共有名義不動産

共有持分の売却相場はいくら?市場価格との差・売却先別の目安と高く売るコツ

共有持分の売却相場はいくら?市場価格との差・売却先別の目安と高く売るコツ

相続した実家や、夫婦で買ったマンションなど、複数人で所有する不動産の「自分の持分だけ」を売りたいとき、いくらで売れるのか見当がつかず不安になりがちです。
共有持分は、単独名義の不動産と違って相場の考え方が特殊で、売却先によって金額が大きく変わります。
自分の持分だけなら、ほかの共有者の同意がなくても売却できます。

本記事では、共有持分の売却相場を売却先別の目安と計算方法から整理しました。
なぜ市場価格より安くなるのか、少しでも高く売る方法や税金・費用の目安まで解説します。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

目次

共有持分の売却相場は「売却先」で大きく変わる

共有持分の相場は「誰に売るか」で大きく変わります。
同じ持分でも、他の共有者に売る場合と買取業者に売る場合とでは、金額が2倍以上違うことも珍しくありません。
まずは売却先ごとの相場の目安を表で押さえておきましょう。

売却先相場の目安特徴
他の共有者市場価格 × 持分割合 × 80〜100%割引が入りにくく高値を狙える
共有者全員で全体売却市場価格どおりもっとも高く売れるが全員の同意が必要
買取業者に持分のみ市場価格 × 持分割合 × 30〜50%同意不要で早いが価格は下がる

他の共有者に売る場合|市場価格×持分割合が目安

他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう場合の相場は、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた金額の80〜100%が目安です。

共有者にとっては、物件を単独で所有できるメリットがあるため、割引が入りにくく高値で売れる傾向があります。

市場価格4,000万円の実家を兄弟2人で2分の1ずつ相続した場合、自分の持分は理論上2,000万円です。

共有関係を解消したい相手であれば、市場価格×持分割合に近い金額で買い取ってもらえる可能性があります。
相手も第三者に持分を売却されるより、自分が買い取ったほうが安心できるため、話がまとまりやすい売却先です。

親族間の売買で、相場より著しく安い価格に設定すると、差額が贈与とみなされて贈与税がかかることがあります。

共有者全員で不動産全体を売る場合|市場価格どおりで売れる

共有者全員が同意して不動産全体をまとめて売却する場合、単独名義の不動産と同じように市場価格どおりの金額で売れるのが一般的です。
持分だけを売るときの割引が入らないぶん、3つの売却先のなかでもっとも高値です。

ただし、不動産全体の売却は「変更行為」にあたり、共有者全員の同意が要ります。
一人でも反対する共有者がいると成立しません。
売却して得た代金の分配は、各自の持分割合に応じた形です。

たとえば市場価格4,000万円の実家を兄弟2人で2分の1ずつ持っていれば、全体売却が成立した場合は一人あたり約2,000万円が手元に残ります。
全員の合意が取れれば手取りを増やしやすいため、まずは全体売却を提案できないか検討してください。

買取業者に持分だけ売る場合|市場価格×持分割合の30〜50%

自分の持分だけを単独で売る場合の相場は、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた金額の、さらに30〜50%程度が一般的です
持分だけを買い取るのは、共有持分を専門に扱う不動産会社が中心になります。

自分の共有持分は、ほかの共有者の同意がなくても単独で売却できます。
共有持分は所有権の一部であり、各共有者が自分の持分を自由に処分できるとされているためです。
他の共有者と話がまとまらない場合でも、自分の判断で現金化できる点が買取業者に売る利点になります。

一方で、持分だけを一般の個人や投資家が買う例はまれです。
買い手が専門業者に限られるため、市場価格そのままでは売れず、相場が下がります。
早く確実に手放したい人に合った売却先です。

共有持分の売却相場の計算方法|「市場価格×持分割合×評価割合」

自分の持分のおおよその金額は「不動産全体の市場価格 × 持分割合 × 評価割合」で概算できます。
3つの項目の意味を押さえておけば、自分のケースに当てはめて試算できます。

