共有名義不動産

共有名義の不動産を相続したらどうする?手続きの流れ・必要書類・費用を解説

共有名義の不動産を相続したらどうする?手続きの流れ・必要書類・費用を解説

登記簿に「共有者」「持分2分の1」と書かれた不動産の共有者が亡くなったとき、持分が誰のものになるのか分からず、手が止まっていませんか。
実家を兄弟姉妹と共有名義で相続することになりそうで、共有のまま登記して問題ないのか迷っている人もいます。
共有名義の不動産で共有者が亡くなっても、持分が他の共有者のものになるわけではありません。
引き継ぐのは、亡くなった人の相続人です。

本記事では、共有名義の 不動産を相続したときの手続きを6ステップに分けて整理し、必要書類・費用・3年の登記期限までを解説します。
共有のまま持ち続けるか、単独名義にまとめるか、自分の持分だけを売って共有から抜けるかという3つの出口の選び方も確認できます。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

共有名義の不動産を相続すると持分はどうなる|引き継ぐのは法定相続人

亡くなった共有者の持分は他の共有者へ自動的に移らず、亡くなった人の法定相続人が相続財産として引き継ぎます
共有持分は所有権の一部であり、預貯金や有価証券と同じく相続財産に含まれます。
誰が新しい共有者になるのかの確定が最初の作業です。

亡くなった共有者の持分は他の共有者に自動では移らない

共有持分は所有権の一部なので、共有者が亡くなっても消滅も移転もせず、亡くなった共有者の相続人が承継します。
「共有者が亡くなれば残った共有者のものになる」という誤解は、相続人が誰もいない場合の例外的な扱いと混同することで生まれます。
実際には、亡くなった共有者に配偶者や子がいれば、新しい共有者になるのは配偶者や子です。

持分の取得者は、遺言書があればその内容で、なければ遺産分割協議で決まります。
手元の不動産が共有かどうかは、法務局で取得できる登記事項証明書の権利部(甲区)に「共有者」と「持分」の記載があるかで確認できます。
名義変更をしないまま放置すると、登記簿上は亡くなった人の名義が残ったままです。

名義が残ったままでは、不動産全体の売却も、金融機関からの借入れで担保に入れることもできません。
売りたいと考えたときに買主から名義の整理を求められ、戸籍集めから始めることになります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

親と子の共有名義では相続人全員に持分が分かれる

亡くなった人の持分を法定相続分の割合で分けるため、もともと持分を持っていた相続人は「自分の持分+相続する持分」を合算した割合になります。
相続人となる人の範囲は、通常の相続と同じです。
配偶者は常に相続人になります。
配偶者以外は、第1順位が子、第2順位が親などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹という順です。

父と長男が2分の1ずつ共有している不動産があり、相続人が母・長男・長女の3人というケースで計算してみます。
父の持分2分の1が相続財産になり、母が2分の1、長男と長女が4分の1ずつの割合で受け取ります。
母が取得するのは2分の1×2分の1で4分の1、長男と長女はそれぞれ2分の1×4分の1で8分の1です。

長男はもともと2分の1を持っているため、相続後は2分の1+8分の1で8分の5になります。
相続前後の持分は次のとおりです。

相続人もとの持分相続する持分相続後の持分
長男2分の18分の18分の5
なし4分の18分の2
長女なし8分の18分の1

父と長男の2人だった共有者は、相続を経て長男・母・長女の3人になりました。

共有者に相続人がいないときは他の共有者に持分が移る

相続人も特別縁故者もいないと確定した場合に限り、持分は他の共有者に移ります。
まず家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、官報での公告によって相続人を捜索します。
亡くなった人に債権を持つ人への支払いも、清算人の仕事です。

捜索の期間を経ても相続人が現れなかったとき、生前に療養看護に努めた人や生計を共にしていた人が「特別縁故者」として財産の分与を家庭裁判所に申し立てられます。
分与がおこなわれず、相続人も特別縁故者もいないと確定して初めて、亡くなった共有者の持分が他の共有者のものになります。
公告と調査には1年前後かかることが一般的です。
共有者が亡くなった翌日から名義が変わるわけではないため、時間がかかる手続きだと理解しておきましょう。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有名義の不動産を相続する手続きの流れ|6ステップと必要書類

