共有物分割とは?3つの方法と手続きの流れ・費用・注意点をわかりやすく解説
親から相続した実家や土地を、兄弟と共有名義にしたまま何年も置いている家庭は少なくありません。
共有名義の不動産は、売るにも建て替えるにも他の共有者の同意が要るため、話が進まないまま時間だけが過ぎていきます。
行き詰まりを解消する手続きが共有物分割です。
共有物分割とは、複数人で共有している不動産などの共有状態を解消し、各自が単独で扱える形か金銭に置き換える手続きをいいます。
分け方は現物分割・代償分割・換価分割の3つです。
本記事では、共有物分割の意味と3つの方法・メリットとデメリット・手続きの流れ・費用と税金・注意点までを順に解説します。
読み終えるころには、自分のケースでどの落としどころを目指せばよいかが整理できます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
共有物分割とは共有状態を解消して単独所有にする手続き

共有物分割とは、1つの不動産を複数人が共同で所有している状態を解消し、各自が単独で処分できる形に戻す手続きです。
共有のままでは、売却も建て替えも大規模な修繕も自分ひとりの判断ではできません。
他の共有者の同意を取り付ける手間が、そのまま不動産の使いにくさになります。
共有物分割をおこなった後の形は、不動産そのものの単独所有か、持分に見合った金銭の受け取りかの二択です。
どちらになるかは、現物分割・代償分割・換価分割という3つの方法のどれを選ぶかで決まります。
共有物分割は、共有者どうしの話し合いで決めるのが基本です。
話し合いがまとまらないときは、裁判所の手続きを使って分け方を決めます。
共有名義を放置したままでは、不動産の価値を活かせないまま管理の負担だけが続きます。
共有とは1つの不動産を複数人が共同で所有している状態のこと
共有とは、1つの不動産に対して複数の人が同時に所有権をもっている状態をいいます。
各共有者がもつ取り分を共有持分といい、取り分の割合を持分割合と呼びます。
誤解されやすいのが、持分割合は建物の特定の部屋や土地の特定の区画という場所の話ではないという点です。
持分割合は、不動産全体の価値に対する取り分を示しています。
そのため、持分を2分の1もっていても、家の半分を自由に使えるわけではありません。
共有物に対してできることは、行為の種類ごとに必要な同意が変わる仕組みです。
| 行為の種類 | 具体例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 修繕、不法占拠者への明渡し請求 | 各共有者が単独でできる |
| 管理行為 | 賃貸借契約の締結、短期の賃貸 | 持分の過半数の同意 |
| 変更行為 | 売却、建て替え、大規模な改築 | 共有者全員の同意 |
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有者はいつでも共有物分割を請求できる
共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます。
他の共有者から分割を求められた側は、分割そのものを断ることができません。
共有という状態が、本来は一時的なものとして想定されているためです。
ただし例外があります。
共有者どうしで分割をしない契約を結んでいる場合は、契約期間中は分割を請求できません。
不分割の契約は5年を超えない期間で結ぶ決まりで、更新はできるものの、更新のときから5年が上限です。
分割請求を受けた側が争えるのは、分割そのものではなく分割の方法です。
現物分割にするのか、代償分割にするのか、売却して分けるのかという中身については、自分の希望を主張できます。
分割の方法そのものは、共有者どうしの話し合いで自由に決められます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有物分割と遺産分割は目的も手続きも違う
共有物分割と遺産分割は、名前が似ているために混同されがちですが、対象も進める場所も異なります。
遺産分割は、亡くなった人が残した遺産全体を相続人のあいだで分ける手続きです。
共有物分割のほうは、すでに共有になっている特定の物について共有状態を解消する手続きです。
| 比較項目 | 共有物分割 | 遺産分割 |
|---|---|---|
| 対象 | 共有になっている特定の不動産など | 亡くなった人の遺産全体 |
| 当事者 | その共有物の共有者全員 | 相続人全員 |
| 進める場所 | 協議、簡易裁判所や地方裁判所 | 協議、家庭裁判所 |
| 使う場面 | 遺産分割後の共有、夫婦や共同出資の共有 | 相続が発生した直後 |