計算式を構成する3つの項目

まず、不動産全体の市場価格とは、物件を通常どおり売ったときの取引価格です。
次に持分割合は、登記簿に記載された自分の持ち分で、2分の1や3分の1といった形で示されます。

最後の評価割合は、持分の売りにくさを反映した掛け目です。
買取業者への持分売却では30〜50%程度になります。

なお、市場価格の調べ方は次の3つです。

  • 実際の取引額に近い「実勢価格」
  • 相続税の計算に使う「路線価」
  • 固定資産税の基準となる「固定資産税評価額」

売却相場の基準になるのは実勢価格です。
不動産会社の査定で確認してください。

計算式と評価割合(30〜50%)の考え方

評価割合は、買取業者が持分を買ったあとに負う転売のリスクや手間を織り込んだ掛け目です。
買い取った業者は、他の共有者と交渉したり全体売却を目指したりして価値を高める必要があるため、手間とリスクの分を差し引いた金額で買い取ります。

同じ持分でも、他の共有者がその不動産に住んでいる場合や、共有者どうしですでにトラブルになっている場合は、評価割合が下がって30%寄りの金額になります。

逆に、共有者と関係が良好で全体売却の見込みがあれば、金額は50%寄りです。
売却後の見通しが立てやすい持分ほど、買主は高く評価します。

さらに、評価割合は業者の算出方法によっても差が出ます。
同じ物件でも査定額が変わるため、1社の提示額をうのみにせず、複数社に依頼して比べてください。

シミュレーション|持分割合・市場価格別の売却額の目安

評価割合を使うと、自分のケースに近い金額の目安を出せます。
市場価格3,000万円の不動産を2分の1の持分で持っている場合、3,000万円×2分の1×評価割合30〜50%で450万〜750万円が目安です。

住宅ローンが残っている場合は、売却額から残債を差し引いた金額が手取りに近づきます。

たとえば市場価格5,000万円のマンションを、10分の9の持分で持っているとします。
残債が1,600万円あるなら、5,000万円×10分の9×30〜50%から1,600万円を引いた金額が、おおよその手取りです。

上の計算例はあくまで参考値です。
実際の金額は、物件の状態や共有者の状況、居住者の有無を踏まえた査定で確認しましょう。

共有持分だけの売却が市場価格より安くなる3つの理由

共有持分を単独で売ると、なぜ市場価格より安くなるのか疑問に思う人は少なくありません。

安く見える金額の背景には、買い手が引き受ける制約とリスクがあります。
物件そのものの価値が低いわけではなく、持分特有の事情によるものです。

単独では自由に活用・処分・管理できないから

共有持分を買っても、不動産を単独で自由に使えるわけではありません。
建物の建て替えや不動産全体の売却といった「変更行為」には、共有者全員の同意が要ります。
賃貸に出すなどの「管理行為」に要るのも、持分価格の過半数の同意です。

つまり持分を買っても、リフォームや賃貸、全体の売却を自分の一存では進められません。
買い手にとっては、購入してもすぐに活用できず、他の共有者の意向に左右される点が大きなデメリットです
持分を取得したあとに交渉が長引けば、その間の固定資産税も負担することになります。

こうした使い勝手の悪さが、共有持分の需要そのものを押し下げる要因です。
単独名義の不動産のように自由に扱えないぶん、買主は市場価格より低い金額を提示します。

ほかの共有者とのトラブルに巻き込まれるリスクがあるから

持分を買った人は、購入後にほかの共有者と物件の使い方や分割方法をめぐって交渉することになります。
話し合いがまとまらなければ、共有状態の解消を裁判所に求める共有物分割請求に発展することもあります。
交渉や裁判の手続きに要るのは、時間と費用と労力です

