空き家

空き家とは?放置リスクと5つの使い道を解説

空き家とは?放置リスクと5つの使い道を解説

親が亡くなったり施設に入ったりして、実家が空き家のままになっている人は少なくありません。
年に数回だけ様子を見に行き、そのまま何年も過ぎている例も見られます。

空き家は、放置している期間が長くなるほど負担が増える一方です。
管理が行き届かないと行政から勧告を受け、土地の固定資産税は最大で6倍になる仕組みです。
さらに命令に従わなければ、50万円以下の過料も科されます。

本記事で説明するのは、空き家の定義と該当の判断基準・放置で起きる5つのリスク・5つの使い道・使える控除と補助金です。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

空き家とは|統計上と法律上の2つの定義がある

空き家とは、統計上はふだん人が住んでいない住宅、法律上は居住などの使用がなされていない状態が続いている建築物とその敷地を指します。

定義がふたつあるのは、目的が違うためです。
総務省の住宅・土地統計調査は住宅の実態を数えるために使い、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は行政が指導や勧告をおこなう対象を定めるために使います。

自分の実家がどちらの意味で空き家に当たるかによって、使える制度も受ける規制も変わります。
統計上の分類は使える補助金や税の特例に、法律上の位置づけは行政からの指導や勧告に関わる区分です。
ふたつを混同すると、自分の家が規制の対象かどうかを判断できません。
まず統計上の分類から確認しましょう。

統計上の空き家は4種類に分かれる

統計上の空き家は4つに分かれ、社会問題として扱われるのは「その他の住宅」です。

分類内容当てはまりやすい例
賃貸用の住宅賃貸のために空いている住宅入居者募集中のアパート、貸家
売却用の住宅売却のために空いている住宅販売中の中古住宅
二次的住宅別荘や、たまに寝泊まりする住宅別荘、単身赴任先の住まい
その他の住宅上の3つに当てはまらない住宅相続したまま使っていない実家

「その他の住宅」は、借り手や買い手を探しているわけでもなく、別荘として使っているわけでもない住宅です。
相続したあと使われないまま残った住宅が中心を占めます。

売却や賃貸に動いている住宅は行政の指導対象になりにくい一方、使い道が決まらないまま置かれている住宅は管理が止まりやすく、指導や勧告の対象に近づいていきます。

法律上の「空家等」は年間を通じて使用実績がない建築物を指す

空家法第2条第1項は「空家等」を、建築物とその敷地のうち、居住その他の使用がなされていないことが常態であるものと定めています。

常態にあたるかどうかの判断は、国土交通省のガイドラインで、おおむね年間を通して使用実績がないことが目安とされています。

「空家等」と「特定空家等」「管理不全空家等」は別の概念です。
空家等は使われていない建物全般を指しますが、後の2つは市町村長が状態を確認して認定する区分で、認定を受けて初めて税負担が変わるといった効果が生じます。

所有者には、空き家を適切に管理する努力義務があります。
2023年(令和5年)12月13日に施行された改正では、管理の努力義務に加えて、国や自治体の施策に協力する努力義務も定められました。
努力義務そのものに罰則はありませんが、管理を怠った結果として認定を受ければ、税負担や過料といった具体的な不利益につながります。

月に数回帰っている家は空き家に当たるのか

年間を通じて使用実績があると認められれば空家等には当たりませんが、管理状態が悪ければ近隣からの苦情や行政の指導の対象になります。

使用実績の有無は、電気やガス、水道の使用状況、人の出入りの状況などから判断されます。
仏壇の世話のために月に1回帰っているといった実態は、使用実績を否定しにくい材料です。

ただし、荷物を置いているだけで人が滞在していない場合は、使用実績があるとは評価されにくくなります。
物置として使っているという説明だけでは、居住実態があるとは認められません。

使用実績があっても、庭木の越境や外壁材の落下のおそれがあれば、周辺の生活環境の観点から指導の対象です。
空き家に当たるかどうかと、管理が適切かどうかは別の問題として扱われます。

日本の空き家は900万戸・空き家率13.8%で過去最高

日本の空き家は900万戸・空き家率13.8%で過去最高

全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高を更新しています(総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」、2023年10月1日時点)