遺言書の確認から相続登記まで6つの段階があり、共有名義でも流れは単独名義と変わりません
違うのは「持分」を対象に手続きする点だけです。
各段階には前後関係があり、順番を飛ばすと手戻りが生じます。

①遺言書があるかどうかを確認する

遺言書があれば原則としてその内容どおりに持分の取得者が決まるため、最初に探します。
探し先は4つあります。
自宅の金庫や仏壇まわり、銀行の貸金庫、公証役場の遺言検索システム、法務局の遺言書保管制度です。

公証役場では全国どこの公証役場でも公正証書遺言の有無を照会でき、法務局では自筆証書遺言書保管制度を使った遺言の有無を確認できます。
自筆で書かれた遺言書が保管制度を使わずに見つかった場合は、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。
検認は相続人の立ち会いのもとで遺言書を開封し、内容を記録する手続きにあたります。

公正証書遺言と保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が要りません。
封がされた遺言書を勝手に開けると過料の対象になるため、封を切らずに家庭裁判所へ持ち込みましょう。

②戸籍を集めて相続人を確定させる

亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍を集め、法定相続人を全員確定させます。
必要な書類は2種類です。
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本を用意します。
取得先は本籍地の市区町村の窓口か郵送です。
2024年3月からは、最寄りの市区町村でまとめて請求できる広域交付も始まっています。

集めた戸籍をもとに法定相続情報一覧図を作成し、法務局の認証を受けておくと、その後の登記・銀行・税務署の手続きで戸籍の束を出し直す手間が省けます。
戸籍をたどる過程で判明することがあるのが、前の婚姻でもうけた子や認知した子、養子の存在です。
判明した相続人にも遺産分割協議へ加わってもらう必要があり、連絡を取らずに進めた協議は無効になるため注意してください。

③持分割合と不動産の評価額を調べる

登記事項証明書で持分割合を、固定資産評価証明書や査定で価値を確認してから協議に入ります。
登記事項証明書は法務局の窓口のほか、オンライン請求でも取得でき、共有者全員の氏名と持分割合が記載されています。
固定資産評価証明書の取得先は不動産の所在地の市区町村で、毎年届く納税通知書に同封された課税明細書からも評価額を確認可能です。

相続税評価額は、国税庁が公開している路線価図・評価倍率表をもとに自分で計算できます。
不動産の価格には複数のものさしがあり、用途によって使い分けます。

価格の種類取得先主な用途
固定資産税評価額市区町村の固定資産評価証明書登録免許税の計算
相続税評価額・路線価国税庁の路線価図・評価倍率表相続税の申告
査定価格不動産会社代償金の算定・売却の検討

数字の裏づけがないまま話し合いを始めると、取り分の主張がかみ合わず協議が長引きがちです。
共有持分は、不動産全体の評価額に持分割合を掛けた額がそのまま市場での取引価格になるとは限りません。

④遺産分割協議で持分を誰が取得するか決める

相続人全員の合意があれば法定相続分と異なる分け方もでき、協議の場で共有を続けるかどうかが決まります。
協議には相続人全員が参加しなければならず、1人でも欠けた協議は無効です。
全員が一堂に会する必要はなく、遠方の相続人がいる場合は協議書を郵送で回して署名と押印をもらう持ち回りの方法も認められます。

分け方によってその後の扱いが大きく変わります。
法定相続分どおりに登記すると共有者が増え、売却や活用のたびに全員の同意が必要です。
1人が持分をまとめて取得すれば単独名義になり、その後の判断を自分だけで下せます。

話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てられます。
調停でも合意に至らなければ、審判で裁判官が分け方を決める流れです。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

⑤遺産分割協議書を作成して全員が実印を押す

不動産の表示を登記事項証明書どおりに記載し、相続人全員が実印を押して印鑑証明書を添えることが要件になります。
不動産の表示は、土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積を登記事項証明書から転記します。
共有持分を相続する場合は「持分2分の1」のように取得する割合まで書き込んでください。

