訳あり物件の査定はどこに頼む?査定額が決まる仕組みを解説
相続した家や長く空き家になっている物件について、不動産会社に査定を断られたり、想定よりはるかに低い金額を提示されたりして戸惑う方は少なくありません。
断られた理由も、提示額の根拠も説明されないまま話が終わってしまう場合があります。
訳あり物件の査定は、通常の中古住宅の査定とは見ているところが別物です。
周辺の取引事例に当てはめるだけでは金額が出ず、瑕疵をどう解消するか、解消できない場合は誰が引き受けるかまで踏み込んで計算されるためです。
同じ物件でも、依頼する相手によって示される金額の意味が変わります。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
訳あり物件の査定とは|依頼先によって示される金額の意味が変わる
査定とは、不動産会社が対象の物件について、売却できる見込みのある価格を述べる意見をいいます。
法律で定められた評価額でも、確定した売却額でもありません。
不動産取引では、物件が抱える欠陥や不利な事情のことを瑕疵(かし)と呼ぶのが通例です。
訳あり物件の査定では、瑕疵の内容が評価の中心に置かれます。
周辺の似た物件がいくらで売れたかという情報だけでは足りず、瑕疵を解消するための費用や、解消できない場合に買主が受け入れるかどうかまで検討されるためです。
同じ物件を査定に出しても、依頼先によって出てくる金額は変わります。
買主を探すことを前提に予想価格を出す会社もあれば、自社で買い取る価格を出す会社もあるためです。
金額を比べる前に、受け取る数字がどちらの性格を持つのかを押さえておく必要があります。
査定と鑑定評価は別のもの|鑑定評価は不動産鑑定士だけが行える
査定と混同されやすい言葉に鑑定評価があります。
両者は制度上まったく別の手続きです。
鑑定評価とは、不動産の経済価値を判定してその結果を価額に表示することをいいます(不動産の鑑定評価に関する法律第2条)。
同法第36条は、不動産鑑定士でない者が不動産鑑定業者の業務に関して鑑定評価を行うことを禁じています。
つまり鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務であり、不動産会社が出す査定書は鑑定評価書ではありません。
費用の扱いも別です。
不動産会社による査定は無料で行われる場合が多く、売却を検討する段階で気軽に依頼できます。
一方、不動産鑑定士による鑑定評価は有料で、物件の規模や調査の範囲に応じた報酬が発生します。
使い分けの目安は、売却価格の見当をつける場面なら査定です。
遺産分割で相続人の間の取り分を決める場面や、裁判で価格そのものが争点になる場面では、鑑定評価が使われる場合があります。
仲介の査定と買取の査定は、示している金額の意味が違う
査定額には2つの性格があります。
買主を探す前提で示される予想価格と、業者が自ら買い取る価格です。
仲介の査定額は、示した価格で売り出せば買主が見つかりそうだという予想にとどまります。
実際に売れる保証はなく、買主が現れるまでの期間も約束されません。
反応がなければ値下げを重ねることになり、最終的な成約価格は査定額を下回りがちです。
買取の査定額は、業者がその金額で買い取ると示す価格です。
買主を探す工程が省かれるため、話がまとまれば短期間で現金化できます。
業者は買い取った物件を再販するため、再販にかかる費用と利益を引いた金額になり、仲介の査定額より低く出ます。
2つの違いは次の表のとおりです。
| 項目 | 仲介の査定 | 買取の査定 |
|---|---|---|
| 依頼先 | 仲介を行う不動産会社 | 買取を行う不動産会社 |
| 金額の性格 | 売り出しの目安となる予想価格 | 業者が買い取る実際の価格 |
| 売却までの期間 | 買主が現れるまで/数ヵ月以上になる場合もある | 条件が整えば数週間程度 |
| 確実性 | 売れない場合がある | 合意すれば成立する |
| 訳あり物件との相性 | 買主が限られるため成約しにくい | 瑕疵を前提に値付けするため成立しやすい |
一般の不動産会社に査定を断られる・極端に安い額が出る2つの理由
訳あり物件を持ち込んで査定を断られる経験は珍しくありません。
物件そのものに問題があるというより、取引の仕組み上、扱いにくい事情があるためです。
理由は大きく2つあります。
買主が住宅ローンを使えず仲介では買い手の見通しが立たないことと、引き渡したあとに売主が責任を負う可能性があることです。