前回調査の2018年(平成30年)と比べると、5年間で51万戸増えました。
増加は一時的な現象ではなく、調査のたびに過去最高が更新される状態が続いています。

数字の規模は、行政が対策を強めている理由に直結しています。
規制の対象が広がった2023年12月の空家法改正も、増加傾向が背景です。
自分の家だけの問題ではない一方で、制度が厳しくなる方向に動いている点は押さえておきましょう。
次に、内訳と増加の原因を順に見ていきます。

空き家数900万戸、空き家率13.8%はいずれも過去最高

2023年10月1日時点の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で、どちらも調査開始以来もっとも高い水準です。

住宅・土地統計調査は1948年(昭和23年)から5年ごとに実施されており、2023年の調査が16回目です。
長期の時系列で比較できる統計であり、空き家の増加傾向は一貫しています。

空き家率13.8%は、住宅のおよそ7戸に1戸が空き家という計算です。
地方の集落だけの話ではなく、都市部を含めた全国的な数字です。

空き家率は都道府県によって差があり、住宅が多い都市部でも実数としては相当な戸数が空き家になっています。
自分の実家が地方にあるかどうかにかかわらず、放置した空き家が行政の対象になりうる点は変わりません。

問題になるのは「その他の住宅」385万戸

賃貸用と売却用、二次的住宅を除いた空き家は385万戸で、実質的に放置されている空き家はここに含まれます(総務省統計局、2023年10月1日時点)。

385万戸は総住宅数の5.9%にあたり、2018年から37万戸増えました。
900万戸という数字には募集中の賃貸住宅も含まれるため、管理が止まりやすい住宅の規模を見るときはこちらの数字を使います。

相続した実家を使う予定がないまま置いている場合、統計上はこの区分に入ります。
行政が対策を強めている対象も、主にこの区分の住宅です。

募集中の賃貸住宅や販売中の中古住宅には管理する人がいますが、使い道が決まっていない住宅には日常的に手を入れる人がいません。
管理が止まった住宅は数年で見た目にも傷みが出るため、近隣からの苦情や行政からの指導につながりやすくなります。

空き家が増え続ける3つの原因

空き家が増える背景には、相続の急増、解体費と税負担、中古住宅が流通しにくい地域事情の3つがあります。

1つ目は、相続で取得したものの住む予定がない住宅が増えていることです。
子世代はすでに自宅を持っている場合が多く、実家に戻る前提がありません。

2つ目は、解体すると土地の固定資産税が上がる構造です。
住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用され、課税標準が軽減されています。
建物を取り壊すと特例がなくなるため、費用をかけて税負担を増やす判断になりにくくなります。

3つ目は、買い手や借り手が見つかりにくい地域では、売りたくても売れない状態が続くことです。
価格を下げても成約に至らず、そのまま年数が経過する例が少なくありません。

空き家を放置すると起きる5つのリスク

空き家を放置すると起きる5つのリスク

空き家を放置すると、5つのリスクが同時に進みます

「何年まで放置していいか」という質問がよく寄せられますが、年数で線が引かれているわけではありません。
判断されるのは建物と敷地の状態です。
5年放置していても管理されていれば指導の対象にならず、2年でも屋根が崩れていれば対象になります。

固定資産税が最大6倍になる

行政から勧告を受けると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が最大で6倍になります。

住宅が建っている土地は、200平方メートル以下の部分で課税標準が6分の1に軽減されています。
軽減される部分の呼び名が小規模住宅用地です。
200平方メートルを超える部分は一般住宅用地と呼ばれ、軽減は3分の1です。
勧告を受けた空き家の敷地は、住宅用地特例の適用対象から除外されます
小規模住宅用地の部分が軽減前の水準に戻るため、最大で6倍という言い方をします。

対象は特定空家等に限らない点に注意してください。
2023年12月13日に施行された改正で管理不全空家等が新設され、勧告を受ければ同じく特例の対象から外れることになりました。
指定される段階が手前に広がった形です。