住居表示(郵便物のあて先の住所)で書くと登記が通らないため、登記事項証明書の表記に合わせてください。
署名は各自の自筆でおこない、実印を押したうえで印鑑証明書を添付します。
印鑑証明書の有効期限は、相続登記では原則として問われません。
金融機関の手続きでは、発行から3ヵ月以内が求められるのが通例です。
協議書は相続人の人数分を作成し、各自が1通ずつ保管しておくと、後日の言った言わないを防げます。

⑥法務局に相続登記を申請して名義を変える

不動産の所在地を管轄する法務局に、登記申請書と戸籍・遺産分割協議書などを添えて申請します。
提出方法は窓口・郵送・オンラインの3経路があり、平日に窓口へ行けない場合は郵送でも受け付けてもらえます。
主な添付書類は次のとおりです。

書類名取得先備考
登記申請書自分で作成・法務局に様式あり持分の割合まで記載する
被相続人の出生から死亡までの戸籍本籍地の市区町村法定相続情報一覧図で代用可
被相続人の住民票の除票最後の住所地の市区町村本籍の記載ありで取得する
相続人全員の戸籍謄本各自の本籍地の市区町村相続開始後に取得したもの
遺産分割協議書・印鑑証明書自分で作成/各自の市区町村相続人全員分
固定資産評価証明書不動産所在地の市区町村登録免許税の計算に使う
取得する相続人の住民票住所地の市区町村新しい名義人の住所確認用

申請から完了までは1週間〜2週間程度が目安です。
書類に不備があると法務局から連絡が入り、補正のために出向くこともあります。
郵送で申請する場合は、書留など追跡できる方法を使ってください。

完了後は登記識別情報通知が交付されます。
通知は次に売却や担保設定をおこなうときに必要になるため、権利証にあたる書類として大切に保管しましょう。
共有持分だけを相続した場合も、交付される通知の扱いは単独名義のときと変わりません。

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

共有名義の相続登記にかかる費用|3年の申請期限と過料も解説

相続登記にかかる費用は、登録免許税・書類の取得費・専門家に頼む場合の報酬という3つに分かれます
登録免許税は納める税額が持分割合に応じて決まるため、不動産を丸ごと相続する場合より負担は軽くなります。
相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。

不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、申請義務は2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。
手続き全体では、書類の取り寄せに1ヵ月〜2ヵ月、遺産分割協議に数週間から数ヵ月、登記の申請から完了までに1週間〜2週間が目安です。
相続税の申告が必要な場合は10ヵ月という期限も重なるため、費用と期限の両方を早い段階で把握しておきましょう。
費用の全体像は次のとおりです。

費目目安額備考
登録免許税固定資産税評価額×持分割合×0.4%法務局へ収入印紙で納付する
戸籍・住民票などの取得費数千円〜1万円台相続人の人数と本籍の移動回数で変わる
固定資産評価証明書1通あたり数百円市区町村で取得する
司法書士への報酬事務所ごとに幅がある見積もりを取って比較する

登録免許税と書類取得費・専門家報酬はいくらかかる

登録免許税は固定資産税評価額×持分割合×0.4%で計算し、戸籍などの実費と、司法書士に頼む場合の報酬が加わります。
固定資産税評価額が2,000万円の不動産について持分2分の1を相続する場合、課税の対象になるのは2,000万円×2分の1の1,000万円です。
1,000万円に0.4%を掛けた4万円が登録免許税になります。

書類の取得費は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本が1通750円、住民票と固定資産評価証明書が1通数百円です。
相続人が少なく本籍の移動も少なければ、数千円〜1万円台に収まることが多いといえます。
司法書士に依頼した場合の報酬は事務所ごとに設定が異なります。
複数の事務所から見積もりを取り、書類の取得代行まで含む金額なのかを確認したうえで比べてください。

【参考】登録免許税法|e-Gov 法令検索

相続登記の義務化と過料|3年を過ぎるとどうなる

自分のために相続の開始があったことと、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
起算点は相続が起きた日ではなく、相続の開始と不動産の取得の両方を知った日です。
自分が相続人だと知っていても、不動産が相続財産に含まれることを知らなければ、義務は生じません。

