共有名義不動産

共有名義で後悔する7つの理由と共有を解消する6つの方法を解説

共有名義で後悔する7つの理由と共有を解消する6つの方法を解説

売却の話を切り出したら、共有者である兄が首を縦に振らなかった。
離婚から数年たつのに、自宅は元配偶者との共有名義のままになっている。
共有名義の不動産をめぐる相談は、動かせないという行き詰まりの形で持ち込まれます。

共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有している状態のことです。
所有権を面積で切り分けるのではなく、1つの所有権を割合で分け合う仕組みのため、売却や建て替えには他の共有者の同意が要ります。
全員の同意という一点が、後悔の入口になります。

本記事で扱うのは、共有名義で後悔が生まれる7つの理由と、共有状態を解消する6つの方法と費用、持分だけを売った場合の価格の目安です。
読み終えるころには、全体売却・持分の買い取り・持分売却・分割請求のどれが現実的かを判断できるようになります。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

共有名義の不動産で後悔する7つの理由

共有名義の後悔は、単独では決められない、共有者が増え続ける、費用と税金が読めないという3つに集約されます
放置するほど解消の難易度が上がる点も共通しています。

共有者全員の同意がないと売却も建て替えもできない

共有名義の不動産で最初につまずくのが、売却や建て替えに全員の同意が必要になる点です。
民法251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。
次項において同じ。
)を加えることができない」と定めています。
売却や取り壊し、建て替えはこの変更行為にあたります。

共有者が4人いて3人が売却に賛成していても、1人が反対すれば市場での通常売却は不成立です。
反対する共有者の持分がどれだけ小さくても変わりません。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

相続が起きるたびに共有者が増えて権利関係が複雑になる

いま共有者が2人でも、2人のまま続くとは限りません。
共有者が亡くなると、亡くなった人の持分は相続財産として相続人に引き継がれます。
子が3人いれば持分は3つに分かれ、共有者は4人に増える計算です。
次の世代でも同じことが起きるため、共有者の数は世代を重ねるごとに増えていきます。

共有者が増えると、意思決定にかかる手間が跳ね上がります。
面識のない親族が共有者になっている場合、戸籍をたどって相続人を確定させ、住所を調べて連絡を取るところから始めてください。
戸籍の収集と連絡だけで数ヵ月かかることもあります。

連絡先がわからない共有者がいる場合は、裁判所の手続きを使うことになります。
民法262条の2は、共有者の所在を知ることができないときの手続きを定めた条文です。
裁判所は、請求をした共有者に対し、所在のわからない共有者の持分を取得させる裁判ができます。
制度はあるものの、申立てから決定までには時間と費用がかかります。

離婚時に財産分与と住宅ローンの整理で揉める

夫婦で購入した自宅が共有名義のまま離婚した場合、登記の持分割合と財産分与の割合が一致しないことが対立の原因になります。
民法768条は財産分与を請求できることを定めていますが、分ける割合そのものは条文に書かれていません。
婚姻中に夫婦が協力して形成した財産は、2分の1ずつに分けるのが実務で定着した考え方です。
持分が夫3分の2、妻3分の1で登記されていても、分与の場面で登記の割合がそのまま通るとは限りません。

さらに難しいのが住宅ローンです。
ペアローンや連帯債務型で借りている場合、登記上の名義を一方に寄せても、金融機関が承諾しなければ債務者や連帯保証人の地位からは外れられません。
住まなくなった家のローンを払い続ける、あるいは元配偶者の返済が滞ったときに請求を受けるという状態が残ります。

離婚後も共有名義のまま放置すると、元配偶者が亡くなったときに持分が再婚相手や子へ相続され、面識のない相手との共有になりがちです。
離婚の話し合いの段階で名義とローンの両方を整理しておくと、後の負担を減らせます。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

