共有名義不動産

共有名義の不動産売却で起こるトラブル5事例|原因と揉めずに売る3つの方法

共有名義の不動産売却で起こるトラブル5事例|原因と揉めずに売る3つの方法

相続や離婚をきっかけに共有名義になった不動産は、自分が売りたいと思っても、ひとりの判断では売れません。

名義に自分の名前が載っていても、不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要になるためです。

そのため、売却の可否や時期、代金の分け方をめぐって共有者と対立しやすく、話し合いが止まったまま年数だけが過ぎるケースが少なくありません。

本記事で扱うのは、共有名義の不動産売却で実際に起きたトラブルの型です。

あわせて、共有者が反対・行方不明・認知症であっても取れる法的手段と、揉めずに売るための手順を解説します。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

共有名義の不動産における共有持分とは

共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有している状態を指します

そして共有持分とは、不動産に対して各共有者が持つ所有権の割合のことです。
持分割合は登記事項証明書に「持分2分の1」のように分数で記載されます。

持分割合が決まる場面は主に2つです。

1つは相続で、法定相続分または遺産分割協議の結果に沿って割合が定まります。

もう1つは購入時で、頭金や住宅ローンの負担額など出資割合に応じて決めるのが原則です。

注意したいのは、持分割合が物理的な区分ではない点です。
持分2分の1を持っていても、建物の半分を自分だけの判断で使えるわけではありません。
共有者はそれぞれ、不動産の全体に対して割合的な権利を持っています。