相続が起きた直後の不動産は遺産共有という状態にあり、原則としてまず遺産分割で分けます。
遺産分割が終わって相続人の共有名義になった後、共有を解消する段階で登場するのが共有物分割です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有物分割が必要になる4つの場面
共有物分割が問題になる場面は、大きく4つに分かれます。
どの場面でも、共有者は「自分だけでは処分できない」という同じ壁にぶつかります。
相続した実家や土地を法定相続分どおり共有名義にした
共有物分割が必要になる場面としてもっとも多いのが、相続をきっかけに共有名義になったケースです。
遺産分割の話し合いで不動産の分け方だけが決まらず、いったん法定相続分どおりに共有名義で登記する家庭は珍しくありません。
その場では公平に見えますが、共有名義は問題を先送りにしただけの状態です。
相続登記は、2024年4月から義務になりました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する決まりのため、放置したままにはできません。
とりあえず共有名義で登記した結果、次の相続でさらに持分が細かく分かれていくという流れが生まれます。
相続登記を放置したままにすると、正当な理由がないかぎり過料の対象です。
離婚などで夫婦の共有名義を解消する必要が出た
夫婦で持分を分け合って購入した自宅も、共有物分割が必要になる典型です。
ペアローンや共働きでの共同購入では、出資額に応じて夫婦それぞれの持分を登記します。
婚姻中は問題になりませんが、離婚のときに共有のまま残すと、以後の売却や住み替えで行き詰まりがちです。
相手の同意がなければ売れず、相手が自分の持分を第三者へ譲渡すれば、見ず知らずの人と共有関係になります。
住宅ローンが残っている場合は、名義の変更に金融機関の承諾が要る点にも気をつけてください。
離婚の話し合いの段階で、自宅の扱いまで決めておくことが望ましいといえます。
共有名義のままでは、住み替えのために売ろうとしても相手の署名と押印が要ります。
連絡が途絶えた時点で、手続きは停止です。
共同出資で購入した不動産を分ける必要が出た
共同事業者や親族と出資し合って買った不動産も、共有解消の場面を迎えます。
事業用の店舗や投資用のアパートを2人以上で購入し、出資割合に応じた持分で登記する形です。
一方が事業から離れるとき、あるいは共有者の1人に相続が起きたときに、共有関係の清算が必要になります。
問題になりやすいのが、実際の出資割合と登記された持分割合がずれている場合です。
精算額の考え方で意見が分かれ、話し合いが長引きます。
収益物件であれば、分割が決まるまでの賃料の分け方も決めておくべき事項です。
共有者の1人が持分を第三者へ売れば、事業と無関係の相手が共有者に加わります。
出資額と持分割合の関係は、購入の時点で書面に残しておくと後の争いを避けられます。
相続が重なって共有者が増え話し合いができなくなった
共有を放置した不動産は、相続のたびに共有者が増えていきます。
共有者の1人が亡くなると、持分はさらに亡くなった人の相続人へ引き継がれ、細かく分かれていきます。
世代をまたぐうちに、面識のない親族まで共有者に加わった状態です。
共有者が10人を超えると、全員の連絡先を把握することすら難しくなります。
連絡が取れない共有者や、住所が分からない共有者が出てくるためです。
こうした場合に備えて、所在等が分からない共有者の持分を、裁判所の裁判によって他の共有者が取得できる制度が設けられています。
共有者が増えるほど、必要な同意を集める手間と時間はふくらみます。
相続が起きた時点で共有を解消しておくことが、後の世代が抱える負担を減らす備えです。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有物分割の3つの方法|現物分割・代償分割・換価分割
共有物分割の方法は現物分割・代償分割・換価分割の3つで、不動産を手元に残したいのか現金化したいのかで選び分けます。
3つの違いを一覧で確認してください。
| 比較項目 | 現物分割 | 代償分割 | 換価分割 |
|---|---|---|---|
| 分け方 | 土地を分筆して各自の単独所有にする | 1人が全部を取得し他へ金銭を支払う | 売却して代金を持分割合で分ける |
| 向く場面 | 広い土地で分けても使える場合 | 誰かが住み続けたい、事業を続けたい場合 | 誰も使う予定がなく現金化したい場合 |
| 手元に残るもの | 分割後の土地 | 取得者は不動産、他の共有者は金銭 | 全員が金銭 |
