共有物分割は弁護士に依頼すべき?任せられる範囲と費用相場・相談先の選び方
相続した実家を兄弟と共有したまま、あるいは離婚後も自宅を元配偶者と共有したまま、売却の話が何年も前に進まないという状況は珍しくありません。
売りたいと持ちかけても相手が首を縦に振らず、連絡しても返事がないまま時間だけが過ぎていきます。
こうした行き詰まりを法的に解消する手段が共有物分割です。
ただ、いざ調べてみても「弁護士に頼むほどのことなのか」「頼んだとして何をしてもらえるのか」がはっきりせず、手前で止まってしまう方は多くいます。
本記事では、共有物分割で弁護士に任せられる範囲と、司法書士や不動産会社との役割の違いを整理します。
あわせて費用の相場と解決までの期間・相談先の選び方・相談前にそろえておきたい資料も扱う構成です。
依頼を決める前に確かめておきたい持分の価値についても取り上げます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
共有物分割で弁護士に任せられること
弁護士に依頼すると、共有者とのやり取りから裁判所での手続きまでを代わりに進めてもらえます。
任せられる中身は大きく4つに分かれます。
他の共有者との協議を代理人として進めてもらう
民法では、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。
分割を求めること自体は誰にでも認められた権利ですが、実際に話をまとめる過程で相手と直接向き合う負担が生じます。
弁護士が代理人に就いた後の連絡窓口は、弁護士です。
共有者からの電話や手紙は弁護士が受け、こちらの主張も弁護士を通じて伝わるため、本人同士が顔を合わせる必要がなくなります。
相手から感情的な連絡が繰り返されていた場合でも、対応の負担から解放されます。
代理人が間に入ると、話し合いの中身も別物です。
当事者だけで話すと過去の経緯や感情的な行き違いに引きずられがちですが、代理人は持分割合や不動産の価値といった法的な論点に議論を絞り込みます。
何を決めれば話が終わるのかが明確になるため、堂々巡りになりにくくなります。
親族どうしで気まずさが残っている場面ほど、効果は大きめです。
内容証明郵便で分割の意思を正式に伝える
口頭やメッセージアプリで何度申し入れても相手が動かない場合、次の手段が内容証明郵便です。
内容証明は、いつ誰がどのような内容を相手に伝えたかを郵便局が記録に残す仕組みです。
後に訴訟へ進んだときには、協議を申し入れたが応じてもらえなかった事実を示す資料になります。
弁護士名で内容証明が届くこと自体が、相手の対応を変える契機になる場合もあります。
曖昧に先送りされてきた話が、法的手続きに進む前段階だと相手に伝わるためです。
回答期限を設けて送ることで、相手に検討を促す効果も生まれます。
ただし内容証明そのものに相手を従わせる力はありません。
受け取っても応じない相手に対する次の段階は、裁判所を使う手続きです。
内容証明はあくまで交渉の入口を作る手段だと理解しておいてください。
共有物分割請求訴訟の提起と訴訟追行を任せる
民法では、共有物の分割について共有者間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、分割を裁判所に請求できると定められています。
話し合いが決裂した場合の受け皿がこの訴訟です。
訴訟に進むと、訴状の作成、証拠の整理、期日での主張と立証まで弁護士が担います。
期日はおおむね月に1回程度のペースで開かれますが、弁護士が代理人として出頭するため、依頼者本人が毎回裁判所へ足を運ぶ必要はありません。
依頼者側の中心作業は、登記事項証明書や固定資産税の資料、過去のやり取りの記録といった書類の準備です。
本人が法廷に出るのは、尋問がおこなわれる場合や和解の席に同席する場合など、限られた場面にとどまります。
仕事を長期間休む必要はないため、日常生活への影響は想像より小さくなります。
不動産の評価と分割方法の主張立証を組み立てる
共有物分割訴訟では、裁判所がどの分割方法を選ぶかによって手元に残る金額が変わります。
民法が挙げる分割の方法は2つです。
共有物の現物を分割する方法と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法です。
