【専門の業者への依頼】がおすすめ!
共有持分の放棄とは?手続き・費用・税金とデメリットをわかりやすく解説
- 親から相続した実家や土地が、気づけば兄弟姉妹との共有名義になっている。
- 使う予定もないのに固定資産税だけを払い続け、将来の管理や売却で揉めそうで気が重い。
そんなときに「自分の持分だけを手放す方法」として選択肢に挙がるのが、共有持分の放棄です。
共有持分の放棄は、自分の意思表示だけで持分を手放せる手続きです。
他の共有者の同意がいらない点で、売却や贈与よりも進めやすい面があります。
一方で、対価を受け取れない、登記には他の共有者の協力が必要、他の共有者に贈与税がかかる場合があるといった注意点もあり、放棄より売却のほうが有利なケースも少なくありません。
この記事では、共有持分の放棄の仕組みと「早い者勝ち」と言われる理由、メリット・デメリット、手続きの流れ、かかる費用と税金までを整理します。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
【専門の業者への依頼】がおすすめ!
共有持分の放棄とは?無償で手放して他の共有者に帰属させる手続き
共有持分の放棄とは、共有している不動産について、自分の持分を無償で手放す手続きです。
放棄された持分は、民法第255条にもとづき他の共有者へ移ります。
相続や離婚、共同購入などで生じた共有名義を解消する手段のひとつで、対価を受け取らない代わりに、単独の意思表示だけで進められる点が特徴です。
共有持分の放棄の意味と民法第255条の仕組み
不動産の共有持分は、共有者が自由に放棄できます。
共有者の1人が持分を放棄したときや、亡くなって相続人がいないときは、その持分は他の共有者へ移ります。
ただし相続人がいないケースでは、先に特別縁故者への財産分与が検討され、分与されなかった場合にはじめて他の共有者へ帰属します(最高裁平成元年11月24日判決)。
まず、放棄された持分は他の共有者の持分割合に応じて移ります。
たとえばAが2分の1、Bが4分の1、Cが4分の1を持つ土地でAが放棄すると、Aの2分の1はBとCの持分割合(1対1)で分けられ、B・Cがそれぞれ2分の1ずつを持つ形になります。
放棄によって不動産そのものがなくなるわけではなく、権利の受け皿が他の共有者へ移る点を理解しておくことが大切です。
ただし、放棄しても不動産そのものは残り、管理の手間や税の負担は他の共有者へ移るだけです。
国や自治体が引き取ってくれる制度ではない点は、あらかじめ押さえておきましょう。
【参考】民法(e-Gov法令検索)
共有持分の放棄は単独の意思表示でできる
共有持分の放棄は、相手の承諾を必要としない単独行為です。
単独行為とは、相手の合意を得ずに一方の意思表示だけで法律上の効果が生じる行為をいいます。
他の共有者に「放棄します」と伝える意思表示によって効力が生じ、共有者全員の同意を得る必要はありません。
売却や贈与が相手との合意を前提とするのに対し、放棄は自分の判断だけで踏み切れる点が大きな違いです。
ただし、意思表示だけで名義まで自動的に変わるわけではありません。
持分を移す登記の手続きには他の共有者の協力が必要になるため、実務上は他の共有者へ書面で通知したうえで進めるのが一般的です。
自分の持分を第三者へ売ることも同じく単独でできますが、不動産全体の売却や分筆には共有者全員の同意が必要です。
共有持分の放棄と相続放棄の違い
「放棄」という言葉が共通するため混同されがちですが、共有持分の放棄と相続放棄はまったく別の制度です。
相続放棄は、被相続人の財産をプラスもマイナスも含めてすべて引き継がない手続きで、家庭裁判所への申述が必要です。
一方、共有持分の放棄は、特定の不動産の持分だけを手放す手続きで、裁判所は関与しません。
両者の主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 共有持分の放棄 | 相続放棄 |
|---|---|---|
| 対象 | 特定の不動産の持分のみ | 被相続人の遺産すべて(借金も含む) |
| 手続き先 | 他の共有者への意思表示+法務局での登記 | 家庭裁判所への申述 |
| 期限 | なし | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内(民法第915条第1項) |
| 他の財産 | 手元に残せる | 預貯金など他の財産も一切受け取れない |
| 効果 | 持分が他の共有者へ帰属 | 初めから相続人でなかったものとみなされる |
借金を含めて相続をやめたいなら相続放棄、ほかの遺産は受け取りつつ共有不動産の持分だけを手放したいなら共有持分の放棄、と使い分けます。
また、相続放棄には3ヵ月の期限がありますが、共有持分の放棄に期限はありません。
共有持分の放棄が「早い者勝ち」と言われる理由