持分割合は、売却代金の分配額と譲渡所得税の計算、どちらにも共通する基礎の数字です。

共有名義の不動産売却でトラブルが起こる3つの原因

共有名義でのトラブルは、当事者の性格ではなく所有形態そのものに原因があります

不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要になる

共有名義の不動産を丸ごと売る行為は、法律上、共有物全体に変更を加える行為として扱われます。

そして共有物へ変更を加えるには、共有者全員の同意が必要と民法で定められています。

つまり、自分の持分がどれだけ大きくても、共有者がひとりでも反対すれば全体売却は成立しない仕組みです

たとえば持分10分の9を持つ長男が売却を決めても、持分10分の1の弟が同意しなければ、買主へ所有権を移せないまま話が止まります。

【参考】民法第251条|e-Gov 法令検索

売却代金を持分割合で分けるため取り分をめぐって対立する

共有者は、持分に応じて不動産に対する権利を持ちます。

そのため売却代金も、持分割合に応じて分配するのが原則です。

たとえば、兄弟2人が2分の1ずつ共有する不動産が3,000万円で売れた場合、原則としてそれぞれ1,500万円ずつを受け取ります。

ところが、原則どおりの分配が納得を生まないケースがあります。

固定資産税や修繕費を特定の共有者が負担し続けてきた場合、負担分を無視して均等に分けると不公平感が残るためです。

逆に、住み続けてきた共有者に対して、他の共有者が家賃相当額の精算を求めることもあります。

代金の分け方は、売り出す前に立替分の扱いまで決めておかないと、買主が決まってから交渉が振り出しに戻ります。

【参考】民法第249条|e-Gov 法令検索

相続のたびに共有者が増えて話し合いの相手が特定できなくなる

共有者が亡くなると、持分は相続人へ引き継がれます。

兄弟2人で共有していた不動産は、2人ともに子が2人いれば、次の世代で共有者が4人になります。

さらに一代進めば、共有者は8人です。
面識のない親族から同意を取り付けなければなりません。

相続登記が済んでいない不動産では、登記名義が祖父母の代のまま残っていることもあり、現在の共有者を確定させるだけで戸籍の収集に数ヵ月かかります。

相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、過料の対象になります

【参考】所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し|法務省

共有名義の不動産売却で実際に起きたトラブル5事例

共有名義の売却トラブルは、5つのケースに整理できます

兄弟のひとりが実家の売却に反対して協議が止まった

父の死後、実家を兄弟3人が3分の1ずつの共有名義で相続したケースです。

長男と次男は売却して現金で分けたいと考えていましたが、三男が「生まれ育った家を売りたくない」と反対し、協議はそこで止まりました。

誰も住まない実家には毎年の固定資産税がかかり続け、屋根と外壁の傷みも進みました。

庭木の管理は近くに住む長男が担い、負担の偏りが不満として蓄積していきます。

反対の理由が経済的な損得ではなく思い入れである場合、売却額を提示するだけでは相手は動きません。

長男と次男は、年間の維持費と5年分の累計額、さらに次の相続で共有者が6人へ増える見通しを資料にして再度話し合いました。

維持し続けた場合の負担を数字で共有したことで三男も納得し、3人の合意による全体売却へ進みました。

共有者が認知症になり売買契約を結べなくなった

母と長女が2分の1ずつ共有する自宅を売却しようとしたケースです。

売却活動を始めた直後に母が認知症と診断され、契約内容を理解して判断する能力が失われました。

売買契約を結んでも、無効と判断されるおそれがある状態です。
売却活動は中断せざるを得ませんでした。

そこで長女は家庭裁判所へ成年後見人の選任を申し立てましたが、選任までにかかった期間はおよそ4ヵ月です。

さらに、成年後見人が本人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が別途必要になります。

許可の申立てには、売買契約書の案や不動産の査定書を添えて、売却の必要性と価格の妥当性を説明します。

結果として、売却できたのは、当初の予定から半年以上後になりました。
その際に買主の側にも待ってもらう必要があり、条件交渉のやり直しも生じました。

離婚した元配偶者と連絡が取れず自宅を売れなかった