出資額と持分割合がずれて贈与税が課される

購入時の登記でつまずきやすいのが持分割合の設定です。
実際に負担した金額の比率と登記した持分がずれると、差額が贈与とみなされます。

たとえば総額4,000万円の住宅を、夫が3,000万円、妻が1,000万円負担して購入したとします。
本来の持分は夫4分の3、妻4分の1です。
持分を2分の1ずつで登記すると、妻は自分が出した額を1,000万円上回る持分を得ることになり、差額の1,000万円が夫から妻への贈与として扱われます。

贈与税には暦年課税の基礎控除があり、国税庁の説明では1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば申告は不要とされています。
差額1,000万円は控除額を大きく超えるため、妻に贈与税の負担が生じる計算です。

持分は、頭金と諸費用の負担額に各自が返済する住宅ローンの額を加えた比率で決めます。
登記のあとに割合を直すには更正登記や持分移転登記が必要になるため、決済前に負担額を確定させておきます。

【参考】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

固定資産税や修繕費の負担割合で対立する

維持費の負担は、法律上の建前と実際の請求実務がずれているために揉めやすい論点です。
民法253条1項は「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う」と定めています。
内部の負担は持分割合に応じるのが原則です。

ところが固定資産税は扱いが異なります。
地方税法10条の2第1項は「共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う」と定めています。
共有者全員が全額について納税義務を負うため、1人が払わなければ請求は他の共有者に及ぶ仕組みです。
納税通知書は代表者1人に届く扱いが一般的で、代表者が全額を立て替える形になりがちです。

民法253条2項は、共有者が1年以内に費用負担の義務を果たさないときは、他の共有者が相当の償金を支払って持分を取得できると定めています。
負担に応じない共有者がいる場合の出口として使える規定です。

【参考】地方税法|e-Gov 法令検索

共有者の1人に住み続けられても明け渡しを求めにくい

共有者の1人が不動産を独占して使っている場合、他の共有者が単純に出ていくよう求めても認められにくいという問題があります。
民法249条1項が「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」と定めているためです。
住んでいる共有者にも使用する権利がある以上、居住そのものを違法とはいえません。

ただし、請求できる場合もあります。
民法249条2項は「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う」と定めた条文です。
持分を超えて使っている分については、賃料に相当する金銭を請求できます。

問題は、請求しても支払われない場合です。
回収するには訴訟を起こす必要があり、判決を得るまでの間、不動産は売ることも貸すこともできません。
こうした状態が長引くほど、共有関係そのものを解消したほうが早いという判断に傾いていきます。

住宅ローンと登記の諸費用が人数分かかる

共有名義には、購入段階で費用が上振れするという面もあります。
ペアローンで2本の住宅ローンを組む場合、次の費用が2本分発生します。

  • 融資事務手数料と契約事務手数料
  • 金銭消費貸借契約書に貼る印紙税
  • 抵当権設定登記の登録免許税と司法書士報酬

登記申請に必要な書類も人数分です。
印鑑証明書や住民票の取得費用そのものは大きな額ではありませんが、平日に役所へ行く手間は2人分かかります。

団体信用生命保険の保障範囲も確認してください。
ペアローンでは各自が自分の債務に対して加入するため、一方に万一のことがあっても消えるのはその人の残債だけです。
もう一方の返済は続きます。
単独名義で借入額を確保できるのであれば、費用と保障の両面で単独名義のほうが簡素になります。

共有名義とは?押さえておきたい基本ルール

共有名義とは、1つの不動産を複数人で持ち合い、登記簿の所有者欄に全員の名前が記録されている状態のことです
各共有者がもつ所有権の割合を共有持分といいます。

不動産が共有名義になる入口は主に2つです。
1つは夫婦や親子が資金を出し合って購入する場合、もう1つは相続で複数の相続人が引き継ぐ場合です。
前者は購入時に自分たちで選んだ結果ですが、後者は遺産分割協議をしないまま時間が過ぎて共有のまま固定されることが少なくありません。