共有持分の放棄は、しばしば「早い者勝ち」と表現されます。
放棄した持分が他の共有者へ移る仕組み上、動くタイミングによって自分の負担が大きく変わるためです。
ここでは、その理由と、放棄が遅れたときのリスクを確認します。
放棄した持分は他の共有者へ帰属する仕組み
放棄した持分は他の共有者へ移ります。
裏を返せば、他の共有者が先に放棄すると、その持分は残った共有者である自分に移ってきます。
共有者が複数いる不動産では、放棄した人から順に負担が抜け、残った人ほど大きな持分と税負担を抱える構図になります。
放棄したい人が複数いる不動産では、他の共有者に先を越されると自分の持分が増えてしまうため、「早く動いたほうが有利」と言われるわけです。
たとえば共有者4人がそれぞれ4分の1をもつ土地で、2人が先に放棄したとします。
残った2人の持分は各2分の1になり、固定資産税の負担も倍になります。
帰属は法律上自動的に生じるため、受け取りたくないと拒むことはできません。
そのため、動かずにいることは現状維持ではなく、負担が増えていく選択だといえます。
最後の一人になると放棄できないリスクに注意する
放棄が繰り返されると、最終的に一人だけが単独所有者として残ります。
単独所有になった不動産は、原則として所有権を放棄できません。
資産価値の乏しい土地や管理の難しい空き家では、最後に残った一人だけが固定資産税や管理の負担を負い続けることになりかねません。
こうした負担の押し付けを目的とした放棄は、権利の濫用として認められない場合があります。
手放したい不動産が「負動産」に近い場合は、放棄が成立するとは限らない点に注意し、売却など他の方法も併せて検討してみましょう。
単独所有になった場合の対処法は、不動産全体の売却か贈与、相続で取得した土地なら相続土地国庫帰属制度に絞られます。
選べる手段が減る前に動くという意味で、早さが重要です。
共有持分を放棄するメリット
共有持分の放棄には、単独で進めやすく、共有関係から比較的簡単に抜け出せるという利点があります。
ここでは主なメリットを3つ紹介します。
- 共有持分だけを手放せる
- 他の共有者と関係が悪くても進めやすい
- 自分の好きなタイミングで放棄できる
共有持分だけを手放せる
共有持分の放棄では、対象の不動産の持分だけを手放し、預貯金など他の財産は手元に残せます。
手放す対象を自分で選べる点が、放棄のもっとも実用的な利点です。
相続放棄のように遺産すべてを手放す必要はありません。
「実家の土地は要らないが、預貯金は受け取りたい」というように、財産を選んで整理したい場合に向いています。
たとえば、預貯金600万円と、兄弟3人で共有する山林の持分を相続したとします。
相続放棄を選ぶと600万円も受け取れませんが、共有持分の放棄なら600万円を手元に残したまま、山林の持分だけを切り離せます。
ただし、持分を放棄しても被相続人の借金からは免れられません。
負債まで含めて引き継ぎたくない場合は、熟慮期間内の相続放棄と比べて判断してください。
他の共有者と関係が悪くても進めやすい
放棄は単独の意思表示で効力が生じるため、他の共有者との交渉や合意がまとまらなくても、放棄そのものは進められます。
売却では共有者全員の足並みをそろえる必要がありますが、放棄は自分の意思だけで踏み出せるため、共有者どうしの関係が悪化しているケースでも着手しやすい方法です。
不動産全体を売る場合、共有者が5人いれば5人全員の同意が必要で、1人でも反対すれば話は止まります。
一方で放棄の意思表示は、この合意形成の壁を通らずに実行できます。
ただし、同意が要らないのは意思表示の段階までです。
持分を移す登記は他の共有者との共同申請が原則のため、関係が悪いままでは登記まで届くとは限りません。
自分の好きなタイミングで放棄できる
放棄に法律上の期限はありません。
相続放棄が「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」という期限に縛られるのに対し、共有持分の放棄はいつでも実行できます。
急いで結論を出す必要はなく、状況を見ながら判断できる点も利点のひとつです。
たとえば、相続から1年後でも10年後でも、共有者である間は検討できます。
売却先を探しながら、値が付かないと分かった段階で放棄へ切り替えるといった進め方も可能です。
一方で、法律上の期限がないことと、急がなくてよいことは別です。
ただし、他の共有者が先に放棄すれば自分の持分は増え、共有者が亡くなれば登記の相手方は相続人へと枝分かれします。
期限に追われないうちに、条件の確認と共有者への説明を進めておくほうが、結果的に早く終わります。
共有持分を放棄するデメリット・注意点
共有持分の放棄には見落としやすいデメリットもあります。
- 持分を現金化できない
- 登記には他の共有者の協力が必要になる