遺産分割の話し合いが長引いて3年に間に合わない見込みのときは、相続人申告登記という制度があります。
登記官に対して自分が相続人である旨を申し出れば、いったん申請義務を果たした扱いです。
2024年4月1日より前に発生した相続も義務の対象で、その場合は2027年3月31日までが期限です。

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

共有名義のまま相続するメリット

共有名義を選ぶことに合理性がある場面も実際にあります
相続人の間で公平に分けられること、各自が自分の持分について税の特例を使えることが主な利点です。
不動産は預貯金のように1円単位で分けられないため、誰か1人が取得する形にすると、どうしても取り分の不均衡が生まれます。

持分という形であれば、法定相続分どおりの割合をそのまま登記に反映できます。
共有にするかどうかは、目先の公平さだけでなく、5年後10年後に不動産をどうするつもりなのかまで考えて決めるのが賢明です。
とくに実家のように誰も住む予定がない不動産は、共有にした時点で処分の判断が全員一致でなければ下せません。
共有を選ぶ合理性がどこにあるのかを、2つの観点から確認していきます。

相続人全員で公平に分けられる

現物を物理的に分けられない不動産でも、持分という形なら法定相続分どおりに分けられます。
不動産は預貯金と違って1円単位では分けられない財産です。
1人が取得して他の相続人に金銭を払う方法もありますが、取得する側にまとまった資金がなければ成立しません。

売却して現金で分ける方法も、相続人の誰かが住み続けたいと考えていれば選べません。
どの方法も取れない場面では、持分を法定相続分どおりに登記する共有が角の立ちにくい着地点です。
相続登記に3年の期限があるため、話し合いが長引いたときに期限を守るための暫定的な措置として共有登記が選ばれることもあります。
暫定のつもりが恒久化しやすい点には注意してください。

各自が自分の持分について税の特例を使える

将来売却するときの居住用財産の特別控除は共有者それぞれで判定されるため、共有のほうが有利になる場面があります。
自分が住んでいた家屋と敷地を売却したとき、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
特例の要件は共有者ごとに判定するため、満たす共有者が2人いれば控除も2人分です。

相続税の計算で使う小規模宅地等の特例も同様に、要件を満たす相続人が取得した持分について適用されます。

ただし、いずれの特例も居住の実態や所有期間など細かい要件が定められています。
控除を見込んで共有を選ぶ場合は、自分が要件を満たすのかどうかを税理士か税務署で確認してから判断しましょう。

【参考】租税特別措置法|e-Gov 法令検索

共有名義のまま相続する5つのデメリット

共有を続けると、売却や活用が自分ひとりでは動かせなくなり、費用の負担と権利関係が時間とともに重くなります
次の5つを順に確認していきます。

売却や建て替えに共有者全員の同意が必要になる

不動産全体の売却や大規模な変更には共有者全員の同意が必要で、1人でも反対すれば実行できません。
共有物に対してできることは、行為の種類によって必要な同意の範囲が変わります。

行為の種類具体例必要な同意
保存行為雨漏りの修理、不法占拠者への明渡し請求各共有者が単独でできる
管理行為短期の賃貸借契約、賃料の設定持分の価格の過半数
変更行為売却、建て替え、大規模なリフォーム共有者全員の同意

売却したいと考えても、他の共有者が住み続けたいと考えていれば話は平行線です。
連絡が取れない共有者が1人いるだけで、同意を集められずに不動産が動かせなくなってしまいます。
賃貸に出す場合も、契約期間によって必要な同意の範囲が変わる点に注意してください。

土地なら5年、建物なら3年を超える賃貸借は変更行為として扱われ、全員の同意が要ります。
共有者が増えるほど、同意集めにかかる時間と手間は膨らみます。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

固定資産税や管理費の負担割合でもめやすくなる

固定資産税の納税通知書は代表者1人にまとめて届くため、立て替えた人が他の共有者から回収できずに不公平が生じやすくなります。
共有名義の不動産にかかる固定資産税は、共有者が連帯して納める義務を負います。
市区町村は共有者のうち1人を代表者として通知書を送るため、代表者が全額を納めたうえで、他の共有者から持分割合に応じて回収する流れです。

