訳あり物件

訳あり物件とは?買取業者を選ぶ7つの基準と高く買い取ってもらうコツを解説

訳あり物件とは?買取業者を選ぶ7つの基準と高く買い取ってもらうコツを解説

事故物件や再建築不可物件、共有持分といった訳あり物件は、仲介に出しても買主が見つからず、固定資産税と管理の負担だけが残りがちです。買主がつかない物件でも、不動産会社が直接買い取る買取であれば、数日〜1ヵ月ほどで売却できる可能性があります。

ただし買取業者は、事故物件を得意とする会社もあれば、共有持分や再建築不可物件に力を入れる会社もあります。同じ物件を査定に出しても、依頼先によって提示額が数百万円単位で変わるのも珍しくありません。

本記事では、訳あり物件の類型・買取相場の考え方・買取業者を選ぶ7つの基準・依頼から現金化までの流れ・契約前の注意点まで解説します。訳あり物件の売却先を探している方は、ぜひ参考にしてください。

監修者

新静岡駅前法律事務所 長谷川 達紀・日吉 加奈恵

所属:静岡県弁護士会

幅広い相続に関するご相談に対応し、確かな実績と経験から、依頼者様の納得のいく解決に導くよう尽力しています。不動産の相続を司法書士などと連携して一貫して対応することも可能です。

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自分の物件はどれに当たる?訳あり物件の5つの類型

訳あり物件という言葉に法律上の定義はありません。実務では、心理的・物理的・環境的・法的の4つの瑕疵(かし)に権利関係を加えた5類型で整理されます。瑕疵とは、物件が本来備えているべき品質や性能を欠いた状態です。

どの類型でも、把握している瑕疵は買主に伝えなければなりません(告知)。隠したまま売却すると、契約解除や損害賠償を求められる恐れがあります。

類型内容
心理的瑕疵事故物件など、過去の出来事が買主に心理的な抵抗を与える物件
物理的瑕疵雨漏り・シロアリ・傾きなど、建物や土地そのものに不具合がある物件
環境的瑕疵騒音・異臭・嫌悪施設の近接など、周辺環境に原因がある物件
法的瑕疵再建築不可・違法建築・借地権など、法令上の制限がある物件
権利関係共有持分・相続登記未了など、権利が単独で確定していない物件

自分の物件がどの類型に当たるかを、以下で確認してみてください。

心理的瑕疵|事故物件など買主に心理的な抵抗を与える物件

心理的瑕疵とは、物件そのものに欠陥がなくても、過去に起きた出来事が原因で買主が購入をためらう状態を指します。自死や他殺、孤独死があった物件が代表例です。

ただし、人が亡くなった物件の全てが告知の対象になるわけではありません。国土交通省が策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が、実務上の線引きを示しています。

自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)は、原則として告知する必要はありません。しかし他殺や自死、特殊清掃を要した死は告知の対象です。なお、賃貸借取引では、発生からおおむね3年が過ぎれば原則として告知は不要です。

ただし売買取引には、年数の目安は置かれていません。したがって、判断に迷う場合は告知しておきましょう。告知して価格が下がる損失より、告知を怠って契約解除や損害賠償に至る損失のほうが大きくなります。

物理的瑕疵|雨漏りや老朽化など建物そのものに不具合がある物件

物理的瑕疵とは、雨漏りやシロアリ被害のように、建物や土地そのものに不具合がある状態を指します。代表的なものは以下のとおりです。

  • 屋根の破損や雨漏り、床壁の腐食
  • 基礎のひび割れ、建物の傾き
  • シロアリ被害、給排水管の劣化
  • 残置物やゴミの堆積

いずれも修繕費を見積もれる不具合なので、金額に換算したうえで買取価格に反映できます。売主が先に修繕してから売る必要がなく、買取業者は自社の施工体制で工事をおこなうので、個人が頼むより安く直せます。

売主が100万円かけた箇所も業者なら50万円で済むケースがあり、差額は買取価格に反映されません。手をかける前に、まず現況のまま査定を受けましょう。また、残置物も同様です。訳あり物件を扱う買取業者の多くは、家具や家財が残ったままの現況で引き取ります。