- 他の共有者に贈与税や不動産取得税がかかる
- 放棄した年の固定資産税は負担する必要がある
- 権利濫用にあたる放棄は無効になる場合がある
持分を現金化できない
放棄は無償で持分を手放す手続きのため、対価を一切受け取れません。
売却であれば持分に応じた代金が手に入りますが、放棄では手元に何も残りません。
手放したい不動産に一定の資産価値があるなら、放棄よりも売却を選んだほうが金銭的に有利になります。
さらに、手元に入らないだけでなく支出も生じます。
持分を移す登記には登録免許税がかかり、司法書士へ依頼すれば報酬も必要です。
たとえば、固定資産税評価額3,000万円の土地で持分が3分の1なら、持分の評価額は1,000万円で、登録免許税は20万円になります。
値が付かないと確かめたうえで選ぶ手続きであり、査定もせずに放棄を決めると、売れたはずの資産を費用まで払って手放すことになりかねません。
登記には他の共有者の協力が必要になる
放棄の意思表示だけでは、登記上の名義は変わりません。
持分を移す「共有持分移転登記」は、放棄する人と持分を受け取る他の共有者が共同で申請するのが原則です。
そのため、他の共有者が登記に協力してくれないと、名義変更が進まず、固定資産税の請求が自分に届き続けることもあります。
受け取る側には贈与税と不動産取得税が生じるため、協力を拒む動機があります。
協力が得られない場合は、登記引取請求訴訟で判決を得て単独で登記する方法が残っています。
ただし判決までに半年から1年以上かかることもあり、弁護士費用も数十万円単位になる場合があります。
費用は事務所ごとに異なるため、依頼前に見積もりを確認してください。
まずは相手の税負担を試算し、登録免許税を自分が負担すると申し出るなど、訴訟の前にできる交渉を尽くしましょう。
他の共有者に贈与税や不動産取得税がかかる
放棄によって持分を受け取る他の共有者には、税務上、贈与を受けたものとみなして贈与税が課される場合があります。
相続税法上の取扱いでも、共有者の一人が持分を放棄したときは、他の共有者がその持分を贈与により取得したものとして扱うとされています。
贈与税は、その年に受け取った財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いた金額に税率をかけて計算します。
ここでいう評価額は、登録免許税や不動産取得税の基準となる固定資産税評価額ではなく、路線価方式または倍率方式で求める相続税評価額です。
例えば、持分の相続税評価額が1,000万円なら課税価格は890万円で、兄弟間の贈与であれば一般贈与財産の税率が適用されます。
あわせて、持分を取得する側には不動産取得税がかかることもあります。
放棄する本人に税負担が生じにくい一方で、受け取る側の負担が増える点は、事前に共有者へ伝えておきましょう。
放棄した年の固定資産税は負担する必要がある
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に課されます。
年の途中で放棄しても、その年の固定資産税は放棄した本人が納める扱いになるのが一般的です。
放棄すればすぐに税負担から解放されるわけではない点に注意しましょう。
たとえば2月に放棄して登記まで終えても、その年の1年分は自分に納税通知書が届きます。
課税台帳への反映は市区町村の処理を経るため、課税が外れるのは通常、翌年度分からです。
登記が年末にずれ込むと、翌年分まで自分に請求が届くこともあります。
共有者間の話し合いで、放棄した日を基準に日割り精算をする例もありますが、法律上の義務ではありません。
共有不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務を負う点にも注意が必要です。
権利濫用にあたる放棄は無効になる場合がある
放棄が常に認められるとは限りません。
資産価値のない不動産を他の共有者へ押し付ける目的の放棄や、借金の返済を逃れる目的の放棄は、権利の濫用(民法第1条第3項)や詐害行為として無効・取消しの対象になる場合があります。
実際に、他の共有者側に管理の態勢が整っていない状況での持分放棄を権利濫用と判断した裁判例もあります(東京地裁令和3年7月14日判決)。
債権者を害することを知ってした放棄は、詐害行為取消請求の対象になり得ます。
自己破産や個人再生を控えているなら、放棄の前に手続きの順序を弁護士へ確認してください。
放棄の動機や背景によっては効力が否定されることもあるため、判断に迷う場合は専門家へ相談することが安全です。
【参考】民法第1条|e-Gov法令検索
共有持分の放棄を検討すべきケース・避けるべきケース
共有持分の放棄が適しているかどうかは、不動産の価値や共有者との関係によって変わります。
向いているケースと、放棄以外の方法を検討したほうがよいケースを分けて整理します。