2つの方法で分割できないときや、分割によって価値を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所が競売を命じられます。
特定の共有者が不動産を取得して他の共有者に金銭を支払う賠償分割を目指す場合、不動産をいくらと評価するかが最大の争点になります。
評価額が低く認定されれば、受け取る代償金もそれだけ少なくなるためです。
弁護士は、不動産鑑定士による鑑定の要否を判断し、取引事例や路線価といった資料を集めて評価に関する主張を組み立てます。
立証設計こそが、依頼した場合と自力で進めた場合とで結果が分かれやすい部分です。
【参考】e-Gov法令検索 民法
弁護士・司法書士・不動産会社で任せられる範囲は法律で決まっている

共有名義の不動産で困ったときに相談できる先は弁護士だけではありません。
ただし、扱える業務の範囲は専門家ごとに法律で定められています。
| 専門家 | 任せられること | 任せられないこと | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 共有者との交渉代理、内容証明の作成と送付、共有物分割請求訴訟の代理 | 登記申請の代理は担当しない事務所が多い | 相手が話し合いに応じない、訴訟を視野に入れている |
| 司法書士 | 分割後の持分移転登記、登記に関する書類作成 | 地方裁判所での訴訟代理 | 分割の合意ができており登記だけ残っている |
| 不動産会社 | 共有持分の査定、共有持分や共有不動産の買取 | 他の共有者との法的な交渉や訴訟 | 持分の金銭的な価値を知りたい、共有から降りたい |
弁護士|交渉と訴訟の代理ができる唯一の専門家
弁護士法では、弁護士または弁護士法人でない者について次のように定められています。
報酬を得る目的で訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解その他の法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業としてはならない、という内容です。
つまり、報酬を受け取って他人の代わりに共有者と交渉したり、訴訟を代理したりできるのは弁護士だけです。
共有物分割で相手方と直接やり合う場面が想定されるなら、相談先は弁護士に絞られます。
代理の可否は、相談先を選ぶときの分かれ目になります。
弁護士以外の事業者による「代わりに交渉します」という持ちかけは、行為自体が法律に触れかねないものです。
共有持分をめぐっては、買取をうたいながら共有者間の話し合いにまで踏み込もうとする事業者も見受けられます。
どこまでを誰に任せられるのかは、最初に整理しておいてください。
司法書士|登記手続きが中心で代理できる範囲に制限がある
司法書士の中心業務は登記です。
共有者間で分割の合意がまとまった後、持分を移転する登記や、単独名義に変更する登記を申請する場面では司法書士が担当します。
訴訟の代理については、法務大臣の認定を受けた司法書士であっても簡易裁判所における一定の金額までの事件に限られます。
不動産の共有物分割は対象不動産の価額が大きくなりやすく、地方裁判所で審理される事件になりがちです。
そのため、司法書士が代理人として訴訟を担う場面は想定しにくくなります。
そのため司法書士には、分割が決まった後の登記だけを切り出して依頼する使い方が現実的です。
弁護士事務所によっては提携する司法書士に登記を引き継いでくれるため、自分で探す手間を省けることもあります。
相談の段階で、登記まで一貫して対応してもらえるかを確認しておいてください。
不動産会社|持分の査定と買取を担う
不動産会社が担うのは、共有持分にいくらの値段がつくかの算定と、持分の買取です。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業を営もうとする者は免許を受けなければならないと定められています。
買取を行う事業者は、免許を受けた宅地建物取引業者にあたります。
査定を受ける実務上の意味は、費用と時間をかけて争う価値があるかどうかを金額という尺度で測れる点です。
持分にいくらの値段がつくかが分からないままでは、弁護士費用をかけるべきかどうかも判断できません。
不動産会社が他の共有者との法的な交渉を代わりに行うことはできません。
弁護士法の制限があるためです。
