共有持分の放棄が早い者勝ちと言われるのは、時間が経つほど自分の負担が増え、放棄できる余地が狭まっていくからです。

理由①|他の共有者に先を越されると自分の持分割合が増える

他の共有者が先に放棄すると、放棄された持分は自分にも持分割合に応じて移ってきます

たとえば、共有者4人がそれぞれ4分の1をもつ土地で、2人が先に放棄したとします。
残る2人の持分は各2分の1になり、固定資産税の負担額も倍になります。
また、管理責任も同じ比率で重くなります。

帰属は拒否できないため、放置している間に一方的に負担が増えていきます。
すでに放棄された場合でも、増えた持分について放棄と売却の両方の選択肢は残っています。

理由②|共有者が減り続けて最後の一人になると放棄できなくなる

他の共有者が次々に放棄して自分だけが残ると単独所有者になり、持分放棄ができなくなります

たとえば、共有者3人のうち2人が放棄した場合では、1人目が放棄すると残る2人が各2分の1、2人目が放棄すると残った1人が単独で所有権をもちます。

この段階で放棄の登記は申請できません
単独所有者になると、固定資産税の納税義務と管理責任を一人で負います。

建物があれば修繕義務と工作物責任も加わります。
共有だったときに分散していた負担が、一身に集まってしまいます。
単独所有になった場合の出口は、放棄ではなく不動産全体の売却・贈与・相続土地国庫帰属制度の3つに絞られてしまいます。

理由③|登記を先延ばしにすると共同申請の相手方が増えて実現が難しくなる

意思表示だけを済ませて登記を先延ばしにすると、共同申請の相手方が増えて登記の実現が難しくなります

たとえば意思表示から5年が経つ間に共有者の1人が亡くなると、その持分は相続人へ移ります。
相続人が3人いれば、登記の相手方は1人から3人へ増えてしまいます。
世代が下るほど、相手方はさらに枝分かれしていくでしょう。

相手方が行方不明になった場合は、不在者財産管理人の選任など追加の裁判手続きが必要になり、費用と期間がさらに膨らみます。

意思表示を急ぐことと登記まで終えることは、切り離さずに考える必要があります。
意思表示の日付が古いほど相手方の特定に戸籍の取り寄せが増え、司法書士へ支払う報酬も上がってしまいます。

「早い者勝ち」が誤解になる2つの場面|急いでも単独では完了しない

意思表示を先に済ませても、次の2つは早さでは解決しません。
登記に他の共有者の協力が要る点と、負担の押し付けを目的とした放棄が権利濫用とされうる点です。

競合する情報は「早い者勝ち」だけを強調しがちですが、この2つを外すと放棄は完成しません。
放棄したつもりで負担だけが残る事態になります。

この2つを満たせるかどうかが、放棄と売却のどちらを選ぶかの実質的な分岐点になります。
登記の協力が見込めず、かつ負担の押し付けと受け取られる状況なら、放棄は成立しないまま費用だけが出ていきます。

①登記は共同申請が原則で他の共有者の協力なしには進まない

持分移転登記は、権利を渡す側と受け取る側が共同で申請するのが原則です。
他の共有者が実印の押印と印鑑証明書の提供に応じなければ、意思表示だけでは登記は完了しません。

権利に関する登記の申請は、登記権利者と登記義務者が共同でおこなうと定められています。
これを共同申請主義といい、権利を渡す側と受け取る側の双方が申請人になる原則です。

受け取る側には贈与税と不動産取得税が生じます。
つまり、協力を拒む動機が構造的にあります。
相手にとって放棄は「ありがたい話」ではなく「請求書が届く話」です。

そのため、意思表示の前に口頭で事情を説明して協力を依頼する順序が、結果を大きく左右します。
書面を送る前のひと手間が、登記まで届くかどうかを決めます。

②負担の押し付けを目的とした放棄は権利濫用とされることがある

他の共有者に負担を押し付ける目的の放棄は、権利の濫用として認められない場合があります。
民法には「権利の濫用は、これを許さない」と定められており、放棄という権利にも限界があります。

法制審議会の部会資料にも、次の記載があります。

他の共有者に一方的に負担を押し付ける目的で共有持分を放棄した場合には、通常は権利濫用(民法第1条第3項)に該当すると思われる。
引用元:法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料

相続した共有持分は放棄ではなく別の手続きになる場合がある

相続登記が済んでいない遺産共有では、放棄ではなく相続放棄や相続分の放棄・譲渡が選択肢になります。

分かれ目は相続登記の有無と熟慮期間です。

遺産共有のままの持分は共有物分割の対象にならない

共有物やその持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、共有物の持分について共有物分割はできません