共有持分の放棄が向いているケース
次のような場合は、放棄が選択肢になります。
- 資産価値がほとんどなく、売却しても値が付きにくい不動産である
- 買い手が見つからず、管理や固定資産税の負担だけが続いている
- 他の共有者が持分を引き取ることに前向きで、登記に協力してくれる
- 金銭よりも「共有関係から早く抜けること」を優先したい
対価が得られなくても構わないと割り切れ、他の共有者の協力が見込める場合は、放棄がスムーズな解決につながります。
反対に、少しでも値が付く見込みがあるなら、まず査定を受けてから判断してください。
放棄は登記費用を自己負担したうえで手元に何も残らない選択のため、売却価値の有無を確かめる手間を省くと、あとから取り返せません。
放棄より売却・他の方法が向いているケース
一方、次のような場合は放棄を急がず、売却など他の方法を検討したほうが有利です。
- 不動産に一定の資産価値があり、売れば代金を受け取れる
- 他の共有者が登記への協力を拒んでいる、または行方不明である
- 他の共有者に贈与税などの負担をかけたくない
- 手元に現金を残したい
とくに資産価値のある不動産では、放棄で無償で手放すより、持分を売却して現金化するほうが合理的です。
共有持分だけでも買い取る不動産会社があり、他の共有者の同意なしで自分の持分を売れる場合もあります。
他の共有者が行方不明だったり協力を拒んだりする場合も、放棄は向きません。
意思表示だけをしても登記が完了せず、名義と税の負担が残ったままになるためです。
協力を得られない相手がいるなら、持分の売却や共有物分割請求のほうが現実的です。
共有持分を放棄する手続きの流れ
共有持分の放棄は、意思表示・登記・(協力が得られない場合の)訴訟という順で進みます。
①他の共有者へ放棄の意思表示をする
まず、他の共有者に対して持分を放棄する旨を伝えます。
口頭でも効力は生じますが、後々の登記手続きや「言った・言わない」のトラブルを避けるため、内容証明郵便など記録の残る書面で通知するのが一般的です。
いきなり内容証明を送ると相手が身構えることもあるため、事前に事情を説明したうえで書面を送ると、その後の登記協力が得やすくなります。
書面に記載する内容は、対象不動産の所在・地番・地目・地積、自分の持分割合、その持分すべてを放棄する旨、そして共有持分移転登記への協力の依頼です。
内容証明郵便の控えは、あとから作り直せません。
登記に協力してもらえず訴訟になった場合は、意思表示が相手に届いた証拠の中心になるため、必ず保管しておきましょう。
②共有持分移転登記を申請する
意思表示のあとは、持分を他の共有者へ移す共有持分移転登記を法務局へ申請します。
この登記は、放棄する人(登記義務者)と持分を受け取る共有者(登記権利者)が共同で申請するのが原則です。
主な必要書類は次のとおりです。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(持分放棄証書など)
- 放棄する人の登記識別情報(権利証)
- 放棄する人の印鑑証明書
- 持分を受け取る人の住民票
登記記録上の住所や氏名が現在と異なる場合は、前提として住所変更登記などが必要になり、書類も費用も増えます。
申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。
自分の住まいが離れていても、管轄は物件の場所で決まります。
書類の作成や登記申請に不安がある場合は、登記の専門家である司法書士に依頼するとスムーズに進みます。
③協力を得られない場合は登記引取請求訴訟を行う
他の共有者が登記への協力を拒む場合は、放棄した人から他の共有者に対して、持分の引取りを求める登記引取請求訴訟を起こす方法があります。
裁判所が請求を認めれば、判決にもとづいて単独で登記手続きを進められます。
訴訟は法的な紛争にあたるため、対応にあたっては弁護士に相談してみましょう。
訴えが認められる前提として、放棄の意思表示が相手に届いていた事実を立証する必要があります。
ただし、判決までに半年から1年以上かかり、弁護士費用も数十万円規模になるケースがあります。
期間も費用も、事案や依頼先によって異なります。
持分の評価額が低い土地では、訴訟費用が持分の価値を上回る費用倒れになりかねません。
訴訟を起こす前に、持分の査定額と費用を比べましょう。
共有持分の放棄にかかる費用
共有持分の放棄では、放棄する側と持分を受け取る側の双方に費用が生じます。
金額は不動産の固定資産税評価額と持分割合で決まるため、放棄を決める前に総額を試算しておくと、共有者との話し合いが進めやすくなります。
誰がどの費用を負担するのかを整理しておきましょう。
放棄する側と取得する側にかかる主な費用の目安は次のとおりです。
以下はいずれも目安であり、実際の金額は不動産の評価額・持分割合・依頼先によって異なります。