自分の持分割合は、法務局で取得できる登記事項証明書の権利部(甲区)に「持分3分の1」といった形で記載されています。
権利証が見当たらなくても、物件の所在地と地番がわかれば取得可能です。
まず現状を確かめるところから始めると、選べる手段がはっきりします。

共有持分の割合は出資額または法定相続分で決まる

持分割合の決まり方は、購入したのか相続したのかで変わります。

購入の場合は、実際に負担した金額の比率が持分になります。
総額4,000万円の住宅で夫が3,000万円、妻が1,000万円を負担したのであれば、持分は夫4分の3、妻4分の1です。
頭金だけでなく、各自が返済する住宅ローンの額も負担額に含めて計算します。

相続の場合は、遺産分割協議で決めた割合が持分になります。
協議が終わっていない段階では、不動産は相続人全員の共有となり、各人の持分は法定相続分に応じたものという扱いです。
配偶者と子2人であれば、配偶者2分の1、子が各4分の1です。

割合が判然としない場合の受け皿として、民法250条は「各共有者の持分は、相等しいものと推定する」と定めています。
あくまで推定であり、実際の負担額や遺産分割の結果が明らかであればそちらが優先されます。

変更・管理・保存で必要な同意の範囲が変わる

共有物に対してできる行為は、必要な同意の重さによって三段階に分かれます。
やりたいことがどれにあたるかを先に確かめると、誰に話を通す必要があるかがわかります。

行為の区分具体例必要な同意根拠条文
変更行為売却、建て替え、取り壊し、大規模な用途変更共有者全員の同意民法251条1項
管理行為賃貸借契約の締結、管理会社の変更、軽微な変更持分の価格に従い過半数民法252条1項
保存行為修繕、不法占有者への明け渡し請求、相続登記各共有者が単独で可能民法252条5項

境目にあたるのが軽微な変更です。
民法251条1項は変更行為から「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除いており、軽微な変更は管理行為として持分の過半数で決められます。
外壁の塗り替えや設備の更新がこれにあたると整理されています。

一方、売却は例外なく変更行為です。
持分の過半数を握っていても、単独で不動産全体を売ることはできません。

共有名義のメリットは足並みが揃っている間だけ続く

共有名義そのものが悪いわけではありません
税制上の優遇や費用の分担という利点があるからこそ選ばれています。
ただし、利点が効くのは共有者全員の出口が揃っている間だけです。

住宅ローン控除と3,000万円特別控除を共有者ごとに使える

共有名義を選ぶ経済的な理由は、控除を人数分使える点にあります。
住宅ローン控除は各自の年末残高に応じて計算されるため、夫婦それぞれがローンを組めば控除の枠を2人分使えます。
単独では届かない借入額を、収入合算によって確保できる点も購入時の利点です。

売却の場面でも同じことがいえます。
国税庁は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除について、共有の場合は共有者ごとに控除を適用できるとしています。
夫婦の共有であれば、合計で6,000万円の譲渡益を控除できる計算です。

どちらも大きな利点ですが、前提があります。
同じ家に住み続け、売るときには足並みが揃うという前提です。

【参考】No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

メリットが効くのは出口が揃っている間だけになる

共有名義の利点が負担に反転するのは、共有者の利害がずれた瞬間です。
離婚・相続・転勤・介護といった出来事をきっかけに、住み続けたい人と現金化したい人に分かれます。
利害が分かれる段階に入ると、控除で得た金額よりも、決められないことによる損失のほうが大きくなります。

やっかいなのは、負担と権利が釣り合わなくなる点です。
持分を持っているだけでは家を使えず売ることもできない一方で、固定資産税の納付義務と修繕費の負担は残ります。
得るものがないまま支出だけが続く形になります。

自分が後悔する側に入ったと感じたときは、早めに動いてください。
共有者が増える前、関係が悪化する前であれば、全体売却や持分の買い取りといった手取りの多い方法を選べます。

