空き家

空き家売却の進め方とは?4つの売り方と手順・必要書類・つまずきやすい点を解説

空き家売却の進め方とは?4つの売り方と手順・必要書類・つまずきやすい点を解説

親から相続した実家が、誰も住まないまま数年が過ぎている。
固定資産税の通知は毎年届き、草木は伸び、近所への迷惑も気になる。
そろそろ手放したいと思っても、何から手をつければよいのか分からないまま時間だけが過ぎているという方は少なくありません。

空き家の売却には、そのまま仲介に出す方法から買取業者に直接売る方法まで4つの選択肢があります。
どれを選ぶかで変わるのは、売れるまでの期間と手元に残る金額です。
売り出す前に名義や境界を確認しておかないと、買主が決まってから取引が止まることもあります。

本記事では、4つの売り方の違いと、査定依頼から引き渡しまでの7ステップを解説します。
あわせて整理するのは、必要書類の一覧・つまずきやすい5つの注意点・かかる費用と税金です。
読み終えるころには、自分の空き家に合う売り方を選び、最初の一歩である査定依頼まで進められる状態になります。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

空き家を売却する4つの方法|自分の物件に合う売り方の選び方

空き家を売却する4つの方法 自分の物件に合う売り方の選び方

空き家の売り方は4つあり、築年数と急ぎ度で選び分けます

売り方売却価格の目安売却までの期間先に出す費用向いている空き家
そのまま仲介市場価格に近い水準3ヵ月〜1年程度なし建物がまだ使える、立地に需要がある
解体して更地で仲介土地の市場価格解体後に3ヵ月〜1年程度解体費建物の傷みが激しい、土地に需要がある
リフォームして仲介市場価格に近い水準工事後に3ヵ月〜1年程度リフォーム費部分的な補修で印象が大きく変わる
買取業者へ直接売却仲介より低い水準数週間〜1ヵ月程度なし築古、残置物あり、再建築不可、期限がある

解体やリフォームを選ぶと、費用を先に負担することになります。
買い手がつかなければその費用だけが手元から出ていくため、費用を先に出さない「そのまま仲介」か「買取」から検討するほうが安全です。

そのままの状態で仲介に出して売却する

仲介とは、不動産会社に買主を探してもらい、成約したときに手数料を払う売り方です。
建物を残したまま売り出すため、売主が事前に負担する費用がありません。

そのまま仲介の利点は、解体費もリフォーム費もかけずに市場価格に近い金額を狙える点です。
買主は実際に住む個人であることが多く、土地や建物を気に入った人が現れれば、価格を大きく下げずに成約します。

一方で、買い手が現れるまで待つ時間が必要です。
空き家は築年数が経っているものが多く、買い手が見つかるまで数ヵ月から1年以上かかることもあります。
その間も固定資産税は毎年かかり、草刈りや通風などの管理も続きます。
売り出してから成約までの維持費を含めて、手元に残る金額を考えておきましょう。

空き家を解体して更地にしてから売却する

建物を取り壊し、土地だけにしてから売り出す方法です。
買主は建物の状態を気にせず土地として評価できるため、購入を検討する層が広がります。

解体費用は建物の構造、立地、残置物の量によって変わり、坪単価をもとに見積もるのが一般的です。
狭い路地の奥にある空き家では重機が入らず、手作業が増えて費用が上がります。
金額の幅が大きいため、複数の解体業者から見積もりを取って比較してください。

もう一つ押さえておきたいのが固定資産税です。
住宅が建つ土地には課税標準を軽減する住宅用地特例が適用されていますが、建物を取り壊すとこの特例が外れ、翌年から土地の税額が上がります。
解体してすぐに売れればよいのですが、売れ残ると税負担だけが増えます。
実行するかどうかは、不動産会社に相談してから判断しましょう。

リフォームしてから売却する

内装や設備を直してから売り出す方法です。
写真の印象が良くなり、内見時の反応も変わります。

ただし、かけた費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。
築年数が経った物件を探している買主は、自分の好みに合わせて改装する前提で見ていることが多く、売主が選んだ内装が評価されない場合もあるためです。
数百万円をかけたのに価格に反映されなければ、かけた分が損失になります。

