共有名義不動産

共有名義の固定資産税は誰が払う?納税義務と負担割合、払わない共有者への対処法

共有名義の固定資産税は誰が払う?納税義務と負担割合、払わない共有者への対処法

共有名義の不動産あてに届いた納税通知書に、自分の名前ではなく兄の名前だけが書かれていた。
あるいは、自分ひとりに全額分の通知書が届き、他の共有者は何も言ってこない。
共有名義の固定資産税の相談は、多くがそうした場面から始まります。

共有名義の不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務を負います。
持分が3分の1でも、市町村が請求できるのは税額の全部です。
一方で、共有者どうしの最終的な負担は持分割合に応じます。
この対外的な義務と内部の負担の二層構造を押さえないと、押しつけ合いが長引きます。

本記事で順に整理するのは、納税義務者の範囲・代表者の決まり方・持分に応じた負担と求償の方法です。
さらに滞納時の督促や差押えの流れ・払わない共有者への対処法・空き家で税負担が跳ね上がる仕組みも扱います。
読み終えるころには、自分がいくら負担すべきかも、払わない共有者に何を請求できるかも判断できる状態です。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

共有名義の固定資産税は共有者全員が連帯して納める義務を負う

共有名義の不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務を負うため、市町村は共有者の誰に対しても税額の全部を請求できます
納税義務の範囲から整理します。・

  • 納税義務者は登記簿に記載された所有者全員
  • 連帯納税義務とは共有者の誰もが全額を請求されうること
  • 持分割合は市町村への納税義務を制限しない

「持分が3分の1だから3分の1だけ払えばよい」という理解は誤りです。
持分に応じた負担は、共有者どうしの内部の精算の問題です。

納税義務者は登記簿に記載された所有者全員

地方税法では、固定資産税は固定資産の所有者に課すること、土地と家屋については登記簿に所有者として登記されている人を所有者とすることが定められています。
つまり共有名義であれば、登記された共有者全員がそろって納税義務者です。

判定の基準時は毎年1月1日です。
この日を賦課期日といい、1月1日時点で登記名義人になっている人がその年度の納税義務者として扱われます。
年の途中で持分を売却しても、その年度の納税義務者は1月1日時点の名義人のままです。
売主と買主が税額を日割り精算する慣行はありますが、それは当事者間の取り決めにすぎません。

相続が起きたあとに相続登記をしていない場合は、登記簿の名義が亡くなった人のままになっています。
この場合でも納税義務は消えず、亡くなった人の納税義務は相続人が承継する扱いです。
誰に通知書を送るかは、相続人代表者の届出で決まります。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

連帯納税義務とは共有者の誰もが全額を請求されうること

地方税法では、共有物に対する地方団体の徴収金は納税者が連帯して納付する義務を負うと定められています。
市町村から見れば、共有者のうち誰か1人からでも税額の全部を取れる関係です。

この関係は、共有者が3人いるから3分の1ずつ請求するという分割の仕組みではありません。
市町村は、資力があると見込まれる1人に全額を請求することもできます。
実際の運用では代表者1人に通知書を送りますが、請求先が1人に限定されるわけではない仕組みです。

共有者どうしで「私は3分の1しか払わない」と取り決めても、その取り決めを市町村に主張することはできません。
内部の負担をどう分けるかという話と、市町村に対して誰がいくら納める義務を負うかという話は、別の次元にあります。

共有者の1人が全額を納めれば、その年度の納税義務は全員について消滅する扱いです。
あとに残るのは、立て替えた分を共有者どうしでどう精算するかという問題だけです。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

持分割合は市町村への納税義務を制限しない

持分割合は共有者どうしの内部の負担割合を決める基準であり、市町村に対する納税義務の範囲を持分の分まで小さくする効果はありません。
この記事の柱になるのは、対外的な納税義務は全額、内部の負担は持分に応じるという二層構造です。

たとえば持分10分の1の共有者にも、税額の全部について有効に納税義務が及びます。
他の共有者が滞納すれば、持分10分の1の人のところへ督促状が届き、財産の差押えを受ける可能性もあります。
「自分は少ししか持っていないから関係ない」という理解は、市町村との関係では通らない考え方です。

持分が小さいなら免税点で非課税になるのではないか、という疑問を持つ人もいます。
しかし免税点の判定も、共有物の全体を単位としておこなわれるものです。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