査定と買取までが不動産会社の守備範囲だと理解しておく必要があります。
依頼前には、日本弁護士連合会の弁護士検索で登録状況を確認してください。
不動産会社は国土交通省の検索システムで免許を確認できます。
【参考】日本弁護士連合会
【参考】e-Gov法令検索 弁護士法
弁護士に依頼すべきかどうかの判断基準

判断の軸になるのは「何が争点になっているか」です。
争点が価格だけであれば、当事者どうしの話し合いで着地する余地が残ります。
一方、相手が話し合いに応じないという態度そのものが問題であれば、交渉で状況が変わる見込みは薄くなります。
争点の線引きで、自分がどちら側に寄っているかを確かめてみてください。
弁護士に依頼したほうがよい場合
相手が話し合いに応じない状態が続いているなら、弁護士に依頼する段階に入っています。
何度連絡しても返答がない、期限を切って回答を求めても動かないといった膠着状態は、当事者どうしで解けることがほとんどありません。
時間が経つほど不動産は傷み、積み上がるのは固定資産税の負担だけです。
相手方に代理人がついた場合も同様です。
相手が弁護士を立てて内容証明を送ってきたなら、法的な主張は相手の代理人が組み立ててきます。
代理人なしで自分だけが当事者として対応すると、主張の組み立て方や手続きの進め方で不利になりやすくなります。
共有者の人数が多い場合や、所在の分からない共有者がいる場合も、専門家の関与が前提です。
全員を相手に手続きを進める必要があり、所在不明者がいるときは裁判所を使う別の手続きを重ねることになるためです。
自分で進められる可能性がある場合
共有者が2人か3人程度で全員と連絡がとれ、売却して現金化するという方向性が一致しているなら、当事者間の協議だけで話がまとまることもあります。
決めるべきことが配分の割合や売却の時期といった具体的な条件に絞られるためです。
合意した内容を書面に残す段階では、専門家に目を通してもらうほうが安全です。
後になって解釈が食い違うと、せっかくまとまった合意が崩れます。
誰がいつまでにいくらを支払うのか、登記はどちらが手配するのかまで書き込んでおいてください。
そして、途中で1人でも反対に回った時点で状況は変わります。
全員一致が崩れたら、弁護士への相談に切り替える判断が必要になります。
話がこじれてから相談するより、兆しが見えた時点で方針を聞いておくのが、選べる手段を多く残すコツです。
共有物分割を弁護士に依頼したときの費用相場
弁護士費用は相談料、着手金、報酬金の3つで構成されます。
訴訟に進むと実費が別途かかります。
| 費目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 相談料 | 30分から1時間あたり5,000円から1万円程度 | 初回無料とする事務所もある |
| 着手金 | 20万円から30万円程度 | 持分の評価額に応じて変動する |
| 報酬金 | 20万円から30万円程度、または経済的利益の5%から10%程度 | 解決時に発生する |
| 裁判所に納める手数料と郵便切手 | 数万円から十万円前後 | 訴額に応じて決まる |
| 不動産鑑定費用 | 20万円から30万円程度 | 鑑定を行う場合のみ |
【参考】金額は共有持分を扱う事業者の弁護士監修サイトが公表している目安をもとにした幅であり、弁護士費用は各法律事務所が自由に定めています。
共有物分割の弁護士費用について公的な統計は存在しないため、実際の金額は依頼先に見積りを求めて確認してください。
相談料の目安
相談料は30分から1時間あたり5,000円から1万円程度が目安です。
各法律事務所が公表している金額をもとにした幅であり、一律に決まっているわけではありません。
初回相談を無料としている事務所も少なくない状況です。
無料相談を実施している事務所を選べば、方針を聞く段階での金銭的な負担をかけずに済みます。
無料の範囲は初回1時間までと区切られている例が多いため、聞きたい点を事前に整理しておくと限られた時間を有効に使えます。
複数の事務所で相談を受けて、提示された方針や費用の見積りを比べる進め方も有効です。
共有物分割は取りうる手段が複数あるため、事務所によって提案が異なることがあるためです。
交渉での解決を勧める事務所と、早期の訴訟提起を勧める事務所とでは、その後の費用も期間も変わってきます。
着手金の目安