実施するなら、ハウスクリーニングや残置物の撤去、傷んだ箇所の部分補修など、少ない費用で印象が変わる範囲にとどめるのが現実的です。
大規模なリフォームを考えている場合は、先に不動産会社の査定を受け、工事をした場合としない場合で売却価格がどれだけ変わるかを確認してから決めてください。

買取業者に直接売却する

買取とは、不動産会社自身が買主になって物件を直接買い取る売り方です。
仲介と違って買い手を探す期間が要らないため、査定から決済まで数週間で終わることもあります。

価格の水準は仲介より下がります。
訳あり物件を扱う事業者の情報メディアでは、買取価格の目安は市場価格の50〜80%程度という説明です。

ただし空き家の買取相場を示す公的な統計はなく、実際の金額は物件の状態と業者の再販計画によって変わります。
1社の提示額だけで判断せず、複数の業者に査定を出して比較してください。

買取が向いているのは、仲介では買い手がつきにくい空き家です。
築古で傷みが激しい・残置物が残っている・再建築不可で建て替えができないといった物件が該当します。
相続税の納付期限が迫っているなど、売却時期が決まっているケースでも選択肢になります。

空き家売却の進め方|査定依頼から引き渡しまでの7ステップ

空き家売却の進め方 査定依頼から引き渡しまでの7ステップ
空き家売却の進め方 査定依頼から引き渡しまでの7ステップ

空き家の売却は、名義の確認から確定申告まで7つの段階で進みます

ステップやること目安期間主な相談先
①名義の確認登記事項証明書を取得し、必要なら相続登記1〜3ヵ月司法書士
②査定依頼複数社に机上査定・訪問査定を依頼1〜2週間不動産会社
③媒介契約一般・専任・専属専任のいずれかを締結数日不動産会社
④売却活動広告掲載、内見対応、価格交渉1〜6ヵ月不動産会社
⑤売買契約重要事項説明を受けて契約を締結1日不動産会社
⑥決済・引き渡し残代金の受領、登記、鍵の引き渡し1日司法書士
⑦確定申告譲渡所得を計算して申告翌年2〜3月税理士

全体で3ヵ月から1年程度を見ておくと現実的です。
買取を選ぶ場合は④の売却活動が不要になるため、査定から決済まで数週間に短縮されます。

①登記簿で名義を確認し、相続登記を済ませる

最初にやることは、売る準備ではなく名義の確認です。
法務局で登記事項証明書を取得し、現在の所有者として誰が記載されているかを確かめてください。
名義が亡くなった親のままになっていると、そのままでは売却できません。

相続で不動産を取得した場合は、相続登記をして名義を自分に変える必要があります。
相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。
正当な理由なく怠った場合は過料の対象になります

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

登記の申請は自分でもできますが、戸籍の収集を含めて手間がかかるため、司法書士に依頼するのが一般的です。
相続人が複数いる場合は遺産分割協議がまとまってからの登記になるため、話し合いに時間がかかると売却の着手時期も後ろにずれます。

②複数の不動産会社に査定を依頼して価格帯をつかむ

名義の確認と並行して、査定を依頼します。
査定には資料だけで概算を出す机上査定と、現地を見て精度を上げる訪問査定の2種類があります。
空き家は建物の傷み具合が価格を左右するため、最終的には訪問査定が前提です。

査定は必ず複数社に依頼してください。
1社だけでは、提示された金額が妥当なのか高いのか安いのか判断できません。
複数社の金額を並べて初めて、自分の空き家の価格帯が見えてきます。