税負担が変わるのは勧告を受けた時点であり、空き家になった時点でも、指導を受けた時点でもありません。
助言や指導の段階で改善すれば、税負担は変わらないままです。

命令に従わないと過料が科され、行政代執行では費用を請求される

勧告の次の段階である命令に違反すると50万円以下の過料が科されます(空家法第30条第1項)。

命令にも従わない場合、市町村は行政代執行によって建物を強制的に解体できます。
費用は所有者に請求されるため、自分で解体するよりも負担が大きくなることがあります

所有者が確知できない場合の手続きが略式代執行で、費用の請求先はやはり所有者です。
連絡が取れない状態にしていても、負担を避けられるわけではありません。

市町村の立入調査を拒んだり虚偽の報告をしたりした場合にも、20万円以下の過料が定められています(同条第2項)。
過料は前科がつく刑罰ではありませんが、金銭的な負担であることに変わりはありません。
命令が出る前の勧告の段階で対応すれば、いずれも避けられます。

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法 (https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127)(e-Gov法令検索)

倒壊や落下で第三者に損害を与えると賠償責任を負う

建物の設置または保存に問題があって他人に損害を与えた場合、所有者は土地工作物責任として賠償責任を負います(民法第717条)。

具体的には、台風で屋根材が飛んで隣家の車を壊した、老朽化したブロック塀が倒れて通行人にけがをさせたといった場面です。
土地工作物責任は、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が負う構造になっており、所有者は過失がなくても責任を問われることがあります

空き家では火災保険の扱いも別です。
人が住んでいない建物は住宅物件として扱われず、契約を継続できない場合や、一般物件として保険料が変わる場合があります。
契約中の保険が空き家の状態でも有効かどうかは、保険会社への確認が必要です。

傷んだ家は買い手がつかなくなる

換気も通水もされない住宅は傷みが早く、放置期間が長いほど売却できる価格帯は下がります。

湿気がこもると木部の腐朽やカビが進みやすく、雨漏りを放置すれば構造材まで傷むおそれがあります。
人が住んでいる住宅であれば早期に気づいて対処できる不具合も、空き家では見つかったときには手遅れになりがちです。

建物に値段がつかなくなると、取引は土地の価格から解体費を差し引いた金額でおこなわれます。
さらに傷みが進むと、買主が解体費用の負担を嫌って成約しなくなります

買主がつかない段階まで進むと、残る選択肢は費用をかけた処分です。

売れるうちに動けば手元に現金が残りますが、売れなくなってからでは解体費を自分で用意することになります。
同じ物件でも、判断の時期によって収支の向きが逆になります。

住んでいなくても維持費は毎年発生する

固定資産税や火災保険料、草刈りの費用は、住んでいなくても毎年かかります。

費目内容発生頻度
固定資産税土地と建物にかかる税金毎年
都市計画税市街化区域内の土地と建物にかかる税金毎年
火災保険料建物の火災や風災に備える保険契約に応じて毎年または一括
草刈り・剪定敷地の雑草や庭木の管理年2〜3回程度
巡回管理通風、通水、目視点検の委託費用委託した場合は毎月

遠方に住んでいる場合は、様子を見に行くための交通費も継続して発生します。
年に数回の帰省でも、往復の費用と時間の合計は相応の負担です。

判断を先送りしている間も、税と保険料と管理費は毎年出ていきます。
使い道が決まらないまま10年が経てば、10年分の維持費を払ったうえで、より傷んだ建物が残ることになります

特定空家と管理不全空家に指定される条件

特定空家と管理不全空家に指定される条件

行政は助言・指導から勧告命令、行政代執行へと段階を追って手続きを進めます
勧告の段階で税の優遇が外れます。

区分はふたつあり、管理不全空家等のほうが手前の段階です。
すでに危険な状態にあるものが特定空家等、放置すれば特定空家等になるおそれがあるものが管理不全空家等にあたります。

指定は自動的におこなわれるものではなく、市町村長が状態を確認したうえで認定します。
認定の基準は、国土交通省のガイドラインです。

近隣からの通報がきっかけになる例が多く、通報を受けた市町村が現地を確認し、所有者を調べたうえで手続きを始めます。
遠方に住んでいると、指導の通知が届いて初めて状況を知ることになります。

