空き家売却にかかる税金は4種類|3,000万円控除の要件と税額シミュレーション
親から相続した実家が空き家のままになっていて、売りたいけれど税金がいくらかかるのか分からず動けずにいる方は少なくありません。
本記事では、空き家の売却にかかる4種類の税金と譲渡所得税の計算方法、税額がゼロになる3,000万円特別控除の要件と期限を、国税庁の公表資料をもとに整理します。
読み終えるころには、いつまでにいくらで売れば手取りを確保できるかを判断する材料がそろう構成です。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
空き家の売却にかかる税金は4種類

空き家を売ったときにかかる税金は、次の4種類です。
4種類のうち金額が大きく変わるのは、売却益にかかる譲渡所得税と住民税だけです。
売って利益が出なければ、譲渡所得税と住民税は課税されません。
| 税金の種類 | 課税されるタイミング | 税額の目安 | 納付方法 |
|---|---|---|---|
| 譲渡所得税・住民税 | 売却益が出たとき | 譲渡所得の20.315%または39.63% | 翌年の確定申告 |
| 印紙税 | 売買契約を結ぶとき | 1,000円〜6万円 | 収入印紙を契約書に貼る |
| 登録免許税 | 相続登記・抵当権抹消のとき | 固定資産税評価額の0.4%ほか | 登記を申請するとき |
| 消費税 | 仲介手数料を払うとき | 仲介手数料の10% | 不動産会社へ支払う |
譲渡所得税と住民税は売却益が出たときにかかる
譲渡所得税と住民税は、売却代金そのものではなく「譲渡所得」に対してかかります。
譲渡所得(じょうとしょとく)とは、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた利益のことです。
取得費はその不動産を買ったときにかかった費用、譲渡費用は売るためにかかった費用を指します。
たとえば1,500万円で売れても、取得費と譲渡費用の合計が1,600万円であれば譲渡所得は生じません。
その場合、譲渡所得税と住民税はどちらも課税されず、税額はゼロです。
実務では所得税・住民税に加えて復興特別所得税もかかるため、3つをまとめて譲渡所得税と呼びます。
また、譲渡所得は給与所得などと合算せず、単独で税額を計算する分離課税の対象です。
そのため、給与の額が大きい方でも税率が上がることはありません。
売買契約書には印紙税がかかる
印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼って納めます。
不動産の売買契約書には軽減措置があり、売却価格が1,000万円超5,000万円以下であれば税額は1万円です。
| 契約金額 | 本則の税額 | 軽減後の税額 |
|---|---|---|
| 100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
印紙税の軽減措置は、2027年3月31日までに作成される契約書が対象です。
契約書は売主と買主が1通ずつ保管するため、実務では2通分の印紙が必要になります。
負担は1通ずつ分け合うのが一般的です。
印紙を貼り忘れると過怠税の対象になるため、契約当日に金額を確認してください。
登録免許税は相続登記と抵当権抹消でかかる
被相続人の名義のままでは、空き家を売ることはできません。
そのため売却の前に相続登記をおこなう必要があり、このとき固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。
評価額1,000万円の不動産なら4万円です。
住宅ローンの抵当権が残っている場合は、抵当権抹消登記も必要です。
抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円で、土地と建物があれば合計2,000円になります。
相続登記は2024年4月から義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。
登記を司法書士に依頼する場合、登録免許税とは別に報酬も必要です。
金額は事務所ごとに異なるため、依頼前に見積もりを取っておいてください。
仲介手数料には消費税がかかる
個人が売る空き家そのものには、消費税はかかりません。
消費税がかかるのは、不動産会社に払う仲介手数料などのサービスの対価です。
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法にもとづく国土交通省の告示で決まっています。
売却価格400万円超の場合は、「売却価格×3%+6万円」に消費税を加えた額が上限です。
ただし2024年7月1日の制度改正により、売買価格800万円以下の物件は扱いが変わりました。
不動産会社は、30万円に消費税を加えた額を上限として請求できます。
低額な空き家は手数料の負担割合が大きくなるため、媒介契約を結ぶ前に手数料の計算方法を確認しておきましょう。
なお、土地の譲渡は事業者が売る場合でも非課税です。
空き家売却の税金の計算方法|税率は所有期間で約2倍変わる
譲渡所得税と住民税は「(売却代金-取得費-譲渡費用-特別控除)×税率」で計算します。
計算に必要な要素は、次の4つです。
- 売却代金
- 取得費
- 譲渡費用
- 所有期間