離婚時に、夫婦で2分の1ずつ共有していた自宅の名義をそのままにしたケースです。

「妻が住み続け、いずれ夫の持分を買い取る」と口約束しただけで、名義変更も書面化もしませんでした。

5年後、子の進学を機に妻が売却を決めましたが、元夫はすでに転居しており、登記に記載された住所へ郵便を送っても届きません。

共有名義の自宅は元夫の同意なしには売れず、手続きは完全に止まりました。

妻は市区町村で戸籍の附票を取得して現住所をたどり、連絡がついたことで売却の同意を得られました。

なお、住宅ローンが残っている場合は、名義変更や売却に金融機関の同意も必要になります

離婚の際に不動産の名義を整理せずにおくと、数年後の売却時に負担が跳ね返ってきます。

売却代金の分け方をめぐって共有者と対立した

母の死後、実家を長男と長女が2分の1ずつ共有していたケースです。

実家の近くに住む長男が10年にわたって固定資産税を納め、給湯器の交換や外壁の補修も自費でおこなってきました。

売却の合意はできたものの、長女が「持分どおり半分ずつ」と主張したため、長男が納得せず交渉は停滞します。

そこで長男は納税通知書と工事の領収書、振込記録から立替総額を算出し、その金額を先に精算したうえで残額を2分の1ずつ分ける案を示しました。

最終的に双方が合意し、決めた内容は合意書として書面に残しました。
書面化したことで、決済当日まで蒸し返しは起きていません。

共有者のひとりが持分を売却し見知らぬ第三者と共有になった

兄弟2人が2分の1ずつ共有する土地について、疎遠だった弟が自分の持分を買取業者へ売却したケースです。

共有者は、自分の持分であれば他の共有者の同意を得ずに売却できます。

そのため兄は、業者からの通知で初めて事実を知りました。

業者からは兄の持分の買取りを打診され、応じない場合は共有物分割請求を検討すると伝えられます。

知らない相手と共有関係が続けば、土地の利用や管理をめぐる協議のたびに交渉が必要になります。

兄は業者と協議したうえで、双方の持分をまとめて第三者へ売却し、代金を持分割合で分ける形をとりました。

自分の持分を自由に売却できるという原則は、他の共有者にも同じように働きます。

そのため、共有状態を長く放置するほど、持分だけが第三者へ渡るトラブルは起こりやすくなります。

業者から買取りや分割請求の打診を受けた段階で、共有持分の交渉に詳しい弁護士へ相談してください。

共有名義の不動産の売却には全員の同意が必要|保存・管理・変更行為の線引き

共有名義の不動産に対する行為は、保存行為・管理行為・変更行為の3つに分かれ、必要な同意の範囲がそれぞれ異なります

保存行為とは不動産の現状を維持する行為で、共有者が単独でできるものです。

管理行為は不動産の性質を変えない範囲で利用や改良をする行為で、持分価格の過半数で決められます。

変更行為は不動産の形や権利関係を変える行為で、共有者全員の同意が必要です。
売却は変更行為にあたります。

一定期間を超えない賃借権の設定は、管理行為として持分価格の過半数で決められます。

また共有者の一部が所在不明でも、裁判所の決定を得れば残りの共有者の過半数で管理行為を決められます。

ただし売却は変更行為のため、過半数の決定では進められない点に注意してください。

所在のわからない共有者がいて売却したい場合は、裁判所の決定を経て持分を取得する法的手段があります。

【参考】民法第252条|e-Gov 法令検索

共有名義の不動産を売却する3つの方法

共有名義の不動産を売るルートは3つあり、手取りの大きさと実現しやすさは反比例します
自分の状況に合うものを選びます。

方法手取りの目安必要な同意向いている状況
全体売却市場価格の全額を持分割合で分配共有者全員共有者が売却に前向きで連絡も取れる
持分売却全体売却時の持分相当額を下回りやすい不要/自分の判断で進められる共有者が動かず、自分だけ共有関係から抜けたい
分筆して売却区画の条件しだいで変動する共有者全員/分筆の合意が必要対象が土地で、面積と接道条件に余裕がある

共有者全員の同意を得て不動産を全体売却する

全体売却とは不動産全体を市場へ出して売る方法です。

通常の売買と同じ流れで進むため、成約価格が市場価格に近づき、手取りが大きくなりやすい点がメリットになります。
また維持費と管理の負担が全員から外れることも、共有者にとって共通のメリットです。

一方で、売買契約書には共有者全員が署名押印し、決済にも全員が立ち会う必要があります。
遠方に住む共有者がいる場合は、委任状を用意して代表者に手続きを任せる形をとります。

