空き家買取のデメリット7つと価格差を縮める5つの対策
親から相続した実家が空き家のまま残っている。
管理の手間と固定資産税を考えると手放したいものの、買取という方法には「安く買い叩かれる」という不安がつきまといます。
売却の窓口を探し始めた段階で、買取に踏み切ってよいのか迷う方は少なくありません。
買取価格が仲介での売却相場を下回るのは、再販を前提とする業者のビジネス構造から生じる結果です。
ただし、デメリットは価格だけではありません。
買取に対応する会社が少ないことや、物件によっては買い取ってもらえないことも、事前に知っておきたい要素です。
本記事では、空き家買取の7つのデメリットを整理し、価格差を縮めるための5つの対策を解説します。
買取と仲介のどちらが向いているかを物件条件から判断する基準と、売らずに放置した場合に生じる負担も扱います。
読み終えるころには、自分の空き家をどう手放すかの判断材料がそろう構成です。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
空き家の買取とは?仲介との違いを先に押さえる

空き家の買取は、不動産会社が買主となって直接買い取る売却方法です。
仲介のように一般の買主を探す工程がないため、売却先の決まり方から価格の決まり方まで、仲介とは仕組みが異なります。
デメリットの中身を理解するには、再販前提の取引構造を先に押さえておく必要があります。
買取の不利な点の多くは、業者が再販を前提に買うという一点から生じているためです。
| 比較項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 売却先 | 不動産会社 | 一般の個人・法人 |
| 売却までの期間 | 数週間〜2ヵ月程度 | 3ヵ月〜6ヵ月程度 |
| 仲介手数料 | 原則としてかからない | 成約価格に応じて発生する |
| 成約価格 | 市場相場を下回る | 市場相場に近い |
| 契約不適合責任 | 免責とする特約が多い | 売主が負うことが多い |
5つの比較項目のうち、買取が不利になるのは成約価格です。
期間と手間と責任の3点では、買取が有利になります。
優劣ではなく、売主の事情によって向き不向きが分かれる関係です。
仲介で高く売れる物件であれば仲介を選べばよく、買い手がつきにくい物件では買取が現実的な出口になります。
まずは、価格が下がる仕組みから確認していきます。
買取は不動産会社が再販を前提に直接買い取る取引
買取では、不動産会社そのものが買主になります。
買主を探す期間が不要なため、内覧対応や購入希望者との条件交渉も原則として発生しません。
その代わり、業者は買い取った空き家を再販して利益を出す前提の値付けです。
査定額からは、リフォームや解体にかかる費用、登記や税金などの取得にかかる費用、再販までの保有期間中の管理費が差し引かれます。
売れ残ったときの損失を見込む分も、価格に織り込み済みです。
結果として、仲介で売った場合の想定価格を下回る金額が提示されます。
価格が下がること自体は、再販ビジネスの構造から生じる正常な結果であり、法令に違反する行為ではありません。
安さと不当さは切り分けて判断してください。
仲介との違いは売却先・期間・手数料・価格・責任の5点
仲介との違いは、比較表に挙げた5点に集約されます。
買取で不利になるのは価格の1点だけで、ほかの4点は買取のほうが売主の負担を減らします。
売却先と期間については、買主が業者に固定されるぶん、決済までの日程を先に読める点が利点です。
仲介では買主が現れるまで期間が読めないため、空き家の管理を続けながら待つことになります。
手数料と価格については、買取では媒介の報酬が発生しない一方、成約価格そのものが下がります。
手数料の節約分と価格の下落分を比べると、多くのケースで上回るのは価格の下落分です。
契約不適合責任については、買取では免責とする特約が結ばれることが多く、引き渡し後に欠陥が見つかっても売主が追加の負担を負いにくくなります。
空き家買取の7つのデメリット
空き家買取のデメリットは、価格に関するもの、業者の少なさに関するもの、そもそも売れない場合に関するものの3系統に整理できます。
よく知られているのは価格の話ですが、実務で行き詰まりやすいのは業者が見つからない場合と、買取を断られる場合です。
空き家買取のデメリットは、次の7つに集約できます。
自分の空き家に当てはまるものがいくつあるかを見ながら読み進めてください。
当てはまる数が少なければ、買取を選んでも不利益は限定的です。
| 系統 | デメリット |
|---|---|
| 価格 | 仲介の相場より売却価格が下がる |
| 価格 | 査定額の根拠が見えにくい |
| 価格 | 残置物の処分費や解体費が差し引かれる |