代表者は、市区町村への届出で変更できます。
修繕費や管理費も持分割合に応じて負担するのが原則ですが、実際には住んでいる人や近くに住む人が負担しがちです。
負担すべき費用を1年以内に支払わない共有者がいる場合、他の共有者は相当の償金を支払ってその人の持分を取得できる制度もあります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

次の相続で共有者が増えて権利関係が複雑になる

共有者が亡くなるたびにその持分が相続人へ分割されるため、世代を重ねるほど当事者が増えて合意形成が難しくなります。
兄弟3人で共有していた不動産で、1人が亡くなればその配偶者と子が新しい共有者です。
3人が3人とも亡くなれば、共有者は甥や姪を含めて7人にも8人にもなります。

さらに次の世代へ進むと、共有者が十数人に達することもあります。
登記しないまま相続が重なっていく状態が、いわゆる数次相続です。
面識のない親族が共有者になると、連絡先を調べるだけで戸籍をたどる作業が必要になります。

所在が分からない共有者がいる場合は、通常の話し合いでは不動産を動かせず、裁判所の手続きを踏むことになります。
時間の経過とともに、解決に必要な手間と費用は増える一方です。

共有者の1人が認知症になると手続きが進まなくなる

共有者の判断能力が低下すると、本人は有効に意思表示ができなくなり、売却や遺産分割協議が止まります。
認知症が進んだ状態で結んだ契約は、あとから無効を主張される可能性が残ります。
そのため不動産会社や司法書士は、共有者全員の意思確認が取れない取引には応じないのが通常です。

手続きを進めるには、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てることになります。
申立てから選任まで数ヵ月かかり、選任後も居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が要ります。
後見は本人が亡くなるまで続き、専門職が選ばれた場合は報酬の支払いも続く仕組みです。

共有者に高齢の親族がいる場合は、判断能力があるうちに名義の整理を進めておきましょう。
動ける選択肢が多いうちが有利です。
任意後見契約や家族信託を使って、判断能力が下がる前に不動産の管理者を決めておく方法もあります。

他の共有者が持分を第三者に売ると知らない人が共有者になる

共有持分は各共有者が単独で処分できるため、ある日突然、面識のない会社や個人が共有者になることがあります。
不動産全体を売るには全員の同意が必要な一方、自分の持分だけの処分は各共有者の自由です。
第三者が持分を取得すると、新しい共有者から不動産の分割を求める共有物分割請求を起こされたり、使用していない分の賃料相当額を請求されたりすることがあります。

共有者どうしの気心が知れているうちは表面化しなかった問題が、当事者が入れ替わることで一気に表に出ます。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有名義を解消して単独名義にする4つの方法

共有を解消する方法は、現物分割・代償分割・換価分割・共有物分割請求の4つです
資金力と合意の取りやすさで選ぶべき方法が変わります。

方法内容向いているケース必要な合意
現物分割土地を分筆して各自の単独所有にする広い土地で建物がない共有者全員
代償分割1人が取得し他の共有者に金銭を払う住み続けたい人がいる共有者全員
換価分割全体を売却して代金を分ける誰も住む予定がない共有者全員
共有物分割請求裁判所に分割を求める話し合いが決裂した不要・訴訟で解決

現物分割で土地を物理的に分ける

土地を持分に応じて分筆して各自の単独所有にする方法で、広い土地には向きますが建物には使えません。
手順は、土地家屋調査士による測量、隣地所有者との境界の確定、分筆登記という流れです。
境界の確定には隣地所有者の立ち会いが要るため、着手から完了まで数ヵ月かかります。

注意したいのは、分けた結果それぞれの土地が狭くなる点です。
分筆によって道路に接する幅が足りなくなると、建築基準法の接道義務を満たさず、建て替えができない土地になることがあります。
建物は物理的に切り分けられないため、建物が建っている不動産では現物分割を選べません。
土地と建物の両方を共有している場合は、他の方法の検討が必要です。

代償分割で1人が取得し他の共有者に金銭を払う

1人が不動産を丸ごと取得する代わりに、他の相続人へ持分に相当する金銭を支払う方法です。
実家に住み続けたい相続人がいるケースで選ばれやすい方法です。
支払う金額は、不動産の評価額に他の相続人の持分割合を掛けた額が基準になります。