譲渡所得は「売却代金-取得費-譲渡費用」で計算する
譲渡所得を求めるには、まず取得費と譲渡費用を洗い出します。
取得費に入るのは、売った不動産を買ったときの購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用などです。
ただし建物部分については、保有期間に応じた減価償却費を差し引いた金額が取得費になります。
譲渡費用に入るのは、売るときの仲介手数料や印紙代です。
建物の解体費用や測量費も譲渡費用として認められます。
一方で、固定資産税の精算金は売却代金に含めて計算します。
買主から受け取るお金であるため、譲渡費用としては差し引けない扱いです。
売却代金から取得費と譲渡費用を引いた金額がプラスになったときにだけ、譲渡所得税と住民税がかかります。
マイナスであれば課税は生じません。
所有期間5年超なら20.315%・5年以下なら39.63%になる
譲渡所得税の税率は、所有期間によって2倍近く変わります。
判定の基準日は売却した日ではなく、売却した年の1月1日です。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば、長期譲渡所得として20.315%が適用されます。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
年末に売買契約を結んだ場合、引き渡しが翌年にずれると判定年も変わります。
所有期間が5年前後のときは、引き渡し時期を確認しておきましょう。
復興特別所得税は、2037年まで所得税額に2.1%を上乗せする形で課されます。
税率を確認する際は、復興特別所得税の上乗せ分も含めた合計で考えてください。
相続した空き家は被相続人の所有期間を引き継ぐ
相続で取得した空き家は、被相続人がその家を買った日をそのまま引き継ぎます。
そのため相続した直後に売っても短期譲渡所得にはならず、多くの場合は長期譲渡所得の20.315%が適用されます。
たとえば親が30年前に建てた実家を相続し、相続の翌年に売った場合、所有期間は30年超という扱いです。
相続してから1年しか経っていなくても、税率は20.315%です。
引き継ぐのは取得した日だけではありません。
親が支払った購入代金も、そのまま取得費として引き継ぎます。
相続税を払ったかどうかにかかわらず、所有期間の引き継ぎは同じです。
税率の面で相続直後の売却が不利になることはないため、税率を理由に売却を急ぐ必要はありません。
急ぐべき理由があるとすれば、特別控除の期限のほうです。
取得費が分からないときは売却代金の5%で計算する
購入時の契約書が見つからず取得費が分からない場合は、売却代金の5%を取得費とみなして計算します。
5%で計算する方法を概算取得費といいます。
1,500万円で売却する場合、概算取得費は75万円です。
実際の購入代金が1,000万円だったとしても、証明できなければ課税対象は大きく膨らみます。
親が買った家を相続したケースでは、購入時の書類が残っていないことが珍しくありません。
書類の有無だけで生じるのが、数百万円単位の税額差です。
契約書がなくても、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、通帳の振込記録、抵当権の設定額などから取得費を立証できる場合があります。
売却を決めたら、税額の試算より先に実家の書類を探すところから始めてください。
【試算】空き家を1,500万円で売却したときの税金
同じ1,500万円の売却でも、条件によって税額は0円から約280万円まで開きます。
以下では相続した木造戸建てを長期譲渡所得の税率で売り、譲渡費用が60万円かかった前提で、3つのケースを試算します。
取得費がわかる場合(購入価格1,000万円)の税額
購入時の契約書が残っていて、取得費が1,000万円とわかるケースから見ていきます。
譲渡所得は「1,500万円-1,000万円-60万円」で440万円です。
譲渡所得440万円に長期譲渡所得の税率20.315%をかけると、税額は約89万3,000円になります。
ただし建物部分は、保有期間に応じた減価償却費を取得費から差し引きます。
木造住宅は法定耐用年数が短いため、築年数が古いほど建物の取得費は小さめです。
実際の税額はこの試算より上振れすると考えてください。
納付時期は所得税と住民税で異なります。
所得税は確定申告の期限までに納め、住民税は申告した年の6月以降に届く納付書で納めます。
納税資金は売却代金から分けて確保しておきましょう。
取得費が不明な場合(概算取得費5%)の税額
同じ1,500万円の売却でも、取得費が分からない場合は税額が大きく変わります。
概算取得費は「1,500万円×5%」で75万円です。
譲渡所得は「1,500万円-75万円-60万円」で1,365万円まで膨らみ、税額は約277万3,000円になります。
| ケース | 取得費 | 譲渡所得 | 税額 |
|---|---|---|---|
| 取得費が判明 | 1,000万円 | 440万円 | 約89万3,000円 |
| 取得費が不明 | 75万円 | 1,365万円 | 約277万3,000円 |
| 特別控除を適用 | 75万円 | 0円 | 0円 |
取得費が判明しているかどうかだけで、税額の差は約188万円です。
実家の押し入れや金庫を探して契約書が1枚出てくれば、探した労力は十分に報われます。