着手金は依頼を開始する時点で支払う費用で、20万円から30万円程度が目安として示されています。
結果がどうなっても返還されない性質の費用である点は、契約前に理解しておく必要があります。
金額の決まり方は、対象となる共有持分の時価を基準にする事務所が多数派です。
持分の評価額が高いほど着手金も上がる仕組みのため、都心の不動産では目安を超えることもあります。
逆に評価額が小さい地方の不動産では、目安より低く設定されることもあります。
いずれの金額も事務所ごとの公表値で、実際には見積りを取って確認することが前提です。
交渉のみを依頼する場合と、訴訟まで見込んで依頼する場合とで着手金が分かれている事務所もあるため、どの段階までを含んだ金額なのかもあわせて確かめてください。
報酬金の目安
報酬金は事件が解決したときに発生する成功報酬型の費用です。
20万円から30万円程度とする例のほか、得られた経済的利益の5%から10%程度を報酬金とする算定方法もあります。
経済的利益をどう計算するかは事務所によって異なります。
取得した不動産の価額全体を基準にするのか、代償金として受け取った金額を基準にするのかで最終的な金額が変わるため、契約前に算定方法を確認してください。
基準が変われば、同じ解決でも支払う額が数十万円単位で違ってきます。
着手金を受け取らず、解決したときだけ報酬を受け取る完全成功報酬制のプランを用意している事務所もあります。
手元資金が限られている場合は、完全成功報酬型の事務所を探すのも1つの方法です。
完全成功報酬制では報酬の割合が高めに設定されることが多いため、総額で比べる視点が要ります。
訴訟で別途かかる実費
訴訟を起こす場合、弁護士報酬とは別に裁判所へ納める費用がかかります。
民事訴訟法の定めに沿って、共有物分割でも対象となる持分の価額を基準に訴額を算定します。
裁判所に納める手数料の額を決めるのは、訴額に応じた民事訴訟費用等に関する法律の定めです。
書類の送達に使う郵便切手も予納します。
さらに、賠償分割を目指して不動産の適正な価格を立証する場合は、不動産鑑定士による鑑定が必要になることがあります。
鑑定費用は20万円から30万円程度が目安として示されており、弁護士報酬とは別枠です。
鑑定を入れるかどうかは争点の中身によって変わるため、依頼の段階で見込みを聞いておいてください。
したがって費用を検討するときは、弁護士報酬だけでなく実費まで含めた総額で見積もる必要があります。
弁護士に依頼してから解決までの流れと期間の目安

依頼してから解決までの期間は、交渉で決着すれば数ヵ月、訴訟まで進むとおおむね1年前後を見込んでおくことになります。
全体の流れは次の4段階です。
1. 相談して委任契約を結ぶ
最初の相談では、状況を説明したうえで取りうる手段と費用の見通しを聞きます。
相談時に登記事項証明書や固定資産税の納税通知書を持参すると、持分割合や不動産の評価が把握できるため、方針の精度が上がります。
方針に納得できたら、次は委任契約です。
契約書では業務の範囲と費用体系を確認し、着手金の金額と支払時期を明確にしておいてください。
交渉までを依頼するのか、訴訟まで見込んで依頼するのかによって契約の内容が変わります。
相談から委任契約までは、通常1週間から2週間程度で進みます。
複数の事務所を比較する場合は、比較に要する期間も見込んでおいてください。
急いで契約を決める必要はないため、方針の説明に納得できるまで質問を重ねてください。
2. 内容証明を送って任意交渉に入る
受任した弁護士は、まず他の共有者に対して分割を求める内容証明を送ります。
送付後は相手の反応を待ちながら、分割の方法や金額について交渉を進めます。
交渉の段階で合意できれば、訴訟の費用も時間も不要です。
相手にとっても訴訟は負担であるため、代理人が入った段階で話し合いに応じてくる例もあります。
無視されていた申し入れに、初めて返答が来ることも珍しくありません。
内容証明の送付から交渉の決着までは、動きがある場合で1ヵ月から3ヵ月程度が目安です。
相手が回答を引き延ばすときは期限を区切り直して再度求めます。
反応がない場合や条件が折り合わない場合は、次の段階に進みます。
相手が代理人を立てて交渉に応じてきたときは、弁護士どうしのやり取りになるぶん話の進みも速めです。
3. 共有物分割請求訴訟を提起する
協議が調わないときは、裁判所に分割を請求します。