安く買い叩かれていないかを確かめる手立てとして、複数社比較がいちばん実用的です。
仲介と買取の両方に査定を出しておくと、売り方の選択肢も同時に比べられます。

なお、査定額はその金額で売れることを保証するものではなく、売り出し価格を決めるための目安です。
近隣の成約事例など、金額の根拠を説明できる会社を選びましょう。

③媒介契約を結んで売却を依頼する

仲介で売ると決めたら、不動産会社と媒介契約を結びます。
契約は3種類あり、依頼できる会社数と報告義務が異なります。

契約種別複数社への依頼自己発見取引報告義務レインズ登録期限
一般媒介できるできるなし任意
専任媒介できないできる2週間に1回以上契約から7日以内
専属専任媒介できないできない1週間に1回以上契約から5日以内

空き家のように買い手が限られる物件で動きやすいのは、専任媒介か専属専任媒介です。
1社に絞られる分、担当者が広告や内見に手をかけやすく、販売活動の報告も定期的に届きます。
一般媒介は複数社に依頼できる反面、どの会社も本腰を入れにくいことがあります。

契約期間は、専任媒介と専属専任媒介で3ヵ月が上限です。
期間が満了したら、そのまま更新するか別の会社に切り替えるかを判断できます。
反応が薄いまま漫然と更新を続けないよう、区切りごとに販売状況を振り返ってください。
買取を選ぶ場合は媒介契約ではなく、業者と直接売買条件を詰める流れになります。

④売却活動を進めて購入希望者と条件を調整する

媒介契約を結ぶと、不動産会社が広告の掲載とレインズへの登録をおこない、購入希望者からの問い合わせと内見に対応します。
売主は室内の状態を整え、内見時に見てもらえる状態にしておきます。

遠方に住んでいる場合は、鍵を不動産会社に預けて内見に対応してもらう形が一般的です。
現地に何度も足を運ばなくても売却は進められるので、距離を理由に先延ばしにする必要はありません。

購入希望者から価格交渉が入ることもあります。
交渉に入る前に、いくらまでなら応じるかという下限を自分の中で決めておいてください。
決めずに交渉を始めると、その場の流れで下げすぎてしまいます。
売り出しから3ヵ月ほど問い合わせがない場合は、価格か売り方のどちらかを見直す時期です。

⑤売買契約を締結する

買主が決まったら、宅地建物取引士による重要事項説明を経て売買契約を結びます。
空き家の売買で最も注意して確認したいのが、契約不適合責任をどう定めるかです。

契約不適合責任とは、引き渡した物が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任のことです。
雨漏りやシロアリの被害など、引き渡し後に見つかった不具合について、買主から修補や代金の減額を求められることがあります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

把握している不具合は、告知書に正直に記載してください。
隠して引き渡すと、後から責任を問われます。
築古の空き家では、契約不適合責任を免責または一定範囲に限定する特約を結ぶことも実務上あります。
買取業者は現況のまま引き受けることに慣れているため、不具合の把握が難しい物件では買取のほうが後の負担は軽めです。

⑥決済・引き渡しと所有権移転登記をおこなう

決済日には、残代金の受領、所有権移転登記、鍵と関係書類の引き渡しが同じ日に進みます。
売主・買主・不動産会社・司法書士が同席し、入金を確認してから登記を申請する流れが一般的です。

住宅ローンが残っていて抵当権が設定されている場合は、決済と同時に抵当権抹消登記をおこないます。
金融機関との調整が必要になるため、決済日が決まった段階で早めに連絡してください。

固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課されるため、引き渡し日を基準に日割りで精算するのが商慣習です。
精算金の計算方法は契約時に確認しておきましょう。

遠方に住んでいて決済に立ち会えない場合は、司法書士に委任して手続きを進める方法もあります。
委任状と印鑑証明書を事前に用意する必要があるため、決済日が決まったら早めに相談してください。

⑦売却した翌年に確定申告をする

売却によって利益が出た場合は、翌年に確定申告をします。
申告の時期は売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。

見落としやすいのが、特別控除を使って納税額がゼロになるケースです。
控除は申告して初めて適用されるため、税額がゼロだからといって申告しないと控除を受けられません
相続した空き家を売って3,000万円の特別控除を使う場合は、必ず申告してください。