デメリットは、ひとりでも欠けると契約が成立しない点です

共有者が多いほど日程調整に時間がかかり、意思確認と書類の回収だけで数ヵ月かかることもあります。

売り出す前に、最低売却価格と代金の分配方法を全員で決めておくと、購入申込みが入ってからの停滞を防げます。

自分の持分だけを共有者または第三者に売却する

自分が持つ持分だけを切り出して売る方法です。

持分の処分は各共有者が単独でできるため、他の共有者の同意は必要ありません。

メリットは、話し合いがまとまらない状況でも自分の判断で進められる点です。
売却が完了すれば、固定資産税の負担や建物の管理からも外れられます。

共有者と顔を合わせずに共有関係を抜けたい場合の現実的な選択肢になります。

デメリットは価格です。
持分だけを買っても単独では自由に使えないため買い手が限られ、全体売却したときの持分相当額を下回るのが一般的になります

もうひとつのデメリットは、残された共有者への影響です。

共有者は見知らぬ第三者と共有関係に置かれることになり、関係が悪化しやすくなります。

まずは他の共有者へ買取りを打診し、断られた場合に第三者への売却を検討しましょう。

土地を分筆して単独名義にしてから売却する

分筆とは、登記上1つの土地を複数の土地に分けて登記し直すことです。

分筆したうえで各区画を単独名義にすれば、その後は自分の判断だけで売却できます。

メリットは、共有関係そのものを解消でき、売却の時期や価格を自分で決められる点です。
土地を手放さずに残す選択もできます。

デメリットは3つです。

1つ目は建物に使えないことで、分筆の対象は土地に限られます。

2つ目は費用と時間で、境界確定測量と分筆登記に数十万円と数ヵ月が必要です。

3つ目は価値の変動で、分筆後に間口が狭くなったり接道条件を満たさなくなったりすると、区画の評価額が下がります。

分筆には共有者全員の合意も必要です。
そのため、話し合いができる関係であることが前提になります。

共有名義の不動産を売却できないときの法的手段

話し合いで解決しない相手がいても、法律上の解決ルートが用意されています

いずれも裁判所の手続きで時間と費用がかかるため、任意の話し合いを尽くしたうえで検討しましょう。

話し合いがまとまらないときは共有物分割請求をおこなう

共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます。

まず共有者間で協議し、協議がまとまらないときは裁判所へ分割を請求する流れです。

裁判所が命じる分割方法は3種類あります。

1つ目の現物分割は、土地を物理的に分けてそれぞれの単独所有にする方法です。

2つ目の賠償分割は、特定の共有者が他の共有者の持分を取得し、対価を金銭で支払う方法です。

3つ目の競売分割は、不動産を競売にかけて代金を持分割合で分ける方法になります。

注意したいのは競売分割です。
競売では市場価格を下回る金額で落札されることが多く、全員の手取りが減ります

そのため実際には、訴訟の途中で和解し、任意売却へ切り替える形で決着することが少なくありません。

訴訟は解決のための最終手段と位置づけ、和解の余地を残しながら進める形が現実的です。

請求に踏み切るかどうかの見極めや和解案の設計は、共有物分割請求を扱った経験のある弁護士に相談してから決めてください。

【参考】民法第258条|e-Gov 法令検索

所在がわからない共有者がいるときは裁判所の決定で持分を取得する

2023年4月施行の改正民法により、所在等がわからない共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、行方のわからない共有者の持分を他の共有者が取得できる制度が新設されています。
所在のわからない共有者の持分を含めて第三者へ譲渡する権限を、裁判所から付与してもらう制度も用意されました。

利用にあたっては、対象となる持分の時価相当額の金銭を法務局に預ける供託という手続きが必要です。

また申立ての前提として、戸籍の附票や住民票をたどる所在調査が必要です。

連絡が取れない共有者がいる場合でも、現行の制度では売却まで進める道があります。

【参考】所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し|法務省

判断能力を欠く共有者がいるときは成年後見人の選任を申し立てる

認知症などで判断能力を欠いた共有者は、売買契約の内容を理解して意思決定できません。

意思決定できないまま結ばれた契約は無効になる可能性があり、家族が代わりに署名しても有効にはなりません。

そこで、家庭裁判所へ成年後見人の選任を申し立て、選任された後見人が本人に代わって手続きを進める流れです。
申立てから選任までは、事案によって数ヶ月かかります。

さらに、本人が住んでいる、または住んでいた不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が別途必要です。

成年後見人は本人の財産を守る立場にあるため、相場より低い価格での売却には同意しません。
高齢の共有者がいる場合は、判断能力があるうちに方針を固めておくことが有効です。

【関連記事】成年後見人のトラブル|事例や回避方法、解決手段を詳しく解説

相続で共有名義になった不動産を売る前に済ませる手続き

相続を起点に共有名義になった不動産は、売却の前に3つの手続きを順番どおりに済ませます

①登記事項証明書で共有者と持分割合を確認する

最初におこなうのは、登記の記録で共有者と持分割合を確定させる作業です。

記憶や親族間の認識ではなく、公的な記録を確認します。

登記事項証明書は法務局の窓口のほか、オンラインでも請求でき、手数料を払えば誰でも取得が可能です。

所有者以外でも取得できるため、共有者に事情を説明する前に現況を把握できます。

記録上の共有者がすでに亡くなっている場合は、亡くなった人の相続人が現在の共有者です。
相続人が誰かわからないときは、戸籍をたどって確定させる調査が必要になります。

持分割合は分数で記載され、売却代金の分配額と譲渡所得税の計算の基礎になります。
交渉を始める前に、全員の割合を一覧にしておきましょう。

②遺産分割協議で不動産の扱いを決める

共有者と持分を確認したら、遺産分割協議で不動産の扱いを決めます。
分け方には主に3つの方法があります。

換価分割は、不動産を売却して代金を相続人で分ける方法です。
代償分割は、相続人のひとりが不動産を取得し、他の相続人へその分の金銭を支払う方法になります。
現物分割は、土地を分筆するなどして財産を現物のまま分ける方法です。

3つの方法に対して、法定相続分どおりの共有名義にする方法は、公平に見えて先送りに近い選択です。
共有名義のままでは、その後の売却や賃貸のたびに全員の関与が必要になり、負担が続きます。

すでに共有名義になっている場合でも、共有者間で持分を売買して単独名義に集約する方法があります。
売却を前提にするなら、換価分割の形で最初から現金化したほうが手続きは簡素です。

【関連記事】遺産分割協議の手順と流れ|不動産の分け方や協議書のサンプルを紹介

③相続登記を済ませて名義を確定させる

登記名義が被相続人のままでは、不動産を売却できません。
買主へ所有権を移すには、いったん相続人へ名義を移す相続登記が前提になります。

2024年4月1日から、相続登記の申請は義務化されました。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しない場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。

申請義務は、2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。
すでに何代も前から名義が変わっていない不動産も対象です。

遺産分割協議が長引いて期限に間に合わない場合は、相続人申告登記を利用できます。
自分が相続人であることを法務局へ申し出る簡易な手続きで、申出をすれば申請義務を果たしたものとして扱われます。
ただし所有権の移転登記ではないため、売却するには別途、相続登記が必要です。