示した金額はいずれも一定の前提を置いた試算です。
実際の税額は物件の構造や築年数、譲渡費用の内訳によって変わります。
売却価格の目安をつかむ段階では、ベンナビ不動産売却の無料査定が使えます。
3,000万円特別控除を使える場合の税額
相続した空き家の売却では、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特別控除を使える場合があります。
取得費が不明なケースでも、譲渡所得1,365万円から3,000万円が控除されるため、課税される譲渡所得は0円です。
税額もそのまま0円になります。
注意したいのは、税額が0円になる場合でも確定申告が必要な点です。
申告をしなければ控除は適用されず、後から本来の税額を課されます。
3,000万円特別控除を使うには、次のような条件を満たす必要があります。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建てられていること
- 相続から3年を経過する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
確認の観点は、建物・売却時期・売却代金の3方向です。
相続した空き家は3,000万円特別控除で税金がかからない場合がある

3,000万円特別控除の正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。
確認する条件は次の4つで、いずれも適用の可否と控除額を左右します。
対象になる家屋の3つの要件を満たすか確認する
まず建物側の条件から確認します。
対象になる家屋は、相続開始の直前に被相続人が住んでいた家で、次の3つをすべて満たすものです。
- ① 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- ② 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- ③ 相続開始の直前に被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと
分譲マンションは区分所有建物登記がされているため、2の条件を満たさず対象外になります。
親と子が同居していた二世帯住宅も、3の条件を満たさないため使えません。
ひとり暮らしだった親の家を相続したケースが、3,000万円特別控除の基本形です。
昭和56年5月31日という日付は、新耐震基準が導入される前の建物を対象とする趣旨によるものです。
相続から3年経過する年の12月31日までに売る
期限は2つの側面から確認します。
1つ目は個別の売却期限です。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しなければなりません。
2026年3月に相続が発生した場合、期限は2029年12月31日です。
2つ目は特例そのものの適用期限です。
特例は2016年4月1日から2027年12月31日までの譲渡が対象とされています。
相続から3年以内であっても、2027年12月31日を過ぎると使えません。
金額の条件も確認が必要です。
売却代金は1億円以下である必要があり、1億円の判定では他の相続人が売った分や、分割して売った部分も合算されます。
兄弟でそれぞれ持分を売る場合は、全員の売却代金の合計で判定される点に注意してください。
耐震改修か取壊しをしてから引き渡す
家屋を建物ごと売る場合は、現行の耐震基準に適合させる必要があります。
適合を証明するには、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写しが必要です。
耐震改修をしない場合は、建物を取り壊して敷地だけを売る方法もあります。
取り壊して売る場合の解体費用は譲渡費用に算入できるため、譲渡所得を圧縮できます。
2024年1月1日以降の譲渡については、条件が緩和されました。
売主が引き渡しまでに対応しなくても、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しをおこなえば、特例の対象になります。
売主が費用を先に負担せずに済むため、買主と契約条件を調整する余地が広がりました。
契約書に対応の期限と内容を明記しておくことが大切です。
相続人が3人以上いる場合は控除額が2,000万円に下がる
控除額は相続人の人数によって変わります。
| 家屋と敷地を相続した人数 | 1人あたりの控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,000万円 |
| 2人 | 3,000万円 |
| 3人以上 | 2,000万円 |
3人以上で相続した場合に控除額が2,000万円になるのは、2024年1月1日以降の譲渡からです。
兄弟3人で実家を相続して売る場合、1人あたりの控除枠は2,000万円になります。
被相続人が老人ホームに入っていたために空き家になっていた場合も、要介護認定などの条件を満たせば対象になります。
介護施設への入所そのものは、除外の理由にならない仕組みです。
共有で売却したときは、相続人それぞれが自分の分の確定申告をおこなう必要があります。
1人がまとめて申告することはできません。
3,000万円特別控除のほかに使える2つの特例