売却によって損失が出た場合、居住用財産であれば他の所得と損益通算できる特例がありますが、空き家には適用されないものもあります。
自分のケースで申告が必要かどうか判断に迷うときは、税務署か税理士に確認しましょう。

申告には売買契約書、取得時の資料、譲渡費用の領収書が必要です。
決済が終わった時点で関係書類をひとまとめにしておくと、翌年の作業が楽になります。

空き家売却に必要な書類一覧|取得先と手配のタイミング

空き家の売却では、3系統の書類が必要になります

取得先は法務局、市区町村役場、手元保管の3つに分かれます。
時間がかかるのは相続関係の戸籍と測量図なので、査定の段階から並行して集め始めるのが得策です。
紛失した書類にも代替手段があるため、揃わないことを理由に売却をあきらめる必要はありません。

売主本人と権利関係を示す書類

売主が本人であること、対象不動産の所有者であることを示す書類です。

書類名取得先有効期限の目安
運転免許証などの本人確認書類手元有効期限内のもの
登記済権利証または登記識別情報手元/登記時に交付されたものなし
印鑑証明書市区町村役場発行から3ヵ月以内
住民票市区町村役場発行から3ヵ月以内

印鑑証明書と住民票には有効期限の扱いがあるため、決済日が見えてから取得するほうが無駄になりません。
逆に早く取りすぎると取り直しになります。

権利証を紛失している場合でも売却は可能です。
司法書士が本人であることを確認して書面を作成する本人確認情報の提供という手続きで代替できるため、決済までに司法書士へ相談してください。
相続で取得した不動産では、相続登記の際に交付された登記識別情報が権利証にあたります。

登記上の住所が現住所と異なる場合は、決済までに住所変更登記が必要です。
実家を相続してから何度か引っ越している場合は該当しやすいため、登記事項証明書に記載された住所を早めに確認しておきましょう。

建物と土地の状態を示す書類

物件そのものの情報を示す書類です。
固定資産税納税通知書は税額の確認に、測量図と境界確認書は土地の面積と範囲の確定に、建築確認済証と検査済証は建物が適法に建てられたことの確認に使われます。

なかでも手配に時間がかかるのが測量図です。
境界が確定していない土地では買主から確定測量を求められることがあり、隣地所有者の立ち会いと同意が必要になるため数ヵ月を要します。
査定の段階で測量図の有無を不動産会社に伝えておけば、測量の期間を織り込んだ売却計画が可能です。

建築確認済証が見つからない古い建物もあります。
再建築ができるかどうかは価格に直結するため、書類がない場合は不動産会社に調査を依頼してください。
役所の建築計画概要書などで確認できることがあります。

相続した空き家で追加になる書類

相続した空き家では、相続登記に使った書類がそのまま売却でも必要になります。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が代表的なものです。

戸籍は本籍地の市区町村役場で取得します。
転籍を繰り返している場合は複数の自治体に請求することになり、郵送でのやり取りを含めて1ヵ月以上かかることもあります。
法務局で法定相続情報一覧図を作成しておくと、戸籍の束を何度も提出せずに済む仕組みです。

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書が売却の前提になります。
誰がその不動産を取得するかが決まらないと相続登記もできません。
話し合いの進め方そのものについては、相続を専門に扱う窓口へ相談してください。

空き家売却でつまずきやすい5つの注意点

空き家売却でつまずきやすい5つの注意点

空き家の売却が止まる原因は、5つに集約されます

いずれも売り出してから発覚すると取引そのものが止まります。
特に解体は、一度実行すると元に戻せない判断です。

相続登記が終わっていないまま売却を進めてしまう

名義が被相続人のままでは、決済日に所有権移転登記ができません。
買主が決まり、価格の合意ができていても、登記ができなければ取引は完了せず、契約解除や損害賠償の対象になることもあります。

相続登記の申請義務化により、正当な理由なく名義を放置している状態は過料の対象です。
売却の予定があるかどうかにかかわらず、相続で不動産を取得したら早めに登記を済ませておきましょう。