つまり買い手は、購入した時点で交渉の負担を抱え込みます。

そのため買取業者は、あらかじめリスクを見込んだ金額で買い取ります。
見込んだ分だけ、買取価格は下がる理屈です。

売り手から見ると安く感じますが、実態は買い手がこれから負う手間とリスクの対価です。
共有者との関係が良好でトラブルの心配が少ない持分は、割引が小さくなり相場も高くなります。

売却前から共有者と対立している場合は、弁護士に相談して交渉の見通しを整理してから売り出すと、割引を小さくできる可能性があります。
弁護士と連携する不動産会社なら、査定と交渉の相談を同時に進めるのも一つの方法です。

持分だけを買いたい買い手が市場に少ないから

一般の個人や投資家が、共有持分だけを買うことはほとんどありません。

単独で使えず、他の共有者との調整も必要な持分は、一般の不動産市場では扱いにくいためです。
マイホームとして住みたい人にとっても、投資物件を探す人にとっても選びにくい対象になります。

その結果、持分の買い手は共有持分を専門に扱う業者にほぼ限られます。
買い手が少なく価格競争が起きにくいことも、相場を下げる要因です。

持分の売却では買い手が少ないのが普通ですが、複数の買取業者に当たって競わせることで、候補の中でより高い金額を引き出しやすくなります。

買い手が限られるからこそ、業者選びが金額の分かれ目です。

反対に、他の共有者は買い手として動機が強いため、まずは共有者への売却を検討すると、需要の薄さによる割引を避けられます。

共有持分の売却相場を左右する査定ポイント

自分の持分が相場のどのあたりに位置するかは、いくつかの査定ポイントで決まります。
次の要素を押さえておくと、査定額のおおよその見当がつきます。

査定ポイント相場への影響
立地・築年数・面積市場価格の土台。良いほど持分額も上がる
持分割合大きいほど買主が扱いやすく上がる
共有者の人数多いほど合意形成が難しく下がる
居住者の有無他の共有者が住むと下がる
住宅ローン残債残債分が売却額から差し引かれる
境界の明確さ未確定だと測量が必要で慎重になる

物件の立地・築年数・面積などの基本条件

共有持分の相場は、まず不動産全体の市場価格が土台になります。
市場価格は立地や交通の便、築年数、構造、面積といった物件そのものの条件しだいです。

そのうえで、土台となる市場価格に持分割合と評価割合を掛けます。
土台が高ければ、掛け目を差し引いても持分の金額は高くなります。
逆に築古で立地が悪い物件は、土台が低いため持分の金額も伸びにくい傾向です。

たとえば駅から近い、築年数が浅い、需要のあるエリアにあるといった条件のよい物件は、持分でも比較的高く売れる傾向があります。
まずは物件全体の市場価格を把握することが、相場を知る出発点です。
近隣の類似物件の成約事例や不動産会社の査定を参考にすると、土台となる価格をつかめます。

持分割合と共有者の人数

持分割合が大きいほど、買主にとって取得後の発言力が強くなるため、相場は上がります。
持分価格の過半数を握れれば管理行為を単独で決められるため、買い手にとって使い道が広がるからです。

一方、共有者の人数が多いと、全体売却や分割の合意形成が難しくなります。
買い手は交渉相手が増えることを敬遠するため、共有者が多いほど相場は下がります。
兄弟姉妹や親族が代替わりして共有者が増えているケースでは、とくに慎重に見積もってください。

このように自分の持分割合と共有者の構成は、査定額を左右します。
売却前に登記簿で持分割合と共有者の顔ぶれを確認しておきましょう。
買取業者が持分を集約できる余地があるかどうかも価格に影響するため、他の共有者の売却意向もつかんでおくと、より正確な相場が見えてきます。

居住者の有無・住宅ローン残債・境界の明確さ

他の共有者がその不動産に住んでいる場合、買主は明け渡しの交渉が必要になるため、相場は下がります。
すぐに活用できず、居住者との調整に手間がかかる持分を、買主はリスクが高いと見るためです。