| 注意点 | 分けた土地が狭くなり価値が下がる | 取得者に支払い能力が要る | 売却費用と税金が差し引かれる |
どの方法を採るかは、まず共有者どうしの話し合いで決めます。
裁判になった場合、裁判所はまず現物分割か、金銭を負担させて持分を取得させる方法を検討します。
それでも分けられないときや、分けると価格が大きく下がるおそれがあるときは競売という判断です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
現物分割は土地を分けて各自の単独所有にする方法
現物分割は、1筆の土地を物理的に分けて、各共有者の単独所有にする方法です。
登記簿上ひとつだった土地を複数に分けることを分筆といい、分筆の登記をしたうえで持分を移転する登記をおこないます。
土地が十分に広く、分けたあとも各自が使える形であれば、現物分割はわかりやすい選択になります。
一方で、分けた結果それぞれの土地が狭くなると、使い道が限られて評価額の下落につながりがちです。
建物や区分マンションは物理的に切り分けられないため、現物分割にはなじみません。
土地と建物が一体になっている実家の敷地でも、現物分割は難しい場合が多くなります。
分筆の登記は土地家屋調査士の担当で、最初の作業は隣地との境界の確定です。
代償分割は1人が取得して他の共有者に金銭を支払う方法
代償分割は、共有者の1人が不動産の全部を取得し、他の共有者へ持分に見合った金銭を支払う方法です。
全面的価格賠償とも呼ばれます。
たとえば評価額4,000万円の土地を4人が4分の1ずつ共有している場合、各自の持分の価値は1,000万円です。
1人が土地全部を取得するなら、残る3人へ1,000万円ずつを支払います。
実家に住み続けたい相続人がいる場合や、事業用の建物を使い続けたい共有者がいる場合に向いた方法です。
成立には、2つの条件がそろう必要があります。
ひとつは評価額について共有者の合意が取れること、もうひとつは取得する人にまとまった支払い能力があることです。
代償金をいつ支払うかについても、協議書に明記しておきます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
換価分割は売却して代金を持分割合で分ける方法
換価分割は、共有している不動産そのものを売却し、代金を持分割合に応じて分ける方法です。
金銭で清算できるため、共有者のあいだにわだかまりが残りにくい進め方といえます。
共有者全員が売主として売買契約を結び、決済後に代金を持分割合で配分する流れになります。
誰も住む予定がない実家や、活用の見込みがない土地では、換価分割が現実的な選択です。
注意したいのは、裁判で換価分割が命じられる場合には競売になる点です。
競売は市場での売却より価格が低くなりやすく、手元に残る金額が減ります。
売却によって利益が出れば、譲渡所得として課税されます。
売却活動には共有者全員の協力が要るため、窓口役を1人決めておくのが得策です。
【参考】国税庁|共有物の分割
共有物分割のメリットとデメリット
共有物分割には、不動産を自由に扱えるようになる利点と、時間や費用の負担という側面の両方があります。
利点と負担は表裏の関係にあり、どちらか一方だけを見て判断すると後悔につながります。
判断の軸は2つです。
不動産を手元に残したいかどうかと、他の共有者と落ち着いて話し合える関係かどうかです。
共有を続ける道と分割する道を比べたうえで、自分にとって負担の小さい進め方を選んでください。
たとえば実家に住み続けたい人がいる家庭なら、代償分割で住まいを残せますが、取得する人にまとまった資金が要ります。
全員が現金化を望むのであれば、換価分割のほうが早く進み、費用の見通しも立てやすくなります。
どちらを選ぶにしても、先につかんでおきたいのは評価額の目安です。
共有物分割のメリット
共有物分割の利点は、単独で処分できるようになること、持分だけを売るより高く清算しやすいこと、将来の相続で共有者が増えるのを防げることの3つです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 自由に扱える | 売却、建て替え、担保設定を自分の判断でできる |
| 清算額が上がりやすい | 不動産全体として売るため、持分単体の売却より条件がよくなりやすい |
| 将来の紛争を防げる | 共有者が世代交代で増えていく流れを断ち切れる |
とくに大きいのは1つ目です。
単独所有になれば、他の共有者の顔色をうかがわずに不動産を動かせます。
3つ目も見落とせません。
共有を放置すれば、次の相続で当事者が増え、解決はいっそう困難です。
今のうちに整理しておくことで、子どもの世代に問題を引き継がずに済みます。
共有物分割のデメリット