共有名義を解消する6つの方法

共有状態の解消手段は、他の共有者の同意が要るものと自分だけで実行できるものに分かれます
話し合いが難しいほど、持分売却と分割請求の比重が上がります。

解消方法他の共有者の同意必要な資金手取りの目安向いている人
全体を売却する全員の同意が必要不要市場価格の持分相当額全員が現金化に賛成している人
他の共有者の持分を買い取る相手の同意が必要買取代金が必要資産として残る住み続けたい人
自分の持分を第三者に売る不要不要市場価格を下回る話し合いが進まない人
持分を放棄する意思表示は単独で可能不要代金は得られない対価より離脱を優先する人
土地を分筆する全員の同意が必要測量費と登記費用土地が残る分割できる土地を持つ人
共有物分割請求をする不要弁護士費用など判決の内容による協議が決裂した人

共有者全員で不動産全体を売却して代金を分ける

全員の同意が得られるのであれば、不動産全体を市場で売却する方法が手取りの面ではもっとも有利です。
持分だけを売る場合と違い、通常の中古物件として買主を探せるため、価格が大きく下がりません。

進め方は次のとおりです。

  • 共有者全員で売却する方針を決める
  • 窓口となる代表者を決めて委任状を用意する
  • 複数の不動産会社に査定を依頼する
  • 媒介契約を結んで買主を探す
  • 全員が売主として売買契約を結ぶ
  • 決済と引き渡しをおこなう
  • 売却代金を持分割合に応じて分配する

注意点が2つあります。
1つは登記です。
相続で共有になった不動産の場合、相続登記を済ませていないと所有権移転登記ができず、売却手続きが止まります。
もう1つは税金です。
譲渡所得は共有者それぞれのものとして扱われるため、確定申告も各自でおこないます。

他の共有者の持分を買い取って単独名義にする

いまの家に住み続けたい人にとっては、他の共有者の持分を買い取って単独名義にする方法が現実的です。
単独名義になれば、以後は売却も建て替えも自分の判断だけで進められます。

買取価格の出発点は「不動産全体の評価額 × 相手の持分割合」です。
評価額×持分割合を起点に、相手が売り急いでいるか、こちらが資金を用意できるかといった事情を踏まえて交渉します。
自己資金が足りない場合は、住宅ローンの借り換えや、親族間の売買に対応している金融機関への相談が選択肢になります。

税務上の注意点は価格設定です。
相場から著しく離れた低い価格で買い取ると、時価との差額が贈与とみなされることがあります。
相続税法7条は、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合に、時価と対価との差額に相当する金額を贈与により取得したものとみなすと定めています。
親族間の売買では、価格の根拠として査定書を残しておいてください。

【参考】相続税法|e-Gov 法令検索

自分の共有持分だけを第三者に売却する

他の共有者と話が進まない場合でも、自分の持分だけであれば単独で売却できます。
持分の処分は共有物に変更を加える行為にあたらず、自分の権利をどうするかという問題だからです。
民法251条1項が同意を求めているのは共有物そのものへの変更であり、各共有者が自分の持分を譲渡することは制限されていません。

ただし、買い手は限られます。
持分だけを買っても単独では住めず、他の共有者との交渉を引き受けることになるためです。
一般の個人が購入する例はまれです。

実際の買い手は、共有持分の買取を手がける不動産会社が中心になります。
買い手が限られるぶん、価格は不動産全体を売った場合の持分相当額を下回ります。

進め方としては、まず他の共有者に「自分の持分を買い取ってもらえないか」と打診し、折り合わなければ第三者への売却に移るという順序が穏当です。
何の説明もなく第三者へ売ると、残された共有者との関係が悪化し、以後の交渉が難しくなります。
持分の買取に対応する会社は、ベンナビ不動産売却からまとめて査定を依頼して比べられます。

共有持分を放棄して他の共有者に帰属させる

対価を得られなくてもよいので共有から抜けたいという場合には、持分の放棄という方法があります。
民法255条は「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定めています。
放棄は単独の意思表示ででき、他の共有者の同意は不要です。