そのため、まず遺産分割を終えることが順序になります。
自分の持分が遺産共有か通常共有かは、登記事項証明書の権利部で判別できます。
相続登記が入っていれば通常共有、亡くなった人の名義のままなら遺産共有です。

相続登記は法務局の窓口のほか、登記・供託オンライン申請システムからも請求できます。

相続開始から10年経過した後にする遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮しない法定相続分で分けることになります。
そのため、放置は選択肢を狭めることになります。

【参考元】登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です|法務局

熟慮期間内なら相続放棄で負債ごと手放せる

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内なら、家庭裁判所への申述によって相続放棄ができます

しかし、3ヶ月を過ぎると原則として相続放棄を選べません。
相続放棄はすべての財産を受け継がない手続きなので、共有持分だけを選んで手放すことはできない仕組みになっています。

借入が多いなら相続放棄が有利ですが、預貯金を受け取りたいなら手元に何も残りません

なお、熟慮期間は家庭裁判所で延長できますので、期限が迫っているなら申立てを検討してください。

【参考元】相続の放棄の申述|裁判所

相続分の放棄は共有持分の放棄とは別の手続きになる

相続分の放棄は、遺産分割の当事者から抜けるという意思表示です。

共有持分の放棄と違い、登記の共同申請を経ずに遺産分割の場で処理できます。
相続分の放棄をすると、自分の相続分は他の共同相続人へ相続分に応じて振り分けられます。

譲る相手を指定したいなら、相続分の譲渡という選択肢があります。
相続分の譲渡なら、特定の共同相続人や第三者へ相続分を渡せます。

ただし、相続分の放棄をしても亡くなった人の債務からは免れられません。
債権者は法定相続分に応じて請求できます。
負債がある場合は、熟慮期間内の相続放棄と比べて判断してください。

熟慮期間を過ぎてしまい、かつ不動産の持分だけを手放したいなら、遺産分割を終えて相続登記を入れたうえで共有持分の放棄に進む流れになります。

放棄と売却を分ける3つの判断軸

放棄と売却の判断の軸は以下の5つです。

判断軸放棄が向くケース売却が向くケース
持分の売却価値山林・再建築不可の土地などで値がつかない市街地の土地や建物で値がつく
他の共有者の協力最低限の連絡が取れて登記に応じてくれる連絡が取れない、または協力を拒まれている
自分の手出し費用数十万円を負担してでも抜けたい手出しをせずに現金を得たい
解決までの期間協力が得られれば1ヵ月〜2ヵ月買主が見つかれば数日〜数週間
他の共有者への影響贈与税と不動産取得税を負わせる他の共有者に税負担は生じない

まず、放棄には登録免許税などの自己負担が生じる一方で手元には1円も入らず、収支は実質的にマイナスになります。
少しでも売却価値があるなら、売却のほうが手残りと見通しの立てやすさで有利になりやすくなります。

なお、判断に迷うときはまず持分の査定を受けて売却価値の有無をはっきりさせるところから始めてください。
値がつかないと分かってから放棄を選んでも遅くはありません。

共有持分の放棄を選ぶべきケース

売却価値がほぼなく、他の共有者が登記に協力してくれる見込みがあり、登記費用を負担してもなお管理負担から抜けたい場合は、放棄が合理的な選択になります。

該当する条件は次のとおりです。

  • 売却しても値がつかない山林や農地、再建築不可の土地である
  • 他の共有者と最低限の連絡が取れて、事情を説明すれば協力を得られそうである
  • 共有持分以外の遺産(預貯金など)は受け取りたい
  • 子や孫にこの持分を相続させたくない

値がつかない山林・農地・再建築不可の土地である

売却の相談をしても買い手が見つからない土地は、放棄が現実的な選択肢になります。
市街地から離れた山林、耕作していない農地、接道要件を満たさず建て替えができない土地などが代表例です。

いずれも固定資産税と管理の手間だけが毎年発生し、持ち続けても状況が良くなる見込みの乏しい財産です。
境界が不明確だったり、隣地との争いを抱えていたりすると、買い手はさらに限られます。

ただし、値がつかないという判断は感覚ではなく査定で確かめてください
共有持分や訳あり不動産を扱う会社なら、山林や再建築不可の土地でも買い取りに応じる場合があります。

査定額がゼロだと分かってから放棄を選んでも遅くはありません。
農地の場合は、権利の移動に農地法上の許可や届出が必要になることもあります。
事前に農業委員会へ確認しておくと安心です。

他の共有者と連絡が取れて協力を得られそうである

放棄は、他の共有者の協力が得られる見込みがあってはじめて完了します。

持分移転登記は共同申請が原則のため、相手が実印を押して印鑑証明書を出してくれなければ名義は動きません。
年に一度でも連絡が取れる関係で、事情を説明すれば聞く耳をもってもらえそうなら、放棄は成立しやすくなります。