また、住宅ローンが残っている場合は、抵当権を外すために残債の返済が要るため、残債の分だけ手取りが減ります。
土地の境界が確定していない場合も、売却前の測量が要るため査定は慎重です。
境界をめぐる隣地とのトラブルが潜んでいると、さらに評価は下がります。

いずれも見落としがちなマイナス要因です。
事前に把握しておくと、提示された査定額がなぜその水準なのかを理解できます。

とくに居住者がいる持分は、明け渡し交渉の難しさによって評価が大きく下がります。
売却前に、共有者の居住状況を確認しておきましょう。

居住者との明け渡し交渉や境界をめぐる争いは、売主だけでは解決しにくい問題です。
売却前に弁護士へ相談し、交渉の見通しを立ててから査定を受けると、減額の理由を減らせます。

共有持分を相場より高く売る4つの方法

共有持分は工夫しだいで、割引を最小限に抑えて高く売れます。
次の4つの方法を、高く売れる順に検討していきましょう。

共有者に不動産全体の売却を提案する

もっとも高く売れやすいのは、共有者全員で不動産全体を売る方法です
全体売却なら評価割合による割引がなく、市場価格に近い金額で売れます。
持分だけを買取業者に売る場合と比べて、手取りが2倍以上になることもあります。

たとえば市場価格5,000万円の不動産を2分の1の持分で持っていれば、全体売却なら約2,500万円が手元に入る計算です。
買取業者に持分だけを売ると1,000万円前後になることを考えると、差は大きくなります。
得られた代金の分配は、各自の持分割合に応じた形です。

共有関係を解消したいのは他の共有者も同じことが多いため、まずは全体売却を提案してみてください。
話し合いがまとまらない場合でも、不動産会社に間に入ってもらえば、感情的な対立を避けながら売却条件を調整できます。

感情的な対立が強く、話し合いの場をもてないときは、弁護士に交渉を依頼するのも一つの方法です。
弁護士と連携する不動産会社であれば、全体売却の提案から売却手続きまでまとめて任せられます。

他の共有者に持分の買い取りを打診する

全体売却に同意が得られない場合は、他の共有者に自分の持分の買い取りを打診する方法があります。
共有者はその不動産を単独で所有できるため、市場価格に近い水準で買い取ってもらえる可能性があります。

とくに、不動産に住み続けたい共有者や、将来的に活用したい共有者にとっては、買い取る動機が十分です。
買取業者に売られて見知らぬ第三者が共有者になるより、自分が買い取ったほうが安心だと考える人も少なくありません。

ただし、親族間で相場より著しく安い価格にすると買主に贈与税がかかることがあるため、適正な価格を設定してください。
当事者だけの交渉が難しい場合は、弁護士や不動産会社に間に入ってもらうとまとまりやすくなります。

複数の専門会社に査定を依頼して比較する

買取業者に売る場合は、必ず複数の会社に査定を依頼して金額と条件を比較しましょう
業者によって評価割合の見込みが異なり、査定額に10〜30%ほどの差が出ることもあります。
1社だけで決めると、本来もっと高く売れるはずの機会を逃しかねません。

あわせて、共有持分を専門に扱う会社を選んでください。
一般の仲介会社が扱いにくい持分でも、専門会社なら買い取った後の活用方法をもっているため、適正に評価してもらいやすくなります。

さらに、金額だけでなく、対応の丁寧さや取引実績、共有者との交渉を任せられるかどうかも比べてください。
複数社を比較する手間が、そのまま売却額の差につながります。
査定を受けるときは、なぜその金額になるのかを説明してもらうと、提示額の妥当性を判断できます。

権利関係・境界を整理してから売り出す

売り出す前に権利関係や境界を整理しておくと、査定の減額要因が減って相場が上がります。
相続で取得した持分は、名義がまだ被相続人のままになっていることがあるため、先に相続登記を済ませておきましょう。

相続登記は2024年4月から義務になっています。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、登記を申請しなければなりません。
正当な理由なく怠ると過料の対象になるため、売却の予定がなくても早めに済ませてください。