2つの理由を知っておくと、次にどこへ相談すればよいかが決まります。
どちらも物件の価値がないという判断ではなく、通常の仲介という売り方に乗りにくいという話にすぎません。
売り方を変えれば金額が付く余地は十分です。
断られた会社の数が判断材料になるわけでもありません。
訳あり物件を扱った経験のない会社に何社当たっても、返ってくる答えは同じです。
理由①買主が住宅ローンを使えず、仲介では買い手の予測が立たない
再建築不可の物件や違法建築の物件は、買主が金融機関の融資を受けにくくなります。
建築基準法第43条は、建築物の敷地が道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。
接道の条件を満たさない敷地は、いま建っている建物を取り壊しても新築ができない扱いです。
将来にわたって建て替えができない土地は、担保としての評価が付きにくくなります。
担保評価が認められないと、買主は住宅ローンの審査を通せません。
その結果、購入できるのは現金で支払える人だけです。
買主の層が大きく狭まります。
仲介を行う会社にとっては、売り出しても成約する見込みが立たない案件です。
成約しなければ仲介手数料も発生しません。
広告費と人手だけがかかる案件のため、取り扱い自体を断る会社も出るわけです。
断られても、物件に値段が付く道は残っています。
買取を前提とする会社なら、同じ物件でも検討の土俵に乗ります。
理由②引渡し後に売主が契約不適合責任を負う可能性がある
もう1つの理由は、引き渡したあとに売主が負う責任にあります。
引き渡された物件が契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対して修補や代替物の引渡しなどの追完を請求できます。
対象になるのは種類・品質・数量の3つです。
相当の期間を定めて追完を求めても応じられないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。
また、契約不適合責任には期間の定めがあります。
買主がその不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、原則として追完の請求などができなくなります
。
雨漏りやシロアリ被害のように引渡し後に発覚しやすい不具合を抱えた物件では、責任をめぐるやり取りが起きやすくなります。
個人の売主が責任を負いきれない案件を通常の仲介で扱うことに、慎重になる会社が出てきます。
訳あり物件の査定額が決まる仕組み|評価を左右する6つの要素

訳あり物件の査定額は、通常の価格から瑕疵を解消する費用と再販費用を差し引いて算出されます。
評価を左右する要素は6つあります。
順に確認していきましょう。
①瑕疵の種類|物理的・法的・心理的・環境的のどれに当たるか
瑕疵は4つの区分に整理できます。
どの区分に当たるかによって、費用をかければ解消できるものと、解消できないものに分かれます。
解消できるかどうかの違いが、査定額への反映のされ方の分かれ目です。
| 区分 | 内容 | 一軒家での例 | マンションでの例 |
|---|---|---|---|
| 物理的瑕疵 | 建物や敷地そのものの不具合 | 雨漏り、シロアリ被害、建物の傾き | 給排水管の劣化、水漏れ |
| 法的瑕疵 | 法律上の制約がある | 再建築不可、違法建築 | 建ぺい率や容積率の超過 |
| 心理的瑕疵 | 過去に人の死があった | 自死や他殺があった家 | 室内で亡くなった住戸 |
| 環境的瑕疵 | 周辺環境に事情がある | 嫌悪施設が近い、騒音や臭気 | 隣接地の再開発、日照の変化 |
物理的瑕疵は修繕によって解消できます。
修繕にかかる費用が見積もられ、見積もり分が査定額から差し引かれる形で処理されます。
一方、法的瑕疵と心理的瑕疵は、費用をかけても解消できない性質です。
再建築不可の土地は工事をしても建てられるようにはならず、過去に人の死があった事実も消えません。
買主が受け入れるかどうかの問題として残るため、価格に固定的に反映されます。
環境的瑕疵は中間の位置づけです。
騒音や臭気であれば設備で軽減できる場合がありますが、周辺施設そのものは動かせません。
複数の区分に重なって該当する物件では、解消できない側の瑕疵が金額を強く押し下げます。
②再建築の可否と接道状況
建て替えができるかどうかは、訳あり物件の査定で最も大きな分岐になります。