反対に、住所も分からない相手が含まれる場合は、意思表示だけをしても登記が止まります

そこで協力を得る鍵は、相手に生じる贈与税と不動産取得税の見込み額を先に伝えることです。
金額を示さずに内容証明だけを送ると身構えられます。
そのため、登録免許税を自分が負担すると申し出るのも有効です。

なお、連絡先が分からない共有者がいるなら、戸籍の附票を取り寄せて現住所をたどるところから始めます。
相手が健在か、すでに相続が発生していないかも併せて確認してください。

預貯金など持分以外の遺産は受け取りたい

相続で取得した持分は手放したいが預貯金は受け取りたいという場合は、相続放棄ではなく共有持分の放棄が適します

相続放棄はすべての遺産を受け継がない手続きのため、不要な持分だけを選んで手放すことはできません。
例えば、預貯金800万円と山林の持分を相続したケースでは、相続放棄を選ぶと800万円も受け取れなくなります。

共有持分の放棄なら、預貯金を手元に残したまま持分だけを切り離せます
ただし被相続人に借入がある場合、共有持分の放棄では債務から免れられません。
負債の有無を確かめたうえで、熟慮期間内の相続放棄と比べて判断してください。

なお、相続登記が済んでいない遺産共有の段階では、共有持分の放棄ではなく相続分の放棄や譲渡が選択肢になります。
まず登記の状態を確かめましょう。

子や孫にこの持分を相続させたくない場合

自分が持分を抱えたまま亡くなると、その持分は相続人へ移り、相続人が複数いればさらに細分化されます。

世代が下るほど共有者は増え、不動産全体の売却も分筆も同意が取れなくなります。
共有者が10人規模になれば、実務上は出口が閉じた状態に近づきます。
将来の固定資産税と管理責任を子や孫に残したくないなら、自分の代で処理しておく意味は大きいといえます。

また、放棄が使えるのは共有者が2人以上いる間だけです。
他の共有者が先に放棄して自分が単独所有者になると、持分放棄という選択肢そのものが消えます。
そのため、次の世代に残したくないという理由で放棄を考えているなら、共有者が残っているうちに動く必要があります。

亡くなったあとの手続きを軽くしたいだけであれば、遺言で持分の承継先を指定しておく方法もあります。

売却など別の方法を選ぶべきケース

持分に売却価値がある場合や他の共有者の協力が見込めない場合は、放棄ではなく売却や別の制度を検討すべきです。

該当する条件は次のとおりです。

  • 市街地の土地や建物で、持分だけでも買い手が付く見込みがある
  • 他の共有者が非協力か行方不明で、共同申請が組めない
  • 住宅ローンの抵当権が持分に設定されている
  • 自己破産や個人再生を検討している
  • 「勝手に放棄して押し付けた」と受け取られる恐れがある

市街地の土地や建物で持分だけでも買い手が付く

市街地にある土地や建物は、持分だけでも買い手が見つかる可能性があります
買い手が付くなら、放棄ではなく売却を選ぶほうが収支の面で明らかに有利です。
なぜなら、放棄では対価が1円も入らないうえ、登録免許税と司法書士報酬を自己負担します。

固定資産税評価額3,000万円の土地で持分が3分の1なら、登録免許税だけで20万円です。
売却であれば、この支出をせずに代金を受け取れる可能性があります。

ただし、共有持分は通常の仲介では扱いにくい物件のため、共有持分や訳あり不動産の取扱いに対応した会社へ相談してください

他の共有者の同意がなくても、自分の持分だけを売ることは可能です。
売却で得た代金には、譲渡所得税がかかる場合があります。

取得費や譲渡費用を差し引いた利益に対する課税のため、購入時の契約書などの資料が残っているかを先に確認しておきましょう。

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他の共有者の協力が得られず共同申請を組めない

放棄の意思表示は単独でできますが、登記は共同申請が原則です。
そのため、相手が協力を拒む、または行方不明で連絡が取れない場合は、意思表示だけをしても名義が自分に残り続けます。

名義が残れば、固定資産税の納税通知書も届き続けます。
放棄したつもりで負担だけが残る、もっとも避けたい状態です。

共同申請ができない場合の選択肢は2つあります。
登記引取請求訴訟で判決を得て単独で登記する方法と、持分を第三者へ売却して抜ける方法です。

訴訟には半年から1年以上と数十万円がかかるため、持分に値が付くなら、売却のほうが短い期間で共有から抜けられる場合が多くなります。
所在の分からない共有者がいる場合は、裁判所の手続きでその持分を取得または譲渡できる制度も2023年4月から使えるようになっています。