もっとも、実務では2つの制約があります。
1つは登記です。
持分移転登記は放棄した人と持分を取得する人の共同申請となるため、相手が手続きに協力しなければ登記簿上の名義は変わりません。
登記が終わらなければ、固定資産税の課税台帳上も共有者として扱われ続けます。

もう1つは税金です。
無償で持分を得た共有者には、贈与税が課される可能性があります。
何も伝えずに放棄すると、相手に予期しない税負担を負わせることになり、協力を得にくくなります。
放棄を選ぶ場合でも、事前の説明が手続きを進める前提です。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

土地を分筆して単独名義の土地に分ける

対象が土地であれば、物理的に分けてそれぞれの単独所有にできる場合があります。
手順は次のとおりです。

  • 共有者全員で分け方の方針を決める
  • 土地家屋調査士に相談する
  • 隣地の所有者を含めて境界確定測量をおこなう
  • 法務局へ分筆登記を申請する
  • 分筆後の各土地について持分移転登記をおこなう

実行できるかどうかは、土地の形状と接道の条件で決まります。
建築基準法43条1項は、建築物の敷地が道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。
条文にいう道路とは、同法42条により原則として幅員4メートル以上のものです。
分筆によって一方の土地が道路に接しなくなると、接しない側には建物を建てられなくなります。
奥行きの長い土地や旗竿地では、接道の条件を満たせず分筆をあきらめる例があります。

費用面で見込むべきは、境界確定測量の数十万円単位の支出です。
建物が建っている土地では、建物を分けられないため分筆だけでは共有を解消できません。

【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索

共有物分割請求で裁判所に分割方法を決めてもらう

話し合いがまとまらない場合の最終手段が、共有物分割請求です。
民法256条1項は「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定めており、他の共有者が応じなくても手続きを進められます。

裁判所が命じる分割方法は、民法258条2項が2つ挙げています。
1つは共有物の現物を分割する方法、もう1つは共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法です。
後者は、1人が不動産を取得して他の共有者に代償金を支払う形になります。
そのうえで同条3項は、これらの方法で分割できないときの扱いを定めています。
分割によって価格を著しく減少させるおそれがある場合を含め、裁判所が競売を命じることも可能です。

進め方は、まず協議、次に調停、それでもまとまらなければ訴訟という順序です。
訴訟まで進むと弁護士費用と不動産鑑定の費用が必要になり、決着までに1年を超えることもあります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有名義を解消するときの費用負担

共有名義の解消には、手続きそのものにかかる実費と、譲渡や取得にともなう税金の2種類の負担が生じます
どの方法を選ぶかで、負担する人と金額が変わります。

費用・税金の種類内容目安負担する人
登録免許税持分移転登記にかかる税売買は評価額の1,000分の20、相続は1,000分の4登記権利者
司法書士報酬登記手続きの代理報酬数万円から10万円程度依頼した人
境界確定測量費分筆に伴う測量数十万円共有者で分担
譲渡所得税・住民税持分や不動産を売った利益への課税長期20.315%、短期39.63%売主
贈与税無償または低額での取得基礎控除110万円超の部分取得した人
不動産取得税不動産を取得したときの税評価額に税率を乗じた額取得した人
仲介手数料売却を仲介した場合売買価格に応じた法定上限まで売主

登録免許税の税率は登録免許税法の別表第一に定められており、売買による所有権移転は不動産の価額の1,000分の20、相続による移転は1,000分の4です。
土地や住宅用家屋の売買には租税特別措置法による軽減税率が設けられている場合があるため、適用の可否は法務局か司法書士に確認してください。
金額は物件と依頼先で変わるため、実際に動く前に見積りで確かめておくと計画が立てやすくなります。