確認するのは、敷地が建築基準法上の道路に2メートル以上接しているかという点です。
原則として幅員4メートル以上の道路が対象になり、満たさない敷地では建物を建てられません。
旗竿地や、通路部分が2メートルに満たない敷地では特に注意してください。
再建築ができない場合、査定はいま建っている建物を使い続ける前提で組み立てられます。
更地にすると新しい建物を建てられなくなるため、解体して土地として売る選択肢が取れなくなり、値付けの幅が狭まります。
接道の状況は、書類だけでは判断がつかない項目です。
公図や測量図で敷地の形を確認したうえで、現地で前面道路の幅や接している長さを実測して初めて確定します。
訪問査定が必要になる代表的な項目です。
③権利関係|共有持分・借地・相続登記の未了
権利の状態は、査定額よりも先に確認されます。
単独で売れる状態にあるかどうかで、取れる方法が変わるためです。
共有名義の物件で自分の持分だけを売却する場合、物件全体の評価額に持分割合を掛けた金額にはなりません。
持分を買い取った側は単独では建て替えも売却もできず、ほかの共有者との協議が必要になるためです。
協議が要る制約を織り込んだ金額が示されます。
借地権付きの建物にも別の前提があります。
建物を売却するには地主の承諾が必要で、承諾料の負担も事前の確認事項です。
相続した物件では、登記の状態も確認されます。
相続登記が済んでいないと売却の手続きに進めません。
相続によって所有権を取得した者は、3年以内に登記を申請する義務を負います(不動産登記法第76条の2第1項)。
④建物の状態|築年数・旧耐震基準・傷みの程度
建物の状態は、修繕や解体にかかる費用の見積もりを通じて査定額に反映されます。
確認されるのは、築年数のほか、雨漏り・シロアリ被害・基礎のひび割れ・建物の傾き・給排水管の劣化といった項目です。
いずれも住み始めてから発覚しやすく、買主が最も気にする部分にあたります。
築年数に関わる論点として旧耐震基準があります。
1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物は、現行の基準より前の耐震基準による設計です。
耐震改修には費用がかかるため、改修の負担を見込んだ評価になります。
傷みが進んで建物として使えないと判断された場合は、解体して土地として売る前提の評価に切り替わります。
解体前提では、示されるのは解体費を差し引いた金額です。
建物に価値が付かない状態でも、土地に需要があれば査定額は残ります。
⑤立地|駅からの距離と周辺の需要
立地は、再販のしやすさを通じて査定額に効いてきます。
見られるのは、最寄り駅からの距離、生活に必要な施設が近くにそろっているか、用途地域として何が指定されているかといった条件です。
同じ瑕疵を抱えた物件でも、需要のある地域なら査定額の下がり幅は小さくなります。
判断材料になるのは、周辺で似た条件の物件が実際に動いているかどうかです。
取引事例が積み上がっている地域では、買主が現れる時期の見通しが立ちます。
見通しが立てば、業者が保有する期間も短く見積もれます。
反対に、需要の乏しい地域では瑕疵の有無にかかわらず買い手が付きにくい状況です。
需要が乏しい場合、瑕疵の内容よりも立地のほうが金額を強く押し下げます。
瑕疵を解消しても金額が思うように上がらない物件は、立地が要因になっている場合があります。
⑥再販にかかる費用と業者の利益
買取の査定額は、再販できる見込みの価格から必要な費用と利益を引いた残りとして計算されます。
差し引かれるのは次の項目です。
訳あり物件では、購入したあとに手を入れなければ再販できない場合が多く、差し引き分が金額に大きく影響します。
| 差し引かれる項目 | 内容 | 金額への影響 |
|---|---|---|
| 解体費 | 建物として使えない場合の取り壊し費用 | 敷地の広さと接道状況で変わる |
| 修繕・改装費 | 雨漏りや設備の不具合を直す費用 | 傷みが進むほど大きくなる |
| 測量・境界確定費 | 敷地の範囲を確定する費用 | 境界が未確定の物件で発生する |
| 登記費用 | 所有権移転の登記にかかる費用 | 物件価格に応じて変わる |
| 保有中の税負担 | 再販までの固定資産税・都市計画税 | 保有期間が長いほど積み上がる |
保有する期間も金額を動かします。
再販までに時間がかかると見込まれる物件では、保有中の税負担と管理費用が積み上がるぶん、査定額もさらに下がる計算です。