共有物分割には、登記費用や測量費用、専門家への報酬といった出費がかかり、話し合いがまとまらなければ調停や訴訟で年単位の時間を要します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 費用がかかる | 登録免許税、司法書士報酬、測量費用、弁護士費用など |
| 時間がかかる | 協議で数ヵ月、調停や訴訟に進むと1年以上かかる場合がある |
| 関係が悪くなりやすい | 評価額や分け方をめぐって親族間の対立に発展しやすい |
裁判まで進んで競売が命じられると、想定より低い金額で現金化される点も負担です。
不動産への思い入れが強い共有者がいる場合、話し合いが感情的になりやすく、その後の親族関係に尾を引くこともあります。
費用と時間の負担は、選ぶ分割の方法によっても大きく変わります。
現物分割で重いのは測量費用、代償分割で重いのは代償金の資金調達です。
共有物分割の手続きは協議・調停・訴訟の3段階で進む

共有物分割は、協議から調停、訴訟へと3つの段階を順に進みます。
段階が上がるほど期間も費用も増えるため、協議の段階で決着させれば負担を抑えられます。
ステップ1 共有者全員で分割方法を話し合う
共有物分割は、まず共有者全員での協議から始まります。
協議で決めるのは、どの方法で分けるか、不動産をいくらと評価するか、費用を誰がどう負担するかの3点です。
評価額でもめやすいため、不動産会社の査定書など客観的な資料を持ち寄ると話が進みやすくなります。
合意ができたら、内容を共有物分割協議書にまとめます。
協議書は登記申請の登記原因証明情報として使う書面のため、共有者全員の署名と実印が必要です。
共有者が1人でも欠けていると協議は成立しません。
連絡が取れない共有者がいる場合は、協議の段階でつまずくことになります。
協議書には、対象の不動産を登記事項証明書のとおりに特定して記載してください。
表示が正確でないと、登記の申請は受け付けられません。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
ステップ2 まとまらなければ共有物分割調停を申し立てる
協議がまとまらないときは、裁判所の調停を使って話し合いを続ける方法があります。
調停は、調停委員という第三者を交えて合意を目指す手続きです。
当事者だけでは感情的になってしまう場合でも、間に人が入ることで論点を整理しやすくなります。
押さえておきたいのは、共有物分割では調停を先に経る義務がないという点です。
協議が調わなければ、調停を飛ばして訴訟を起こすこともできます。
まだ話し合いの余地が残っていて、時間をかけてでも合意で終えたい場合に向く手続きです。
逆に、相手が話し合いに応じる姿勢を見せない場合は、訴訟へ進むほうが早く決着します。
申立てには収入印紙と郵便切手が必要で、金額は申し立てる裁判所が案内しています。
【参考】民事調停法|e-Gov 法令検索
ステップ3 それでも決まらなければ共有物分割訴訟を起こす
協議が調わないとき、または協議自体ができないときは、裁判所に分割を請求できます。
訴訟の当事者は、共有者全員です。
1人でも欠けていると審理を進められないため、共有者の把握が前提になります。
裁判所は、まず現物分割か、共有者に金銭を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法を検討します。
どちらの方法でも分けられないとき、または分割によって価格が大きく下がるおそれがあるときに、裁判所が命じるのが競売です。
判決までに1年以上かかる例も珍しくありません。
訴えを起こす裁判所は、対象の不動産がある場所を基準に決まります。
訴状の書き方や訴額の計算など訴訟の実務の詳細は、共有物分割請求訴訟の記事をご覧ください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
相続した不動産は原則として遺産分割が先になる
相続財産に含まれる持分は、原則として遺産分割で分けることになり、共有物分割の手続きでは分けられません。
相続人どうしで遺産を分けるべき段階にある共有物については、共有物分割の対象から外れる仕組みです。
ただし例外があります。
相続が始まってから10年が過ぎたときは、相続財産に属する持分についても共有物分割の手続きで分けることが可能です。
10年が過ぎた後でも、相続人が遺産分割を求めて異議を申し出れば、共有物分割では進められません。
異議の申出には期限があります。
自分がどちらの手続きに乗るのかは早めに確認しておいてください。
遺産分割が済んでいるかどうかは、登記事項証明書の記載と遺産分割協議書の有無で確認できます。