住宅ローンの抵当権が持分に付いている

住宅ローンが残っていて持分に抵当権が設定されている場合、実質的に放棄は難しくなります
抵当権は持分に付いたまま他の共有者へ移るため、住宅ローン契約上は名義変更に金融機関の承諾を求められるのが通常で、承諾を得ないまま進めると期限の利益を失うおそれがあるためです。

まずは借入先の金融機関へ、名義変更の可否と条件を確認してください。
共有持分を売却する場合も、代金でローンを完済して抵当権を抹消できるかが前提になります。
残債が売却代金を上回るなら、任意売却など別の進め方を検討することになります。

共有名義でペアローンを組んでいる場合は、相手方の返済にも影響します。
相手方に借金がある場合は名義の変更を切り出す前に、返済計画まで含めて話し合っておきましょう。

自己破産や個人再生を控えている

債務整理を控えている場合は、放棄の前に手続きの順序を確認してください。

債権者を害することを知ってした持分の放棄は、詐害行為取消請求によって取り消される可能性があります。

放棄が取り消されれば、支出した登録免許税や司法書士報酬まで無駄になります。

たとえば自己破産では、持分は換価の対象になる財産として扱われます。
そのため、手続きの前に処分すると、免責の判断に影響する場合もあります。
債務整理と持分放棄の順序を誤らないよう、放棄や売却に動く前に弁護士へ相談してください。
※弁護士に依頼した場合、別途弁護士費用が発生します。費用や見通しは相談時に確認してください。

また、同じ理由から債務整理の前に持分を親族へ贈与する進め方も避けたほうが安全です。
無償で財産を減らす行為は、いずれも取消しの対象になり得ます。

負担を押し付けたと受け取られる恐れがある

共有者との関係がすでに悪く、放棄が押し付けと受け取られそうな状況では、手続きは完了しません。
負担の押し付けを目的とした放棄は、権利の濫用として認められない場合があるためです。

贈与税と不動産取得税を負担するのは受け取る側のため、説明のない放棄は請求書だけが届く話になります。
押し付けと受け取られたまま放棄に固執すると、費用と時間を使ったうえで名義が残ります。

持分に値が付くなら売却で抜ける、値が付かないなら相手の税負担分を自分が補うところまで含めて交渉する、という順で考えるほうが現実的です。
話し合いで解決しないなら、共有物分割請求で共有関係そのものを終わらせる方法もあります。

共有持分を放棄する4つのメリット

放棄で得られるのは金銭ではありません。
負担と関係からの離脱が中身です。

メリットは次の4つです。

  • 不要な持分だけを手放して他の遺産は受け取れる
  • 他の共有者と交渉せずに自分の意思だけで踏み出せる
  • 相続放棄と違い期限に追われず自分のタイミングで決められる
  • 将来の固定資産税と管理責任を子や孫に残さずに済む

不要な持分だけを手放して他の遺産は受け取れる

共有持分の放棄は特定の不動産の持分だけを対象にできるため、預貯金や別の不動産は受け取ったまま、負担だけの持分を切り離せます

相続放棄はすべての遺産を対象とするため、預貯金も受け取れませんが、共有持分の放棄は対象が特定の持分に限られます。

たとえば預貯金800万円と、兄弟3人で共有する山林の持分を相続したとします。
相続放棄を選べば800万円も受け取れません。
共有持分の放棄なら800万円は手元に残したまま、山林の持分だけを手放せます。

ただし、共有持分の放棄では被相続人の負債から免れません
亡くなった人に借入がある場合は、熟慮期間内の相続放棄と比較して判断してください。

他の共有者と交渉せずに自分の意思だけで踏み出せる

放棄の意思表示は単独行為なので、他の共有者との交渉や合意形成を経ずに始められます
不動産全体の売却のように、全員の同意を待つ必要はありません。

たとえば、不動産全体を売却するには共有者が5人いれば5人全員の同意が必要です。
1人でも反対すれば売却は成立しません。
一方、放棄の意思表示は、この合意形成の壁を通らずに実行できます。
また、疎遠になっている相手でも、絶縁状態の相手でも、意思表示そのものは可能です。
相手の返事を待たずに効力が生じます。

しかし、登記の段階では協力が必要になります。
交渉が完全に不要になるわけではなく、必要になるタイミングが後ろにずれるだけです。

相続放棄と違い期限に追われず自分のタイミングで決められる

共有持分の放棄には法定の期間制限がありません
共有者である間は、いつでも実行できます。

一方、相続放棄には相続の開始を知った時から3ヵ月以内という期限があります。

しかし、共有持分の放棄には、期限の規定がありません。
相続から1年後でも10年後でも検討できます。
法定期限に追われないぶん、他の共有者に先を越されるリスクから急ぐ必要が出てきます。