【参考】所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し|法務省

共有名義の不動産売却でトラブルを防ぐ4つの対策

トラブルは、売り出す前の準備でほとんど防げます

売却の方針と最低売却価格を先に共有者全員ですり合わせる

共有名義の売却でよく起きるのが、売ること自体には全員が賛成しているのに、条件で折り合わない状態です。

たとえば、早く現金化したい共有者と、地価の回復を待ちたい共有者が同居していると、購入申込みが入った時点で交渉が止まります。

そこで、売却活動を始める前に3点を決めておきます。
1点目は売却時期の目安、2点目は最低売却価格、3点目は値下げに踏み切る判断基準です。

価格の目線をそろえるには、複数の不動産会社へ査定を依頼し、査定書を共有者全員で確認する方法が有効です。
1社の提示額だけでは根拠が伝わらず、高い金額を主張する共有者を説得しにくくなります。

複数社の根拠を並べて比べると、相場の幅が共通認識になり、最低売却価格を決めやすくなります。

立て替えてきた固定資産税や修繕費を精算してから分配割合を決める

売却代金は持分割合に応じて分けるのが原則です。
ただし共有者全員が合意すれば、分配割合は自由に決められます。

特定の共有者が固定資産税や修繕費を負担してきた場合は、立替分を先に精算してから残りを持分割合で分ける形にすると、納得を得やすくなります。

手順としては、固定資産税の納税通知書や修繕工事の領収書、振込記録を集めて立替総額を算出してください。
金額の根拠が資料でそろっていれば、感情論になりにくくなります。

方式は2つあります。
1つは立替分を先に精算して残額を持分割合で分ける方式、もう1つは分配割合そのものを調整する方式です。

持分割合と大きく異なる分配は、共有者間の贈与とみなされて贈与税が課される場合があります。
金額が大きいときは、実行前に税理士へ確認してください。

【参考】No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき|国税庁

合意した内容は共有者全員の署名押印がある書面に残す

話し合いで決めた内容は、口頭で終わらせず合意書として残します。
共有者全員の署名押印がある書面は、後から認識がずれたときの有力な証拠です。

合意書に決まった書式はありませんが、次の項目を記載しておくと実効性が高まります。

  • 対象となる不動産の表示(所在・地番・家屋番号)
  • 売却するという方針と、売却の時期の目安
  • 最低売却価格と、値下げの判断基準
  • 仲介手数料などの費用を誰がどう負担するか
  • 売却代金の分配方法と、立替分の精算方法
  • 不動産会社との窓口を務める共有者

作成のタイミングは、売却活動を始める前が適しています。
買主が決まってから条件をまとめようとすると、契約日程に追われて話し合いの時間が不足しがちです。

共有者が多い場合や金額が大きい場合は、公正証書にする方法もあります。
公証役場で作成するため費用はかかりますが、公証人が内容を確認するので記載の不備を防げる点が利点です。
証拠としての強さも増します。

なお合意書は、共有者間の取り決めを確認する書面です。
買主に対して効力を持つものではないため、売買契約書とは別に用意します。

窓口となる代表者をひとり決めて連絡経路を一本化する

不動産会社とのやり取りを共有者がそれぞれ個別におこなうと、聞いた内容にずれが生じます。

「担当者は3,000万円と言っていた」「いや2,800万円だと聞いた」といった食い違いが起き、会社への不信感や共有者同士の疑心につながります。

そこで、窓口となる代表者をひとり決めて、不動産会社との連絡経路を一本化してください。
近隣に住む共有者や、書類のやり取りに慣れた共有者が担うと進行が安定します。

窓口役に判断まで一任すると、別の不満が生まれます。
査定書や購入申込書などの資料は、窓口役が受け取った時点で共有者全員へ同時に共有し、決定は全員でおこなう運用が適切です。

情報が全員に等しく届いていれば、最終的な判断が分かれても納得感は保たれます。

共有名義の不動産売却でかかる費用と税金

共有名義の不動産を売却すると、仲介手数料や登記費用などの実費に加え、利益が出た場合は譲渡所得税がかかります

費用・税金の種類目安負担者
仲介手数料売買価格×3%+6万円+消費税/売買価格400万円超の場合共有者全員が持分割合に応じて負担
印紙税1,000円〜6万円/売買価格による。軽減措置の適用で下がる場合あり契約書を作成する当事者
抵当権抹消の登記費用登録免許税1,000円/不動産1個につき、司法書士報酬1万〜2万円抵当権が設定されている共有者
境界確定測量費35万〜80万円/土地の規模・形状で変動共有者全員が持分割合に応じて負担
譲渡所得税・住民税譲渡所得×20.315%=所有期間5年超/39.63%=5年以下共有者ごとに個別に計算