訴状を提出すると被告となる他の共有者に送達され、第1回の期日が指定されます。
その後は月に1回程度の期日を重ねながら、分割方法についてそれぞれが主張と立証をおこなう流れです。
期日には弁護士が代理人として出頭するため、依頼者は求められた資料を用意することが中心の作業になります。
争点が不動産の評価であれば、鑑定の実施をめぐるやり取りに時間がかかります。
提起から判決までは、おおむね1年前後が目安です。
共有者の人数が多い場合や、相手が争う姿勢を強く示している場合はさらに長引きます。
ただし審理の途中で和解が成立して終わることも少なくありません。
和解なら柔軟な条件の設定も可能です。
4. 判決や和解を受けて登記や売却を進める
分割方法が確定したら、実際の手続きに移ります。
賠償分割であれば代償金の授受と持分移転登記を行い、換価分割であれば売却または競売の手続きに進みます。
登記の申請は司法書士が担当することが一般的です。
弁護士事務所が司法書士と連携している場合は、そのまま引き継いで手続きを進めてもらえます。
競売になった場合は裁判所の手続きに沿って進むため、売却代金を受け取るまでにさらに時間がかかります。
代償金の支払いが分割払いになる和解では、受け取りが完了するまでの期間も追加で必要です。
最終段階まで含めると、着手から完了まで1年を超えることもあります。
全体の見通しを立てるときは、判決が出た時点ではなく、金銭を受け取り登記が終わった時点を終わりとして考えてください。
弁護士に依頼するときの注意点
弁護士に依頼すれば必ず望んだ結果になるわけではありません。
依頼する前に、次の3点を想定しておいてください。
費用倒れになる可能性がある
持分の評価額が低い場合、着手金と報酬金を支払った結果、手元にほとんど残らないという事態が起こりえます。
地方の空き家や、再建築が難しい土地、接道の条件が悪い土地では、持分の価値が想定より小さくなりやすいためです。
着手金は結果にかかわらず戻ってこない費用です。
訴訟まで進めば印紙代や鑑定費用も加わるため、支出は当初の見込みより膨らみます。
そのため、依頼を決める前に自分の持分にどれくらいの価値があるかを把握しておく必要があります。
具体的には、弁護士から受け取った費用の見積りと、不動産会社が出した持分の査定額を並べて比べてみてください。
見積りと査定額の2つの数字が、争う価値があるかどうかを判断する材料になります。
差額が小さいほど、争う実益は乏しい計算です。
持分の査定は、ベンナビ不動産売却からも依頼できます。
望まない競売による換価分割になることがある
共有物の現物を分割できないときの扱いも、民法に定めがあります。
分割によってその価値を著しく減少させるおそれがある場合も含め、裁判所は競売を命じられるという内容です。
建物やマンションのように物理的に分けられない不動産では、競売の定めが適用される場面が出てきます。
競売による売却では、市場で通常に売買される価格を下回ることが一般的です。
その結果、持分割合に応じて受け取る金額も想定より少なくなる可能性があります。
売却の時期や相手を自分で選べない点も、通常の売却との違いです。
不動産に住み続けたいと考えている場合、競売は最も避けたい結末です。
訴訟を起こした結果として自宅を失う展開もありうる点は、依頼前に理解しておいてください。
他の共有者との関係が決定的に悪化する
代理人を立てて法的手続きに入ると、相手との関係は元に戻りにくくなります。
相続を機に共有になった場合では、相手が兄弟姉妹や親族であることが大半です。
訴訟にまで至れば、法廷で互いに主張をぶつけ合う立場になります。
分割そのものは実現できても、その後の親族づきあいが途切れることは珍しくありません。
法要や介護の話し合いといった場面での連絡も取りづらくなりがちです。
今後ほかの相続が控えている場合や、親族間で継続的なやり取りが必要な場合は、関係悪化の可能性も判断材料に含めてください。
関係を保ったまま共有を解消したいなら、訴訟に踏み切る前に自分の持分だけを手放す方法も比べておくと選択の幅が広がります。
持分の売却であれば相手と直接争う場面が生じないためです。
弁護士に依頼する前に自分の持分がいくらになるかを確かめる
費用と期間、注意点を見てきましたが、依頼するかどうかを最後に決めるのは、争う価値があるかどうかです。
そしてその価値は、自分の持分にいくらの値段がつくかで測れます。