業者の利益がどの程度見込まれているかは、外からは見えにくい部分です。
ただし、金額の根拠を尋ねれば、どの項目にいくら見込んだのかは説明してもらえます。
納得できるまで確認して構いません。
机上査定と訪問査定の違い|訳あり物件はどちらを選ぶべきか
査定の方法は2つに分かれます。
書類と周辺の情報だけで算出する机上査定と、現地を確認したうえで算出する訪問査定です。
| 項目 | 机上査定 | 訪問査定 |
|---|---|---|
| 調べる範囲 | 所在地・面積・築年数・周辺の取引事例 | 上記に加えて建物の状態・接道・境界・室内 |
| 所要日数 | 1〜3日程度 | 1週間前後 |
| 精度 | 概算にとどまる | 売却の判断に使える |
| 向いている場面 | 目安を知りたい段階 | 実際に売却を進める段階 |
机上査定は登記情報と周辺の取引事例をもとに算出するため、建物の傷みや接道の実際の状況までは反映されません。
訳あり物件では、反映されない部分こそが金額を左右します。
書類の上では同じ条件に見える2つの物件でも、現地を見たときの評価は分かれるものです。
そのため、実際に売却するかどうかを判断する段階では訪問査定が前提になります。
まず机上査定で幅をつかみ、候補を絞ってから訪問査定に進む流れが現実的です。
両方を同じ会社に依頼する必要もありません。
机上査定を複数社に出し、対応が丁寧だった会社にだけ訪問査定を依頼する進め方も取れます。
それぞれの中身を確認していきましょう。
机上査定(簡易査定)|1〜3日で概算をつかむ
机上査定は、物件の基本的な情報を伝えるだけで受けられます。
必要になるのは、所在地・土地と建物の面積・築年数・間取りといった情報です。
登記事項証明書や固定資産税の納税通知書があれば、記載されている数値をそのまま伝えられます。
回答までの日数は1〜3日程度が目安です。
現地を見ないため、傾きや雨漏りといった建物の状態は金額に反映されません。
周辺の取引事例から導いた一般的な水準に近い金額が出るため、瑕疵の分だけ実際より高く出る場合があります。
使いどころは、複数の会社に同時に依頼して金額の幅をつかむ段階です。
幅が見えれば、どの会社に詳しく相談するかを絞り込めます。
机上査定の金額をそのまま売却価格として期待すると、訪問査定の結果との差に戸惑うことになります。
訪問査定|現地確認を経て売却できる金額に近づく
訪問査定では、担当者が現地を訪れて建物と土地の状態を確認します。
見られるのは、建物の傷み具合・室内の状況・前面道路の幅と接している長さ・隣地との境界・越境している樹木や設備の有無です。
書類上の情報と現地の状態が食い違う場合もあり、食い違いの分が金額に反映されます。
訳あり物件の訪問査定では、告知すべき事情の聞き取りも同時に行われます。
過去に何があったか、どのような不具合が出ているかを担当者が確認したうえで、聞き取った内容を織り込んだ金額が提示される流れです。
回答までは1週間前後が目安です。
室内に入れない空き家でも査定は受けられます。
鍵が見つからない場合や遠方で立ち会えない場合は、外観と書類から評価したうえで、後日改めて内部を確認する進め方が取られます。
査定を依頼する前に用意しておく5つの資料
依頼前に資料をそろえておくと、査定の精度が上がり、回答までの日数も短くなります。
用意しておきたいのは次の5つです。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 公図・地積測量図
- 建物図面(間取り図)
- 固定資産税の納税通知書
- 告知すべき事情をまとめたメモ
それぞれの入手先と、査定で何を確認されるかを整理すると次のようになります。
| 資料 | 入手先 | 査定で確認される内容 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局の窓口・オンライン申請 | 所有者、持分割合、抵当権などの担保の有無 |
| 公図・地積測量図 | 法務局の窓口・オンライン申請 | 敷地の形状、接道の状況、隣地との位置関係 |
| 建物図面 | 法務局・購入時の書類 | 床面積、間取り、増改築の履歴 |
| 固定資産税の納税通知書 | 毎年届く通知書 | 評価額、土地と建物の課税上の区分 |
| 告知事項のメモ | 自分で作成 | 買主に伝える必要がある事情 |
すべてがそろわなくても依頼はできます。
不足分の調査は不動産会社の仕事です。
そろっているほど確認の手間が減り、金額が出るまでの期間は短くなります。