片付けを済ませてから相談する必要がないため、ものを残したまま査定を依頼して構いません。

環境的瑕疵|騒音や異臭など周辺環境に問題がある物件

環境的瑕疵とは、建物や土地そのものに問題がなくても、周辺の環境が原因で買主が敬遠する状態を指します。たとえば以下のような環境が該当します。

  • 線路や幹線道路沿いの騒音と振動
  • 工場やごみ処理場からの異臭
  • 墓地や火葬場、葬祭場の近接

周辺環境の事情も、買主の契約判断に影響するものであれば告知の対象になり得ます。物件自体に欠陥がないぶん見落とされやすく、あとから問題になりやすい類型です。売却を決めた段階で、周辺に該当する施設がないかを確認しておきましょう。

環境的瑕疵は、地域の事情を知っている地元業者のほうが正当に評価できるケースもあります。全国対応の業者は地図上の情報で判断せざるを得ませんが、地元業者は実際の需要を知っているためです。

地元の不動産会社を査定先に1社入れておくと、判断の幅が広がります。

法的瑕疵|再建築不可や違法建築など法令上の制限がある物件

法的瑕疵とは、法令上の制限があるために建て替えや融資が難しくなっている物件を指します。代表例が再建築不可物件で、建物を壊すと同じ土地に新しい家を建てられません。

原因は接道義務を満たしていない点にあります。幅4メートル以上の道路に敷地が2メートル以上接していないと、建物を建てられません(建築基準法第42条・第43条)。路地の奥に建つ古い家が典型例です。

建て替えができない物件は担保価値が低く、住宅ローンの審査が通りにくくなります。買主は現金で買える人に限られるため、仲介に出しても内見すら入らない状態が続きます。

建ぺい率を超過した違法建築や、法改正で基準に合わなくなった既存不適格の建物、借地権付き建物、底地も同じです。いずれも住宅ローンが使いにくく、権利調整の経験を積んだ買取業者でなければ扱えない物件になります。

権利関係|共有持分や相続登記未了で権利が確定していない物件

権利関係の訳あり物件とは、所有権が単独で確定していない物件です。代表例が共有持分で、1つの不動産を複数人で共有している状態を指します。

自分の持分だけなら、他の共有者の同意がなくても単独で売却できます。しかし物件全体を売るには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条第1項)。一人でも反対すれば、物件ごと売ることができません。

相続した物件なら、登記の名義も確認しましょう。被相続人の名義のままでは、売却の手続きに進めません。相続登記は2024年4月から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です(不動産登記法第76条の2)。

権利が確定していない物件は、査定の前提そのものが整いません。遺産分割が終わっていない、共有者と連絡が取れないといった状態なら、買取業者より先に弁護士へ相談しましょう。

訳あり物件の買取とは|不動産会社が直接買主になり仲介より早く売れる売却方法

訳あり物件の買取とは、不動産会社が自ら買主となって物件を購入する売却方法です。

買主を探して契約を仲立ちする仲介とは、売却が決まる仕組みそのものが異なります。仲介では買主が見つかるまで売却が成立しませんが、買取は業者が購入を決めた時点で成立します。

訳あり物件が仲介で売れにくいのは、物件の状態ごとに異なる事情があります。代表的なものは下記のとおりです。

  • 再建築不可物件や築古の空き家は買主が住宅ローンの審査を通しにくい
  • 事故物件は過去の出来事への心理的な抵抗から敬遠されやすい
  • 雨漏りやシロアリ被害がある建物は、買主側が修繕費を見積もれないため判断を先送りされやすい

一方で、買取業者は買い取った物件を修繕・解体し、権利整理をしたうえで再販する事業者です。工事にかかる費用と業者の利益は、買取価格からあらかじめ差し引かれます。

買取価格が仲介の想定成約価格を下回るのは、業者が不当に値切っているからではありません。理由を知ったうえで査定額を見れば、金額が妥当かどうかを冷静に判断できるでしょう。