納税通知書は共有者の代表者1人にまとめて届く

共有名義の不動産の納税通知書は共有者ごとに分けて発行されず、市町村が選んだ代表者1人あてに全額分がまとめて送付されます
代表者の決まり方から順に整理します。

  • 代表者は市町村が一定の基準で選ぶ
  • 代表者を変えるには市町村への届出が必要
  • 共有者が亡くなったときは相続人の代表者を届け出る
  • 納期は年4回で市町村の条例により定められる

通知書が届かない共有者も、それだけで納税義務を免れるわけではない点に注意してください。

代表者は市町村が一定の基準で選ぶ

代表者は共有者どうしの話し合いで自動的に決まるものではなく、市町村が一定の基準にもとづいて選定します。
多くの市町村が、次のような優先順位を公表しています。

優先順位選定の基準
1その市町村の区域内に住所がある共有者
2持分の割合が大きい共有者
3登記簿に記載された順序が早い共有者
4前年度に納税義務者となっていた共有者

順序や表現は市町村ごとに異なるものです。
笠間市や小平市など複数の自治体が同趣旨の基準を公表していますが、細部は一致していません。
自分の物件がある市町村の基準は、その市町村が公表している資料で確認してください。

代表者はあくまで通知書の送付先です。
代表者に選ばれた人だけが納税義務者になるわけではなく、他の共有者の連帯納税義務がなくなるわけでもありません。
「自分は代表者ではないから納税義務がない」という理解は誤りです。

代表者を変えるには市町村への届出が必要

代表者を変更したい場合は、共有者全員の合意のうえで、市町村の資産税担当課へ代表者変更の届出を提出します。

届出の名称は市町村により異なり、共有代表者変更届、納税代表者届出書といった名称が使われています。
用紙は市町村の窓口で受け取るか、ホームページから取得してください。
共有者全員の署名または記名押印を求められるのが一般的で、1人でも協力しない共有者がいると手続きは進みません。

変更の効力が生じる時期にも注意してください。
原則として翌年度の課税分から反映されるため、年度の途中で届け出ても、その年度の通知書の宛先は変わらない場合があります。
次の納期に間に合わせたい場合は、市町村に反映時期を確認してください。

代表者を替えても連帯納税義務そのものは変わりません。
通知書の送付先が移るだけで、負担の押しつけ合いが解決するわけではない点は理解しておいてください。
実際の負担をどう分けるかは、次の章で扱います。

共有者が亡くなったときは相続人の代表者を届け出る

共有者の1人が亡くなった場合は、相続登記が済むまでの通知書の送付先として、相続人代表者指定届を市町村に提出します。

相続登記が終わるまで、登記簿の名義は亡くなった人のままです。
市町村は登記簿から納税義務者を把握しているため、この状態では誰に通知書を送ればよいか判断できません。
そこで相続人のなかから代表者を1人指定して届け出る仕組みが用意されています。

この届出は通知書の宛先を決めるものです。
指定された相続人が全員分の税を最終的に負担すると決めるものではなく、遺産分割の内容に影響を与えるものでもありません。
届出によってその人が不動産を取得したことになるわけではない点にも注意してください。

相続登記は別途必要です。
2024年4月に義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務が定められました。
期限を過ぎると過料の対象です。
届出とは別に登記の手続きも進めてください。

納期は年4回で市町村の条例により定められる

地方税法では、固定資産税の納期は4月・7月・12月・2月のなかで市町村の条例により定めると規定されています。
したがって具体的な月は市町村ごとに異なります。

法定の納期は4月・7月・12月・2月です。
ただし東京都のように、条例で6月・9月・12月・2月と定めている例もあります。
「固定資産税の納期は6月・9月・12月・2月」と全国共通のルールのように書かれた情報もあります。
しかしそれは一部の自治体の条例例で、全国一般の定めとは別物です。
自分の物件の納期は納税通知書で確認してください。

第1期の納期限までに1年分をまとめて納付できる自治体もあります。
共有者間で立て替えの精算をする場合は、一括納付にしておくと精算の回数が減ります。

納期限を1日でも過ぎれば、その翌日から延滞金の計算対象です。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

共有者どうしの内部の負担は持分割合に応じるのが原則

民法では各共有者はその持分に応じて共有物に関する負担を負うと定められているため、共有者どうしの最終的な負担は持分割合に比例します
ここでは二層構造の下半分を扱います。