管理不全空家等は特定空家になるおそれがある状態

管理不全空家等とは、適切な管理がされておらず、放置すれば特定空家等に該当するおそれがあると認められる空家等のことです(空家法第13条第1項)。

2023年12月13日に施行された改正で新設された区分で、市町村長は管理不全空家等に対して指導と勧告をおこなえます。
窓ガラスが割れたままになっている、雑草が敷地を覆っているといった段階でも対象になります。

勧告を受けたときの効果は、特定空家等と同じ住宅用地特例からの除外です。
倒壊の危険が生じる前の段階で税負担が変わる点が、2023年改正の要点です。

改正前は倒壊のおそれがある水準まで傷まなければ税負担は変わりませんでした。
改正後は、窓や外壁、庭木の管理を怠った段階でも対象になります。
年に数回の草刈りと外観の確認を続けているかどうかが、実務上の分かれ目になります。

特定空家等は4つの状態のいずれかに当たる空き家

特定空家等は、次の4つのいずれかに該当すると認められる空家等です(空家法第2条第2項)。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理がおこなわれていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

判断の材料は建物の外観だけに限りません。
ごみの放置による悪臭や害虫の発生、動物のすみつきなど、周辺への影響も評価の対象です。

認定の基準は国土交通省の「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」に示されています。
運用の詳細は市町村ごとに定められます。

助言・指導から行政代執行までの4段階

手続きは4段階で、途中で改善すれば以降へは進まない仕組みです。

① 助言・指導:市町村が所有者へ改善を求めます。
この段階では税負担は変わりません

② 勧告:改善されない場合の次の段階です。
住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍になります

③ 命令:勧告にも従わない場合におこなわれます。
違反すると50万円以下の過料が科されます

④ 行政代執行:市町村が建物を強制的に解体します。
費用は所有者に請求されます

各段階の間には猶予期間が設けられ、改善のための期限が示されます。
手続きは段階を踏んで進むため、通知に対応していれば直ちに解体へ進むことは通常ありません。

止められる時期として重要なのは勧告の前です。
助言や指導を受けた段階で草を刈る、危険な部分を修繕するといった対応を取れば、税負担が変わらないまま解決できる場合があります。

空き家の使い道5つ

空き家の使い道は、売却・賃貸や活用・解体・譲渡や寄付・管理委託の5つです

選択肢費用の目安向いているケース注意点
売却仲介手数料などの諸費用需要のある立地、建物に価値が残る場合税の特別控除に期限がある
賃貸・活用修繕費が先行して必要借り手が見込める立地修繕費の回収期間の試算が必要
解体解体費と残置物の処分費建物の傷みが激しい場合更地にすると土地の税が上がる
譲渡・寄付名義変更の費用引き取り手が具体的にいる場合自治体は原則引き取らない
管理委託月額の委託費用結論を出すまでの期間状況は改善しない
空き家の使い道5つ

判断する順番は、立地、建物の状態、急ぐかどうかの3点です。
需要のある立地なら売却か賃貸、需要が薄く建物も傷んでいるなら解体か譲渡が中心の選択肢になります。

売却する

建物に価値が残るなら現況のまま、傷みが激しいなら解体費を織り込んだ土地としての売却が基本です。

売却の方法は仲介と買取の2つです。
仲介は不動産会社に買主を探してもらう方法で、時間はかかりますが市場価格に近い金額になります。
買取は不動産会社が直接買い取る方法で、早く現金化できる代わりに価格は仲介より下がります。

相続した空き家を売る場合、3,000万円の特別控除に期限がある点に気をつけてください。
売却時期は、期限から逆算して決める必要があります。

買い手がつかない場合は、価格の見直しに加えて自治体の空き家バンクへの登録も検討します。
移住希望者など、一般の不動産市場とは違う層に届くルートです。

傷みが進んで一般の仲介では買い手がつきにくい空き家でも、訳あり不動産を扱う会社の査定を受けると値が付く場合があります。
ベンナビ不動産売却では、査定と買取の相談を無料で受け付けています。

貸す・活用する

借り手が見込める立地であれば賃貸は収支を読みやすい選択肢ですが、修繕費の回収にかかる期間を先に試算する必要があります。

賃貸に出すなら、雨漏りや給排水設備の不具合といった生活に支障が出る部分の修繕が欠かせません。
内装を全て新しくする必要はなく、どこまで直すかは想定する家賃と入居者層からの逆算です。