土地の境界が不明確な場合は、境界確定測量で範囲をはっきりさせておくと査定が上がります。
このように権利関係を整理した持分は買い手にとって扱いやすく、評価も高めです。

相続登記や境界確定の手続きに不安があるなら、司法書士や弁護士と連携する不動産会社に相談すると、権利関係の整理と売却をまとめて進められます。

共有持分の売却でかかる税金|譲渡所得税は所有期間で変わる

共有持分を売って利益が出た場合、利益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかります
譲渡所得とは、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額のことです。
取得費には購入代金や購入時の諸費用が含まれます。

税率の分かれ目は、不動産の所有期間です。
所有期間が5年以下か5年を超えるかで、税負担は2倍近く変わります
しかも所有期間は売却した年の1月1日時点で判定するため、売る前に何年保有した不動産なのかを確認しておきましょう。

なお、相続で取得した持分は、亡くなった人がその不動産を取得した時期と取得費を引き継ぎます。

そのため、親が長く所有していた不動産なら、相続してすぐ売っても長期譲渡所得として扱われることが多くなります。
売却前に、被相続人がいつその不動産を取得したのかを、登記簿や売買契約書で確認しておきましょう。

【参考】所得税法|e-Gov 法令検索

短期譲渡所得(所有5年以下)は税率約39%

所有期間が5年以下の不動産を売った利益には、所得税30%と住民税9%を合わせた約39%の税率がかかります。

取得してから短期間で転売するケースを想定した、比較的重い税率です。

たとえば譲渡益が500万円出た場合、税額は約195万円になり、利益のおよそ4割が税金で差し引かれる計算です。
2037年までは復興特別所得税が所得税額に対して2.1%上乗せされます。

短期間での売却は税負担が重くなるため、いつ取得した不動産なのかという所有期間の確認が必須です。

相続した持分でも、亡くなった人が取得してから通算5年以下の場合は短期譲渡所得となり、高い税率が適用されます。
売り急ぐと手取りが大きく目減りすることもあるため、所有期間の見きわめが大切です。

長期譲渡所得(所有5年超)は税率約20%

所有期間が5年を超える不動産を売った利益には、所得税15%と住民税5%を合わせた約20%の税率がかかります。

短期の場合と比べて、税負担は約半分に軽くなります。
長く所有した不動産ほど税制上は有利です。

たとえば、譲渡益が500万円なら税額は約100万円で、短期の場合より約95万円の節税になります。

相続で取得した持分は亡くなった人の所有期間を引き継ぐため、親が5年を超えて所有していれば、相続直後に売っても適用されるのは長期譲渡所得の税率です。

売却を急がない事情があれば、所有期間が5年を超えるタイミングを確認したうえで判断すると、税負担を抑えられます。

ただし共有状態を長く続けると、共有者が亡くなって相続が発生し、権利関係がさらに複雑になるおそれもあります。
税負担と保有リスクの両面を見て、売却時期を決めましょう。

相続した持分に使える特例|取得費加算・3,000万円控除

相続した共有持分の売却では、税負担を軽くできる特例が使える場合があります。
相続税を納めた人が相続開始の翌日から3年10ヵ月以内に売却すると、納めた相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」を使えます。
取得費が増えれば譲渡所得が減り、税額も下がる仕組みです。

また、亡くなった人が一人暮らしをしていた自宅を相続して売る場合は、「空き家の3,000万円特別控除」を使える可能性があります。
一定の要件を満たし、2027年12月31日までに売却すれば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。