登記費用や測量費などの実費

手続きに直接かかる費用の中心は、登録免許税と司法書士報酬です。

登録免許税は計算方法が決まっています。
固定資産税評価額2,000万円の不動産について、2分の1の持分を売買で移転する場合、課税標準は1,000万円です。
課税標準1,000万円に本則税率の1,000分の20を乗じるため、登録免許税は20万円です。
相続による移転なら1,000分の4で、同じ条件だと4万円まで下がります。

登録免許税のほかに必要な支出は次のとおりです。

  • 司法書士に登記を依頼する場合の報酬
  • 登記事項証明書と固定資産評価証明書の取得費用
  • 印鑑証明書と住民票の取得費用
  • 分筆をおこなう場合の境界確定測量費

境界確定測量の費用は、土地の面積と隣地の数によって変わります。
隣接する土地の所有者が多いほど立ち会いの調整に時間がかかり、費用も上がります。
複数の土地家屋調査士から見積りを取って比べておいてください。

譲渡所得税・贈与税・不動産取得税の扱い

税金は、誰がどう権利を動かしたかによって課される相手が変わってきます。
持分を売れば売主に譲渡所得税、無償で受け取れば取得した人に贈与税、有償か無償かを問わず取得した人に不動産取得税が生じます。

譲渡所得税の税率を分けるのは所有期間です。
国税庁の説明では、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡所得は、所得税15%と住民税5%です。
5年以下の短期譲渡所得では、所得税30%と住民税9%がかかります。
復興特別所得税が加わるため、実際の負担は長期で20.315%、短期で39.63%になります。

持分の放棄や相場を大きく下回る価格での売買では、取得した側に生じうるのが贈与税またはみなし贈与の課税です。
居住用財産の3,000万円特別控除は共有者ごとに判定されるため、全体売却の場合は各自が要件を満たすかを確かめます。
適用の可否は個別の事情で変わるため、税理士に確認しておくと確実です。

【参考】No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁

共有持分だけの売却価格は持分相当額の3割〜5割が目安

持分だけを売った場合の価格は、不動産全体を売って持分割合を掛けた額を下回ります
買主が単独ではその不動産を使えず、他の共有者との交渉や共有物分割請求といった手続きを引き受けることになるためです。
買主から見れば、回収までの時間と手間を織り込んだ価格でないと採算が合いません。

買取価格の水準について、公的な統計は存在しません。
参考になるのは、共有持分を扱う事業者が公表している説明です。
共有持分の売却を扱う事業者は、目安となる水準を公表しています。
第三者へ持分だけを売却する場合、不動産全体の評価額に持分割合を掛けた額の3割から5割程度です。
各社の実務にもとづく目安であり、保証された数字ではありません。

実際の金額は条件によって動きます。
物件が土地か建物か、他の共有者が買い取りに応じる見込みがあるか、自分の持分が過半数かどうかが評価の分かれ目です。
水準を知るには、複数の会社に査定を依頼して幅を確かめる方法が確実です。

共有名義の後悔を解消するならベンナビ不動産売却の無料査定へ

共有名義や共有持分の不動産は、一般の仲介では扱いが難しく、相談しても断られることがあります。
訳あり不動産を取り扱う窓口へまとめて相談すると、現実的な金額を把握しやすくなります。

ベンナビ不動産売却が対応するのは、共有持分や共有名義の不動産のほか、空き家・再建築不可物件・事故物件といった訳あり不動産の無料査定と買取相談です。
利用する利点は次の3点です。

  • 他の共有者に知られることなく、自分の持分だけについて相談できる
  • 実際の金額を把握したうえで、全体売却や買い取りといった他の方法と比べられる
  • 一般の仲介では敬遠されやすい持分や訳あり物件でも相談を受け付けている

査定は無料で、金額を見てから売るかどうかを決められます。
共有名義のまま動かせない状態が続いているのであれば、まず自分の持分がいくらになるのかを確かめるところから始めてみてください。