登記に必要な戸籍の収集は、司法書士に依頼すれば代行してもらえます。
売却の相談をした不動産会社から司法書士を紹介してもらえることも多いため、査定の際に名義が未了である旨を伝えておくと段取りが早く進みます。

名義が未了の段階でも、査定は依頼可能です。
登記が終わるのを待ってから動き出すのではなく、査定と登記を並行して進めるほうが、結果として売却までの期間は短くなります。

共有者・相続人全員の同意が取れていない

共有名義の不動産を丸ごと売るには、共有者全員の同意が必要です。
持分の多い少ないにかかわらず、1人でも反対すれば売却はできません。
兄弟で均等に相続した実家は、同意が揃わない状態になりやすい典型です。

全員が同意している場合でも、書類の段取りは残ります。
遠方の共有者がいるなら、委任状を用意して代理人が手続きを進めます。
連絡が取れない共有者がいる場合や、認知症などで判断能力が低下している共有者がいる場合は、家庭裁判所を通じた手続きが別途必要になり、売却までの期間も長めです。

どうしても全員の合意がまとまらないときは、自分の持分だけを売るという方法が残されています。
共有持分の買取に対応している業者もあるため、話し合いが行き詰まっている場合は選択肢として検討してください。

自己判断で先に解体して費用と税負担だけが残る

買い手が決まる前に解体すると、解体費を負担したうえに固定資産税の負担も増えます。
住宅が建つ土地に適用されていた住宅用地特例が外れ、翌年から土地の課税標準の軽減がなくなるためです。

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov 法令検索

建物があるほうが売りやすいケースもあります。
自分で改装したい買主や、建物ごと引き受ける買取業者にとっては、建物が残っていることが不利になりません。
更地にすれば必ず売れるわけではないため、解体が有利かどうかは物件ごとの判断です。

解体を検討するなら、まず不動産会社に相談してください。
買主が決まってから引き渡しまでに解体する契約にできれば、売れないまま費用と税負担だけを抱える事態を避けられます。
建物を残したまま売り出し、反応を見てから解体を判断するという順序も選べます。

残置物を片づけないまま売り出してしまう

家具・家電・衣類などが残ったままだと、内見時に部屋が狭く見え、生活感が残って印象が下がります。
引き渡し時にどちらが撤去するかで意見が食い違うと、契約後のトラブルにもなります。

仲介で売る場合、撤去して引き渡すのは原則として売主です。
撤去費用は物量と搬出のしやすさで変わり、2階からの搬出や道路が狭い立地では割高になります。
片づけには想定より時間がかかることも見込んでおいてください。
仏壇、写真、書類など、捨てるかどうかの判断に迷うものが必ず出てきます。

自治体によっては、片づけや処分の費用に対する補助制度を設けています。
空き家がある市区町村の窓口で確認してみましょう。
撤去そのものが難しい場合は、残置物がある状態のまま引き受ける買取を選ぶという方法もあります。

境界が確定しておらず引き渡し直前で止まる

隣地との境界が確定していないと、買主から確定測量を求められます。
確定測量には隣地所有者の立ち会いと署名押印が必要で、相手の都合に左右されるため数ヵ月かかることも珍しくありません。
古い空き家ほど境界標が失われがちです。

測量の過程で越境が見つかることもあります。
塀が隣地にはみ出している、樹木の枝が越えている、配管が隣地を通っているといったケースです。
見つかった場合は、処理方法を隣地所有者と決めてからでないと引き渡せません。

こうした事態を避けるには、査定の段階で測量図があるかどうかを不動産会社に伝えることです。
ない場合でも、測量にかかる期間と費用を最初から計画に織り込んでおけば、引き渡し直前で慌てずに済みます。

空き家売却にかかる費用の内訳

空き家の売却では基本の費用に加え、物件の状態に応じた費用が上乗せされます

費用には売買代金から差し引かれるものと、別途支払うものがあります。
先に払う費用ほど、売れなかったときに回収が困難です。

どの売却でも共通してかかる費用

売り方にかかわらず発生するのは、仲介手数料、登記費用、印紙税の3つです。

費用項目支払う相手発生するタイミング目安
仲介手数料不動産会社売買契約時と決済時に分割宅地建物取引業法に基づく上限あり
登記費用司法書士・法務局決済時数万円程度
印紙税売買契約時売買代金に応じて変動