費用をかけたくない場合は、現況渡しやDIY可の条件で貸す方法があります。
借主が自分で手を入れることを前提に家賃を抑える形です。
地域の団体へ集会所や活動拠点として貸す例も見られます。

借り手が見込めない立地では、修繕費が回収できないまま空室が続きます。
周辺の賃貸物件の空室状況を確認したうえで、選ばない判断も必要です。

解体して更地にする

解体すれば管理の負担はなくなりますが、更地にすると住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がります。

解体費用は建物の構造と規模、立地によって変わります。
木造より鉄骨造や鉄筋コンクリート造のほうが高く、重機が入らない狭い道路に面した土地では作業費も割高です。
家財が残っている場合は、残置物の処分費が別途必要です。

税の面では、勧告による特例解除との違いを整理しておく必要があります。
勧告を受けて特例が外れる場合は建物が残ったまま税負担だけが増えますが、解体の場合は建物分の固定資産税がなくなり、土地分だけが上がります。
どちらが有利かは建物の評価額次第です。

自治体の解体補助金を使う場合は、着工前の申請が条件になる点だけ先に押さえておいてください。

譲る・寄付する

自治体への寄付は原則として受け付けられず、無償譲渡は引き取り手が見つかるかどうかで決まります。

自治体が寄付を受けない主な理由は2つあり、固定資産税の税収が減る点と、管理の負担を抱える点です。
公共の用途で使う具体的な計画がある場合を除いて、断られる前提で考えます。

無償譲渡には、受け取る側に贈与税がかかる可能性があります。
個人から個人への無償譲渡は贈与にあたり、建物と土地の評価額に応じた課税の対象です。
0円で引き渡す話がまとまっても、受け取る側の税負担が理由で破談になる例も少なくありません。

土地だけを手放す方法として相続土地国庫帰属制度があります。

ただし対象は土地に限られ、建物が残っている土地では使えない制度です。
建物を解体してからの申請になります。

管理を委託する

結論を出せない期間は、巡回管理を委託して劣化と近隣との問題を防ぐ方法があります。

管理サービスの内容は事業者によって異なります。
通風・通水・郵便物の確認・外観の目視点検・写真付きの報告が一般的です。
庭木の剪定や草刈りは別料金になることが多くなります。

管理の頻度は月1回程度が目安です。
通水を怠れば排水口の封水が蒸発して下水の臭気が上がり、通風を怠れば湿気がこもりがちです。
月1回の訪問で、臭気と湿気の2つは防げます。

ただし、管理を委託しても税の扱いは変わらず、建物の資産価値が回復するわけでもありません。
委託は判断を先送りするための手段ではなく、判断するまでの時間を確保するための手段です。
いつまでに結論を出すかの期日を決めたうえで利用します。

空き家に使える税制優遇と補助金

相続した空き家の売却には3,000万円の特別控除があり、解体や改修には自治体の補助金があります

制度内容期限窓口
空き家の3,000万円特別控除譲渡所得から最大3,000万円を控除2027年12月31日までの譲渡税務署
解体(除却)補助金老朽化した空き家の解体費の一部を補助自治体ごと(年度予算)市区町村
改修・リフォーム補助金改修費の一部を補助自治体ごと(年度予算)市区町村
空き家バンク自治体が空き家情報を公開し利用希望者へつなぐ期限なし市区町村

検討する順番は、期限のある制度が先です。
特別控除には相続開始からの期限があり、間に合わなければ税負担が大きく変わります。

補助金の要件は自治体ごとに異なります。
上限額・対象となる建物の条件・申請時期のいずれも共通ではないため、物件のある市区町村の窓口が確認先です。

相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋などの要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。

対象は、2016年4月1日から2027年12月31日までの間におこなわれた譲渡です。

主な要件は次のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 譲渡のときに一定の耐震基準を満たすこと、または家屋を取り壊して売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合に控除額が2,000万円になります。
相続人の人数によって控除額が変わる点は見落としやすいため、遺産分割の段階で確認します。