買取と仲介の違いを5項目で比較

買取と仲介の違いは主に、売却までの期間・売却価格・仲介手数料・契約不適合責任・近隣に知られる可能性の5点です。

項目買取仲介
売却までの期間数日〜1ヵ月程度3ヵ月〜6ヵ月が一般的
売却価格の目安仲介での想定成約価格を下回る市場価格に近い
仲介手数料原則かからない成約時に発生する
契約不適合責任免責特約を設けやすい個人買主には受け入れられにくい
近隣に知られる可能性広告を出さずに進められる物件情報の掲載が前提

仲介手数料が原則かからないのは、買取では不動産会社が媒介ではなく買主の立場になるためです。仲介手数料は、国土交通大臣の定める金額を超えてはならないと定められています(宅地建物取引業法46条)。

従って、売主と買主が直接売買する取引では手数料が発生しません。価格を優先するなら仲介、期間と確実性を優先するなら買取を選ぶと考えてよいでしょう。

買取が向いているのは期限と確実性を優先する人

買取が向いているのは、売却の期限と確実性を優先する方です。価格が下がっても、期日までに現金化できるほうが得になる場合があります。下記に1つでも当てはまるなら、買取を検討しましょう。

  • 転居や納税の期限が決まっていて、売却の時期を動かせない
  • 仲介に出して3ヵ月〜6ヵ月のあいだ買主が見つからなかった
  • 物件が遠方にあり、管理や近隣対応を続けられない

逆に、下記の条件がそろう物件は、市場価格に近い金額で売れる可能性が残っているため、仲介を試してみてください。

  • 駅から近く、住みたいと考える買主が見つかりやすい
  • 幅員4メートル以上の道路に接していて建て替えができる
  • 築年数が浅く、瑕疵が軽微にとどまる

買取と仲介のどちらにするか迷う場合は、両方の査定を取りましょう。2つの数字が並べば、どちらを選ぶかを自分で判断できます。

訳あり物件を買取で売る3つのメリット

買取には、仲介では拾えない利点が3つあります。順番に見ていきましょう。

仲介で買主が見つからない物件でも売却できる

訳あり物件の買取の利点は、一般の買主が付かない物件でも取引が成立する点にあります。

買主が不動産会社なら、住宅ローンの審査を受ける必要がありません。自己資金や事業性の融資で購入するため、再建築不可物件や築古の空き家でも買い取ると判断できます。

修繕・解体・残置物の処分・権利整理も業者側が引き受けます。売主が先に工事費を負担する必要がなく、現況のまま引き渡せる仕組みです。仲介では「まず片付けて、直してから」と言われがちな物件が、買取なら手を付けずに売却へ進められます。

仲介で半年動かなかった物件が買取なら成立するのは、買主の性質が根本から違うためです。個人の買主は住むために買いますが、業者は再生して転売するために購入します。住みやすさで選ぶ必要がないぶん、瑕疵のある物件でも値がつきます。

契約から決済までが短く早期に現金化できる

訳あり物件の買取では買主を探す期間が要らないため、条件が整えば数日から1ヵ月程度で決済に至ります。仲介の場合、買主探しに3ヵ月〜6ヵ月かかり、そのうえで契約と決済の手続きが続きます。買主を待つ間も、固定資産税や管理費などの負担がかかるというわけです。

買取だと期間が短くなるのは、工程が少ないためです。査定と現地調査が終われば価格が確定し、そのまま売買契約に進めます。相続税の納付期限が迫っている、施設入居の費用が必要といった事情がある方にとって、見通しの立てやすさは価格差を補うだけの価値があるでしょう。

ただし、全ての物件が短期間で済むわけではありません。相続登記が終わっていない、共有者の一部と連絡が取れないといった状態では、権利の整理が先に必要になり、その分だけ期間は延びます。

契約不適合責任を免除する特約を付けやすい

契約不適合責任とは、引き渡した物が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任です。買主は、下記を売主に請求できます(民法第562条・563条・564条)。

  • 修補や代替物の引渡しといった履行の追完
  • 代金の減額
  • 損害賠償
  • 契約の解除

売却後に雨漏りやシロアリ被害が見つかれば、売主が費用を負担する事態になりかねません。

買主が宅地建物取引業者である買取なら、責任を免除または限定する特約を設けやすくなります。業者は建物の状態を織り込んで価格を決めているため、あとから責任を追及する前提がないためです。一方で仲介は、免責の特約は受け入れられにくくなります。