仲介手数料には、宅地建物取引業法にもとづく上限が定められています。
価格の低い空き家については、通常の上限を超える媒介報酬を受け取れる特例が設けられており、遠方の物件調査などにかかる費用を反映できるようになっています。
適用の可否と実際の金額は、媒介契約を結ぶ前に不動産会社へ確認してください。

【参考】宅地建物取引業法|e-Gov 法令検索

買取を選んだ場合は、買主が不動産会社自身になるため仲介手数料がかかりません。

ただし売却価格そのものが仲介より低くなるため、手数料が不要になることだけを理由に買取を選ぶ判断は避けましょう。
仲介手数料を含めた手取り額どうしで比べることが大切です。

物件の状態によって上乗せされる費用

解体費、確定測量費、残置物撤去費は、物件の状態によって発生します。
いずれも売れる前に売主が負担するため、回収できるかを見極めてから実施してください。

解体費は建物の構造、立地、搬出のしやすさで変わります。
木造より鉄筋コンクリート造のほうが高く、重機が入らない狭い立地では手作業が増えて費用が上がります。
金額の幅が大きいため、必ず複数の業者から見積もりを取ってください。
見積もりには、廃材の処分費や整地費が含まれているかも確認しましょう。

確定測量は、隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確定させる作業です。
費用に加えて数ヵ月の期間がかかります。
残置物の撤去費は物量で決まり、家一軒分をまとめて処分すると相応の金額になります。

自治体によっては、解体費や片づけ費に対する補助制度も利用可能です。
申請先は空き家がある市区町村です。

空き家売却でかかる税金と使える控除

空き家を売って利益が出た場合には税金がかかります

利益が出なければ譲渡所得税はかかりません。
まず自分の売却で利益が出るかどうかを確認してから、控除の適用可否を見る順番です。

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で計算します。
譲渡所得から特別控除を差し引いた金額に税率をかけたものが税額です。
取得費には購入代金・購入時の仲介手数料・登記費用などが含まれます。
譲渡費用には売却時の仲介手数料・印紙税・解体費などが含まれます。

税率を分けるのは所有期間です。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、5年以下の短期譲渡所得より税率が下がります。

区分所有期間の判定税率の水準
短期譲渡所得売却した年の1月1日時点で5年以下長期より高い
長期譲渡所得売却した年の1月1日時点で5年超短期より低い

相続した空き家の場合、被相続人が取得した時期と取得費をそのまま引き継ぎます。
親が何十年も前に購入した実家であれば、相続してすぐに売っても長期譲渡所得の扱いです。

取得費が分からないときは、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。

ただし概算取得費では取得費が小さくなり、譲渡所得が大きく出て税額が増えます。
親の代の売買契約書が家の中に残っていないか、探す価値は十分です。

相続した空き家に使える3,000万円特別控除

相続した被相続人の居住用家屋を売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
空き家の売却で使える控除のうち、控除額が大きい制度です。

【参考】租税特別措置法|e-Gov 法令検索

主な要件は次のとおりです。

  • 被相続人が亡くなる直前までその家屋に一人で住んでいたこと(要介護認定を受けて老人ホームに入所していた場合も、一定の条件を満たせば対象になります)
  • 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 相続してから売却するまで、事業用、貸付用、居住用に使っていないこと
  • 相続の開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が一定額以下であること

2024年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上いる場合の控除額が1人あたり2,000万円に下がります。
取得費加算の特例など、併用できない制度もあります。