| 業者 | 買取に対応する会社が少ない |
| 売れない | 立地や状態によっては買取を断られる |
| その他 | 売却後に買い戻せない |
| その他 | クーリング・オフが使えない |
3系統のうち、読者の判断に影響しやすいのは価格に関する3項目です。
売れない場合の項目は、当てはまるかどうかが物件の条件で決まります。
ひとつずつ、内容と対処の方向性を確認していきます。
売却価格が仲介の相場より下がる(目安は6割〜8割)
空き家買取で最大級の負担になるのは、売却価格の下落です。
再販にかかる費用と利益が差し引かれるため、仲介で売れる想定額よりも低い金額が提示されます。
買取価格の水準について、公的な統計は公表されていません。
各社の公表値では、市場相場の60%〜80%程度が一つの目安です。
物件の状態と立地によって幅が大きく動くため、目安として受け取ってください。
たとえば仲介で1,000万円で売れる見込みの空き家であれば、買取では600万円〜800万円が提示額の目安になります。
差額の200万円〜400万円が、業者の再販にかかる費用と利益にあたります。
差額を許容できるかどうかが、買取を選ぶかどうかの分かれ目です。
買取に対応する不動産会社が仲介より少ない
買取に対応できる不動産会社は、仲介を扱う会社より数が限られます。
買取では業者が自社の資金で物件を購入し、再販までの在庫リスクを自ら負うためです。
とくに地方や過疎地では、再販の見込みが立ちにくいため、買取を扱う会社がさらに絞られます。
都市部であれば複数社から査定を取れる一方、地方では1社〜2社しか候補が見つからない場合もあります。
候補が少ないと、提示額を比較する材料が不足したままです。
1社の金額だけでは、高いのか低いのかを判断できないままになります。
空き家の取扱実績がある会社を軸に探し、地域を限定しない買取会社も候補に加えると、比較できる相手を増やせます。
全国対応をうたう買取会社は、地方の物件でも査定に応じる候補です。
立地や状態によっては買い取ってもらえない
買取では、再販の見込みが立たない物件は断られます。
業者は買い取った空き家を売って利益を出すため、買い手がつく見通しが立たない物件は在庫として抱えられません。
断られやすいのは、次のような条件の空き家です。
- 接道の条件を満たさず、建て替えができない再建築不可の物件
- 周辺に住宅需要がほとんどない過疎地の物件
- 建物の傷みが激しく、解体費が土地の価値を上回る物件
- 残置物が大量に残り、処分費が高額になる物件
断られた場合でも、訳あり物件を専門に扱う買取会社であれば対応できるケースがあります。
再建築不可の物件を隣地の所有者へ売る、賃貸物件として再生させるなど、通常の買取会社とは異なる出口を持つためです。
1社に断られた時点で売却をあきらめる必要はありません。
訳あり物件に対応する会社は、ベンナビ不動産売却でまとめて探せます。
査定額の根拠が見えにくく比較しづらい
買取の査定額は、業者ごとの再販計画に左右されます。
仲介の査定が周辺の成約事例から市場価格を推定するのに対し、買取の査定は「自社がいくらで再販できるか」から逆算されます。
そのため、同じ空き家でも会社によって金額が大きく割れる状態です。
再販先の販路を持つ会社と持たない会社では、数百万円の差がつくこともあります。
金額だけを告げられて内訳が示されない場合、価格の妥当性を検証できません。
仲介の査定であれば周辺の成約事例と照らして確かめられますが、買取ではその比較ができないためです。
査定を受けるときは、想定するリフォームの内容と再販価格の見込みを尋ね、内訳を出してもらってください。
根拠を説明できる会社かどうかが、比較の判断材料になります。
残置物の処分費や解体費を買取価格から差し引かれることがある
家財や家電を残したまま売れることは買取の利点ですが、処分の費用は買取価格に織り込まれます。
業者が処分費を負担するぶん、提示額から差し引かれる仕組みです。
解体をともなう場合、差し引き額はさらに大きくなります。
一般的な住宅の解体費用は、100万円前後という水準が目安として示されています。
木造か鉄骨か、前面道路の広さによって金額が変わる点も特徴です。
問題になりやすいのは、差し引きの内訳が示されない場合です。
現状のまま買い取るという説明だけで金額が下がっていると、処分費が適正かどうかを判断できません。
何にいくらを見込んでいるかを、査定の段階で確認してください。
自分で処分業者に見積もりを取れば、差し引き額が妥当かどうかの目安になります。
売却したあとに買い戻すことはできない
買取で売却すると、所有権は不動産会社に移ります。
業者が第三者に再販したあとは、元の所有者が買い戻すことは実質的にできません。