適用には確定申告が必要です。
要件の判定は個別事情で変わるため、税務署か税理士に確認しましょう(国税庁タックスアンサーNo.3306)。

解体費用と改修費用の補助金

多くの自治体が、老朽化した空き家の除却費や改修費の一部を補助しています。

除却補助は、倒壊のおそれがある空き家の解体費用を対象とする制度です。
補助率と上限額は自治体ごとに定められており、建物の劣化度を判定したうえで対象かどうかが決まります。
改修補助は、移住者の住まいとして使う場合など、活用を条件とする制度が中心です。

申請は着工前が原則です。
工事を始めてから申請しても対象外になる制度が多く、解体業者と契約する前に窓口へ相談する必要があります。

予算にも上限があります。
年度の途中で受付が終わる自治体もあるため、年度が始まった早い時期に確認するほうが確実です。

補助の対象になるかどうかは、建物の劣化度の判定結果で決まります。
判定を受けるだけでも時間がかかるため、解体の時期が決まっているなら数か月前から窓口に相談しましょう。

空き家バンクと不動産会社の違い

空き家バンクは自治体が運営する情報提供の仕組みで、売買や賃貸の仲介そのものは不動産会社がおこないます。

空き家バンクに登録すると、自治体のサイトに物件情報が掲載されます。
登録に費用がかからない自治体が多く、目に触れるのは移住希望者や地域で住まいを探している層です。
ただし自治体は契約の当事者にはならず、成約手続きは提携する不動産会社が担当するのが一般的です。

不動産会社の仲介は、市場での売買を前提に買主を探し、契約と引き渡しまでを担います。
仲介手数料はかかりますが、価格の査定から契約書の作成までを任せられます。

国土交通省が運営する全国版空き家・空き地バンクなら、自治体をまたいだ横断検索も可能です。
自分の物件がある自治体に空き家バンクがあるかどうかは、市区町村の窓口で確認できます。

空き家を相続したときの手続き

空き家を相続したら、相続を知った日から3年以内に相続登記を済ませる必要があります

進める順番は次の3手順です。

① 名義を確認し、相続登記を申請する

② 現況と残置物を確認する(建物の傷み、境界、家財の量)

③ 維持費を把握する(固定資産税、保険料、管理費用)

期限のある手続きから先に押さえます。
相続登記は3年以内、3,000万円の特別控除は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、どちらも動き出しが遅れると選択肢が狭まります。

名義が親のままだと、売却も解体の補助申請も不可能です。
名義変更は司法書士に依頼できるほか、法務局の窓口でも手続きの相談を受け付けています。
まず登記事項証明書を取り、現在の名義を確認するところから始めましょう。

空き家を相続したときの手続き

相続登記は2024年4月1日から義務化された

不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象になります。

相続登記の申請義務化は2024年(令和6年)4月1日に施行されました。
相続で不動産の所有権を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に申請する義務を負い、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象になります。

施行前に発生した相続も対象です。
すでに相続していて名義を変えていない不動産がある場合、2027年(令和9年)3月31日までに登記する必要があります。
不動産を相続で取得したと知った日が2024年4月以降であれば、知った日から3年以内です。

遺産分割の話し合いがまとまらない場合は、相続人申告登記を使えます。
登記簿上の所有者の相続人であることを期限内に登記官へ申し出る制度で、特定の相続人が単独で申し出られます。
申し出れば申請義務を果たしたことになります(法務省)。

相続放棄しても管理義務が残る場合がある

相続放棄をしても、空き家を現に占有していた場合は、次に管理する人が決まるまで保存義務が残ります。

相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月です。
負債のほうが多い場合など、放棄が合理的な選択になる場面はあります。

ただし民法第940条には、放棄した人が放棄のときにその財産を現に占有している場合の定めがあります。
相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意での保存が義務です。
実家に住んでいた相続人が放棄した場合、引き渡しまで責任が残ります。

引き渡す相手がいない場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。
申立てには予納金が必要になる場合があり、金額は事案しだいです。
放棄しても費用がかかる場合があります