持分の査定額が「争う価値があるか」の物差しになる
費用倒れは、持分の価値を知らないまま依頼を決めることで起こります。
逆に言えば、査定額を先に把握しておけば、費用倒れかどうかは数字で判断できます。
査定額が弁護士費用の見積りを大きく上回るなら、費用をかけて共有状態の解消を目指す判断も容易です。
訴訟まで進んだ場合の費用を差し引いても手元に残る金額が見えるためです。
反対に、査定額が費用の見積りと変わらない水準であれば、自分の持分だけを売却して共有関係から降りるという選択肢が現実的になります。
共有物分割は共有を解消するための手段の1つであって、目的そのものではありません。
相手と争わずに共有から抜けられるなら、時間も関係も無傷のままです。
どちらを選ぶにしても、判断の出発点は金額です。
査定を受けても他の共有者に知られず、依頼義務もない
共有持分の売却は、自分の持分についての処分であるため、他の共有者の同意を得る必要がありません。
同様に、査定を受ける段階で他の共有者に連絡が行くこともない仕組みです。
話し合いがこじれている状況でも、自分だけで金額を確認できます。
査定を受けたからといって、売却する義務も、査定した会社に依頼する義務も生じません。
あくまで判断材料として金額を知るための手続きです。
ベンナビ不動産売却では、共有持分や共有名義の不動産、空き家や再建築が難しい物件など、一般の市場では売りにくい不動産の査定と買取相談を無料で受け付けています。
弁護士に依頼して争うか、持分を売って共有から降りるかを決める前に、まずは自分の持分にいくらの値段がつくかを確かめてみてください。
金額が分かれば、以後の判断がしやすくなります。
共有物分割に強い弁護士を選ぶ4つの観点
共有物分割は、不動産だけでなく相続や離婚、登記の知識が関わる分野です。
相談先を選ぶときは次の4点を確認してください。
不動産分野の取扱実績が公開されているか
共有不動産の問題は、相続や離婚の経緯が絡み、不動産の評価も争点になるため、経験の差が結果に出やすい分野です。
事務所を選ぶときは、取扱分野に不動産や共有物分割が明記されているかを確認してください。
多くの事務所は解決事例を公開しています。
事例の件数だけでなく、自分の状況と近い内容が含まれているかを見ると、対応の見当がつきます。
相続で共有になったのか、離婚で共有になったのかで論点が変わるため、同じ経緯の事例は有力な参考材料です。
対象が土地なのか建物なのか、マンションの一室なのかによっても取りうる分割方法は変わります。
自分の物件の種類に近い実績があるかまで見ておくと、相談時の話が早く進みます。
ウェブサイトに実績がない場合は、初回相談で件数を尋ねてください。
費用体系が事前に明示されているか
着手金と報酬金の算定方法、実費の扱いが相談の段階で示される事務所を選んでください。
特に報酬金は、経済的利益の何%とするのか、経済的利益をどう計算するのかで金額が大きく変わります。
完全成功報酬制と着手金制のどちらが自分に向いているかも比べてみてください。
手元資金が限られているなら完全成功報酬制、総額を抑えたいなら着手金制が向く場合があります。
どちらを選ぶかで、解決したときに手元に残る金額が変わってきます。
いずれの場合も、見積りは書面で受け取っておいてください。
口頭の説明だけで契約を進めると、追加費用の有無をめぐって認識がずれることがあります。
訴訟に移行したときに追加の着手金が発生するのかも、あわせて確かめておいてください。
解決後の売却や登記までフォローできるか
分割方法が決まっても、手続きが終わるわけではありません。
残るのは、持分移転の登記や、換価分割となった場合の売却手続きです。
司法書士や不動産会社と連携している事務所であれば、解決後の手続きまで一続きで任せられます。
自分で専門家を探し直す手間が省けるため、負担が軽くなります。
連携先が決まっていない場合は、自分で依頼先を探すことになる点も見込んでおいてください。
相談の際に「解決した後の登記や売却はどこまで対応してもらえるか」と質問しておいてください。
質問への答え方で、共有不動産の案件をどこまで扱い慣れているかも見えてきます。
手続きの出口まで説明できる事務所ほど、方針も現実的なものになります。
他の共有者と利益相反の関係にないか
同じ案件について相手方から相談を受けている事務所には、依頼できません。