評価額をいくらとみるかで金額が変わるため、不動産会社の査定書を根拠として示すと話がまとまりやすくなります。
査定は複数社に依頼し、金額の開きが大きい場合はその理由まで聞いておきましょう。
代償分割の壁は資金です。

評価額3,000万円の不動産を1人が取得し、他に相続人が2人いるとします。
支払う代償金は、合計で2,000万円です。
手元資金や借入れで用意できなければ成立しません。
資金の見通しは早い段階で立てておいてください。

換価分割で不動産全体を売って現金を分ける

不動産全体を売却して代金を持分割合で分ける方法で、公平性は高い一方、全員の同意が要ります。
売却の前に相続登記を済ませる必要があるため、いったん共有名義で登記してから売る流れになります。
相続人の1人を代表者として売却手続きを進める場合は、遺産分割協議書に換価分割である旨と代金の分配割合を明記しておきましょう。

売却して利益が出たときは、各共有者がそれぞれ譲渡所得として申告します。
取得費が分からない場合は売却価格の5%を取得費とみなす扱いがあり、税額が大きくなることがあります。

1人でも売却に反対すれば、換価分割は不成立です。
誰も住む予定がないのに売却の合意が取れず、行き詰まる家庭は少なくありません。

共有物分割請求で裁判所に分割を求める

話し合いがまとまらない場合は裁判所に分割を請求でき、現物分割・賠償分割・競売のいずれかで解決されます。
まず簡易裁判所などに共有物分割調停を申し立て、調停でもまとまらなければ地方裁判所に共有物分割訴訟を提起します。
裁判所が選ぶ解決方法の順序は次のとおりです。

土地を分けられるなら現物分割、分けるのが難しければ1人が取得して他に金銭を払う賠償分割、いずれも困難なら競売という判断です。
競売になった場合、市場での取引価格を下回る金額で処分されることが多く、手元に残る金額は減ります。
訴訟の期間は事案によりますが、1年以上かかることもあります。
時間と費用の負担が大きいため、他の方法を尽くしたうえでの最終手段と位置づけておきましょう。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

自分の共有持分だけを売って共有関係から抜ける方法

共有持分は他の共有者の同意なく単独で売却できるため、話し合いが動かなくても自分だけ現金化して共有から抜けられます
不動産全体の売却には全員の同意が要りますが、持分の処分は各共有者が単独でおこなえます。
他の相続人が売却に反対していても、自分の持分の売却は自分だけの判断で可能です。

ただし、持分だけの売却は一般の不動産仲介では買い手がつきにくいという事情があります。
買主は不動産を自由に使えず、他の共有者と関係を築くところから始めることになるためです。
そこで受け皿になるのが、共有持分や訳あり不動産を専門に取り扱う買取業者です。

ベンナビ不動産売却では、共有持分・相続した空き家・再建築が難しい物件など、通常の仲介では動きにくい不動産の無料査定と買取相談を受け付けています。
他の共有者に知らせる前に、まず自分の持分にいくらの値がつくのかだけ確かめたいという段階でも相談できます。

共有持分は他の共有者の同意なく売却できる

持分の処分は各共有者が単独でできるため、他の共有者の同意も事前の承諾も法律上は要りません。
不動産全体を売る行為は共有物に変更を加える行為にあたり、共有者全員の同意が必要です。
一方、自分の持分を誰かに譲る行為は自分の財産の処分にあたり、他の共有者の意思とは関係なくおこなえます。

売却が済むと買主が新しい共有者になり、売主は共有関係から完全に離れます。
固定資産税の負担や管理の話し合いから離れられる点も利点です。

もっとも、知らない相手が共有者になることで、残った共有者との関係が悪くなる可能性は残ります。
関係を保ちたい場合は、先に他の共有者へ買い取ってもらえないか打診し、断られてから第三者への売却に進むという順序も選べます。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有持分の買取価格は査定で確かめられる

共有持分は、不動産全体の価格に持分割合を掛けた額より低くなるのが一般的です。
買主が持分だけを取得しても不動産を自由に使えず、他の共有者との調整が必要になるためです。
買取業者が公表している目安には幅があり、公的な統計は存在しません。