  • 内部の負担額は年税額に持分割合を掛けて求める
  • 代表者が全額納めたら他の共有者に求償できる
  • 共有者間の取り決めは市町村には主張できない

内部の負担額は年税額に持分割合を掛けて求める

内部の負担額は、年間の固定資産税額に自分の持分割合を掛けた金額です。

年税額12万円の実家を3人兄弟で相続し、長男が2分の1、次男と三男が4分の1ずつの持分をもっている場合を考えます。
長男の負担は12万円の2分の1で6万円、次男と三男はそれぞれ4分の1で3万円ずつです。
長男が窓口で12万円を納めたのであれば、次男と三男に3万円ずつを請求できる関係になります。

市街化区域内の不動産では、固定資産税と一緒に都市計画税が課されます。
両方が同じ納税通知書で請求されるため、持分で分ける対象は固定資産税と都市計画税の合計額です。
固定資産税の分だけ精算すると、都市計画税が立て替えたままになります。

共有者全員の合意があれば、持分と異なる負担割合を決めることもできます。
建物を使っている共有者が多めに負担するといった形です。
ただしその取り決めは共有者どうしの契約にとどまり、市町村に対して主張することはできません。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

代表者が全額納めたら他の共有者に求償できる

代表者が税額の全部を納めた場合は、他の共有者に対してそれぞれの持分に応じた金額を請求できます。
これを求償といいます。

求償の根拠は民法の定めです。
連帯債務者の1人が弁済をしたときは、他の債務者に対してその負担部分に応じた額を求償できると定められています。
共有名義の固定資産税は共有者が連帯して納付する義務を負う関係にあるため、全額を納めた共有者は、他の共有者の負担部分について支払いを求められます。

求償を通すには、記録の残し方が重要です。
納付の事実がわかる領収書または口座振替の記録、税額の内訳がわかる納税通知書と課税明細書の写しを保管してください。
そのうえで、請求した日付が残る形で相手に伝えます。
口頭で伝えるだけでは、後日いくら請求したかを立証できません。

請求に応じない共有者への手段は、それだけではない点も押さえてください。
1年を超えて応じない場合は、相当の償金を支払って持分を取得する手段もあります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有者間の取り決めは市町村には主張できない

「実家に住んでいる長男が全額払う」といった共有者間の取り決めは、共有者どうしのあいだでは有効です。
しかし市町村に対しては主張できないため、長男が滞納すれば他の共有者に督促が届きます。

内部の合意は共有者間の契約であり、課税庁との関係を変える力はありません。
市町村は登記簿にもとづいて共有者全員を納税義務者として扱い、そのうちの誰にでも全額を請求できる立場です。
合意書を市町村に提出しても、請求権を放棄してもらえるわけではありません。

実際に多いのは、取り決めをした側が「自分は関係ない」と考えて何年も確認せず、督促状や差押予告通知を受け取って初めて滞納を知るケースです。
この段階では延滞金が積み上がっています。

だからこそ、他の共有者に納付を任せる場合でも、納付状況を確認できる状態にしておく必要があります。
納税通知書と領収書の写しを共有してもらう取り決めを、負担割合と一緒に決めておいてください。

共有名義の不動産の固定資産税額が決まる仕組み

固定資産税額は固定資産税評価額に税率を掛けて算出され、住宅用地の特例や免税点はいずれも共有物の全体を単位として判定されます
税額の決まり方は次のとおりです。

  • 課税標準となるのは固定資産税評価額
  • 住宅用地の特例で課税標準が最大6分の1になる
  • 免税点は持分ではなく共有物全体で判定する
  • 分譲マンションの専有部分は連帯納税義務の例外

共有名義だから税額が高くなる、あるいは安くなるということはありません。
計算方法は単独名義の場合と同じです。

課税標準となるのは固定資産税評価額

固定資産税は購入価格ではなく、市町村が定める固定資産税評価額を課税標準として計算されます。
標準税率は100分の1.4であり、市町村は条例で異なる税率を定めることもできます。

評価額は3年ごとに評価替えがおこなわれ、その間の年度は原則として据え置きです。
自分の不動産の評価額は、納税通知書に同封される課税明細書で確認できます。
手元に通知書がない共有者は、市町村の窓口で固定資産課税台帳を閲覧するか、評価証明書の交付を受けて確認してください。
共有者であれば、代表者でなくても閲覧や証明書の請求ができます。