判断に迷うときは弁護士に相談してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有物分割を待たずに共有から抜けるなら共有持分の売却という選択肢もある
共有持分は自分の判断だけで売却でき、共有物分割のように他の共有者の同意や裁判所の判断を待つ必要がありません。
共有物分割は、相手がいて初めて成立する手続きです。
相手が話し合いに応じなければ調停や訴訟に進むしかなく、決着まで不動産は動かせません。
共有持分の売却のほうは、自分ひとりで完結します。
共有関係から先に抜けたい人にとって、現実的な出口です。
| 比較項目 | 共有物分割 | 共有持分の売却 |
|---|---|---|
| 相手の同意 | 分割方法について共有者全員の合意か裁判所の判断が要る | 他の共有者の同意は要らない |
| かかる期間 | 協議で数ヵ月、調停や訴訟なら1年以上 | 買主が決まれば数週間から数ヵ月 |
| 残るもの | 単独所有の不動産または持分に応じた金銭 | 売却代金 |
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有持分は他の共有者の同意がなくても自分だけで売却できる
共有持分は各共有者が単独でもつ財産なので、他の共有者の同意を得ずに第三者へ譲渡できます。
不動産全体を売るには共有者全員の同意が要りますが、自分の持分だけを売るのであれば話は別です。
持分の処分は各共有者の自由です。
ただし、共有持分だけを買い取る買主は限られます。
一般の不動産会社では扱いにくいため、共有持分や共有名義の不動産を専門に取り扱う買取会社が窓口になります。
買主が決まれば持分移転の登記をおこない、登記の完了をもって共有関係から完全に抜けられる仕組みです。
以後は固定資産税の負担も、他の共有者との連絡も不要になります。
売却の相手は第三者にかぎりません。
他の共有者に買い取ってもらう形にすれば、共有関係の解消はその場で完了です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有持分の売却が向いている人|関係を絶ちたい・早く現金化したい
共有持分の売却が向いているのは、他の共有者と関わりたくない人、早く現金化したい人、遠方の不動産を持て余している人です。
- 他の共有者と連絡を取りたくない、話し合いをしたくない
- 相続で持分をもらったが、その不動産を使う予定がない
- 固定資産税や管理の負担だけが続いている
- 遠方に住んでいて現地の管理ができない
反対に、不動産を手元に残したい人や、共有者と落ち着いて話し合える関係にある人は、共有物分割のほうが適しています。
どちらが有利になるかは、持分割合と物件の条件しだいです。
共有者どうしの関係がすでに壊れている場合も、持分の売却であれば相手と直接やりとりせずに済みます。
判断の目安になるのは、話し合いを続ける時間と労力を自分が負担できるかどうかです。
共有持分を売る前に確認しておきたい3つのこと
共有持分を売る前に確認しておきたいのは、持分割合と登記の現状、他の共有者への説明の要否、複数社の査定額の比較の3点です。
まず登記事項証明書を取り寄せ、自分の持分割合と共有者が誰なのかを正確に把握してください。
相続登記が済んでいない場合は、先に登記が必要になります。
次に、売却後は他の共有者が見知らぬ買主と共有関係になるため、関係性への影響を踏まえて事前に伝えるかどうかを判断します。
そして買取価格は、取り扱う会社によって差が出やすい項目です。
1社の提示額だけで決めず、複数社の査定を比べてください。
共有持分の査定額を知りたい方は、ベンナビ不動産売却の無料査定をご利用ください。
共有持分や共有名義の不動産、空き家など、一般の不動産会社では扱いにくい物件の買取に対応する会社へまとめて相談できます。
査定の依頼は無料で、金額を確認したうえで売るかどうかを決められます。
査定は無料ですが、実際に売却へ進む段階では登記費用や税金などの諸費用が別途必要です。
共有物分割にかかる費用と税金
共有物分割で発生するお金は、費用と税金に分けて考えると整理しやすくなります。
税金は「持分どおりに分けたかどうか」で扱いが変わる点が要点になります。
登記費用と登録免許税
共有物分割による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の20が本則です。
ただし土地について、次の3つの要件をすべて満たす場合は1,000分の4に軽減されます。
- 共有物分割による所有権移転登記の直前に分筆の登記がされていること
- 分筆後の各土地の持分移転登記が同時に申請されること
- 取得する持分の価格が登記の前後で同等以下であること