相続した実家で起こりやすいのが、売却後に親族から出る異論です。
「相談されていれば自分が引き取った」という声が、引き渡しのあとに出るケースです。
所有権が移ったあとでは、話し合いで戻すことはできません。
売却を決める前に、相続人と親族の間で意思を確認しておいてください。
写真や動画で建物の記録を残しておくと、思い出の面での折り合いをつけやすくなります。
なお、共有名義になっている空き家であれば、共有者全員の同意がないと売却手続きそのものを進められません。
名義の状況を先に確かめておけば、話し合いの範囲も明確です。
買取ではクーリング・オフが使えない
契約したあとで気が変わっても、買取ではクーリング・オフを理由に契約を解除できません。
宅地建物取引業法のクーリング・オフは、不動産会社が売主で個人が買主になる取引を対象とする制度だからです。
買取では、売主が個人で買主が不動産会社という関係になります。
売主である個人を保護する制度ではないため、適用の対象から外れます。
契約後に取り消せる余地があるのは、契約書に解除条項が定められている場合や、事実と異なる説明で契約させられた場合だけです。
いずれも、主張する側が事情を説明する必要があります。
買取では契約前の確認が実質的な防御手段になるため、契約書と重要事項説明書を事前に受け取り、内容を確かめてから署名してください。
空き家買取の4つのメリット
空き家買取には、価格の低さと引き換えに得られる利点があります。
売却にかかる手間と期間、引き渡し後の責任という3方向で、売主の負担が減る仕組みです。
デメリットと利点は、同じ構造から生まれた表と裏の関係にあります。
仲介では、買主を探す期間と内覧の対応、引き渡し後の欠陥への責任が売主に残ります。
買取では3点とも軽くなるため、時間や手間をかけられない事情がある人に向く方法です。
買取で軽くなる負担は4点あります。
価格の下落分と、手間と期間と責任の軽減分のどちらを重く見るかが、買取と仲介を分ける判断軸になります。
遠方に住んでいる、相続人が複数いて早く現金化したい、建物の状態に不安があるといった事情が重なるほど、効いてくるのは買取の利点です。
4つの利点を順に確認しましょう。
解体もリフォームもせず現状のまま売れる
買取では、空き家を現状のまま引き渡せます。
売却前の解体やリフォーム、ハウスクリーニングは原則として不要です。
仲介で売る場合、買主の印象を良くするために片付けや修繕を求められることがあります。
遠方に住んでいる場合、片付けのために何度も現地へ通う負担が発生します。
買取では、業者が再販前に自ら手を入れる前提です。
家財や家電が残ったままでも査定を受けられ、荷物の処分を業者に任せられる会社もあります。
仏壇や神棚のように扱いに配慮が必要なものも、対応した実績のある会社であれば相談できます。
相続した実家に前の世代の家財が残っている場合、現状のまま売れる利点は大きめです。
片付けだけで数十万円の費用と数週間の時間がかかる例もあるためです。
買主を探す期間が不要で早く現金化できる
買取では、売却までの期間を先に見通せます。
買主を探す工程がないため、査定から決済までの日程が固定されるからです。
仲介の場合、買主が現れるまでの期間は読めません。
売り出しから成約までの平均は3ヵ月〜6ヵ月とされますが、空き家は買い手がつきにくく、半年以上かかることもあります。
待っている間も続くのが、固定資産税と管理の手間です。
買取であれば、査定から決済まで数週間〜2ヵ月程度が目安です。
物件の調査と社内の決裁、契約と決済という工程が決まっているため、日程を先に組み立てられます。
相続税の納付期限が迫っている場合や、遺産分割で現金化を急ぐ場合には、期間の読みやすさが判断材料になります。
相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内という定めです。
仲介手数料がかからない
買取では、仲介手数料は原則として発生しません。
仲介手数料は媒介という業務に対する報酬であり、業者自身が買主になる買取は媒介にあたらないためです。
仲介の場合、報酬額には上限が定められています。
売買価格が400万円を超えるときは「売買価格の3%+6万円」に消費税を加えた金額が上限です。
1,000万円で売れた場合、税込で約39万6,000円がかかります。
なお、価格の低い空き家については媒介報酬の特例があります。
2024年7月1日から、売買価格800万円以下の宅地建物では、売主と買主のそれぞれから税込33万円を上限として報酬を受け取れるようになりました。
低価格帯では、仲介でも手数料が割高になる点は押さえておいてください。
契約不適合責任を免責にしやすい
買取では、契約不適合責任を免責とする特約が結ばれることが多くあります。