そのため、期限がないからこそ、条件の確認と受け取る側への説明に時間を使うほうが、結果的に早く登記まで届きます。

将来の固定資産税と管理責任を子や孫に残さずに済む

放棄して登記まで終えれば、その持分にかかる固定資産税と管理責任は自分の相続財産から外れます
そのため、自分の子や孫が同じ負担を引き継ぐことがなくなります

放置すると、自分の死後に持分は相続人へ移り、複数いればさらに細分化されます。
共有者が増えるほど、不動産全体の売却も分筆も同意が取りにくくなります。

2024年4月1日から相続登記が義務化されたため、不動産を取得した相続人は取得を知った日から3年以内に申請する義務を負います。

【参考元】所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し|法務省

共有持分を放棄するときの6つの注意点

放棄しても1円も入らないうえ、登記費用は自己負担で、受け取る側には贈与税と不動産取得税がかかります
一度決めると元に戻せない選択です。

注意点は次の6つです。

  • 放棄しても対価はゼロで登記費用だけが出ていく
  • 持分を受け取る他の共有者に贈与税と不動産取得税がかかる
  • 放棄した年の固定資産税は自分に課税される
  • 一度した放棄は原則として撤回できない
  • 持分の一部だけを切り出して放棄することはできない
  • 借金逃れを目的とした放棄は取り消されることがある

放棄しても対価はゼロで登記費用だけが出ていく

放棄では持分の対価を一切受け取れず、逆に登録免許税と司法書士報酬などの費用を負担します。
収支は実質的にマイナスになります。

具体的には、登録免許税は所有権の移転登記について不動産の価額の1,000分の20です。
例えば、固定資産税評価額3,000万円の土地で持分が3分の1なら、持分の評価額は1,000万円になります。
登録免許税は1,000万円×2%=20万円です。

つまり、手元には1円も入らないのに、登記のために20万円を納めます。
司法書士報酬を加えると、手放すために数十万円を支出する構造になります。

【参考元】No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

持分を受け取る他の共有者に贈与税と不動産取得税がかかる

無償で持分を受け取った他の共有者は、対価を支払わずに利益を受けたものとして贈与税の対象になります。
不動産取得税も課され、協力を拒まれる主な理由になります。

暦年課税の贈与税は、課税価格から基礎控除110万円を引いた金額に税率を適用します。
例えば、評価額1,000万円なら課税価格は890万円で、兄弟間は一般贈与財産の税率です。

持分の評価額が1,000万円を超えると、受け取る側の合計負担は数百万円規模になることもあり、金額を伝えず内容証明だけを送れば協力を得るのは難しいでしょう。

【参考元】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

放棄した年の固定資産税は自分に課税される

固定資産税は、その年の1月1日時点で登記簿などに所有者として登記されている人へ課されます
そのため、年の途中で放棄しても、その年の納税通知書は自分に届きます

たとえば、2月に放棄して登記まで終えても、その年の1年分は自分が納付します。

課税台帳への反映は市区町村の処理を経るため、通常は翌年度分から課税が外れます。
登記が年末にずれ込むと、翌年分も自分に届く可能性があります。

実際には、共有者間の話し合いで放棄した日を基準に日割り精算することが多くあります。

一度した放棄は原則として撤回できない

放棄の意思表示によって持分は他の共有者へ移るため、後から気が変わっても原則として撤回はできません
単独行為である放棄は、意思表示によって効力が生じます。
相手の承諾を要しない代わりに、一方的な取り消しも認められません。

共有持分を取り戻すには、他の共有者から改めて持分を買い取るか、贈与を受ける必要があります。
その際も登記費用と税金が新たに生じ、買い戻しに応じてもらえる保証もありません。
相手がすでに第三者へ売っていれば、取り戻す相手すらいなくなります。

だからこそ、売却価値の有無を先に確認しておく必要があります。

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持分の一部だけを切り出して放棄することはできない

共有持分の放棄は自分の持分の全部を対象とする行為です。

例えば、3分の1のうち6分の1だけを放棄するといった一部放棄は、原則としてできないと解されています。

そのため、持分の一部だけを移すには、贈与や売買といった別の登記原因が必要になります。

負担を一部だけ軽くしたい場合は、持分の一部を第三者へ売却する方法が残っています。
売買であれば、持分の一部だけを移す登記が可能です。

借金逃れを目的とした放棄は取り消されることがある

債権者を害することを知って持分を放棄した場合、債権者は詐害行為取消請求により裁判所にその取消しを求められます

これを詐害行為取消請求といい、財産隠しを取り消して債権者の回収を守る仕組みです。
持分の放棄も対象になり得ます。

差押えを避ける目的で持分を放棄しても、放棄そのものが取り消されれば、支出した登記費用まで無駄になります。
法律上の権利行使であっても、無条件に守られるわけではありません。
自己破産や個人再生を検討している場合は、財産の処分順序が手続きに影響します。