共有者の誰かが先に相談していた場合、相談を受けた事務所は自分の依頼を受けられないためです。
利益相反を避けるため、相談の初期に他の共有者の氏名を伝えて確認してもらってください。
事務所側で照合したうえで、受任できるかどうかを回答してもらえます。
予約の電話やフォームの段階で相手方の氏名を伝えておくと、無駄足を避けられます。
断られた場合の次の一手は、別の事務所です。
相手方が先に相談していたという事実自体は、相手が本気で手続きを進めようとしている手がかりにもなります。
共有者が多い案件では、利益相反の確認を早い段階で済ませておくと時間の無駄が減ります。
確認は電話1本で済む作業です。
弁護士に相談する前に準備しておきたい5つの資料
相談当日に方針まで踏み込んで話してもらうには、事前の準備が要ります。
次の5点をそろえてから相談に臨んでください。
登記事項証明書
登記事項証明書は、誰がどれだけの持分を持っているかを確定するための基本資料です。
持分割合が分からないままでは、弁護士も取りうる手段を絞り込めません。
法務局の窓口や郵送のほか、登記情報提供サービスを使えばオンラインでも取得できます。
窓口での交付は1通600円前後が目安です。
対象となる不動産が土地と建物に分かれている場合は、両方を取得しておいてください。
登記事項証明書では抵当権の設定状況も確認できます。
住宅ローンが残っている共有不動産では、抵当権の有無が方針を左右します。
相続で共有になった場合は、登記名義が亡くなった方のままのこともあり、先に必要になるのは相続登記です。
相続登記は2024年4月1日から義務化されているため、未了であれば早めに手当てしてください。
固定資産税の納税通知書または評価証明書
不動産のおおよその価値を示す資料も必要です。
評価額は弁護士費用や訴額の算定基準になるため、相談の段階であると話が早く進みます。
毎年春に市区町村から届く固定資産税の納税通知書に評価額が記載されています。
手元にない場合は、市区町村の窓口で固定資産評価証明書を取得してください。
東京23区内の不動産については都税事務所が窓口になります。
なお、固定資産税評価額は実際に売買される時価とは異なります。
一般に時価より低く算定されるため、あくまで目安として扱われる数字です。
実際の価値を知りたい場合は、別途で不動産会社の査定を受ける必要があります。
弁護士費用の見積りは評価額を基準に算定されることが多いため、評価額と時価の2つの数字は分けて把握しておいてください。
共有者の連絡先と共有になった経緯
共有者が何人いるのか、自分とどういう続柄なのか、連絡がつくのかどうかを整理しておいてください。
共有者が多いほど手続きは複雑になり、必要な期間も長くなります。
連絡がつかない共有者がいる場合は、連絡不能の事実も伝えてください。
所在が分からない共有者がいるかどうかで、取るべき手続きが変わるためです。
また、相続で共有になったものの遺産分割がまだ済んでいない場合は注意してください。
共有物の全部またはその持分が相続財産に属する場合の扱いは、民法に別の定めがあります。
共同相続人の間で遺産の分割をすべきときは、共有物分割の手続きによる分割ができないという内容です。
未分割の場合は遺産分割が先になります。
相続が済んでいるかどうかで進む手続きが変わるため、相談時に伝えてください。
これまでのやり取りの記録
いつ、誰に、どのような申し入れをして、どう返答されたかが分かる記録を時系列でまとめておいてください。
メールや郵便、メッセージアプリの履歴はそのまま残しておきます。
口頭でのやり取りしかない場合は、日付と内容を思い出せる範囲でメモに起こしてください。
記憶が新しいうちに書き出しておくほど精度が上がります。
誰が同席していたかも書き添えておくと、後から裏づけを取りやすくなります。
こうした記録は、実務上も意味のある資料です。
訴訟では協議が調わないことが前提となるため、申し入れをしたが応じてもらえなかった経緯を示す資料になるためです。
やり取りが一度もない状態では、まず協議の申し入れから始めることになります。
相手が申し入れを受け取ったことを示す記録が残っていれば、その後の手続きがより進めやすくなります。
自分の希望を言語化したメモ
売って現金化したいのか、不動産を取得して持ち続けたいのか、単に共有関係から抜けたいのかによって、取るべき手段は変わります。
相談前に自分の希望を書き出しておいてください。