ただし、免責には限界があります。売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れられません(民法572条)。知っている不具合は、価格が下がることを承知のうえで先に開示しましょう。

訳あり物件を買取で売る3つのデメリット

訳あり物件の買取にはデメリットもあります。本章では、売却価格が仲介より低くなる点、業者ごとに提示額の差が大きい点、物件によっては買取を断られる点について解説します。

売却価格が仲介より低くなる

買取価格には、業者が負担する工事費・販売経費・保有中の費用・利益が織り込まれます。そのぶん、仲介で一般の買主に売った場合の想定成約価格を下回ります。取引の仕組み上の差なので、交渉で埋まる部分ではありません。

業者は買い取った後、リフォームや解体をおこない、再販できる状態にしてから売り出します。売れるまでの間、固定資産税と管理費を負担し続けます。売れ残るリスクも負うため、買取価格は、これら全てを差し引いた分となります。

そのため価格差は不当なものではなく、リスクと手間を引き受けた対価です。下げ幅の大きさは、業者が再販の見通しを立てられるかどうかで決まります。駅から近い、更地にすれば需要があるといった物件では差が小さく、活用の道筋が見えない物件では大きくなるでしょう。

業者によって提示額が大きく変わる

同じ物件でも、業者によって査定額に差が生じます。理由は、再販先と得意な物件類型が業者ごとに異なるためです。たとえば、再建築不可物件を隣地とまとめて再生できる業者と、事故物件のリフォーム販売を得意とする業者では、想定できる再販価格が違います。

1社の見積もりを見ただけで依頼を決めると、その業者が苦手とする類型だった場合に、低い金額のまま確定してしまいます。訳あり物件は個別性が強く、公表された相場表が存在しないため、比較対象がなければ妥当かどうかを判断できません。

最低でも、3社に査定を依頼しましょう。同じ資料と同じ事情を伝えて条件をそろえ、提示額の中央値を基準に判断します。中央値から極端に外れる社は、根拠を確認したうえで候補から外して構いません。

立地や状態によっては買取を断られる

再販の見込みが立たない物件は、訳あり物件を扱う業者であっても買取を見送るケースがあります。買取は業者にとって仕入れであり、売り先が見つからない物件は在庫になるだけだからです。

断られやすいのは、下記のような物件です。

  • 人口減少が進み賃貸需要も売却需要も乏しい地域にある物件
  • 土砂災害警戒区域など危険性が高い土地にある物件
  • 相続登記が終わっていない物件
  • 共有者の一部が売却に反対している物件

1社に断られても、他社では成立する場合もあります。地元の不動産会社は独自の再販先をもっている場合があり、全国対応の業者が見送った物件を引き受ける例も見られます。

それでも買い手が付かないなら、空き家バンクへの登録や自治体の相談窓口に聞いてみるのも良いでしょう。

ただし、どちらも買主を紹介する仕組みではないため、売却まで進むとは限りません。権利関係が原因で断られている場合は、先に弁護士へ相談して権利を整理するのがおすすめです。

訳あり物件の買取業者を選ぶ7つの基準

候補を並べる前に、買取業者を選ぶ基準を決めておきましょう。

  1. 同じ類型の買取実績が公開されているか
  2. 物件のある地域が買取対象に入っているか
  3. 宅地建物取引業免許を確認できるか
  4. 査定額の根拠を書面で示すか
  5. 解体費・残置物処分費・測量費の負担者が明確か
  6. 契約不適合責任の免責条項があるか
  7. 近隣に知られない配慮があるか

基準1から3は必須条件で、満たさない業者は候補から外して構いません。基準4から7は加点条件です。全てを満たす1社を探すのではなく、複数社を並べて相対的に比べましょう。

基準1:同じ類型の買取実績が公開されているか

訳あり物件対応とうたっていても、得意な類型は業者ごとに違います。事故物件の再生と再建築不可物件の権利調整では、必要な知識も経験も別物だからです。自分の物件と同じ類型の実績があるかを確認しましょう。