放棄の前に、弁護士へ債務整理と共有持分放棄の順序を確認してください。

【参考元】民法第424条(詐害行為取消請求)|e-Gov法令検索

共有持分を放棄する手続きの流れ|意思表示から登記完了まで

手続きは、意思表示、共有持分移転登記の共同申請、登記識別情報通知の受領の3段階です。
協力が得られれば1ヵ月〜2ヵ月程度が目安で、他の共有者の関与が必要になるのは2段階目だけです。

必要書類は次の6点になります。

書類放棄する側受け取る側取得先
登記申請書必要必要法務局(様式を公開)
登記識別情報通知または権利証必要不要自宅で保管しているもの
印鑑証明書(発行後3ヵ月以内)必要不要市区町村
住民票必要必要市区町村
固定資産評価証明書必要不要市区町村
実印・認印実印認印または実印

自分でも申請できますが、書類の不備を避けるため司法書士へ依頼するのが一般的です。

【参考元】不動産登記の申請書様式について|法務局

①他の共有者へ放棄の意思表示をする

まず口頭や手紙で事情を説明して登記への協力を依頼し、そのうえで内容証明郵便で書面として意思表示を残すのが、実務上通りやすい順序です。
意思表示は口頭でも有効に成立します。

ただし、後の紛争時に証拠として使えるよう、内容証明郵便(配達証明付き)で残しておきます。
登記引取請求訴訟になった場合、この控えが証拠の中心になります。

事前連絡なしにいきなり内容証明を送ると、相手は法的な書面が届いたことに驚いて警戒します。
その結果、共同申請への協力を拒まれるリスクが上がります。

書面に記載する要素は次のとおりです。

  • 対象となる不動産の表示(所在・地番・地目・地積)
  • 自分の持分割合
  • 当該持分のすべてを放棄する旨
  • 共有持分移転登記への協力の依頼

②必要書類をそろえて共有持分移転登記を共同で申請する

登記原因を「持分放棄」として、不動産の所在地を管轄する法務局へ放棄する側と受け取る側が共同で申請します。

申請は窓口持参、郵送、オンラインのいずれでも可能です。
その際、印鑑証明書は発行後3ヵ月以内のものが必要です。
固定資産評価証明書は不動産の所在地の市区町村で取得し、登録免許税の計算に使うため申請前にそろえておきます。

なお、登記記録上の住所や氏名が現在と異なる場合は、前提として住所変更登記などが必要になります。
住所変更登記の書類が追加され、費用と期間も増えます。
管轄は法務局のサイトで調べられます。
自分の住所が離れていても、申請先は不動産の所在地の法務局です。

また、依頼前には日本司法書士会連合会または日本弁護士連合会の検索システムで、相談先の登録状況を確認してください。

【参考元】登記・供託オンライン申請システム|法務省

③登記識別情報通知を受け取って手続きを完了する

登記が完了すると、持分を取得した共有者へ登記識別情報通知が交付されます。
ここで放棄の手続きは完了します。

ただし、放棄した側には登記識別情報通知は交付されません。
自分の名義が外れたことを確認するには、登記事項証明書を取得します。
権利部から自分の名前が消えていれば完了です。

そして、この確認が翌年以降の固定資産税の課税を止める前提になります。
登記が完了しても課税台帳への反映は市区町村の処理を経るため、通常は翌年度分から反映されます。

翌年度の納税通知書が届いた場合は、市区町村の資産税課へ登記事項証明書を示して確認してください。

共有者が複数いる不動産では代表者へ一括して通知される仕組みのため、名義が外れても通知の宛先だけが残るケースもあります。

共有持分の放棄にかかる費用と税金|誰がいくら負担するか

負担は放棄する側と受け取る側の双方に生じ、金額は固定資産税評価額と持分割合で決まります。
受け取る側の負担額を先に把握して共有しておくと、協力を得やすくなります。

放棄する側が負担するもの

放棄する側の主な負担は登録免許税と司法書士報酬です。

登録免許税は「不動産の価額×持分割合×1,000分の20」で計算します。
評価額別に3パターンを並べました。

不動産全体の固定資産税評価額持分3分の1の評価額登録免許税
1,000万円約333万円約6万6,000円
3,000万円1,000万円20万円
5,000万円約1,666万円約33万3,000円

これに司法書士報酬3万円〜15万円、書類取得費用の数千円、内容証明郵便代1,500円〜2,500円が加わります。
※司法書士報酬は自由化されており、事務所や地域、案件の内容によって異なります。

登録免許税を誰が負担するかは、共有者間の話し合いで決めても構いません。

持分を受け取る側が負担するもの

受け取る側は贈与税と不動産取得税を負担します。

たとえば、兄弟間で評価額1,000万円の持分なら、贈与税だけで200万円を超える計算になります。
課税価格は、持分の評価額から基礎控除110万円を引いた金額です。