登録免許税は、固定資産税評価額をもとに計算します。
登記の申請に必要な書類は次のとおりです。
- 登記原因証明情報となる共有物分割協議書
- 共有者の印鑑証明書
- 登記識別情報または登記済証
- 取得者の住民票
- 固定資産評価証明書
司法書士に依頼する場合は、登録免許税とは別に報酬がかかります。
土地を分筆する場合の測量・分筆費用
現物分割で土地を分ける場合は、土地家屋調査士による境界確定測量と分筆の登記が必要になります。
境界確定測量では、隣地の所有者に立ち会ってもらい、土地の境界を確定させます。
公道に接する土地であれば、道路を管理する行政との協議も必要です。
そのため、測量にかかる期間は数ヵ月に及ぶことがあります。
費用は土地の面積、隣地の数、境界がすでに確定しているかどうかによって大きく変わります。
事務所ごとの料金体系にも幅があるため、複数の土地家屋調査士から見積りを取ったうえで判断してください。
隣地の所有者が遠方に住んでいる場合や、相続で名義が古いままの土地が隣接している場合は、立会いの調整にさらに時間がかかります。
分筆を含む現物分割では、測量費用が全体の出費のなかで大きな割合を占めます。
譲渡所得税・贈与税・不動産取得税の扱い
共有物分割の税金は、持分どおりに分けたのかどうかで扱いが変わります。
持分に応じて土地を現物分割した場合、分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。
不動産取得税についても、共有物分割による取得は原則として非課税です。
| 税目 | 原則 | 課税される場合 |
|---|---|---|
| 譲渡所得税 | 持分に応じた現物分割は譲渡がなかったものとして扱う | 換価分割で売却益が出た場合 |
| 贈与税 | 持分どおりに分ければかからない | 持分割合を超える価値を無償で取得した場合 |
| 不動産取得税 | 共有物分割による取得は原則として非課税 | 分割前の持分割合を超える部分を取得した場合 |
持分割合と実際に取得した価値がずれると課税対象になります。
判断に迷う場合は、税理士に確認してください。
【参考】国税庁|共有物の分割
専門家に依頼した場合の費用の目安
共有物分割では、担当する専門家が内容ごとに分かれます。
| 専門家 | 担当する内容 |
|---|---|
| 司法書士 | 共有物分割による登記の申請 |
| 土地家屋調査士 | 境界確定測量と分筆の登記 |
| 弁護士 | 共有者との交渉、調停や訴訟の代理 |
| 税理士 | 譲渡所得や贈与税の判断、確定申告 |
弁護士に交渉や訴訟を依頼する場合は、着手金と報酬金がかかります。
料金体系は事務所ごとに異なるため、依頼前に見積りを確認してください。
どの専門家に頼むかは、いま止まっている工程を基準に決めてください。
話し合いが進まないなら弁護士、合意はできていて登記だけが残っているなら司法書士が窓口になります。
費用と時間をかけずに共有関係から抜けたい場合は、自分の持分だけを売却するという選択肢もあります。
共有物分割で起こりやすい4つの注意点
共有物分割でつまずきやすいポイントは4つあります。
いずれも事前の準備で避けられる余地があります。
現物分割で土地が細切れになり価値が下がる
現物分割は土地を物理的に分けるため、分けた結果それぞれの土地が使いにくくなる場合があります。
よくあるのが、道路に接する幅が足りなくなり、建物を建てられない土地が生まれるケースです。
建築基準法では、敷地が道路に一定の幅で接している必要があります。
接道の条件を満たさない土地は再建築ができず、評価額の面でも大幅に不利です。
分割前は1つの土地として活用できたのに、分けた後は合計の評価額が下がることもあります。
分筆を決める前に、不動産会社や土地家屋調査士に分け方を相談し、分割後の使い道まで見通しておいてください。
とくに旗竿地や間口の狭い土地では、分けた後に建物を建てられなくなる可能性が高まります。
代償金を用意できず結局は競売になる
代償分割は、取得する人がまとまった金銭を用意できることが前提の方法です。
評価額の合意が取れても、支払う資金を準備できなければ成立しません。
自己資金で足りない場合は融資を検討することになりますが、審査が通らなければ計画は止まります。
住宅ローンが残っている不動産では、名義の変更に金融機関の承諾が必要です。
資金の見通しが立たないまま代償分割で進めると、結局は換価分割に切り替わり、裁判では競売に至ります。
競売は市場での売却より低い金額になりやすいため、手元に残る額が想定を下回ります。
代償分割を前提に話を進めるのであれば、資金の裏付けを早い段階で他の共有者へ示しておいてください。