要件が細かく、適用の可否で手取りが大きく変わる制度です。
売る前に税務署か税理士に確認してください。
税額がゼロでも適用には確定申告が必要です。

空き家売却の相談先|相談内容別に頼る相手が変わる

空き家の売却では、相談したい内容によって窓口が変わります
売却そのものは不動産会社が入り口ですが、登記や税金は別の専門家の担当です。

相談したいこと相談先費用の目安
売却全般、価格、売り方の選択不動産会社査定は無料が一般的
相続登記、名義変更司法書士報酬+登録免許税
譲渡所得税、控除の適用可否税理士・税務署税務署の相談は無料
解体費の補助金、空き家バンク市区町村無料
相続人どうしの話し合いがまとまらない弁護士相談料は事務所により異なる

窓口を間違えると回り道になります。

たとえば登記が済んでいない状態で税理士に相談しても、先に司法書士の手続きが必要だと言われるだけです。
逆に、売れるかどうかも分からない段階で税金の試算を進めても、売却価格が決まらなければ計算できません。

現実的な進め方は、まず不動産会社に売却の相談をすることです。
査定を受ける過程で名義や境界の状態が整理され、登記が必要なら司法書士を、税金の判断が必要なら税理士を紹介してもらえることが多いためです。
自分で複数の窓口を回るより、売却の入り口から順に進めるほうが早く片づきます。

空き家の売却先に迷ったらベンナビ不動産売却の無料査定へ

4つの売り方と手順を見てきましたが、自分の空き家がいくらで売れて、どの売り方なら実際に動くのかは、査定を受けてみないと決まりません。
机の上で悩んでいる時間にも、固定資産税と管理の負担は続きます。

ベンナビ不動産売却が無料で受け付けているのは、空き家・共有持分・再建築不可物件・事故物件といった訳あり不動産の査定と買取相談です。
他社で買い手がつかなかった物件や、相続したまま何年も放置してきた空き家も相談の対象です。

  • 空き家をはじめとする訳あり不動産を取扱分野とする会社に相談できる
  • 査定と相談は無料で、金額を見てから売るかどうかを決められる
  • 残置物がある状態、名義が未整理の状態でも、現状のまま相談できる

売る決断をしてから相談する必要はありません。
まずは今の価格を知るところから始めてください。
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空き家が売れないときの4つの対処法

売り出しても反応がない場合は、順番に手を打っていきます

売れない原因は、価格、物件の状態、売り方の食い違いのいずれかです。
放置に戻ると管理不全の状態が進み、税負担の面でも不利になるため、動きを止めないことが大切です。

売り出し価格と売り方を見直す

まず確認するのは、問い合わせ自体がないのか、内見はあるが決まらないのかという点です。
問い合わせがない場合は売り出し価格が相場と合っていない可能性が高く、内見があるのに決まらない場合は物件の見せ方や説明に原因があります。

問い合わせがないときは、価格の改定を検討します。
広告に使っている写真・掲載している媒体・販売活動の報告内容もあわせて確認してください。
写真が暗い、掲載が1媒体のみといった状態であれば、直すだけで反応が変わります。

不動産会社の対応そのものに納得できない場合は、媒介契約の期間満了に合わせて会社を変える方法もあります。
専任媒介の契約期間は3ヵ月が上限のため、区切りの時期が判断のタイミングです。

買取業者への売却に切り替える

仲介で半年以上動かない空き家は、そもそも個人の買主が見つかりにくい物件である可能性が高いといえます。
半年動かない段階で判断したいのは、価格が下がっても確実に手放すか、待ち続けるかです。

判断の材料になるのは、保有し続けた場合の維持費です。
固定資産税、火災保険料、草刈りや通風などの管理費、遠方からの対応の手間が毎年かかり続けます。
維持費を何年分積み上げると、買取と仲介の価格差に近づくのかを計算してみてください。
数年待って結局売れないより、いま買取で決めたほうが手元に残る金額が多いこともあります。

買取に切り替える場合も、複数の業者に当たって条件を比較してください。
仲介で売れなかった実績があると足元を見られやすいため、複数社の提示額を並べる意味は仲介以上に大きくなります。

仲介で買い手がつかない空き家は、買取に対応する会社の査定を受けると出口が見つかる場合があります。
訳あり不動産を扱う会社へまとめて無料で査定を依頼できるのが、ベンナビ不動産売却です。