持分の評価額贈与税不動産取得税
約333万円約23万円約10万円
1,000万円約200万円台約30万円〜40万円
約1,666万円約500万円台約50万円〜67万円

実際の税額は評価額と続柄で変わります。
不動産取得税の税率3%および宅地評価土地の課税標準2分の1特例は、いずれも令和9年3月31日までの取得に適用されます。
宅地または宅地比準土地の場合は課税標準が2分の1になるため、税額は上表より低くなります。

税務申告は税理士の業務範囲のため、税理士へ確認してください。
※本記事の税率・控除額は2026年8月時点の税制に基づきます。最新の取扱いは国税庁の公表資料または税理士にご確認ください。

【参考元】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

他の共有者が登記に協力しないときの対処法

協力を拒まれた場合は、登記引取請求訴訟で判決を得て単独で登記できます。

数十万円の費用と半年〜1年以上の期間がかかるため、費用倒れにならないか先に見積もってください。

なお、放棄による持分移転登記請求権は所有権に基づく請求権に準じるものと解されており、時間の経過だけで行使できなくなるものではないと考えられています。
ただし、相手方が亡くなって相続人が増えると当事者の特定に手間がかかるため、早めに手続きを進めるほうが負担は小さくなります。

登記引取請求訴訟とは

登記引取請求訴訟は、登記手続きに応じるよう他の共有者に求める訴訟です。

通常の登記請求は「登記を渡せ」と求めるものですが、登記引取請求は「登記を引き取れ」と求めるものです。

勝訴判決を得れば、判決書を添付して単独で持分移転登記を申請できます。

請求が認められる前提として、放棄の意思表示が相手方に到達していた事実の立証が必要になります。
相手方が行方不明の場合は、不在者財産管理人(行方不明者の財産を家庭裁判所の選任により管理する人)の選任などが先に必要になり、手続きはさらに長期化します。
管理人の選任だけで数ヵ月を要するでしょう。

訴状の提出から単独での登記申請までの5ステップ

訴状を作成して管轄の裁判所へ提出し、口頭弁論を経て判決を得たうえで、その判決書を添付して単独で登記を申請します。
放棄の意思表示を証明する内容証明郵便の控えが提出書類の中心になります。

手続きの段階は次のとおりです。

  1. 訴状を作成して裁判所へ提出する
  2. 裁判所から相手方へ呼出状が送達される
  3. 口頭弁論に出席して主張と証拠を提出する
  4. 判決を受け取り、確定を待つ
  5. 判決書を添付して単独で持分移転登記を申請する

まず、提出する書類は次のとおりです。

  • 訴状
  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 当事者の住民票または戸籍の附票
  • 放棄の意思表示を証する内容証明郵便の控え

なお、このうち内容証明郵便の控えだけは、事後に作り直せません。
意思表示の段階で保管しておいてください。

訴訟にかかる費用と期間の目安

訴状提出から判決まで半年〜1年以上、弁護士に依頼する場合は数十万円の費用がかかります。
持分の評価額が低い土地では、回収できる価値より訴訟費用が上回る費用倒れになりやすくなります。

まず、費用の内訳を見ていきます。
裁判所に納める収入印紙代は請求額に応じて決まり、郵便切手代は数千円程度です。
弁護士費用は着手金と報酬金を合わせて数十万円〜が目安になります。
※弁護士費用も自由化されており、事務所や請求額によって異なります。

期間は相手方が争わなければ半年程度で判決に至る場合もあります。
相手方が反論して争う姿勢を見せた場合は、1年以上かかることも珍しくありません。

持分の評価額が訴訟費用を下回るなら、訴訟より持分の売却で抜けるほうが合理的になる場合があります。
訴訟を起こす前に、持分の価値と費用を並べて比べてください。

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共有者が行方不明・相続人不在のときに使える2つの制度

共有者が行方不明でも、裁判所の手続きでその持分を取得または譲渡できる制度が2023年4月から使えます。

共有者が相続人なく亡くなった場合や、最後の一人になった場合にも、それぞれ別の制度が用意されています。

  1. 共有者の相続人がいない場合
  2. 最後の一人になったなら相続土地国庫帰属制度を検討する

共有者の相続人がいない場合

共有者の相続人がいない場合、その持分はまず特別縁故者への相続財産の分与の対象になります。

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人や療養看護に努めた人など、特別の縁故があった人を指します。

財産分与がされなかったときに、はじめて他の共有者へ帰属します。

相続財産清算人(相続人がいない相続財産を家庭裁判所の選任により清算する人)の選任から分与の判断までには、年単位の期間がかかります。

最後の一人になったなら相続土地国庫帰属制度を検討する

相続または相続人に対する遺贈で取得した土地は、要件を満たせば法務大臣の承認を受けて国庫に帰属させられます。

ただし、すべての土地が対象になるわけではありません
却下される要件は次のとおりです。

  • 建物がある土地
  • 担保権が設定された土地
  • 他人の使用が予定された土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地や、所有権に争いがある土地