3,000万円特別控除の条件を満たさない場合でも、取得費加算の特例と低未利用土地等の100万円特別控除という2つの制度で税負担を減らせる余地があります。
どちらも自分で申告しなければ適用されません。
対象になるかどうかの分かれ目は、相続税を納めたか、土地の価格が低いかです。
相続税を納めた人は取得費加算の特例を使える
取得費加算の特例は、売った空き家にかかった相続税額を取得費に上乗せできる制度です。
取得費が増えることで譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税と住民税が軽くなります。
加算できる金額は、納めた相続税額のうち、売った不動産に対応する部分です。
適用の期限は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。
相続税の申告期限が相続開始から10ヵ月であるため、実質的には相続開始から3年10ヵ月が期限になります。
取得費加算の特例を使えるのは、相続税を実際に納めた人だけです。
基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった場合は、対象になりません。
まずは手元にある相続税の申告書の控えを確認してください。
低額な土地は100万円特別控除の対象になる
低未利用土地等の100万円特別控除は、活用が進んでいない土地を売ったときに長期譲渡所得から100万円を差し引ける制度です。
対象になるのは、都市計画区域内にある土地等で、売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えているものです。
譲渡対価は500万円以下、市街化区域など一定の地域にある土地は800万円以下である必要があります。
売却後にその土地が利用されることも条件に含まれます。
適用期間は2020年7月1日からとされていましたが、令和8年度税制改正で3年延長され、2028年12月31日までの譲渡が対象になりました。
国税庁のタックスアンサーは延長前の期限を掲載している時期があるため、国土交通省が公表する税制改正の資料で確認してください。
築年数の条件で3,000万円特別控除を使えない物件でも、検討する余地があります。
空き家特例と取得費加算の特例は併用できない|選び方で税額が変わる
3,000万円特別控除と取得費加算の特例は、原則として併用できません。
どちらか一方を選ぶ必要があります。
判断の軸は、譲渡所得の大きさと納めた相続税額の2つです。
| 比較の観点 | 3,000万円特別控除 | 取得費加算の特例 |
|---|---|---|
| 控除・加算の上限 | 最高3,000万円(相続人3人以上は1人2,000万円) | 納めた相続税額のうち対象不動産に対応する部分 |
| 有利になりやすい条件 | 譲渡所得が3,000万円以下に収まる | 譲渡所得が大きく、相続税の負担も大きい |
| 期限 | 相続から3年を経過する年の12月31日 | 相続開始から3年10ヵ月 |
相続財産に占める不動産の割合が高いほど、加算できる金額は大きくなります。
どちらを選ぶかは確定申告で確定します。
申告後に有利なほうへ変更するのは難しいため、申告前に両方の税額を計算して比べておきましょう。
空き家を売らずに持ち続けた場合にかかる税金
空き家は所有しているだけで、毎年次の税金がかかります。
- 固定資産税
- 都市計画税
売却を先延ばしにするほど、固定資産税と都市計画税の負担は積み上がります。
さらに管理を怠って特定空家等の勧告を受けたときが、土地の税額が跳ね上がる分岐点です。
固定資産税と都市計画税が毎年かかる
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に市町村が課す地方税です。
固定資産税は固定資産税評価額に標準税率1.4%をかけて計算します。
都市計画税は市街化区域内の不動産が対象で、税率の上限は0.3%です。
税額は市町村が計算し、所有者へ納税通知書を送ります。
自分で申告する必要はありません。
注意したいのは、登記をしていなくても課税される点です。
固定資産課税台帳に登録されていれば、名義が被相続人のままでも相続人に納税通知書が届きます。
土地の固定資産税評価額は、公示地価のおおむね70%が目安とされています。
建物の評価額は構造と築年数によって決まり、古い木造住宅では低くなるのが通例です。
自分の空き家の評価額は、毎年届く納税通知書に同封される課税明細書で確認できます。
住宅用地の特例で200平方メートル以下の部分は6分の1になる
住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地の特例があります。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 200平方メートル以下の部分 | 評価額の6分の1 |
| 一般住宅用地 | 200平方メートルを超える部分 | 評価額の3分の1 |
| 更地 | ー | 軽減なし |
住宅用地の特例は空き家であっても適用対象です。
そのため建物を解体して更地にすると、土地の固定資産税は高くなります。
売却前に解体する場合は、時期に注意してください。
課税の判定日は1月1日であるため、年内に解体して年をまたぐと、翌年分から軽減がなくなります。