確認するべき場所は、公式サイトの実績ページです。類型・地域・時期が特定できる形で公開されていれば、どの分野の経験が豊富かを読み取れます。一方、「年間3,000件」といった総数だけを掲げている業者の場合は実態がわかりません。総数が多くても、共有持分の買取がほとんどだった場合、事故物件の売主にとっては参考になりません。

内訳が不明な場合は、問い合わせで自分の物件と同じ条件の取扱実績を直接尋ねてください。具体的な事例をすぐ挙げられる業者なら、依頼すると決めるための最低基準のうち、一つを満たしていると考えてよいでしょう。

基準2:物件のある地域が買取対象に入っているか

全国対応をうたっていても、実際に買い取るかどうかは別の話です。業者は買い取った物件を再販して利益を得るため、再販の見込みが立たない地域の物件は実質的に対象外になります。

判断材料は実績ページの地域分布です。買取事例が首都圏や大都市圏に偏っている業者は、地方の物件で低い評価しか出せないか、そもそも見送る可能性があります。都道府県別の実績を公開している業者なら、自分の地域の事例があるかを確認しましょう。

地方の訳あり物件を買い取ってもらいたい場合は、全国対応の専門業者と地元の買取業者の両方に当たるのが現実的です。地元業者は独自の再販先を持っていることがあり、全国業者が見送った物件も買い取ってくれるケースがあるためです。

基準3:宅地建物取引業免許を確認できるか

宅地建物取引業を営むには免許が必要で、免許を受けた業者は免許証番号と商号を表示する義務を負います。公式サイトに免許番号の記載がない業者は、候補から外しましょう。

免許番号は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で照会できます。商号を入力すれば、免許番号や代表者名、免許の有効期間などがわかります。行政処分の履歴は、同省の「ネガティブ情報等検索サイト」で把握可能です。

免許番号のかっこ内の数字もみておきましょう。かっこ内の数字は更新回数に1を加えたもので、(1)は新規取得で更新前、(3)なら2回更新済みという意味です。更新は5年ごとのため、(3)であれば免許取得から10年以上が経過している計算です。

数字が大きいほど営業年数が長いと判断できるため、依頼したい業者の候補が並んだときは、実績ページとあわせて比較の材料にしましょう。

基準4:査定額の根拠を書面で示すか

口頭の概算だけで契約を進めようとする業者は避け、内訳のある査定書を出す業者を選んでください。

査定書に含まれているべき項目は、想定再販価格・想定工事費・諸経費・買取価格の4つです。内訳がきちんとしていれば、提示された金額が妥当かどうかを確認できます。逆に総額しか書かれていない査定書では、他社と比べたときに差の理由がわかりません。

現地を見ずに即答された金額も要注意です。実際の状態を確認していない以上、あとから減額されるリスクがあります。査定の段階で、どのような場合に減額があり得るのか、減額するときはいつどう通知されるのかを確認しておきましょう。

書面で残しておけば、決済直前の値下げ交渉にも根拠をもって対応できます。

基準5:解体費・残置物処分費・測量費の負担者が明確か

訳あり物件の買取価格が高くても、諸費用を売主負担にされれば手取りは減ります。業者を比べるときに見るべきなのは、提示された買取価格ではなく、費用を差し引いて最終的に手元に残る金額です。

訳あり物件では、残置物の処分費や特殊清掃費に加え、建物の解体費や境界確定のための測量費、抵当権抹消の登記費用が発生することがあります。どちらが負担するかは契約次第で、業者ごとに扱いが違います。見積書で負担の区分をひとつずつ確認しましょう。

比較の際は、各社の提示額から売主負担の費用を引いた金額を並べてください。たとえば買取価格が50万円高くても、測量費と解体費で80万円を負担することになれば、手取りは他社より少なくなります。

見積書に費用の記載がない項目は、負担がないのか、単に未記載なのかを口頭ではなく書面で確かめておきましょう。

基準6:契約不適合責任の免責条項があるか

訳あり物件の買取りについての取り決めが、契約書のどこに書かれているかを、署名する前に確認しましょう。免責条項とは、売却後に新たな不具合が見つかったとき、誰が責任を負うのかを決めるものです。