後戻りを防げます。
話し合いが長期化して共有者どうしの関係が壊れる
共有物分割の協議は、評価額と分け方の2点でもめやすく、対立が深まると年単位で長引きます。
実家のように思い入れの差が大きい不動産では、売って現金化したい人と残したい人の希望が正面衝突しがちです。
感情の対立に発展すると、条件の調整そのものが進まなくなります。
長期化を避けるには、評価額を客観的な資料で共有することが有効です。
不動産会社の査定書や不動産鑑定士の評価書があれば、議論の土台がそろいます。
当事者だけで抱え込まず、早い段階で弁護士など第三者を入れる進め方も検討してください。
話し合いの記録を残しておくことも有効です。
誰がいつ何を提案したかを書面にしておけば、調停や訴訟へ進んだときの資料になります。
対立が深く話し合いを続ける気力がないなら、自分の持分だけを売却して先に抜ける選択も現実的です。
共有者に所在不明者や判断能力が低下した人がいて協議できない
共有者の所在が分からない場合や判断能力が低下している場合は、通常の協議ができず、裁判所の手続きを使うことになります。
共有物分割の協議は共有者全員がそろって初めて成立するため、1人でも欠けると先へ進めません。
所在が分からない共有者の持分は、他の共有者が取得する裁判を裁判所に求めることが可能です。
裁判所が定めた金銭を供託(きょうたく/金銭を法務局へ預ける手続き)するなどの手順を経て、持分を取得します。
認知症などで判断能力が低下した共有者がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人に代わって協議に加わります。
成年後見人の選任には数ヵ月かかるため、判断能力の低下が疑われる段階で早めに準備を始めてください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
共有物分割に関するよくある質問
共有物分割請求をされたら拒否できますか
分割そのものを拒むことは原則としてできません。
共有者にはいつでも分割を請求する権利があるためです。
ただし、分割の方法については自分の希望を主張できます。
売却ではなく代償分割を求めるといった形で、話し合いや裁判の中で意見を述べられます。
共有物分割と共有持分の放棄は何が違いますか
共有物分割は共有物全体の分け方を決める手続きで、対価を受け取れます。
持分放棄のほうは、自分の持分を手放して他の共有者に移す行為で、対価は受け取れません。
持分放棄では登記に他の共有者の協力が要る点にも気をつけてください。
共有物分割にはどれくらいの期間がかかりますか
協議で合意できれば数ヵ月で終わります。
調停に進むと半年前後、訴訟になると1年以上かかることもあります。
土地を分筆する場合は、境界確定測量の数ヵ月も見込んでおきたいところです。
期間を短くしたい場合は、協議の段階で評価額の資料をそろえておくことが有効です。
共有物分割と交換は何が違いますか
共有物分割は、1つの共有物について共有状態を解消する手続きです。
交換は、別々の不動産を持つ者どうしが権利を取り替える取引をいいます。
税務上の扱いも異なり、交換には一定の要件を満たした場合の特例が用意されています。
共有物分割の禁止特約は何年まで結べますか
分割をしない旨の契約は、5年を超えない期間で結べます。
更新もできますが、更新のときから5年が上限です。
不分割契約がある期間中は、共有者は分割を請求できません。
契約の有無は、遺産分割協議書や共有者間の合意書で確認してください。
まとめ
共有物分割とは、複数人で共有している不動産の共有状態を解消し、単独所有か金銭に置き換える手続きです。
分け方には現物分割・代償分割・換価分割の3つがあり、不動産を残したいのか現金化したいのかで選び分けます。
手続きは共有者全員の協議から始まり、まとまらなければ調停や訴訟へ進みます。
段階が上がるほど期間と費用がかさむため、協議での決着が負担の軽い進め方です。
共有を放置すると、相続のたびに共有者が増えて解決は難しくなります。
話し合いが進まない、連絡が取れないという場合の出口もあります。
自分の共有持分だけを売却して、共有関係から抜ける方法です。
ベンナビ不動産売却では、共有持分や共有名義の不動産、空き家や再建築できない物件など、扱いの難しい不動産の買取に対応する会社へ無料で査定を依頼可能です。
まずは持分がいくらになるかを確かめたうえで、共有物分割と売却のどちらを選ぶかを判断してください。
査定の依頼に費用はかかりませんが、売却を進める段階では登記費用や税金などの諸費用が発生します。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。