売主が引き渡し後の追加負担を避けやすい点は、買取の実務上の利点です。
契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約の内容に適合しないときに、売主が修補や代金の減額、損害賠償などに応じる責任をいいます。
雨漏りやシロアリの被害が引き渡し後に見つかった場合、個人が売主の中古住宅では売主が責任を問われます。
長く空き家だった建物は、売主本人にとっても状態が未知数です。
買主が不動産会社であれば、建物の状態を専門的に確認したうえで買い取るため、免責の特約に応じてもらいやすくなります。
ただし、免責は自動的に付くものではありません。
契約書の特約欄で、免責の範囲を確認してください。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
空き家買取のデメリットを小さくする5つの対策

空き家買取のデメリットは、事前の準備で小さくできます。
とくに価格差については、相場を自分で把握し、複数社を比較するだけで詰められる部分が残っています。
逆に、査定を1社だけ受けてその場で契約すると、詰められたはずの差がそのまま手取りの差です。
買取は仲介より進行が速いため、準備を後回しにすると検討の時間を確保できません。
5つの対策は、査定を依頼する前の準備、査定中の比較、契約前の確認という3つの段階に分かれます。
次の順で進めてください。
| 手順 | やること | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 公的データで相場の目安を調べる | 30分程度 |
| 2 | 買取と仲介の両方に査定を依頼する | 1週間〜2週間 |
| 3 | 3社以上の提示額を手取り額で比べる | 1日 |
| 4 | 残置物と解体の要否を業者に確認する | 査定時 |
| 5 | 査定額の内訳と減額条件を書面で確認する | 契約前 |
順序には意味があります。
相場を知らないまま査定を受けると、提示額が高いのか低いのかを判断できないためです。
先に自分の物差しを持っておくと、業者の説明を検証しながら聞けます。
3社以上に査定を依頼し、査定額ではなく手取り額で比べる
比較すべきは提示された査定額ではなく、諸費用を差し引いたあとに手元に残る金額です。
査定額が高くても、残置物の処分費や測量費を売主負担とする条件であれば、手取りは逆転します。
買取の査定額は業者ごとの再販計画で決まるため、同じ空き家でも金額が割れます。
3社以上に依頼すれば、極端に低い提示や高すぎる提示を見分けられる状態です。
依頼するときは、各社に同じ情報を伝えてください。
建物の傷み具合、残置物の量、境界の確定状況を同じ条件で示さないと、比較の前提がそろいません。
あわせて、諸費用の負担区分も各社に確認してください。
測量費や残置物の処分費をどちらが負担するかで、手取り額は数十万円単位で変わります。
提示額の順位が、手取り額では入れ替わることもあります。
仲介での売却可能性も並行して確かめる
買取の査定と同時に、仲介の査定も取ってください。
両方の金額を並べると、買取価格が妥当な範囲に収まっているかを自分で判断できます。
仲介でも売れる見込みがある空き家であれば、期間に余裕を持たせて仲介を試す選択肢が出てきます。
駅から近い・建物が比較的新しい・土地の形が整っている。
こうした条件がそろう物件は、仲介での成約が期待できます。
売却の期限が決まっている場合は、仲介で一定期間売り出し、売れなければ買取に切り替える進め方もあります。
買取保証を用意している会社であれば、期間内に売れなかったときの買取価格を先に決めたうえでの仲介も可能です。
切り替えの時期をあらかじめ決めておくと、判断が先送りになりません。
公的データで相場の目安を自分で調べておく
空き家の相場は、公的なデータベースで無料で調べられます。
業者の提示額だけを見て判断すると、金額の妥当性を検証できません。
国土交通省の不動産情報ライブラリは、実際の取引価格を地域別に公開する情報源です。
地図上で対象の地域を選び、土地と建物の取引事例を確認できます。
不動産流通機構が運営するレインズ・マーケット・インフォメーションでも、成約価格の分布を確認できます。
調べるときは、土地と建物を分けて見てください。
築年数が古い空き家では、建物の価値がほとんど残っておらず、土地の価格が査定額の中心になります。
木造住宅では、築20年を超えると建物の評価がほとんど付かない扱いになることもあります。
近隣の似た条件の土地がいくらで取引されたかが、査定額の妥当性を検証する物差しです。
残置物の処分と解体は自己判断で先に進めない
査定を受ける前に解体や処分を進めると、かけた費用が価格に反映されないことがあります。