買取業者は瑕疵のリスクを織り込んで購入するため、売主の契約不適合責任を免除または限定する特約を設けるケースが多くみられます。特約があれば、売却後に修補費用や損害賠償を請求される事態を避けられます。

ただし、特約の書き方は一様ではありません。「一切免責」とするものもあれば、対象や期間を限定するものもあります。免責の範囲は契約書の条項と民法で決まるので、書面で確かめましょう。

基準7:近隣に知られない配慮があるか

買取は広告を出さずに完結できるため、訳あり物件を周囲に知られずに売却できます。

仲介では物件情報を不動産情報サイトやチラシに掲載するのが前提で、近隣に売却の事実が伝わります。事故物件や相続をめぐる事情がある売主にとって、広告の有無は確認するべき項目です。

確認しておきたいのは、現地調査の進め方です。下記の3点を事前に取り決めておけば、調査段階で気づかれる恐れを減らせます。

  • 調査の日時を近隣の目が少ない時間帯に設定できるか
  • 社名入りの車両で来訪しないか
  • 近隣への挨拶回りをおこなわないか

問い合わせの段階で個人情報を渡すことに抵抗がある場合は、匿名や最小限の情報で受け付ける簡易査定から始める方法もあります。連絡手段をメールのみに指定できるかも、あわせて確認しておきましょう。

訳あり物件の買取業者は類型ごとに得意分野が異なる

訳あり物件の買取業者は、得意とする類型によって強みがわかれます。自分の物件の類型に合う業者を絞り込めるよう、タイプごとの特徴を下記にまとめました。

業者のタイプ得意な物件見分けるポイント
心理的瑕疵に強い業者事故物件、孤独死のあった住宅特殊清掃と残置物処分を自社で手配できるか
物理的瑕疵に強い業者雨漏り、傾き、ゴミ屋敷解体や修繕を自社の施工体制でおこなえるか
環境的瑕疵に強い業者騒音や異臭のある物件、嫌悪施設の近く賃貸や収益物件としての再販実績があるか
法的瑕疵に強い業者再建築不可、違法建築、借地権、底地隣地の買い増しや接道の確保まで踏み込めるか
権利関係に強い業者共有持分、相続登記未了弁護士・司法書士と提携しているか
一括査定サイト訳ありの度合いが軽い物件訳あり物件に対応する会社が提携先にいるか

見分けるポイントの欄は、そのまま業者への質問に使えます。問い合わせの段階で投げかければ、具体的な事例を挙げられる業者と、一般論しか返ってこない業者が分かれます。

複数の類型に当てはまる物件では、両方を扱える業者を優先しましょう。事故物件が共有名義になっているなら、心理的瑕疵と権利関係の両方に対応できるかが判断の材料になります。片方しか扱えない業者に依頼すると、権利の整理で話が止まります。

なお、候補となる業者が1社も思いつかない場合は、一括査定サイトから始める方法もあります。

一括査定サイトの特徴と使いどころ

一括査定サイトは、物件情報を1回入力すれば、提携する不動産会社のうち複数社へ同時に査定を依頼できるサービスです。提携社数の多いサイトなら、最大6社ほどに一度で依頼できます。利用料はかかりません。

注意点は2つあります。1つは、訳あり物件では対応できないと返される場合がある点です。提携先は仲介中心の会社も多く、再建築不可物件や事故物件は対象外になるケースが目立ちます。もう1つは、登録直後に複数社から連絡が入る点です。入力画面で連絡手段や連絡可能な時間帯を指定できるなら、設定しておきましょう。

専門業者と一括査定の両方に当てると、価格の幅が見えてきます。専門業者は訳あり物件の再販先をもつぶん高い額を出せる一方、一括査定の結果は一般の市場での評価です。2つを並べて初めて、提示された金額の位置がわかります。