このほか、管理に過分な費用や労力がかかる崖のある土地も承認されません。
承認された場合は、管理に要する10年分の標準的な費用をもとに算定された負担金を納付します。
共有地では共有者全員での共同申請が要件で、1人でも協力しなければ使えません。

【参考元】相続土地国庫帰属制度の概要|法務省

共有持分の放棄と売却で迷ったらベンナビ不動産売却へ

放棄と売却のどちらが得かは、持分に値がつくかどうかで決まります。
査定額がゼロなら放棄、値がつくなら売却が判断軸になります。

専門家へ相談すべきタイミングは3つあります。
遺産共有か通常共有か判別できないとき、協力を断られたとき、放棄が負担の押し付けと受け取られそうなときです。

なお、相談先は内容で分かれます。
持分移転登記は司法書士、贈与税などの試算と申告は税理士、交渉や登記引取請求訴訟は弁護士の業務範囲です。
持分の査定と売却は不動産会社が扱います。

ベンナビ不動産売却を使う主なメリットは次の3点です。

  1. 共有持分や訳あり不動産に対応する不動産会社を探せる
  2. 他の共有者の同意を得ずに、自分の持分だけの査定を依頼できる
  3. 相談と査定は無料で、放棄にかかる費用と売却で得られる額を数字で比べられる(※売買が成立した場合は仲介手数料などが発生します)

そのため、値がつかないと分かってから放棄を選んでも遅くありません。

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共有持分の放棄に関するよくある質問

Q

共有持分の放棄は自分ひとりでできる?

A

放棄の意思表示は自分ひとりでできますが、持分移転登記は他の共有者との共同申請が原則なので、登記まで自分ひとりで完結させることはできません。
登記をしないと第三者に対抗できず、固定資産税の納税通知も止まりません。
協力を拒まれた場合は、登記引取請求訴訟で判決を得る方法があります。

Q

共有持分を放棄したら固定資産税はどうなる?

A

放棄した年の固定資産税は自分に課税されます。
固定資産税は登記簿などに所有者として登記されている人へ課され、その基準日が1月1日と定められているためです。
登記が完了すれば翌年度分から課税が外れます。
実務では、共有者間で日割り精算することが多くあります。

Q

共有持分を放棄する期限はある?

A

共有持分の放棄に法定の期限はなく、共有者である間はいつでもできます。
一方で相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内と定められています。
2つを混同すると、選べる手続きを取り違えます。

Q

共有持分を放棄すると贈与になる?

A

持分を受け取った他の共有者は、対価を支払わずに利益を受けたものとして贈与により取得したとみなされ、贈与税の対象になります。
放棄する側に贈与税はかかりませんが、登録免許税は負担します。
課される税目が双方で違う点に注意してください。

Q

共有者全員が同時に放棄したいときはどうなる?

A

全員が同時に放棄することはできません。
放棄した持分は他の共有者へ帰属する仕組みのため、帰属先となる共有者が誰も残らない放棄は成立しないと考えられます。
全員で手放したい場合は、不動産全体の売却か相続土地国庫帰属制度の検討になります。

Q

農地や山林の共有持分も放棄できる?

A

農地や山林の共有持分も放棄できます。
ただし農地の権利移動には農地法上の許可や届出が必要になる場合があるため、事前に農業委員会へ確認してください。
山林については、特別な許可は原則として要りません。

Q

住宅ローンが残っている共有持分は放棄できる?

A

抵当権が設定されている持分は、実質的に放棄が難しくなります。
抵当権は持分に付いたまま移るため、住宅ローン契約上は名義変更に金融機関の承諾を求められるのが通常で、担保価値が下がる変更に承諾を得るのは容易ではないためです。
まずは借入先の金融機関へ確認してください。

まとめ|共有持分の放棄は早さより条件の確認が先

共有持分の「早い者勝ち」は、先に動かないと放棄できなくなるという意味では正しく、先に動けば単独で完了するという意味では誤りです。

意思表示は単独でできますが、登記は他の共有者との共同申請が原則です。
最後の一人になると放棄はできなくなる一方で、負担の押し付けを目的とした放棄は権利の濫用とされることがあります。
相続した持分の場合は、相続登記が済んでいるかどうかで選べる手続きが変わります。

放棄すれば手元には何も残らず、登記費用の負担だけが生じます。
売却なら対価が残る可能性があります。
まずはベンナビ不動産売却で共有持分に対応する不動産会社を探し、無料査定で自分の持分の価値を確かめてください

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監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。