買取では、業者が自社の手配で処分するほうが費用を抑えられる場合が多いためです。
解体には、税負担が変わるという別の問題もあります。
建物を取り壊して更地にすると、住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例が適用されなくなり、翌年度の税額が上がります。
売却が翌年以降にずれ込んだ場合、増えた税額は自分の負担です。
処分と解体の要否は、査定の段階で業者に確認してください。
解体を前提とする買取であれば、費用を業者が負担したうえで価格に反映させる形になります。
現状のまま引き渡すほうが手取りが多くなるケースは珍しくありません。
査定額の内訳と減額の条件を書面で確認する
契約直前の減額を防ぐには、査定額の内訳と減額の条件を事前に書面で確認しておくことが有効です。
口頭のやり取りだけでは、あとから条件が変わったときに確かめる材料が残りません。
不動産会社には、契約が成立するまでに重要事項を書面で説明する義務と、契約内容を記載した書面を交付する義務が定められています。
書面の交付を渋る会社や、内訳の提示を避ける会社は、外してよい候補です。
やり取りは口頭で終わらせず、メールで記録を残してください。
減額の可能性がある条件を先に文書で示してもらえば、契約直前の値下げ交渉に応じるかどうかを冷静に判断できます。
記録が残っていれば、話が食い違ったときにも経緯をたどれます。
買い手がつきにくい空き家ほど、複数社の無料査定で差が出る
再建築不可、遠方、老朽化が進んでいる。
こうした条件が重なる空き家ほど、業者ごとの査定額の差が開きます。
再販の販路を持つ会社と持たない会社で、想定できる出口がまったく異なるためです。
1社の査定だけで決めてしまうと、1社の再販計画がそのまま売却価格になります。
買い手がつきにくい物件ほど、複数社を比べる効果は大きめです。
ベンナビ不動産売却では、空き家や共有持分、事故物件といった訳あり不動産の買取に対応する会社へ、無料で査定を依頼できます。
複数社の提示額と根拠を並べて比べたうえで、売るかどうかを判断してください。
査定を受けたからといって売却する義務は生じないため、相場を知る目的で使うこともできます。
空き家を売らずに放置した場合のデメリット3つ
空き家を手放さずに持ち続ける選択にも、負担がともないます。
放置した場合の負担は、税金が増える方向、賠償責任を負う方向、維持費がかかり続ける方向の3方向で積み上がります。
3つの負担に共通するのは、時間が経つほど大きくなる点です。
建物の傷みは進み、売却できる価格は下がり、管理の手間は増えていきます。
空き家は全国で増え続けており、行政の対応も年々厳しくなる方向です。
買取で価格が下がることを避けた結果、放置の負担が上回るケースもあります。
売却を先送りした5年間で維持費を払い続けたうえ、査定額も下がっていたという例もあります。
買取と放置の損得は、単年ではなく数年単位で比べてください。
3つの負担を順に確認していきます。
管理不全空家・特定空家に指定されると固定資産税が上がる
適切に管理されていない空き家は、市区町村から指定を受けて固定資産税が上がることがあります。
住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を軽くする特例が適用されているためです。
住宅用地に対する特例では、200平方メートル以下の部分について課税標準が6分の1に軽減されます。
ところが、そのまま放置すれば倒壊などの危険がある特定空家等に指定されると、特例の対象から外れます。
特定空家等になるおそれがある管理不全空家等も同じ扱いで、市区町村から勧告を受けた時点で特例の適用外です。
管理不全空家等の区分は、2023年の法改正で新たに設けられました。
従来は倒壊のおそれがある段階まで進まないと対象になりませんでしたが、改正後はおそれの段階で勧告の対象になります。
早い段階で税負担が増える仕組みに変わったため、傷みが進む前の判断が求められます。
【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov 法令検索)
【参考】地方税法(e-Gov 法令検索)
倒壊や落下で近隣に被害が出ると損害賠償を求められる
空き家の倒壊や外壁の落下で近隣に被害が出た場合、所有者が損害賠償の責任を負います。
建物などの工作物の設置や保存に欠陥があり、他人に損害を与えたときの責任は、所有者にまで及ぶと定められているためです。
責任を負うのは、占有者が損害の発生を防ぐために必要な注意をしていた場合です。
誰も住んでいない空き家では、所有者が直接に責任を問われる場面が多くなります。
被害が起きやすいのは、台風や大雪のあとです。