希望する金額の下限や、いつまでに解決したいという期限があれば書き添えます。
条件が具体的なほど、弁護士は現実的な方針を提案できます。
譲れない条件と譲ってもよい条件の仕分けは、交渉の余地を見えやすくする工夫です。
まだ希望が固まっていない場合は、迷っている状態であること自体を伝えてかまいません。
選択肢を整理してもらうところから相談を始められます。
希望が定まっていないまま手続きを始めると、途中で方針を変えることになり、費用も期間も余計にかかりがちです。
共有物分割の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう
弁護士に依頼して分割を進めるにしても、持分を売って共有から降りるにしても、判断の土台になる数字は同じです。
自分の持分にいくらの値がつくかが分かれば、費用倒れの心配も、争う価値の見極めも、具体的に検討できます。
相談先を決めかねている段階でも、数字は先に集められます。
ベンナビ不動産売却は、共有持分や訳あり不動産の買取に対応する会社を、地域と物件の条件から探して比較できるサービスです。
共有持分の取扱実績がある会社を絞り込めます。
査定は無料で、他の共有者に知られずに自分の持分だけを相談できます。
査定後の売却や依頼は任意です。
弁護士との相談を予定している場合も、査定額を持参すれば方針の話が具体的に進みます。
まずは金額の確認から始めてください。
共有物分割と弁護士についてよくある質問
弁護士に依頼しなくても共有物分割請求はできますか
できます。
分割を請求すること自体に資格は不要です。
ただし協議が調わず訴訟に進んだ場合、訴状の作成から期日での主張立証まで自分で担うことになります。
相手に代理人がついた段階では、自力で続けることが難しくなります。
弁護士費用が用意できないときはどうすればよいですか
法テラスの民事法律扶助による立替制度や、着手金の分割払いに応じる事務所を検討してください。
法テラスの利用には収入や資産の要件があります。
持分を売却して共有関係から降りる方法も、選択肢に入れて比べてみてください。
共有者が行方不明でも分割できますか
分割できます。
民法に手当てがあります。
不動産が数人の共有に属する場合で、共有者が他の共有者を知れず、またはその所在を知れないときは、裁判所が請求により所在等不明共有者の持分を取得させる裁判をできるという内容です。
裁判所の手続きが必要になるため、所在調査の資料をそろえたうえで弁護士に相談してください。
買取業者から「訴訟も代行する」と言われましたが依頼してよいですか
依頼できません。
弁護士法では、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことが禁じられています。
他人の権利を譲り受けて訴訟その他の手段でその権利を実行することを業とする行為も、禁止の対象です。
買取業者に頼めるのは、持分の査定と買取までです。
共有物分割請求をされた側は拒否できますか
原則として拒否できません。
各共有者はいつでも分割を請求でき、協議が調わなければ訴訟に移ります。
無視していると、自分の希望が反映されないまま裁判所が分割方法を決める展開です。
希望があるなら早い段階で主張してください。
まとめ|任せられる範囲と費用を押さえ持分の値段から判断する
共有物分割で弁護士に任せられるのは、共有者との交渉の代理と内容証明による意思表示です。
さらに訴訟の提起と追行、不動産の評価をめぐる主張立証も担ってもらえます。
交渉や訴訟を代理できるのは弁護士だけで、司法書士は登記、不動産会社は査定と買取を担います。
費用は相談料と着手金、報酬金に実費を加えた総額での見積りが必要です。
解決までの期間は、交渉で決着すれば数ヵ月、訴訟に進むと1年前後が目安です。
一方で、持分の評価額が低ければ費用倒れになり、判決によって望まない競売に至る可能性も残ります。
だからこそ、依頼を決める前に自分の持分にいくらの値段がつくかを確かめておいてください。
ベンナビ不動産売却では、共有持分や共有名義の不動産、空き家や再建築が難しい物件の無料査定と買取相談を受け付けています。
他の共有者の同意を得ることなく申し込めて、査定後に売却するかどうかも自由に決められます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。