共有名義であっても、評価額は不動産の全体に対して1つだけ付されます。
持分ごとに別々の評価額が算出されるわけではない点も特徴です。
したがって納税通知書に記載された税額も不動産全体に対する1つの金額であり、各共有者の負担額はその金額から自分で計算することになります。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

住宅用地の特例で課税標準が最大6分の1になる

人が住むための家屋の敷地になっている土地は、住宅用地として課税標準が軽減されます。
区分は面積によって2つに分かれます。

区分対象となる面積課税標準
小規模住宅用地住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分評価額の6分の1
一般住宅用地200平方メートルを超える部分評価額の3分の1

この特例の対象は土地であり、家屋は対象外です。
家屋に適用される新築住宅の減額措置などは、住宅用地の特例とは別の制度にあたります。
敷地が広い場合は、200平方メートルまでが6分の1、超えた部分が3分の1という部分ごとの適用です。

共有名義の実家が空き家になっている場合でも、家屋が建っている限り直ちに特例が外れるわけではありません。
ただし一定の勧告を受けると特例の対象から除かれます。
空き家の勧告で税負担が跳ね上がる仕組みは、共有名義で特に起こりやすい問題です。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

免税点は持分ではなく共有物全体で判定する

免税点は、同一の市町村の区域内で同一の者が所有する固定資産の課税標準額の合計で判定されます。
共有物は共有者全員を1つの単位として全体の額で判定されるため、持分で分けた額では判定されません。

免税点の金額は、資産の種類ごとに次のとおりです。

  • 土地:課税標準額の合計が30万円未満
  • 家屋:課税標準額の合計が20万円未満
  • 償却資産:課税標準額の合計が150万円未満

たとえば課税標準額が40万円の土地を4人で共有している場合、1人あたりの持分に対応する額は10万円です。
しかし免税点は共有物の全体である40万円で判定されるため、30万円以上となり課税されます。
持分が小さいから非課税、という理解はこの点で成り立ちません。

なお、共有物は共有者全員の共有として、各人が単独で所有する資産とは別枠での合算です。
自分が単独で所有する土地の課税標準額と、共有地の持分相当額が合算されて判定されるわけでもありません。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

分譲マンションの専有部分は連帯納税義務の例外

区分所有の分譲マンションでは、連帯納税義務の規定にかかわらず、専有部分の床面積の割合で分けた税額が各区分所有者に課されます。

分譲マンションの敷地は、法律上当然に区分所有者全員の共有です。
しかし全戸分の固定資産税を全員が連帯して負うわけではありません。
地方税法は区分所有家屋について特別の定めを置いており、各区分所有者は専有部分の床面積の割合に応じた税額だけを納めます。
他の住戸の滞納分の請求を受けることもない扱いです。

1戸の住戸を夫婦や兄弟で共有している場合は事情が変わります。
その1戸について共有関係が生じるため、共有者どうしが連帯納税義務を負います。
夫婦が2分の1ずつの持分で買った場合、市町村は税額の全部を夫にも妻にも請求できる関係です。

「共有名義のマンションは誰が払うのか」という問いの答えは、分譲マンションの区分所有か1戸の共有名義かで変わります。
どちらかを登記簿で確かめてください。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

毎年の固定資産税の負担が重いなら共有持分の売却も選択肢になる

共有名義の不動産は持ち続けるかぎり固定資産税がかかります
負担が重いなら、自分の共有持分を売却して共有関係から抜ける選択肢があります。

固定資産税は、その不動産を使っているかどうかにかかわらず発生する税です。
誰も住んでいない実家でも毎年の納期が来ます。
共有者の1人が亡くなれば相続で共有者が増え、話し合いはさらに難しくなります。

自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却が可能です。
共有者と連絡が取れない場合でも進められます。

ただし共有持分や空き家は、通常の仲介では買い手がつきにくい不動産です。
こうした不動産を主に取り扱う買取業者に相談する形が現実的です。

ベンナビ不動産売却では、共有持分や空き家などの訳あり不動産の無料査定と買取相談を受け付けています。
査定で売却が決まるわけではなく、金額を確かめてから共有を続けるか抜けるかを判断できます。
査定額は物件の条件や共有者の状況しだいです。