実際の金額は、物件の立地・他の共有者との関係・持分割合によって大きく変わるため、個別の査定で確かめることになります。
査定を依頼するときにあると話が早いのは、次の資料です。

  • 登記事項証明書(共有者と持分割合が分かるもの)
  • 公図・測量図
  • 固定資産税の納税通知書
  • 間取り図や建物の図面

買取と仲介では、売却までの流れが次のように異なります。

比較項目買取仲介
買主不動産会社一般の個人・法人
売却までの期間数日〜数週間数ヵ月以上
価格の水準仲介より低くなりやすい市場価格に近い
他の共有者への連絡不要買主が求める場合がある

複数社に査定を依頼し、金額だけでなく引き渡しまでの期間や契約条件も含めて比べましょう。

共有名義の不動産にかかる相続税の考え方

課税の対象になるのは自分が取得した持分の評価額だけで、遺産の総額が基礎控除額を超えなければ申告も納税も原則として要りません
相続税は遺産の総額そのものに税率を掛けるわけではありません。
亡くなった人の財産から債務と葬式費用を引いた金額を出し、さらに基礎控除額を差し引いた残りが課税対象です。

共有名義の不動産についても、不動産全体の評価額ではなく、自分が相続した持分の評価額が対象になります。
申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。
期限を過ぎると、加算税や延滞税がかかります。
遺産分割が長引きそうな場合でも、いったん法定相続分で申告しておく方法があります。

【参考】相続税法|e-Gov 法令検索

相続税がかかるのは自分が取得した持分だけになる

基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算し、取得した持分を含む遺産の総額がこれを超えなければ申告は要りません。
法定相続人が配偶者と子2人の合計3人なら、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で4,800万円という計算です。
相続税評価額2,000万円の不動産で、持分2分の1を相続したとします。
持分の評価額は1,000万円です。

持分の1,000万円に、預貯金や有価証券など他の相続財産を合算した総額で判定します。
総額が4,800万円以内なら、相続税の申告と納税は原則として発生しません。
共有持分を相続したという理由だけで相続税がかかるわけではないため、遺産の総額を洗い出して基礎控除額と比べてみましょう。

【参考】相続税法|e-Gov 法令検索

小規模宅地等の特例は共有持分でも使える

要件を満たす相続人が取得した持分については、宅地の評価額を大きく減額できる特例が適用されます。
亡くなった人が住んでいた宅地を配偶者や同居していた親族が取得した場合、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。
相続税評価額が3,000万円の宅地なら、減額後の評価は600万円です。

共有で取得した場合は、要件を満たす相続人が取得した持分についてのみ適用されます。
同居していた子が2分の1、別居していた子が2分の1を取得したケースでは、同居していた子の持分だけが減額の対象です。
特例を使って納税額がゼロになる場合でも、相続税の申告そのものは必要です。
適用要件は居住の実態や保有の継続で細かく分かれるため、税理士か税務署で自分のケースを確認してください。

【参考】租税特別措置法|e-Gov 法令検索

共有名義の不動産相続でつまずきやすい3つのポイント

共有者の所在不明・住宅ローンの扱い・登記の先送りの3つが、実務で手続きを止める原因になりやすい点です

共有者と連絡が取れないと手続きが止まる

所在が分からない共有者がいる場合でも、裁判所の手続きを使って他の共有者だけで処分を進められる制度があります。
戸籍の附票を取り寄せて、住所を追跡します。
附票は住民票を移した履歴の記録なので、現在の住所へたどり着ける有力な手がかりです。

それでも所在が分からない場合は、2023年4月に施行された民法の改正で新しい制度が設けられています。
所在のわからない共有者の持分について、裁判所の決定を得たうえで取得したり第三者へ譲渡したりできる制度です。
従来からある不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる方法も使えます。

いずれの手続きも申立てから決定まで数ヵ月かかり、法務局に預ける供託金や裁判所に納める予納金も必要です。
早い段階で手を打つほど、負担は小さくなります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

住宅ローンが残っているときは団信と名義を切り分ける

団体信用生命保険でローンが完済されても不動産の名義は自動的には変わらないため、抵当権の抹消と相続登記は別々におこないます。
夫婦がそれぞれローンを組むペアローンや、連帯債務の形で借りているケースには注意してください。
亡くなった人の債務分は保険金で完済されますが、生存している側の債務はそのまま残ることがあります。