屋根材の飛散や塀の倒壊で隣家の車や建物を傷つけると、修理費の負担を求められます。
けが人が出た場合、負担する金額はさらに大きくなります。
遠方に住んでいて状態を確認できない場合、危険度は高めです。
火災保険に空き家として加入できるか、補償の範囲がどこまでかも確認しておいてください。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
使っていなくても維持費と管理の手間はかかり続ける
空き家は、使っていなくても毎年の費用が発生します。
固定資産税と都市計画税、火災保険料が代表的な費目です。
遠方の空き家では、費用に加えて移動の負担も生じます。
年に数回の見回りに交通費と時間がかかり、管理を業者に委託すれば月額の費用が上乗せされます。
庭木の剪定や草刈りを頼めば、1回あたり数万円が必要です。
さらに、時間が経つほど建物の傷みは進みます。
人が住まない家は換気がされず、湿気がこもって傷みが早い状態です。
雨漏りやシロアリの被害が広がると、買取の査定額も下がります。
持ち続ける費用と、売却価格が下がる分の両方が積み上がる点に注意してください。
数年分の維持費を合計すると、買取での価格差に近い金額になることもあります。
買取と仲介はどちらを選ぶべきか|物件条件からの判断基準
買取と仲介の選択は、売却の期限と建物の状態、立地の3条件から判断できます。
感覚で決めるのではなく、条件に当てはめて考えると結論が出しやすくなります。
判断の起点になるのは、いつまでに売る必要があるかです。
期限が決まっていれば買取が、余裕があれば仲介が候補の中心になります。
期限が決まっていない場合でも、管理を続けられる期間には限りがあります。
次の表で、自分の空き家がどちらに近いかを確かめてください。
| 判断軸 | 買取が向くケース | 仲介が向くケース |
|---|---|---|
| 売却の期限 | 期限が決まっている | 期限に余裕がある |
| 建物の状態 | 傷みが進んでいる | 住める状態を保っている |
| 立地 | 需要が乏しい地域にある | 駅や生活施設に近い |
| 周囲への配慮 | 売却を知られたくない | 広く買主を募りたい |
条件が分かれる場合は、売却の期限を優先してください。
期限が決まっているときは、価格よりも確実性が重要になります。
どちらとも決めきれない場合は、買取と仲介の両方に査定を出して金額を見比べる方法もあります。
買取が向いている空き家の条件
買取が合理的になるのは、次の4つの状況です。
売却の期限が決まっている場合、建物が古い場合、遠方にある場合、再建築不可などの制限がつく場合になります。
当てはまる数が多いほど、買取を選ぶ意味が大きくなります。
期限がある場合とは、相続税の納付や遺産分割の期日が迫っているケースです。
売却時期を読めることが、価格の高さより重要になります。
建物の傷みが進んでいる場合や、再建築不可などの制限がある場合も、買取が現実的な選択肢になります。
仲介では買主が住宅ローンを組めず、成約に至りにくいためです。
遠方に住んでいて内覧の対応が難しい場合や、近隣に売却を知られたくない場合も、買取が向きます。
買取では広告を出さずに取引が完結するため、売却の事実が周囲に伝わりにくくなります。
仲介での売却を優先したい空き家の条件
立地に需要があり、売却の期限に余裕があるなら、仲介のほうが手元に残る金額は大きくなります。
仲介手数料を払っても、成約価格の差がそれを上回るためです。
駅から徒歩圏にある、生活施設が近い、土地の形が整っているといった条件がそろう空き家は、仲介で買主が見つかる可能性があります。
築年数が新しく、簡単な清掃で住める状態であれば、なおさら仲介が向きます。
仲介で売り出す場合は、切り替えの時期を先に決めておいてください。
3ヵ月〜6ヵ月を目安に、反響がなければ買取へ切り替えるという線を引いておくと、判断が先送りになりません。
媒介契約の期間は3ヵ月が上限と定められているため、更新のタイミングが判断の区切りになります。
相続した空き家を買取で売る前に確認したい2つの期限
相続した空き家を売る場合、税金と登記のそれぞれに期限が定められています。
売却の時期を決めるうえで見落とせない要素です。
ひとつは、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例の適用期限です。
もうひとつは、相続登記の申請期限になります。
どちらも期限を過ぎると、金銭的な不利益が生じます。
特例を使えば税負担が数百万円単位で変わり、登記が済んでいなければ売却そのものが止まったままです。
どちらも、査定を受ける段階で状況を確かめておきたい要素です。
期限を過ぎてから気づいても、あとから取り戻すことはできません。