仲介手数料は上限額で、実際の料率は交渉で決まります。
境界確定測量は境界が未確定の土地で必要になり、1ヵ月から3ヵ月が目安です。

譲渡所得は共有者ごとに持分に応じて計算し、確定申告もそれぞれがおこないます。
取得費が不明な場合は売却価格の5%を取得費とみなす扱いがあり、実額を使う場合より税額が大きくなります。

居住用の不動産を売った場合に使えるのが、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。
控除の上限は共有者全員で3,000万円ではなく、適用要件を満たす共有者ひとりにつき最高3,000万円まで使えます。
夫婦で2分の1ずつ共有していた自宅であれば、控除もそれぞれに適用される形です。

表の金額は目安で、依頼先や物件の条件によって変わります。
税額の見通しは、売り出す前に試算しておいてください。

【参考】No.3308 共有のマイホームを売ったとき|国税庁

共有名義の不動産売却の相談先|前向きなら不動産会社・対立や連絡不通なら弁護士

相談先は状況で分かれます。
共有者が売却に前向きなら不動産会社、対立や連絡不通があるなら弁護士が入口になります

相談先対応できること向いている状況
不動産会社査定、売却活動、共有者全員の書類手配、決済の段取り共有者が売却に反対しておらず、連絡も取れる
弁護士共有者との交渉代理、共有物分割請求、所在等不明共有者への対応反対されている、連絡が取れない、持分を勝手に売られた
司法書士・税理士司法書士=相続登記・持分移転登記の申請代理/税理士=譲渡所得税の試算と確定申告名義が未整理、税額の見通しを立てたい

共有者が売却に前向きなら不動産会社に相談する

共有者が売却に反対していない段階では、査定と売却活動を担う不動産会社が入口になります。

共有名義の売却は署名する当事者が複数いるため、通常の売却より書類と日程の調整が多めです。
委任状の様式、決済当日の立会い方法、遠方の共有者への対応など、実務の段取りが成否を分けます。

依頼先を選ぶときは、次の3点を確認してください。
1点目は共有名義や相続した不動産の取扱い実績、2点目は査定額の根拠を数字で説明できるか、3点目は複数社を比較したうえで決められるかです。

査定は複数社へ依頼し、査定書を共有者全員で確認します。
根拠を並べて比べることで、共有者間の価格の目線がそろい、その後の話し合いが進めやすくなります。
相場より高い査定額だけを見て依頼先を決めるのは避けてください。

共有者と対立している・連絡が取れないなら弁護士に相談する

共有者と交渉するにあたって、代理人として相手方と直接やり取りできるのは弁護士です。

弁護士に依頼する場面は主に3つあります。
1つ目は、共有者が売却を拒み続けていて共有物分割請求を検討する場面です。
2つ目は、所在のわからない共有者について裁判所の手続きを使う場面になります。
3つ目は、持分を買い取った買取業者や第三者と交渉する場面です。

費用は、相談料、着手金、報酬金で構成されるのが一般的です。
金額は事務所ごとに異なるため、依頼前に見積もりを取って確認してください。
初回の相談を無料としている事務所もあります。

交渉が長期化しているほど、共有者間の感情的な対立は深まります。
当事者だけで解決できないと感じた時点で相談してください。
選べる手段が多く残る段階です。

登記や税金の手続きが必要なら司法書士・税理士に相談する

売却の場面では、複数の専門家が順に関わります。
担当範囲を押さえておくと、依頼先を間違えて時間を失うことがありません。

相続登記や持分の移転登記といった登記申請の代理は司法書士、譲渡所得税の試算や確定申告の代理は税理士の担当です。

一方で、紛争性のある遺産分割や共有者との交渉を代理できるのは弁護士に限られます。
司法書士や税理士は、相手方との交渉を代理できません。

依頼の順序としては、名義が未整理なら司法書士へ相続登記を依頼し、名義が整ってから不動産会社へ売却を相談する流れが基本です。
税理士への相談は、売却価格の見通しが立った段階が適しています。