賃貸や活用に切り替えて保有し続ける

立地に需要があるなら、売らずに貸すという選択肢もあります。
家賃収入で固定資産税と管理費をまかなえるのであれば、急いで売る必要はありません。

賃貸に出すには、入居できる状態にするための改修費が先に必要です。
空き家として傷んでいる物件ほど、改修の初期費用が大きくなります。
建物を解体して駐車場や貸地にする方法もありますが、更地にすると固定資産税は上がるため、収入と税負担の差し引きで判断してください。

自治体が運営する空き家バンクに登録して、移住希望者との出会いを待つ方法もあります。
登録は無料で、売却と賃貸のどちらでも募集できる自治体が多いです。
活用の詳しい進め方については、空き家がある自治体の窓口で確認してください。

相続土地国庫帰属制度の利用を検討する

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。
買い手も借り手も見つからない土地を手放す最後の選択肢になります。

対象は土地に限られており、建物が建っている土地は申請できません
空き家を解体して更地にしてからでないと使えないため、解体費は自己負担です。
ほかにも、担保権が設定されていないこと、境界が明らかであることなど複数の要件があります。

承認された場合は、10年分の土地管理費相当額を負担金として納めます。
手元にお金が入る制度ではなく、費用を払って手放す制度です
売却できる見込みがあるなら、まず売却を検討するほうが金銭的には有利です。
買取業者に当たっても引き受け先がない場合の最終手段として位置づけてください。

空き家売却に関するよくある質問

Q

空き家を売却するまでにどれくらいの期間がかかる?

A

仲介なら3ヵ月から1年程度、買取なら数週間から1ヵ月程度が目安です。
相続登記が済んでいない場合は、戸籍の収集と登記申請に1ヵ月から3ヵ月ほど加わります。
売り出し前の準備期間も含めて計画を立ててください。

Q

空き家は残置物があるままでも売却できる?

A

仲介では原則として売主が撤去して引き渡しますが、買取であれば残置物がある状態のまま引き受けてもらえることが多いです。
片づけが難しい場合は、撤去費用を売主が負担するか、残置物ありで買い取ってもらうかを比較して決めましょう。

Q

空き家を売却したら確定申告は必要?

A

売却によって利益が出た場合は必要です。
3,000万円の特別控除などを使って納税額がゼロになる場合でも、控除の適用を受けるには確定申告が要ります。
申告しないと控除は適用されないため注意してください。

Q

相続した空き家は3年以内に売らないといけない?

A

売却そのものに期限はありません。
ただし3,000万円の特別控除を使うには、相続の開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却する必要があります。
控除を使いたい場合は、期限から逆算して動いてください。

Q

空き家を売却したら固定資産税はどうなる?

A

固定資産税は1月1日時点の所有者に課されるため、売却した年の分は売主に請求が届きます。
実務では引き渡し日を基準に日割りで精算し、引き渡し以降の分を買主が負担するのが商慣習です。
翌年からは買主に納税義務が移ります。

まとめ|空き家は売り方を決める前に査定で現在地をつかむ

空き家の売り方は、そのまま仲介・解体して更地で仲介・リフォームして仲介・買取業者へ直接売却の4つです。
どれを選ぶかは物件の状態と急ぎ度で決まります。
売却は名義の確認から始まり、査定・媒介契約・売却活動・売買契約・決済・引き渡し・確定申告の7ステップで進みます。

5つの注意点のうち、特に気をつけたいのが名義と解体のタイミングです。
名義が被相続人のままでは決済ができず、買い手が決まっても取引が止まります
解体は元に戻せないうえ、売れないまま費用と固定資産税の負担だけが残ることがあります
どちらも売り出す前に手を打てば回避可能です。

まずやるべきことは、解体やリフォームにお金を出すことではなく、自分の空き家がいまいくらなのかを知ることです。
ベンナビ不動産売却では、空き家や共有持分などの訳あり不動産について、無料で査定と買取相談を受け付けています。
判断に迷っている段階でも相談してみてください。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。