| 費用・税金 | 主な負担者 | 目安 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 取得する側 | 不動産の固定資産税評価額(取得する持分相当)×2.0% |
| 司法書士報酬 | 依頼した側 | 3万円〜15万円程度(事案・依頼範囲により変動) |
| 必要書類の取得費 | 放棄する側 | 数百円〜数千円程度 |
| 不動産取得税 | 取得する側 | 固定資産税評価額(取得持分相当)×3%(土地・住宅は2027年3月31日までの取得分。本則は4%) |
| 贈与税 | 取得する側 | 取得した持分の評価額に応じて課税される場合がある |
放棄する側にかかる費用
放棄する側は、登記に必要な書類の取得費や、司法書士へ依頼する場合の報酬などがかかります。
内訳は、書類取得費が数千円、内容証明郵便の郵送料が1,500円から2,500円程度です。
司法書士へ依頼する場合は、報酬が3万円から15万円程度かかります。
自分で申請すれば報酬はかかりませんが、書類の不備で訂正を求められることもあります。
登記費用(登録免許税)は、原則として持分を取得する側が負担しますが、当事者間の取り決めによって放棄する側が負担する場合もあります。
誰が負担するかは、共有者間の話し合いで自由に決められます。
相手の協力を引き出すために、放棄する側が全額を負担すると申し出るのもひとつの方法です。
持分を取得する側にかかる費用
持分を受け取る側は、登録免許税と不動産取得税を負担します。
登録免許税は取得する持分に対応する固定資産税評価額の2.0%、不動産取得税は本則4%ですが、土地と住宅については2027年3月31日までの取得分に限り3%へ軽減されています。
また、金額は不動産の評価額や持分割合によって変わります。
たとえば固定資産税評価額3,000万円の土地で、持分が3分の1のケースを考えます。
持分の評価額は1,000万円になり、登録免許税は20万円、不動産取得税は軽減税率3%を適用して30万円が目安です。
さらに贈与税が加わるため、受け取る側の負担は数百万円規模になることもあります。
なお贈与税は固定資産税評価額ではなく相続税評価額(路線価方式・倍率方式)を基礎に計算するため、上記の金額とは前提が異なります。
正確な税額や登記費用は、司法書士・税理士など専門家に確認してみましょう。
共有持分の放棄でかかる税金
共有持分の放棄では、放棄する本人よりも、持分を受け取る他の共有者に税金が生じやすい点が特徴です。
主に贈与税・不動産取得税・固定資産税の3つを押さえておきましょう。
他の共有者にかかる贈与税
放棄によって持分を無償で受け取った他の共有者には、贈与税が課される場合があります。
相続税法上の取扱いでは、共有者の一人が持分を放棄したときは、他の共有者がその持分を贈与により取得したものとみなすとされているためです。
放棄する本人に贈与税はかかりませんが、受け取る側の税負担が大きくなることがあるため、事前の説明が欠かせません。
贈与税は、受け取った側が自分で申告して納めます。
申告と納付の期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。
放棄した本人に申告の義務はないため、期限を知らないまま相手が申告漏れになることもあります。
放棄を伝えるときは、税額の見込みと申告の期限まで併せて説明しておきましょう。
不動産取得税・登録免許税
持分を取得する側には、不動産取得税と、名義変更のための登録免許税がかかります。
登録免許税は取得する持分に対応する固定資産税評価額の2.0%、不動産取得税は土地・住宅について3%(2027年3月31日までの取得分。本則は4%)が目安です。
登録免許税は登記を申請するときに納め、不動産取得税は取得したあとに都道府県から納税通知書が届きます。
納める時期が違うため、受け取る側は二度にわたって支出することになります。
不動産取得税には、宅地や住宅について税率や課税標準を軽減する特例が設けられています。
適用できるかどうかは物件の種類で変わるため、都道府県の県税事務所へ確認してください。
3%の軽減税率は地目を問わず土地全般に適用され、地方税法では山林や原野なども「土地」に含まれます。
ただし課税標準を2分の1にする特例は宅地および宅地比準土地に限られるため、山林や雑種地では評価額がそのまま課税標準になります。
いずれの税も、負担するのは持分を受け取る側です。
【参考】地方税法|e-Gov法令検索
固定資産税の扱い
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者へ課されます。
年の途中で放棄しても、その年の分は放棄前の所有者が納めるのが原則です。
翌年以降は、持分を受け取った共有者へ課税されるようになります。