解体の時期は売買契約の引き渡し日と合わせて決めるのが現実的です。
解体を買主側の負担でおこなう契約にできれば、軽減がなくなる問題自体を避けられます。
特定空家等に指定されると軽減措置から外れる
管理が行き届かない空き家は、市町村から特定空家等に指定される場合があります。
指定の対象となるのは、次の状態にあると認められる空き家です。
- ① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- ② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- ③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- ④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
指定を受けたうえで市町村から勧告を受けると、住宅用地の特例の対象から外れ、土地の固定資産税の負担が大きく増えます。
2023年の法改正では、特定空家等になる前の段階として管理不全空家等が新設されました。
管理不全空家等でも勧告を受ければ、同じく特例から外れます。
勧告から命令、行政代執行へ進んだ場合、解体費用は所有者に請求されます。
空き家を売却した翌年の確定申告の流れ
売却益が出た場合と特例を使う場合は、確定申告が必要です。
確認する順番は次の3つです。
税額が0円になる場合でも、特例を使うなら申告は欠かせません。
確定申告が必要なケースと不要なケースを見分ける
まず自分が申告すべきかどうかを判定します。
| ケース | 確定申告の要否 |
|---|---|
| 売却益が出た | 必要 |
| 特例を使って税額が0円になった | 必要 |
| 売却損が出て特例も使わない | 不要 |
給与所得者には例外があります。
勤務先で年末調整を受けていて、譲渡所得を含む給与以外の所得の合計が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
気をつけたいのは、特例を使う場合です。
3,000万円特別控除も取得費加算の特例も、確定申告をして初めて適用されます。
申告をしないまま放置すると、特例なしの税額が後から課されることになります。
税額がゼロだから申告しなくてよい、という判断はしないでください。
売却した翌年は申告が必要になる前提でスケジュールを組んでおくと確実です。
空き家特例に必要な5つの書類をそろえる
3,000万円特別控除を使うには、次の書類を確定申告書に添えます。
- ① 譲渡所得の内訳書(税務署または国税庁ホームページ)
- ② 売った資産の登記事項証明書等(法務局)
- ③ 被相続人居住用家屋等確認書(物件がある市区町村)
- ④ 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(建築士事務所等)
- ⑤ 売買契約書の写し(契約時に受け取ったもの)
必要書類のうち手配に時間がかかるのが、3の被相続人居住用家屋等確認書です。
市区町村の窓口へ申請して交付を受ける書類で、電気やガスの閉栓証明など、空き家であったことを示す資料の提出を求められます。
家屋を取り壊して敷地を売った場合は、取り壊した事実を証明する書類も追加で必要です。
申告の直前に動き始めると間に合わないおそれがあるため、売買契約を結んだ段階で準備を始めてください。
売却した翌年の2月16日から3月15日までに申告する
確定申告は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに、納税地の税務署へ提出します。
提出の方法は3つあります。
e-Taxを使ったオンライン申告、税務署への郵送、窓口への持参です。
国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで作成し、そのままe-Taxで送信する方法が手間は少なくなります。
納付の時期は税目によって異なります。
所得税は3月15日までに納め、住民税は申告した年の6月以降に市町村から届く納付書での納付です。
売却の翌々年まで納付が続く点を資金計画に織り込んでおきましょう。
期限を過ぎてから申告すると、無申告加算税や延滞税が上乗せされます。
特例を使って税額が0円になる場合でも、期限内に申告しなければ控除が認められないおそれがあります。
余裕を持つには、申告書の作成を年明けから始めておくのが得策です。
税額を試算する前に空き家がいくらで売れるかを確かめる
譲渡所得税の計算は、売却代金が決まらなければ始まりません。
取得費や譲渡費用が分かっていても、いくらで売れるかが分からなければ税額は試算できません。
そこで実務で最初におこなうのは、2社から3社の不動産会社に査定を依頼して価格帯をつかむ作業です。
査定額が分かれば、本記事の計算式に当てはめて手取り額まで見通せます。
旧耐震の木造住宅、再建築ができない土地、遠方にあって内見の調整が難しい実家などは、一般の仲介では買い手がつきにくい物件です。
こうした物件では、不動産会社が直接買い取る買取という方法もあります。
買取は仲介より価格が下がる一方で、引き渡しまでの期間が短く、契約不適合責任を免除する契約にできる場合もあります。
ベンナビ不動産売却は、空き家や訳あり不動産の無料査定と買取相談に対応するサービスです。
売却価格の目安が分かれば、使える特例と手取り額を具体的に計算できます。