適用の可否は個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は税務署や税理士、司法書士に確認してください。
本章では、売却時期の判断に関わる要点だけを整理します。
空き家の3,000万円特別控除は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象
相続した空き家を売って利益が出た場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
適用の対象は、平成28年(2016年)4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。
主な要件は次のとおりです。
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
売却の期限にも定めがあります。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡で、相続人の数が3人以上である場合、控除額は2,000万円までになります。
【参考】No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
相続登記をしないと空き家は売却できない
名義が亡くなった方のままでは、空き家を売却できません。
買主に所有権を移す前提として、相続人への名義変更が必要になるためです。
相続登記の申請は、2024年4月1日から義務になりました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することが求められ、正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象になります。
2024年3月31日以前に相続が発生していた場合も、義務の対象に含まれます。
買取を検討している場合は、査定と並行して登記の状況を確認してください。
登記事項証明書は、法務局の窓口やオンラインで取得できます。
相続人が複数いる場合、遺産分割の話し合いに時間がかかり、売却時期が後ろへずれることがあります。
空き家買取のデメリットに関するよくある質問
空き家の買取相場は市場価格の何割くらいですか?
公的な統計は公表されていません。
業者の公表値では、市場相場の60%〜80%程度が目安として示されています。
建物の傷み具合や立地の需要によって幅が動くため、複数社の査定で確かめてください。
空き家の買取に費用はかかりますか?
買取では、仲介手数料は原則としてかかりません。
ただし、登記費用や印紙税、譲渡所得が出た場合の税金は売主の負担です。
残置物の処分費や解体費が買取価格から差し引かれる場合もあるため、内訳を確認してください。
国や自治体が空き家を買い取る制度はありますか?
国が個人の空き家を直接買い取る制度はありません。
自治体によっては、空き家バンクへの登録支援や、除却費用の補助を用意しています。
土地だけであれば、相続土地国庫帰属制度の利用も選択肢です。
買い取ってもらえなかった空き家はどうすればよいですか?
1社に断られても、訳あり物件を扱う買取会社であれば対応できることがあります。
ほかに、隣地の所有者への売却の打診、空き家バンクへの登録、解体して土地として売り出す方法も選択肢になります。
空き家の買取に必要な書類は何ですか?
登記識別情報または権利証、固定資産税の納税通知書、本人確認書類が基本です。
相続した空き家では、相続登記を済ませたうえで、被相続人と相続人の戸籍関係の書類が必要になります。
境界確認書や建築確認済証があれば、査定の精度が上がります。
まとめ|買取の価格差は準備で詰められる
空き家買取のデメリットは、価格が下がること、対応する会社が少ないこと、物件によっては売れないことの3系統に整理できます。
なかでも価格の下落は、業者の公表値で市場相場の60%〜80%程度とされており、買取を選ぶかどうかの中心的な判断材料になります。
一方で、価格差の多くは準備しだいで詰められる部分です。
公的データで相場を調べ、買取と仲介の両方に査定を出し、3社以上を手取り額で比べる。
残置物と解体の要否を先に確認し、査定額の内訳と減額の条件を書面で残す。
5つを順に進めれば、提示額が妥当かどうかを自分で判断できます。
空き家や共有持分、事故物件といった訳あり不動産は、業者によって出せる金額が大きく変わります。
ベンナビ不動産売却は、訳あり不動産の買取に対応する会社へ無料で査定を依頼でき、金額と根拠を比べられるサービスです。
売却を決める前に、まず相場を確かめてください。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。