共有名義で後悔しないための5つの予防策

共有名義の後悔は、早い段階ほど小さい手間で防げます
購入時と相続時の判断、そして書面によるルール化が要になります。

購入時は出資額どおりに持分割合を登記する

購入時の贈与税は、負担額を正確に集計すれば防げます。
集計の考え方は単純で、各自の自己資金に、各自が返済する住宅ローンの額を足したものがその人の負担額です。
頭金だけで判断すると、ローンの負担割合が反映されず持分がずれます。

親から資金援助を受ける場合は、援助額を受け取った人の負担額に加えます。
一定の要件を満たせば、住宅取得等資金の贈与の非課税の特例も利用可能です。
適用の可否は国税庁の案内で確認するか、税理士に相談しておくと確実です。

登記のあとで割合を直すには、更正登記または持分移転登記が必要になります。
更正登記は登記の内容が当初から誤っていた場合に限られ、認められないこともあります。
決済の前に負担額を確定させ、負担どおりの比率で登記を申請しておくのが確実です。

【参考】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

相続では代償分割や換価分割で単独名義にする

相続の場面で共有を作らないためには、遺産分割の方法を選ぶ段階で決着をつけることが要点になります。
不動産を持分で分ける共有分割は、その場では公平に見えますが、次の相続で共有者が増える原因になります。

分割方法内容向いているケース
現物分割財産ごとに取得者を決める不動産以外の財産も十分にある
代償分割1人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を払う住み続けたい相続人がいる
換価分割不動産を売却して代金を分ける誰も住む予定がない
共有分割持分割合で共有する他の方法が選べない場合の最終手段

代償分割を選ぶ場合は、遺産分割協議書に取得者と代償金の額・支払期限を明記してください。
口約束のままにすると、支払われないまま時間が過ぎたときに請求の根拠を示せません。
換価分割の場合も、売却の窓口となる相続人と分配方法を協議書に書いておくと手続きが滞りません。

費用負担と売却条件を覚書で明文化する

やむを得ず共有にする場合は、決めごとを書面に残しておくと後の対立を減らせます。
覚書に盛り込む項目は次のとおりです。

  • 各共有者の持分割合
  • 固定資産税と修繕費の負担割合、支払方法、精算の時期
  • 管理の窓口となる人と連絡方法
  • 賃貸に出した場合の賃料の配分
  • 売却に踏み切る条件と、反対意見が出た場合の扱い
  • 自分の持分を第三者に譲渡する場合の事前通知

費用負担は特に書面化の効果が大きい項目です。
口頭の合意では、数年後に約束の内容をめぐる食い違いが生じます。

共有者が代替わりする場面も想定しておきます。
持分を相続した人にも同じ内容を引き継ぐ旨の条項があれば、世代が変わっても前提は同じままです。
内容が複雑になる場合は、弁護士に条項を確認してもらうと不備を防げます。

共有物分割禁止特約を登記して5年間の分割請求を止める

一定期間だけ共有状態を安定させたい場合には、共有物分割禁止特約という手段があります。
民法256条1項ただし書は「五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない」と定めています。
相続後しばらく誰かが住み続ける前提がある場合や、事業用の不動産で当面は分割の議論を避けたい場合に有効です。

期間には上限があります。
民法256条2項は「前項ただし書の契約は、更新することができる。
ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない」と定めており、一度の契約でも更新後でも5年が限度です。
期間が満了すれば、各共有者は再び分割を請求できます。

特約を結ぶには共有者全員の合意が必要です。
あわせて登記もしておきます。
登記がなければ、共有者の1人から持分を取得した第三者に対して特約の効力を主張できません。
特約は問題を先送りする手段でもあるため、期間中に次の方針を決めておくのが前提です。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

相続登記を3年以内に申請して放置を避ける

相続で不動産を取得した場合、登記の申請は義務です。
不動産登記法76条の2第1項により、相続で所有権を取得した人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に所有権移転登記を申請しなければなりません。