空き家の税負担を抑えるために売却前にやるべき3つのこと
税額は売却の直前に決まるものではありません。
売る前の準備しだいです。
いずれも売却活動を始める前に着手すべきもので、直前では間に合わないことがあります。
相続登記を済ませておく
被相続人の名義のままでは売却できないため、相続登記は最初に片づけます。
相続登記は2024年4月から義務化されました。
取得を知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
条文では「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」と定められています。
遺産分割の話し合いが終わっていない場合の受け皿が、相続人申告登記という簡易な手続きです。
ただしこの登記だけでは売却できないため、売る予定があるなら遺産分割を先に進めてください。
登記の完了までは数週間かかる場合があるため、売却を決めた時点で手続きに入るのが確実です。
【参考】不動産登記法第76条の2|e-Gov 法令検索
購入時の売買契約書を探しておく
購入時の売買契約書が見つかれば、実額の取得費を使って計算できます。
先ほどの試算では、取得費が判明している場合と概算取得費5%で計算した場合とで、税額の差は約188万円でした。
書類1枚の有無が、約188万円の差を左右します。
契約書が見当たらないときは、次の資料が取得費を立証する手がかりになります。
- 住宅ローンの金銭消費貸借契約書
- 購入代金を振り込んだ通帳の記録
- 登記事項証明書に記載された抵当権の設定額
こうした資料で取得費として認められるかどうかは、税務署の判断しだいです。
資料を集めたうえで税理士に相談すると、使える範囲を整理できます。
実家を片づける際は、権利証や契約書が入った封筒を最初に探してください。
3年の期限から逆算して売却時期を決める
3,000万円特別控除の期限は、相続から3年を経過する年の12月31日です。
期限から逆算してスケジュールを組みます。
売却活動には、査定から媒介契約、売り出し、内見対応を経て売買契約と引き渡しに至る工程があります。
全体で半年から1年に及ぶことも一般的です。
買い手がつかずに価格を見直す場合は、さらに時間がかかります。
耐震改修や解体が必要な物件では、工事の見積もりと施工にも数ヵ月を見込みます。
期限まで1年を切っている場合は、仲介と並行して買取の査定も取っておくのが安全策です。
買取であれば引き渡しまでの期間を短くできるため、期限内の売却に間に合わせやすくなります。
期限を過ぎて控除を使えなくなる損失と、買取による価格の下がり幅を比べて判断してください。
買取の査定は、ベンナビ不動産売却からまとめて依頼できます。
空き家の売却と税金に関するよくある質問
空き家を売却しても税金がかからないことはある?
あります。
売却代金が取得費と譲渡費用の合計を下回って譲渡所得が出ない場合や、3,000万円特別控除で譲渡所得が消える場合は、譲渡所得税と住民税はかかりません。
ただし印紙税や登録免許税は、売却益の有無にかかわらず必要です。
相続した空き家を3年以内に売却しないとどうなる?
3,000万円特別控除は、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが条件です。
期限を過ぎると控除を使えず、譲渡所得の全額が課税の対象になります。
売却の予定があるなら、期限から逆算して動き始めてください。
住んでいない家でも3,000万円の特別控除は受けられる?
相続で取得した空き家であれば、被相続人が亡くなる直前までひとりで住んでいたなどの条件を満たすことで受けられます。
自分が以前住んでいた家を売る場合は、居住用財産を売ったときの3,000万円特別控除という別の制度が対象になります。
空き家を解体して更地で売ったら税金はどうなる?
解体費用は譲渡費用に算入できるため、譲渡所得を圧縮できます。
一方で、更地にすると住宅用地の特例の対象外です。
翌年1月1日の時点で所有していれば、土地の固定資産税は上がります。
空き家を売却して損失が出た場合も確定申告は必要?
譲渡損失が出て特例も使わないのであれば、確定申告の義務はありません。
相続した空き家の譲渡損失は給与所得などと損益通算できないため、申告しても税金が戻ることはありません。
まとめ|空き家売却の税金は特例の要件と期限の確認で決まる
空き家の売却では譲渡所得税と住民税が負担の中心になりますが、相続した空き家であれば3,000万円特別控除で税額がゼロになる場合があります。
押さえておきたいのは、4種類の税金と3つの特例、そして2つの期限です。
個別の売却期限は相続から3年を経過する年の12月31日、特例そのものの適用期限は2027年12月31日と定められています。
今日から着手できるのは、実家で購入時の契約書を探すことと、相続登記を済ませることの2つです。
どちらも売却の直前では間に合いません。
そして税額を具体的に計算するには、売却価格の目安が必要です。
ベンナビ不動産売却では、空き家や訳あり不動産の無料査定・買取相談を受け付けています。
まずは自分の空き家がいくらで売れるかを確かめて、手取り額と売却時期の判断につなげてください。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。