決済の当日は、司法書士が立ち会って買主への所有権移転登記を申請するのが一般的な流れです。
窓口となる不動産会社が司法書士や税理士と連携していれば、必要な場面で紹介を受けられるため、手続き全体が滞りなく進みます。

共有名義の不動産売却の相談先を探すならベンナビ不動産売却へ

共有名義の不動産は、扱いに慣れた会社かどうかで進み方が変わります。
共有者が複数いる売却では、委任状の準備や決済当日の立会いの調整など、通常の売却にはない実務が発生するためです。

ベンナビ不動産売却では、次の3点に対応しています。

  • エリアや取扱い分野から、共有名義や相続した不動産に対応する会社を絞り込める
  • 複数の会社へまとめて査定を依頼し、査定額の根拠を比べられる
  • 相談前に各社の対応範囲を確認したうえで、問い合わせ先を選べる

共有者との話し合いが始まる前でも、査定額という共通の材料があれば議論の土台として有効です。
売るかどうかを決めていない段階でも、いくらで売れるのかがわかれば、維持し続ける場合との比較ができます。

共有者が反対している、連絡が取れないといった法的な論点を含む場合は、弁護士への相談もあわせて検討してください。
交渉の代理や裁判所の手続きは弁護士の担当となるためです。

まずはベンナビ不動産売却で、共有名義の取扱いに対応する会社を探してみてください。
査定額がそろえば、共有者との話し合いを数字で始められます。

共有名義の不動産売却トラブルに関するよくある質問

Q

共有者のひとりが反対していても不動産全体を売れる?

A

売れません。
不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要で、ひとりでも反対すれば成立しないためです。
ただし自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却できます。
話し合いで解決しない場合は、共有物分割請求という手段もあります。

Q

自分の持分だけを売ると他の共有者に迷惑がかかる?

A

残された共有者は、見知らぬ第三者と共有関係に置かれます。
買主から持分の買取りを求められたり共有物分割請求を起こされたりする可能性があり、関係が悪化しやすくなる点は避けられません。
他の共有者へ買取りを打診し、断られてから第三者への売却を検討する順序にしてください。

Q

共有持分の買取業者に売却するとトラブルになる?

A

買取業者への売却自体は違法ではなく、共有者の正当な権利です。
ただし買取価格が全体売却時の持分相当額を下回りやすく、残った共有者が業者から買取りや分割請求を受けることもあります。
売却前に、共有者への打診と全体売却の可能性を検討してください。

Q

共有名義の不動産を売らずに放置するとどうなる?

A

共有者が亡くなるたびに持分が相続され、共有者の人数が増えていきます。
面識のない親族まで同意を集める必要が生じ、売却の難易度は上がる一方です。
その間も固定資産税と維持費はかかり続け、建物であれば傷みも進みます。
時間の経過は解決を遠ざけます。

Q

売却代金は持分割合どおりに分けないといけない?

A

原則は持分割合に応じた分配です。
共有者全員が合意すれば、異なる割合でも分けられます。
固定資産税や修繕費を負担してきた共有者がいる場合は、立替分を精算してから分ける方法が現実的です。
持分割合と大きく異なる分配は贈与とみなされる場合があるため、税理士へ確認してください。

まとめ|共有名義の不動産売却は動けるうちに道筋を決めよう

共有名義の不動産売却で揉めるのは、当事者の性格ではなく、全体売却に共有者全員の同意が必要という制度上の制約が原因です。
売却代金を持分割合で分けるルールと、相続のたびに共有者が増える構造も、対立を生みやすくします。

取れる手段は状況しだいです。
共有者が売却に前向きなら全体売却、動かないなら自分の持分だけを売却、話し合いが成立しないなら共有物分割請求という順で検討します。
所在不明や判断能力を欠く共有者がいる場合も、裁判所の手続きで売却まで進められます。

まず着手するのは、登記事項証明書で共有者と持分割合を確認することです。
そのうえで査定を依頼し、共通の材料をそろえてから話し合いに入ってください。
共有状態は時間の経過で解消しません。
動けるうちに道筋を決めることが、手取りと関係の両方を守ります。

共有名義の取扱いに対応する会社を探せるのが、ベンナビ不動産売却です。
まずは査定依頼から始めてみてください。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。