空き家の売却先に迷ったら「ベンナビ不動産売却」の無料査定で確かめる

空き家をどうするかを決めるには、いくらで手放せるのかという金額の目安が必要です。
金額が分かれば、解体して更地にするのか、そのまま買い取ってもらうのか、当面は管理を続けるのかを費用と見比べて選べます。

ベンナビ不動産売却では、一般の仲介では買い手がつきにくい空き家の査定と買取の相談を無料で受け付けています。
傷みが進んだ家、再建築ができない土地、共有名義の不動産も相談の対象です。

査定を受けても売却するかどうかは自由で、金額を知ったうえで判断できます。
管理を続けるか手放すかを決める材料として活用してください。

空き家に関するよくある質問

Q

空き家は何年まで放置していいですか

A

放置できる年数の基準はありません
判断されるのは建物と敷地の状態です。
管理されていれば長期間空き家でも指導の対象になりませんが、屋根や外壁が崩れかけていれば短期間でも管理不全空家等に認定されることがあります。
年数ではなく、状態を維持できているかどうかで考えましょう。
月1回の通風と通水、年2〜3回の草刈りを続けていれば、急に指導を受ける状態にはなりにくくなります。

Q

空き家を売却したら確定申告は必要ですか

A

売却して譲渡所得が出た場合は確定申告が必要です。
3,000万円の特別控除を使う場合は、控除の結果として税額がゼロになるときでも申告が必要になります。
売却代金が取得費と譲渡費用を下回り、譲渡所得が出ないときは申告義務はありません。
取得費が分からない相続物件では計算が複雑になるため、判断に迷う場合は税務署か税理士に確認しましょう。

Q

空き家の解体費用が用意できないときはどうすればいいですか

A

まず市区町村の解体補助金を確認しましょう。
老朽化した空き家の除却費を補助する制度があり、着工前の申請が条件です。
補助を使っても不足する場合は、解体を前提に土地を売却し、売却代金から解体費を精算する方法があります。
買主が解体を引き受ける条件で価格を調整する形です。
不動産会社に、解体費込みでの買取が可能かを相談する方法もあります。

Q

空き家を0円でもらうと贈与税はかかりますか

A

個人から個人への無償譲渡は贈与にあたるため、建物と土地の評価額に応じて贈与税がかかる可能性があります。
0円という取引価格ではなく、相続税評価額をもとに課税される点が要注意です。
基礎控除額を超える場合は申告と納税が必要になります。
名義変更の登録免許税と不動産取得税、その後の固定資産税も引き受けることになります。
譲り受ける前に評価額と維持費を確認しましょう。

Q

空き家の管理は月に何回くらい必要ですか

A

月1回程度が目安です。
月1回の通風・通水・郵便物の確認・外観の点検で、劣化と近隣との問題の多くは防ぎやすくなります。
庭木の剪定と草刈りは年2〜3回が目安です。
遠方で通えない場合は、管理を委託する方法を検討しましょう。

Q

近所の空き家が危険なときはどこに相談すればいいですか

A

物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口に相談しましょう。
多くの自治体が建築や住宅の部署に窓口を置いています。
市町村は所有者を調べて助言や指導をおこない、改善されなければ勧告や命令へ進みます。
相談の際は、住所と危険な状態が分かる写真を用意しておきましょう。
倒壊が差し迫っているなど緊急性が高い場合は、消防や警察にも連絡してください。

まとめ|空き家は期限のある制度から逆算して動く

空き家は放置している間も費用が積み上がるため、期限のある制度から逆算して判断の期日を決めることが要点です。
空き家とは統計上ふだん人が住んでいない住宅、法律上は使用されていない状態が続いている建築物を指します。
勧告を受けると固定資産税が最大6倍になり、命令違反には50万円以下の過料が科される可能性があります。
使い道は売却・賃貸や活用・解体・譲渡や寄付・管理委託の5つがあります。
選ぶ基準は立地と建物の状態にあります。

期限のある制度は次の2つです。
相続した空き家の3,000万円特別控除は、2027年12月31日までの譲渡が対象です。
売る期限は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日になります。
相続登記は相続を知った日から3年以内で、施行前の相続は2027年3月31日が期限です。

まずは固定資産税の納税通知書で名義と評価額を確認しましょう

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。