特例が使えるかどうかは個別の事情で変わります。
相続税や譲渡所得の申告は税理士の専門分野のため、適用の可否や必要な手続きは税理士に確認しましょう。

特例の適用や売却時期の判断に迷うときは、税理士や弁護士と連携する不動産会社に査定とあわせて相談すると、手取りを見通したうえで売却先を決められます。

共有持分の売却にかかる費用の内訳

共有持分を売るときは、税金のほかにも諸費用がかかります。

手取り額を正しく見積もるために、主な費用の目安を押さえておきましょう。
買取業者に直接売る場合は、仲介手数料がかからないぶん費用を抑えられます。

費用項目金額の目安
仲介手数料400万円超なら売却額×3%+6万円+税が上限
登録免許税固定資産税評価額×2%/買主負担が一般的
司法書士報酬5万〜10万円程度
印紙税1,000万円超5,000万円以下で1万円
測量費確定測量で30万〜60万円程度

仲介手数料・登記費用・印紙税・測量費

仲介会社を通して売る場合、仲介手数料がかかります。
売却額が400万円を超える場合は「売却額×3%+6万円」に消費税を加えた金額が法律上の上限です。
たとえば1,000万円で売れた場合の上限は約39万6,000円です。

一方、買取業者に直接売る場合は、仲介手数料がかかりません。
名義変更にかかる登録免許税は原則として固定資産税評価額の2%で、土地の売買には期間限定の軽減税率があります。
登記手続きを依頼する司法書士への報酬が5万〜10万円ほど必要です。
売買契約書には契約金額に応じた印紙税がかかり、1,000万円超5,000万円以下なら1万円です。

さらに、土地の測量が必要な場合は、確定測量で30万〜60万円ほどかかります。
諸費用は売却額から差し引かれるため、手取りを計算するときは税金とあわせて見込んでおきましょう。

親族間で安く売ると贈与税がかかることがある

他の共有者や親族に持分を売る場合、相場より著しく安い価格に設定すると、差額が贈与とみなされて贈与税がかかることがあります。
たとえば500万円の価値がある持分を100万円で売った場合、贈与とみなされるのは差額の400万円分です。

「身内だから安くしてあげたい」という気持ちで価格を下げると、かえって税負担が生じます。
親族間だからと安易に価格を決めず、不動産会社の査定や税理士の助言を受けて適正な価格を確認してください。

適正価格での売買であれば、贈与とみなされる心配はありません。
ただし、どの程度の価格差から贈与とみなされるかは個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は税理士に相談しておくと確実です。

【参考】相続税法|e-Gov 法令検索

親族間の売買価格に迷うときは、弁護士や税理士と連携する不動産会社に相談すると、適正価格の根拠を示してもらえます。
価格をめぐって共有者と対立しているなら、早めに弁護士へ相談してください。

共有持分を売却するまでの流れ

共有持分の売却は、次の5つのステップで進みます。
全体の段取りを先に把握しておくのが、見通しを立てて動くコツです。

  • 不動産会社に査定を依頼する
  • 必要書類(登記識別情報・本人確認書類・固定資産税納税通知書など)を準備する
  • 売買契約を結ぶ
  • 決済・引き渡しをおこなう
  • 譲渡益が出たら翌年に確定申告をする

なお、自分の持分だけを売る場合は、他の共有者の同意がなくても手続きを進められます。
ただし、あとで関係がこじれないよう、売却を検討している旨を事前に伝えておくとトラブルを防げます。

また、査定から引き渡しまでの期間は、買取業者に売る場合で数週間から1ヵ月ほどが目安です。
仲介で第三者を探す場合は、さらに時間がかかることもあります。
売却益が出たときは、売った翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をおこないましょう。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

共有持分の売却で共有者とトラブルになっているなら弁護士に相談するのがおすすめ

共有者が全体売却に応じない、持分の買い取り価格で折り合わない、勝手に売るなと言われているといった状況なら、弁護士への相談を検討してください。
共有持分の売却は法律上ひとりで進められますが、売却後の共有者との関係や、共有物分割請求への発展まで見通して動く必要があります。

弁護士に相談すると、共有者との交渉を代理してもらえるほか、話し合いがまとまらない場合には共有物分割の調停や訴訟の見通しも聞けるのが利点です。
自分の持分をいくらで売るべきか、全体売却と持分売却のどちらが有利かといった判断にも、法的な根拠をもとに助言を受けられます。