共有不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務を負い、納税通知書は代表者にまとめて送られます。
登記が完了しても課税台帳への反映は市区町村の処理を経るため、実際に課税が外れるのは翌年度分からです。
名義が外れたあとも通知の宛先だけが残ることがあるので、翌年度の納税通知書が届いたら、登記事項証明書を示して市区町村の資産税課へ確認してください。
自分の名義が外れたかどうかは、登記事項証明書の権利部で確認できます。
共有持分の放棄以外に共有状態から抜け出す方法
共有関係を解消する方法は、放棄だけではありません。
目的や不動産の価値に応じて、売却・贈与・相続放棄・共有物分割請求といった選択肢があります。
それぞれの特徴を比較して、自分に合う方法を選びましょう。

共有持分・不動産を売却して現金化する
もっとも現実的な選択肢のひとつが、共有持分の売却です。
放棄と違い、売却では持分に応じた代金を受け取れます。
共有不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしで売りに出せます。
ただし買い手が見つかるかどうかは、物件の条件によって異なります。
共有持分の買取を扱う不動産会社もあり、資産価値のある不動産なら、放棄より売却のほうが手元に資金を残せます。
共有持分は通常の仲介では扱いにくい物件ですが、共有持分や訳あり不動産を専門に扱う会社なら買い取りに応じる場合があります。
山林や再建築不可の土地でも、値が付く可能性はゼロではありません。
査定を無料で実施している会社も多く、比較的短い期間で金額の目安がわかる場合があります。
他の共有者に持分を贈与する
特定の共有者に持分を引き継いでほしい場合は、贈与という方法もあります。
放棄と同じく無償で持分を移しますが、贈与は相手の受贈の合意を前提とする契約です。
誰に渡すかを自分で選べる点が放棄との違いで、受け取った側には贈与税がかかります。
なお、手続きの流れは放棄とほぼ同じで、贈与契約を結んだうえで持分移転登記を共同で申請します。
受け取る側に贈与税と不動産取得税がかかる点も同じため、事前に金額を伝えて合意を得ておきましょう。
相手が受け取りを断れば成立しない点が、単独でできる放棄との違いです。
関係が良好で、引き継いでほしい相手がはっきりしている場合に向いています。
また、税負担を抑えたい場合は無償の贈与ではなく相場より低い価格での売買を選ぶ方法もあります。
ただし、著しく低い価格ではみなし贈与として課税される点に注意してください。
相続放棄で財産ごと手放す
相続で共有になった不動産について、借金を含めて遺産すべてを引き継ぎたくない場合は、相続放棄も選択肢になります。
ただし相続放棄をすると、対象不動産の持分だけでなく、預貯金など他の遺産もすべて受け取れなくなります。
共有不動産の持分だけを手放したいなら、共有持分の放棄や売却のほうが適しています。
相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったものとして扱われます。
共有持分だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぎません。
負債のほうが多い場合に有効な選択肢です。
共有物分割請求をする
共有関係そのものを清算したい場合は、共有物分割請求という方法があります。
共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます。
話し合いで決まらなければ、共有物分割請求訴訟によって、現物での分割や、競売による代金の分配などが行われます。
共有物の分け方は3つあります。
土地を切り分ける現物分割、1人が取得して他の共有者へ代償金を払う賠償分割、売却代金を分ける換価分割です。
共有関係そのものは終わらせられますが、手取りが減るリスクを織り込んで判断してください。
なお、共有者間の対立が深いケースで用いられることが多く、対応には弁護士の関与が一般的です。
放棄する前に「売却」も検討を|共有持分は買い取ってもらえる
共有持分の放棄は、共有から抜ける有効な手段ですが、あくまで「無償で手放す」方法です。
手放したい不動産に少しでも資産価値があるなら、放棄する前に売却できないかを検討する価値があります。
自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却でき、共有持分の買取を扱う不動産会社に相談すれば、現金化できる可能性があります。
「放棄しかない」と思い込んで無償で手放す前に、まずは自分の持分にどれくらいの値が付くのかを確かめてみてはいかがでしょうか。
共有名義の不動産の売却先を探すなら、複数の不動産会社に一括で相談できるベンナビ不動産売却の活用がおすすめです。
【専門の業者への依頼】がおすすめ!