共有者が固定資産税を払わないと督促・延滞金・差押えに進む

納期限までに納付がないと督促状が発せられ、督促状を発した日から10日を経過しても完納されない場合には、共有者の財産が差押えの対象になります
滞納後の流れは次のとおりです。

  • 督促状は納期限後20日以内に発せられる
  • 延滞金は条文上の年14.6%より低い特例割合が適用される
  • 督促状から10日で差押えの対象になる
時期起きること
納期限の翌日延滞金の計算が始まる
納期限後20日以内徴税吏員が督促状を発する
督促状を発した日から10日経過財産の差押えの要件を満たす
その後差し押さえた財産が公売にかけられる場合がある

督促状は納期限後20日以内に発せられる

地方税法では、固定資産税の徴収金を納期限までに完納しない場合、市町村の徴税吏員は納期限後20日以内に督促状を発しなければならないと定められています。
督促は市町村の裁量ではなく、義務としておこなわれる手続きです。

共有名義の不動産では、連帯納税義務があるため、督促の対象は滞納した本人だけにとどまりません。
代表者が納付しなければ、通知書を受け取っていない他の共有者にも督促が及ぶ可能性があります。
「通知書が届いていないから無関係」という理解が通らないことが、この段階で表面化する流れです。

この督促は固定資産税について定めた条文にもとづくものであり、市町村民税の督促を定めた条文とは別のものです。
市町村民税の条文を引いて固定資産税の督促を説明している情報も見られますが、根拠条文は異なります。

督促手数料を徴収する市町村もあります。
1通あたり100円程度の例が多く、本税と延滞金に上乗せされる費用です。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

延滞金は条文上の年14.6%より低い特例割合が適用される

地方税法の本則では、延滞金は年14.6%、納期限の翌日から1ヵ月を経過する日までは年7.3%と定められています。
ただし附則の特例により、当分の間は引き下げられた割合が適用されます。

区分本則の割合令和8年中に適用される割合
納期限の翌日から1ヵ月以内年7.3%年2.8%
納期限の翌日から1ヵ月経過後年14.6%年9.1%

令和8年中に適用される割合は、三郷市が公表している数値です。
この割合は延滞金特例基準割合をもとに毎年見直されるため、実際に適用される割合は自分の物件がある市町村の公表資料で確認してください。
本則の年14.6%だけを示している情報も多いものの、現在その割合がそのまま適用されることはありません。

とはいえ年9.1%という水準は、預貯金の金利と比べれば重い負担です。
年税額12万円を1年間滞納すれば、延滞金だけで1万円前後が上乗せされます。

延滞金は本税に付随して発生し、本税と同じく連帯納税義務の対象になります。
自分が滞納していなくても、他の共有者の滞納によって膨らんだ延滞金の請求を受けることがある点に注意してください。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

督促状から10日で差押えの対象になる

地方税法では、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納されないときは、徴税吏員は滞納者の財産を差し押さえなければならないと定められています。

実務上は、10日が過ぎた時点で直ちに差し押さえられるわけではありません。
納付を促す連絡や納税相談の案内を挟むのが通常です。
ただし法律上は10日の経過で要件を満たすため、市町村がいつ着手しても違法にはなりません。
放置すれば短期間で差押えに進むこともあります。

差押えの対象は、預貯金・給与・生命保険の解約返戻金・不動産などです。
共有名義の不動産については、不動産の全体ではなく、滞納している共有者の持分が差し押さえられます。
差し押さえられた持分は公売にかけられる場合があります。

公売で持分が第三者に渡れば、新たな共有者は面識のない相手です。
買い受けた業者から持分の買取や共有物分割を求められることもあります。
他の共有者の滞納を放置できない理由です。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

固定資産税を払わない共有者への4つの対処法

払わない共有者への対処は、立て替えて求償する・持分を償金で取得する・譲渡後の承継人に請求する・時効を管理するという4つの観点で組み立てます。/

  • 立て替えて求償権を行使する
  • 1年以内に負担しない共有者の持分を償金を払って取得する
  • 持分を売却されても特定承継人に請求する
  • 時効が完成する前に請求して権利を確保する