相続した物件では、書類の所在が分からない場合もあります。
登記事項証明書と公図は法務局で誰でも取得できるため、手元に何もなくても2点から着手が可能です。
告知すべき事情は隠さずメモにまとめて渡す
5つのうち査定額の安定に最も効くのが告知事項のメモです。
まとめておきたいのは、過去に人の死があった事実・雨漏りや傾きといった不具合・浸水した履歴・近隣との間で起きたやり取り・越境している樹木や設備です。
時期と内容を書き出しておけば、担当者が評価に織り込めます。
人の死の告知については、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しています。
ガイドラインが示す概ね3年という期間の目安は、賃貸借の取引を対象としたものです。
売買については期間の定めが置かれておらず、経過年数だけを理由に伝えない判断は取れません。
先に伝えた事情は査定の段階で金額に織り込まれるため、後から動かない数字です。
反対に、隠したまま売却すると引渡し後に契約不適合責任を問われる場合があります。
宅地建物取引業者についても、宅地建物取引業法第47条第1号が重要な事項について故意に事実を告げない行為を禁じています。
訳あり物件の査定は、訳あり不動産を扱う窓口へまとめて相談する
査定の依頼先を探すとき、一般の不動産会社に1社ずつ当たっていく方法は効率がよくありません。
断られるたびに時間が過ぎ、その間も固定資産税と管理の負担は続きます。
訳あり物件を扱ってきた会社であれば、再建築不可の土地・過去に人の死があった住戸・共有持分だけの売却も取引の対象です。
前提が違うため、同じ物件でも金額が付く場合があります。
ベンナビ不動産売却では、事故物件・共有持分・再建築不可の物件・相続した空き家といった訳あり不動産の査定に対応した会社へ無料で相談を申し込めます。
査定を受けたからといって売却を決める必要はなく、金額と条件を見てからの判断で十分です。
複数の会社の見立てを並べると、金額そのものだけでなく、根拠の説明の差も見えてきます。
提示された査定額が妥当かを見抜く5つのチェックポイント
査定額を受け取ったら、金額の高さだけで判断せず内容の確認が先です。
確認するポイントは5つあります。
同じ質問を各社に投げると、答え方の差が見えてきます。
①価額の根拠を説明できるか|宅建業法が根拠の明示を義務づけている
最初に確認したいのは、金額をどう算出したのかという点です。
根拠の説明を求めることには法律上の裏づけがあります。
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、「宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」と定めています。
媒介契約に際して売買すべき価額について意見を述べる場合、根拠を示すことは業者の義務です。
説明を求めるのは、遠慮すべき行為ではありません。
具体的には、比較した取引事例はどれか、どの項目でいくら差し引いたのか、再販をどう想定しているのかを尋ねます。
買取であれば、解体費やリフォーム費をどの程度見込んだのかまで確認が可能です。
口頭でも説明できない会社や、資料を示さない会社は候補から外して構いません。
根拠を示せる会社であれば、こちらの事情を伝えたときに金額がどう動くかも見通せます。
②その金額が仲介の予想価格か買取価格か区別されているか
2つ目は、受け取った金額の性格を確かめる作業です。
前述のとおり、仲介の査定額は売り出しの予想にとどまります。
売れる保証はなく、成約までの期間も読めません。
買主が現れなければ、待っているのは値下げです。
買取価格は、業者がその金額で買い取ると示した価格です。
合意すれば成立する一方、再販にかかる費用と利益が引かれているため、仲介の査定額より低く出ます。
性格の違う2つを並べてA社のほうが高いと判断すると、実際には売れない金額を基準に選ぶことになります。
金額を聞いたら、仲介の予想価格なのか買取価格なのかを必ず確認したうえで、同じ性格の数字どうしで比べてください。
書面で受け取ると区別しやすくなります。
査定書に「売り出し価格の目安」と書かれていれば仲介の予想価格、「買取価格」と書かれていれば業者が買い取る金額です。
③契約後に減額される条件が示されているか
3つ目は、提示された金額が最後まで維持されるかという点です。
査定額はあくまで見込みであり、後の調査で新しい事情が判明すれば金額は動きます。