共有持分の放棄に関するよくある質問
最後に、共有持分の放棄について読者からよく寄せられる質問に回答します。
相続で共有持分を放棄するとどうなる?
相続で得た不動産の共有持分を放棄すると、その持分は民法第255条にもとづき他の共有者へ移ります。
放棄しても預貯金など他の相続財産は受け取れる点が、遺産すべてを手放す相続放棄との違いです。
ただし持分を受け取った共有者に贈与税がかかる場合があるため、事前の相談が望ましいです。
農地の共有持分も放棄できる?
農地の共有持分も放棄自体は可能です。
持分の放棄による移転は当事者の合意にもとづく権利移動ではなく、民法第255条による帰属であるため、農地法第3条の許可は不要とされています(登記先例解説集9-4-97)。
ただし登記の取扱いは個別事情によって異なるため、農地の場合は司法書士など専門家に確認しておくと安心です。
共有持分を放棄したら撤回できる?
いったん有効に成立した放棄の意思表示を、後から一方的に撤回することは原則としてできません。
放棄は相手の同意なく効力が生じる反面、気軽にやり直せる手続きではありません。
放棄するかどうかは、売却など他の方法と比べたうえで慎重に判断することが大切です。
他の共有者が行方不明でも放棄できる?
意思表示だけであれば行えますが、登記には他の共有者の関与が必要なため、行方不明のままでは名義変更が進みません。
2021年の民法改正(2023年4月1日施行)で、所在等が不明な共有者がいる場合に、裁判所へ申し立ててその持分を取得したり第三者へ譲渡したりできる制度が設けられました(民法第262条の2・第262条の3)。
行方不明の共有者がいるケースでは、こうした制度の活用も含めて弁護士や司法書士に相談すると安心です。
マンションの共有持分を放棄したら滞納した管理費はどうなる?
共有持分を放棄しても、放棄前にすでに発生していた管理費や修繕積立金の滞納分は、放棄した本人の負担として残る場合があります。
放棄によって将来の負担からは解放されても、過去の滞納が自動的に消えるわけではありません。
滞納がある場合は、放棄の前に管理組合や専門家へ確認しておきましょう。
まとめ
共有持分の放棄は、自分の意思表示だけで持分を手放せる手続きです。
他の共有者の同意なく進められ、共有持分以外の財産は手元に残せる一方で、対価を受け取れない、登記に他の共有者の協力が要る、受け取る側に贈与税がかかる場合があるといったデメリットもあります。
とくに資産価値のある不動産では、無償で放棄するより、持分を売却して現金化するほうが有利になるケースが少なくありません。
共有持分だけでも売却できる場合があるため、放棄を決める前に「売れないか」を確かめておくことが後悔しないポイントです。
放棄・売却・その他の方法のどれを選ぶべきか迷ったら、まずは共有名義の不動産にどれくらいの価値があるのかを把握することから始めましょう。
共有持分の売却先を探すなら、ベンナビ不動産売却を活用し、自分に合った共有解消の方法を見つけてください。
【専門の業者への依頼】がおすすめ!

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。