正当な理由なくこの義務を怠った場合、同法164条1項により10万円以下の過料の対象となります。
過料の負担だけでなく、登記が亡くなった人の名義のままでは売却も分割もできず、共有関係の整理そのものが止まったままです。

遺産分割の話し合いが長引く場合は、相続人申告登記という方法があります。
自分が相続人であることを法務局に申し出ることで、申請義務を果たしたものとして扱われる仕組みです。
協議がまとまってから改めて所有権移転登記をおこなうことになりますが、まず義務を果たしておくことで過料を避けられます。

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

共有名義の後悔に関するよくある質問

Q

共有名義の不動産を自分だけで売却できる?

A

不動産全体は売却できませんが、自分の共有持分だけであれば他の共有者の同意なく売却できます。
持分の処分は自分の権利をどうするかという問題だからです。
不動産全体の売却は変更行為にあたり、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。
持分だけの売却は価格が市場価格を下回るため、全員の同意を得られる見込みがあるなら全体売却のほうが手取りは多くなります。

Q

連絡が取れない共有者がいる場合はどうなる?

A

所在のわからない共有者がいても、裁判所の手続きを使えば共有関係を整理できます。
民法262条の2は、所在のわからない共有者の持分を他の共有者に取得させる裁判を定めた条文です。
同法262条の3は、行方のわからない共有者の持分を第三者へ譲渡する権限を付与する裁判を定めています。
いずれも申立てが必要で、決定までに時間がかかります。
手続きを避けたい場合の代替は、自分の持分だけを売却して共有から抜ける方法です。

Q

共有名義の固定資産税は誰が払う?

A

共有者全員が連帯して納付する義務を負います。
地方税法10条の2第1項が共有物に対する徴収金について連帯納付義務を定めているためです。
納税通知書は代表者1人に届く扱いが一般的で、代表者がいったん全額を納めることになります。
内部の負担は持分に応じるのが原則のため(民法253条1項)、立て替えた分は他の共有者に請求できます。

Q

共有持分を勝手に売られたらどうなる?

A

持分の処分は各共有者が単独でできるため、売却そのものは有効です。
買主が新たな共有者となり、持分の買い取りや共有物分割請求を求めてくることがあります。
打てる手としては、買主から持分を買い取る、逆に自分の持分も同じ買主へ売る、共有物分割請求で決着をつけるという選択肢があります。
方針決定は早いほど有利です。

Q

共有名義をやめたいけれど資金がない場合は?

A

手元に資金がなくても共有から抜けられます。
他の共有者の持分を買い取るには資金が要りますが、自分の持分を売却する方法であれば支出は生じず、代金を受け取れます。
他の共有者と話し合える状況であれば、全体を売却して代金を分けるほうが手取りの面で有利です。
まずは査定で金額を確かめてから、どの方法を選ぶかを決めます。

まとめ|共有名義の後悔は早く動くほど小さく済む

共有名義の後悔は、性格や関係の良し悪しではなく、1つの不動産を複数人で持つという所有形態そのものから生まれます。
売却には全員の同意が必要で、相続のたびに共有者が増え、税金と維持費の負担は残り続けます。
手を打たずに時間が過ぎるほど共有者は増え、選べる方法は少なくなる一方です。

解消の方針は、話し合える段階かどうかで決まります。
共有者と連絡が取れて意見をまとめられるのであれば、全体売却か持分の買い取りで手取りの多い形を選べます。
話し合いが難しい場合の選択肢は2つです。
自分の持分だけを売却するか、共有物分割請求で裁判所の判断を仰ぐかになります。
これから共有になる可能性がある人は、購入時に出資額どおりの持分で登記し、相続では代償分割や換価分割で単独名義にしておくと後悔を防げます。

自分の持分や共有名義の不動産がいくらで売れるのかは、ベンナビ不動産売却の無料査定で確認してください。
金額がわかれば、売却と買い取りのどちらを選ぶかの判断材料になります。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。