いきなり訴訟を考えるのではなく、記録を残した請求から段階的に進めるのが現実的です。

立て替えて求償権を行使する

まず自分が全額を納付して滞納状態を止めたうえで、他の共有者に持分に応じた金額を請求します。

滞納を放置すると延滞金が積み上がり、最終的な負担は共有者全員にとって重くなります。
差押えに進めば、巻き込まれるのは自分の持分も同じです。
相手が払わないからといって自分も払わないという対応には、合理性がありません。
いったん立て替えて滞納を止めることが、結果として自分の損失を小さくします。

請求は口頭ではなく書面で行ってください。
納付の事実がわかる領収書と課税明細書の写しを添えて、いつまでにいくら支払ってほしいかを明記します。
受け取った日付を残すには、内容証明郵便に配達証明を付ける方法が有効です。
裁判所の手続きを使う場合、この記録が証拠になります。

応じない場合は、少額訴訟や支払督促といった裁判所の手続きを利用できます。
60万円以下の請求であれば少額訴訟の対象で、原則として1回の期日で判決が出る手続きです。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

1年以内に負担しない共有者の持分を償金を払って取得する

民法では、共有者が1年以内に管理の費用などの負担義務を果たさないときは、他の共有者は相当の償金を支払ってその共有者の持分を取得できると定められています。

固定資産税は共有物に関する負担にあたるため、この規定の対象になります。
求償に応じないまま1年が過ぎた共有者に対しては、金銭の請求だけでなく、その人の持分そのものを自分のものにするという手段も選択肢です。
共有者の数が減れば、その後の売却や活用の意思決定が進めやすくなります。

ただし、無償で持分を取り上げられる制度ではありません。
「相当の償金を支払って」と定められているとおり、持分の時価に相当する金額の支払いが前提です。
立て替えた税額と償金を相殺する形が多いものの、金額の折り合いがつかなければ争いになります。

前提として、1年間にわたって支払いを求めた記録が必要です。
求償の段階から書面で請求し、日付の残る形を積み重ねておいてください。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

持分を売却されても特定承継人に請求する

民法では、共有者の1人が他の共有者に対して共有物について有する債権は、その特定承継人に対しても行使できると定められています。

特定承継人とは、その持分を買い受けた第三者や贈与を受けた人を指します。
滞納していた共有者が持分を売却して共有関係から抜けても、立て替えた固定資産税相当額の請求先が完全に消えるわけではない点が重要です。
新たに持分を取得した人に対して、その債権を行使できます。

この規定があるため、持分を売って逃げても解決にはなりません。
逆に自分が持分を買い受ける側になる場合は、前の共有者が残した未精算の負担を引き継ぐ可能性がある点に注意してください。
持分を取得する前に、固定資産税の納付状況を確認してください。

もっとも、実際に回収するには金額と根拠の立証が求められます。
いつの年度分をいくら立て替えたのかを示せなければ請求は通りません。
記録は年度ごとに整理して保管してください。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

時効が完成する前に請求して権利を確保する

立て替えた分を請求する権利は、行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効により消滅します。

時効は納付した年度ごとに進行します。
5年、6年と立て替えを続けていれば、古い年度分から順に請求できなくなる一方です。
先延ばしにしているあいだに、回収できる金額が毎年目減りしていく構造です。

時効の完成を防ぐ方法はあります。
裁判上の請求を行えば完成が猶予され、確定判決で権利が確定すれば時効期間はあらためて進行します。
相手が支払義務を認めた場合も、その時点から時効が更新される扱いです。
「立て替えた分は払う」という一筆でも意味があります。

内容証明郵便による催告(支払いを求める通知)にも6ヵ月間の猶予の効果がありますが、それだけでは止めきれません。
猶予されている6ヵ月のあいだに、裁判上の手続きへ進むことが必要です。
立て替えが3年、5年と続いている場合は、早めに専門家へ相談してください。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有名義の空き家を放置すると固定資産税が跳ね上がる

空き家が管理不全空家等または特定空家等として勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例の対象から除かれ、土地の固定資産税の負担が大幅に増えます

  • 勧告を受けると住宅用地の特例から除かれる
  • 特例が外れると土地の税負担は最大で6倍相当になる
  • 共有名義の空き家は管理の意思決定が滞りやすい

共有名義の空き家は、修繕にも解体にも他の共有者の関与が必要なため、放置が長期化しやすい状態です。

勧告を受けると住宅用地の特例から除かれる

住宅用地の特例を定めた地方税法の規定には、明確な除外規定があります。
空家等対策の推進に関する特別措置法により管理不全空家等または特定空家等として勧告を受けた家屋の敷地は、特例の対象から除かれます。