境界が確定していなかった、床下に想定を超える傷みがあった、登記の内容と現況が食い違っていたといった事情が代表的です。
そのため、どのような場合に金額が下がるのかを事前に聞いておきます。
減額の条件をあらかじめ示す会社であれば、契約に進んでからの食い違いを避けられます。
注意したいのは、最初に高い金額を示しておいて、契約の直前になって大きく引き下げる進め方です。
ほかの会社を断ったあとに切り出されると、比較の余地がなくなります。
最初の提示額と、条件が変わったときの扱いをセットで確認しておきましょう。
④複数社の査定額のばらつきをどう読むか
4つ目は複数社の金額に差が出たときの読み方です。
訳あり物件では、会社によって得意な分野が分かれます。
事故物件を扱ってきた会社、再建築不可の土地を活用してきた会社、共有持分を専門に扱う会社では、再販の想定そのものが違います。
解体して土地として売る想定と、修繕して賃貸に回す想定では、金額も別物です。
ばらつきが出たら、突出して高い金額と低い金額の両方について理由を尋ねます。
高い側には根拠がある場合もあれば、契約を取るための提示にとどまる場合もあります。
低い側には、こちらが把握していなかった制約が反映されがちです。
なお、訳あり物件の買取価格について公的な統計は存在しません。
比較材料は他社の査定額しかないため、複数社に依頼する意味は通常の物件より大きくなります。
「必ず高く売れます」といった表示だけを判断材料にしないでください。
合理的な根拠なく著しく有利だと示す表示は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条が禁じる不当表示に当たる可能性があります。
⑤契約条件と決済までの実行力が示されているか
5つ目は、金額以外の条件です。
高い金額を示されても、決済まで到達しなければ手元には残りません。
確認しておきたいのは、手付金の額、引渡しの時期、契約不適合責任を免責とするかどうかという3点です。
売主が個人の場合、免責の特約を付けられるかどうかは引渡し後の負担に直結します。
買取では、資金の裏づけと決済までの日数が実行力を左右します。
金融機関の融資を前提とする業者では、審査の結果によって話が流れる場合もある点に注意してください。
自己資金で買い取れる会社であれば、決済までの見通しが立てやすくなります。
最終的には、根拠の説明、契約条件、金額の3つをそろえて比較します。
3つのうちどれか1つでも示されない場合は、示されない理由を確認してから判断してください。
査定を受けたあと、所有し続ける場合に残る3つの負担

査定を受けた結果、売却しない選択をすることもあります。
その場合でも、所有している限り3つの負担が続きます。
住み続ける予定がある物件や活用の見込みが立っている物件なら、保有を続ける選択も合理的です。
内容を把握したうえで決めましょう。
①固定資産税|特定空家等に指定されると住宅用地の特例が外れる
1つ目は税の負担です。
空き家の状態が悪化すると、税額が上がる場合があります。
空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項は、一定の状態にある空家等を特定空家等と定義しています。
対象になるのは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態などです。
同法第22条は、市町村長が特定空家等の所有者等に対し、除却・修繕・立木竹の伐採その他必要な措置を助言または指導できると定めています。
応じない場合には勧告、そして命令へと段階が進みます。
勧告を受けた特定空家等の敷地は、固定資産税の住宅用地の特例の対象外です。
住宅が建っている土地に適用される課税標準の軽減がなくなるため、税額は上がります。
管理を続けていれば特定空家等に指定されることはありません。
ただし、遠方に住んでいて手が回らない場合は、指定に至る前に売却を検討する時期を決めておくほうが負担は軽めです。
②建物の管理責任|倒壊や落下で他人に損害を与えた場合
2つ目は管理の責任です。
建物や塀の不具合で他人に損害が生じた場合、賠償の責任を負う可能性があります。
民法第717条第1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときの責任を定めています。