まずは金融機関に連絡し、団信の対象になるのはどの部分かを確認しましょう。
保険金でローンが完済されると、金融機関から抵当権抹消の書類が交付されます。
交付された書類を使って法務局で抵当権抹消登記を申請します。

抵当権抹消登記と相続登記は同時申請が可能です。
順序を整理して進めると、法務局へ行く回数を減らせます。
ローンの処理と名義の処理を混同すると、片方だけ終わった状態で止まりやすくなります。

相続登記を先送りすると次の相続で当事者が増える

登記をしないまま次の相続が起きると、必要な戸籍と同意を得るべき相手が一気に増え、費用も期間も膨らみます。
祖父の名義のままになっている土地では、祖父の相続人である子、子が亡くなっていれば孫というように、当事者が十数人にのぼることもあります。
全員分の戸籍を集めるだけで数ヵ月かかり、当事者の1人でも協力を拒めば話し合いは停滞したままです。

連絡先が分からない相続人がいれば、戸籍の附票をたどる作業も加わってしまいます。
相続登記には3年の期限があり、間に合わない見込みのときは相続人申告登記でいったん義務を果たせます。

相続人申告登記は名義を移す手続きではないため、売却するにはあらためて相続登記が必要です。
先送りしても状況が良くなることはありません。
登記や協議が止まったまま持て余しているなら、自分の持分にいくらの値がつくのかをベンナビ不動産売却の無料査定で確かめておく方法もあります。

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

共有名義の不動産の相続に関するよくある質問

Q

共有名義の不動産を相続放棄するとどうなる?

A

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとして扱われます。
共有持分だけでなく、預貯金を含むすべての遺産を承継しません。
持分だけを選んで放棄することはできない点に注意してください。
相続人全員が放棄した場合、放棄された持分は最終的に他の共有者に移ります。

Q

共有名義の不動産の固定資産税は誰が払う?

A

共有者全員が連帯して納める義務を負います。
納税通知書は代表者1人にまとめて送られるため、実際には代表者が全額を納めたうえで、他の共有者から持分割合に応じて回収する運用になることが多くあります。
代表者は、市区町村への届出で変更可能です。

Q

共有名義から単独名義に変更すると贈与税はかかる?

A

遺産分割で持分を取得する場合は相続として扱われるため、贈与税はかかりません。
一方、遺産分割が終わったあとに共有者どうしで持分を無償で移すと贈与とみなされ、年間110万円の基礎控除を超える部分に贈与税がかかります。

Q

共有名義の不動産は相続登記をしないとどうなる?

A

不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
売却も担保設定もできず、次の相続で当事者が増えて手続きが重くなります。
分割協議が長引く場合の受け皿は、相続人申告登記です。

Q

共有者が亡くなって相続人がいないときはどうなる?

A

家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、相続人の捜索と債務の清算がおこなわれます。
特別縁故者への財産分与も検討され、それでも残った持分が他の共有者に移ります。
公告や調査に1年前後かかるため、名義が変わるまでは長丁場です。

まとめ|共有名義の不動産相続は手順と出口をセットで決める

共有名義の不動産で共有者が亡くなったとき、持分は他の共有者ではなく法定相続人が引き継ぎます。
遺言書の確認から相続登記まで6つのステップを踏み、不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要があります。
手続きと並行して決めておきたいのが出口です。

共有のまま持ち続けると、売却に全員の同意が要り、固定資産税の負担でもめやすくなります。
次の相続で当事者も増えます。
単独名義にまとめるか、自分の持分だけを売って共有から抜けるかを早めに考えておくことが、後で動けなくなる事態を防ぐ備えです。

共有のまま持ち続けるか迷っている段階でも、自分の持分にいくらの値がつくのかを知っておくと判断しやすくなります。
ベンナビ不動産売却では、共有持分・相続した空き家・再建築が難しい物件など、通常の仲介では動きにくい不動産の無料査定と買取相談を受け付けています。
他の共有者と話す前の情報整理にも役立つ窓口です。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。