共有持分の買取に対応する不動産会社のなかには、弁護士や司法書士と連携して売却を進める会社もあり、選び方が重要です。
売却相場の確認と法的な整理を同時に進めたいなら、弁護士と連携する会社を選ぶと手続きを一本化できます。
トラブルを抱えたまま安く売り急ぐ前に、まずは弁護士に相談して選択肢を整理しましょう。

共有持分の売却相場に関する悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう

相続で共有になった不動産の持分は、売却先や共有者との関係、物件の事情によって相場が大きく変わります。
自分の持分をいくらで売れるのか知りたいときは、共有持分の買取に対応する不動産会社の無料査定を複数受けて比べてください。

「ベンナビ不動産売却」では、共有持分や相続した不動産に対応する不動産会社に無料で査定を依頼できます。
一般の仲介会社では断られやすい持分でも、対応できる会社を見つけやすいのが特徴です。
共有者との話し合いがまとまらない場合でも、弁護士や司法書士と連携して売却を進める会社なら、権利関係の整理から任せられます。

査定額の高さだけで決めず、弁護士や司法書士との連携があるか、共有者との交渉まで任せられるかもあわせて比べてください。
まずは無料査定で自分の持分のおおよその金額を確かめ、売却先と相談先を同時に探してみましょう。

共有持分の売却相場に関するよくある質問

Q

自分の共有持分だけを勝手に売っても問題ない?

A

自分の持分は、ほかの共有者の同意がなくても単独で売却できます。
共有持分は所有権の一部であり、各共有者が自由に処分できるためです。
ただし、何も伝えずに第三者へ売ると関係が悪化しやすいため、事前に売却の意向を伝えておくとトラブルを防げます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索

Q

共有持分を放棄するとお金はもらえる?

A

持分を放棄しても対価は得られません。
放棄した持分は、ほかの共有者へ持分割合に応じて移ります。
手放すだけで現金は入らないため、少しでもお金に換えたい場合は、放棄ではなく売却を選びましょう。
【参考】民法|e-Gov 法令検索

Q

相続した共有持分の相場はどうやって調べる?

A

まず不動産全体の市場価格を、路線価や不動産会社の査定で把握します。
市場価格に自分の持分割合と評価割合(30〜50%)を掛けると、おおよその相場を概算できます。
正確な金額は物件の状態や共有者の状況で変わるため、複数社の査定で確認するのが確実です。

Q

マンションの共有持分でも売却相場の考え方は同じ?

A

マンションでも「市場価格 × 持分割合 × 評価割合」という考え方は同じです。
専有部分の市場価格を基準に持分を評価します。
ただし、マンションは取引事例が多く需要が読みやすいぶん、戸建てより査定が安定しやすい傾向があります。

Q

買取業者はなぜ安く見える共有持分を買う?

A

買取業者は、購入後に他の共有者と交渉して全体売却を目指したり、持分を買い集めたりして価値を高めます。
だからこそ、買取価格は手間とリスクを見込んだ水準です。
売り手にとっては、早く手放せる点が利点になります。

まとめ|相場を正しく知り、比較して高く売る

共有持分の売却相場は「誰に売るか」で大きく変わります。
他の共有者への売却なら市場価格×持分割合に近い水準、買取業者への持分売却なら市場価格×持分割合の30〜50%が目安です。
相場が安くなるのは、単独で使えない・トラブルリスクがある・買い手が少ないという持分特有の事情によるものです。

そのため、少しでも高く売るには、まず共有者への全体売却や持分の買い取りを検討し、買取業者に売る場合は複数社の査定を比較しましょう。
売却益には所有期間に応じた譲渡所得税がかかります。
仲介手数料や登記費用などの諸費用も差し引かれるため、手取りは提示額より小さくなります。

自分の持分のおおよその金額を知りたいときは、ベンナビ不動産売却で共有持分に対応する不動産会社に無料査定を依頼し、条件に合う相談先を比べてみてください。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。