瑕疵があった場合、被害者への賠償責任を負うのは工作物の占有者です。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が損害を賠償しなければならないと続きます。
空き家では占有者と所有者が同一である場合が多く、責任は所有者に向かいます。
屋根材の落下、塀の倒壊、庭木の倒伏といった事故は、管理が行き届かない建物ほど頻発しがちです。
遠方に住んでいても責任が軽くなるわけではありません。
定期的に見回るか、管理を委託するか、手放すかのいずれかを選ぶ必要があります。
③相続登記|取得を知った日から3年以内の申請義務
3つ目は登記の義務です。
相続した物件では、期限が定められています。
不動産登記法第76条の2第1項により、相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、3年以内に所有権移転の登記を申請しなければなりません。
期限の起算点は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日です。
申請義務は2024年4月1日から施行されています。
正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料の適用対象です。
手続きの負担を理由に先送りすると、過料の対象になるだけでなく、売却したくなったときにすぐ動けません。
施行前に相続した不動産も義務の対象です。
経過措置が設けられており、2027年3月31日までに申請すれば足りるとされています。
心当たりがある場合は、登記の状態を先に確認しておきましょう。
訳あり物件の査定に関するよくある質問
Q1. 訳あり物件の査定に費用はかかりますか?
不動産会社による査定は、無料で行われる場合が多くなっています。
売却を検討する段階で費用の心配をせずに依頼できます。
一方、不動産鑑定士による鑑定評価は有料です。
境界を確定するための測量や建物状況調査を別に依頼する場合は、別途の費用が発生します。
Q2. 査定を受けたら売却しなければなりませんか?
査定は価格の見込みを知るための手続きであり、受けたからといって売却する義務は生じません。
手続きが進むのは、媒介契約や売買契約を結んでからです。
金額と条件を確認したうえで、売るかどうかを判断して構いません。
断ることに気兼ねする必要もありません。
Q3. 査定にはどのくらいの日数がかかりますか?
机上査定であれば1〜3日程度が目安です。
訪問査定では現地確認と調査が入るため、1週間前後かかります。
共有持分や借地権が絡む物件、相続登記が済んでいない物件では、権利関係の確認に時間がかかるため、日数はさらに延びる場合があります。
Q4. 遠方に住んでいても査定を依頼できますか?
依頼できます。
資料の送付と、電話やメールでのやり取りで手続きを進められる会社が多くあります。
訪問査定でも、所有者が立ち会わずに外観と敷地を確認する形が可能です。
室内の確認が必要な場合は、鍵の受け渡し方法を事前に相談してください。
Q5. 共有名義の物件でも査定を受けられますか?
査定を受けること自体はできます。
ただし、物件全体を売却するには共有者全員の合意が必要です。
合意が得られない場合は、自分の持分だけを売却する方法もあります。
持分だけの売却では評価の前提が変わり、持分割合を掛けただけの金額にはなりません。
持分の売却に対応している会社へ相談してください。
まとめ|訳あり物件の査定は「根拠を説明できる相手」に依頼する
訳あり物件の査定額は、通常の価格から瑕疵を解消する費用と再販費用を差し引いて決まります。
瑕疵の種類・再建築の可否・権利関係・建物の状態・立地・再販費用の6つが金額を左右する要素です。
進め方としては、まず机上査定で幅をつかみ、候補を絞ってから訪問査定に進みます。
依頼の前に登記事項証明書や公図をそろえ、告知事項は先にまとめて渡してください。
受け取った金額は5つの観点で確かめます。
なかでも重要なのは根拠の説明です。
宅地建物取引業法は価額について意見を述べる際の根拠の明示を義務づけており、説明を求めることに遠慮はいりません。
自分の物件にどのような出口があるのかは、査定を受けて初めて具体的になります。
ベンナビ不動産売却で申し込めるのは、事故物件・共有持分・再建築不可の物件・相続した空き家といった訳あり不動産の無料査定・買取相談です。
まずは金額と根拠を確かめるところから始めてみてください。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。