行政の関与は段階的です。
段階と税負担への影響は次のとおりです。

段階行政の措置固定資産税への影響
第1段階助言または指導影響なし
第2段階勧告住宅用地の特例から除外される
第3段階命令除外が続き、違反すれば過料の対象になる
第4段階行政代執行除外が続き、解体費用を請求される

助言や指導を受けた段階では特例は外れません。
勧告に至った時点で除外されます。
したがって助言や指導の通知が届いた時点で対応すれば、税負担の増加は回避が可能です。

管理不全空家等とは、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態のことです。
特定空家等とは、倒壊などのおそれがある状態、衛生上有害となるおそれがある状態、著しく景観を損なっている状態などを指します。
同法は令和5年の改正で管理不全空家等の区分を新設し、特例から除外される範囲を前倒しで広げました。

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov 法令検索

特例が外れると土地の税負担は最大で6倍相当になる

200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1に軽減されているため、特例から除かれると土地の課税標準はその6倍に戻ります。

ここで正確に理解しておきたいのは、6倍になるのは課税標準であって、納税額がそのまま6倍になるとは限らないという点です。
土地の税額には負担調整措置が設けられており、前年度の課税標準額からの上昇幅に上限があります。
増え方は物件ごとに異なるため、市町村の資産税担当課で確認してください。

家屋を取り壊して更地にした場合も、住宅用地ではなくなるため同じく特例が外れます。
「管理が大変だから壊してしまおう」という判断が、かえって税負担を増やす結果につながることがあります。
解体を検討する場合は、跡地の利用や売却の見通しとあわせて考えてください。

そして増えた税額も、共有者全員の連帯納税義務の対象です。
管理に関与していなかった共有者にも、増額後の税額の全部について請求が及びます。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

共有名義の空き家は管理の意思決定が滞りやすい

民法では、共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従いその過半数で決すると定められています。
一方、共有物に変更を加える行為には共有者全員の同意が必要です。
この違いが、共有名義の空き家で判断が止まる原因になります。

修繕や草刈りといった管理行為は、持分の価格の過半数で決められます。
しかし解体は共有物の形を変える行為にあたるため、共有者全員の同意が必要です。
1人でも反対や連絡不能の共有者がいれば、建物は壊せません。

その結果、誰も管理しないまま指導から勧告に進み、全員の税負担が増える流れに至ります。
負担が増えれば共有者間の関係も悪化し、意思決定はいっそう困難です。

悪循環は、勧告の前の段階で動いて止めてください。
管理を続けるのか、解体するのか、共有関係を解消するのかを、共有者が減らないうちに決めてください。

方針を比べる材料として、まず自分の持分の査定額を確かめる方法もあります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

固定資産税の負担が続く共有状態から抜け出す方法

固定資産税の負担を根本から終わらせる方向は、次の表の4つです

方法他の共有者の同意向いている状況
自分の持分を売る不要共有者と連絡が取れない、話し合いが動かない
共有者間で持分を集約する買い取る相手との合意が必要不動産を使い続けたい共有者がいる
不動産全体を売る共有者全員の同意が必要全員が手放すことで一致している
裁判所に共有物分割を求める不要(訴訟による)話し合いが決裂している

自分の持分だけを売る方法は前の章で説明したとおりで、他の共有者の同意が要らない点が最大の違いです。

共有者間で持分を集約する場合は、不動産を使い続けたい共有者が他の共有者から持分を買い取ります。
単独名義になれば固定資産税の負担も一本化されます。
ただし買い取る側に資金が必要で、価格の折り合いがつかなければ不成立です。

不動産全体を売却すれば、持分だけを売るより高い金額になるのが通常で、代金は持分割合に応じて分けます。
ただし共有者全員の合意が必要で、1人でも反対すれば進みません。

話し合いがまとまらない場合の最終手段が、裁判所への共有物分割請求です。
民法では各共有者はいつでも分割を請求できると定められていますが、解決までに年単位の時間と費用がかかります。
なお持分の放棄は、登記を移すのに他の共有者の協力が必要で、単独では完結しません。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有名義の固定資産税の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう

立て替えの精算がまとまらない、負担だけが続く。
そうした共有名義の膠着を最終的に解くのは、共有状態そのものの整理です。
どの方法を選ぶにしても、自分の持分にいくらの値がつくかという相場観が交渉の土台になります。
話し合いが止まっている場合ほど、数字を先に用意する価値があります。

ベンナビ不動産売却は、共有持分や空き家といった訳あり不動産の買取に対応する会社を、地域と物件の条件から探して比較できるサービスです。
共有持分の取扱実績がある会社を絞り込めます。

査定は無料で、複数社の金額と根拠を並べて検討できます。
他の共有者に知られずに、自分の持分だけの相談も可能です。
持分を手放して登記が済めば、翌年度からは納税義務者から外れます。
まずは査定から始めてください。

共有名義の固定資産税に関するよくある質問

Q

納税通知書が届かないので私は払わなくてよいのですか?

A

納税通知書は共有者の代表者にまとめて送られるため、自分に届かないことは珍しくありません。
しかし通知が届かなくても納税義務そのものはなくならず、代表者が滞納すれば自分のところへ督促が来ます。
自分あての通知書がほしい場合は、市町村の資産税担当課に相談してください。
写しの交付や課税明細の閲覧に応じてもらえます。

Q

持分が10分の1でも全額を請求されることがありますか?

A

あります。
共有物に対する徴収金は共有者が連帯して納付する義務を負うため、市町村は持分の大小にかかわらず共有者の誰にでも全額を請求できる仕組みです。
持分に応じた負担は、あくまで共有者どうしの内部の精算の問題です。
全額を納めた場合は、他の共有者に持分に応じた金額を求償できます。

Q

代表者を自分以外に変えることはできますか?

A

できます。
共有者全員の合意のうえで、市町村の資産税担当課へ代表者変更の届出を提出してください。
用紙の名称は市町村により異なる点に注意してください。
ただし変更が反映されるのは原則として翌年度の課税分からで、代表者を変えても連帯納税義務そのものは変わりません。

Q

共有者が行方不明の場合はどうすればよいですか?

A

行方不明でも納税義務は消えないため、まずは自分が納付して滞納を止めてください。
そのうえで住民票の除票や戸籍の附票をたどって所在を調べます。
所在がわからないまま共有関係を解消したい場合は、不在者財産管理人の選任や所在等不明共有者の持分の取得といった裁判所の手続きを利用する方法があります。

Q

固定資産税を1人で払い続けたら持分は増えますか?

A

増えません。
税を負担した事実だけで持分割合が変わることはなく、増えるのは他の共有者に対する立替金の請求権です。
ただし1年以内に負担義務を果たさない共有者に対しては、相当の償金を支払ってその持分を取得できる制度があります。
持分を得るには、この手続きを踏む必要があります。

Q

共有名義にすると固定資産税は高くなりますか?

A

高くなりません。
税額は不動産そのものの評価額をもとに計算されるので、名義が1人でも複数人でも合計額は同じです。
ただし免税点は共有物の全体で判定されるため、持分で分ければ少額になる場合でも非課税にはなりません。

まとめ|対外は全額・内部は持分割合の二層で整理する

共有名義の固定資産税は共有者全員が連帯して納める義務を負い、内部の負担は持分割合に応じます。
払わない共有者がいる状態を放置すると、延滞金と差押えのリスクが全員に及びます。
この記事の要点は次のとおりです。

  • 納税義務者は1月1日時点で登記簿に記載されている共有者全員である
  • 納税通知書は市町村が選んだ代表者1人にまとめて届き、変更には全員の合意と届出が要る
  • 共有者どうしの最終的な負担は持分割合に応じ、全額を納めた人は他の共有者に求償できる
  • 納期限を過ぎると督促状が発せられ、督促状から10日で差押えの要件を満たす
  • 1年以内に負担しない共有者の持分は、相当の償金を支払って取得できる
  • 共有の空き家が勧告を受けると住宅用地の特例から外れ、土地の課税標準は最大6倍に戻る

立て替えが続いている場合は、求償権に5年の時効がある点に注意してください。
古い年度分から順に請求できなくなるため、記録を整えて早めに動くことが肝心です。

そのうえで、税負担が続く共有状態を終わらせたいなら、自分の持分の値段を確かめるところから始めてください。
ベンナビ不動産売却では、共有持分や空き家などの訳あり不動産の無料査定と買取相談を受け付けています。
査定額は物件の条件や共有者の状況によって異なり、金額を保証するものではありません。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。