訳あり物件の買取相場に決まった数字はない

訳あり物件に公表された相場表はなく、買取価格は瑕疵の種類と立地によって変わります。本章では、価格が仲介より下がる理由と、類型別の下げ幅の傾向を解説します。

買取価格が仲介より下がる理由

買取価格は、業者が想定する再販価格から必要な費用と利益を差し引いて決まります。式にすると下記のとおりです。

買取価格 = 想定再販価格 −(工事費 + 諸経費 + 保有中の費用 + 業者の利益)

たとえば、再販価格を2,000万円と見込んだ物件で考えてみましょう。リフォーム費に400万円、登記費用などの諸経費に100万円、保有中の固定資産税と管理費に50万円がかかり、業者の利益を300万円とすると、買取価格は1,150万円になります。

駅から近い、更地にすれば需要がある、賃貸に転用できるといった条件がそろえば、業者は売れ残るリスクを小さく見積もれます。しかし再販の見通しが立たない物件ほど、利益とリスク分を大きく引かれるでしょう。

物件類型別の価格の下がり方の目安

類型によって、価格が下がる原因は違います。原因がわかれば、交渉の余地がどこにあるかも見えてくるでしょう。

物件類型価格が下がる主な原因業者に確認するべき点
心理的瑕疵再販時の告知による買主の減少、特殊清掃・リフォーム費がかかるため告知が必要な事案か、清掃費の見積もりが分離されているか
物理的瑕疵修繕費または解体費がかかるため工事費の想定額と、その根拠となる見積もりを出せるか
環境的瑕疵再販時の需要が低いため地元業者が同じ評価をするか
法的瑕疵買主が融資を使えず、活用方法が限られるため隣地の買い増しなど接道を確保する余地があるか
権利関係権利調整にかかる時間と費用、交渉が不成立になる恐れがあるため持分のみの売却か、全体の売却を目指すか

上記は傾向であり、個別の物件に当てはめた金額ではありません。同じ再建築不可物件でも、都心の狭小地と地方の山間部では結果がまったく異なります。実際の金額は、複数社の査定で確かめてください。

相場より安い提示を見抜く3つのチェックポイント

訳あり物件に買取相場はないですが、提示額が妥当かどうかは、3点で判断できます。順番に見ていきましょう。

査定額の根拠が示されず総額だけを提示される

訳あり物件の査定額の内訳が示されず総額だけを伝えられる場合、金額が安いかどうかを検証できません。想定再販価格と工事費がわからなければ、下げ幅が妥当かを判断する材料がないためです。

内訳を求めても口頭の説明にとどまるなら、書面での提示を依頼しましょう。応じない業者は、根拠のない数字を出している可能性があります。説明を受けたら、想定再販価格が近隣の売出事例とかけ離れていないかを確かめてください。

周辺の相場より低く見積もられていれば、連動して買取価格も下がります。

3社以上の提示額の中央値から大きく外れている

訳あり物件に相場表がない以上、妥当性は他社の提示額との比較でしか測れません。最低でも3社から査定を取り、中央値を基準に見比べましょう。

中央値から大きく低い提示には、理由を必ず確認してください。物件の状態を厳しく見た結果なのか、単に買い叩こうとしているのかで、対応が変わるためです。合理的な説明が返ってこなければ、候補から外して構いません。

逆に、1社だけ極端に高い提示にも注意が必要です。現地調査の後で大幅な減額を求める前提で、高い数字を先に見せているケースがあります。

その場での即決を迫られる

今日中なら価格を上げる、他社には言わないでほしいといった形で判断を急がされたら、いったん持ち帰りましょう。急がなければ失われるような取引であれば、条件そのものを疑う必要があります。

即決を迫る業者には、最初に高い査定額を示し、現地調査のあとで大幅な減額を求める進め方をとる会社もあります。契約前に、提示額が確定価格かどうか、どのような場合に減額されるのかを書面で確認しておきましょう。

減額の条件が書面に残っていれば、あとから金額を動かされる余地を狭められます。

買取を依頼してから現金化までの流れ

訳あり物件の買取依頼から現金化までは、条件が整っていれば数日から1ヵ月程度で完了します。権利の整理が必要な場合は、整理にかかる期間が上乗せされるため、その分だけ期間が延びます。

ステップ内容期間の目安
① 相談・簡易査定物件の所在地・種別・状態を伝え、概算の金額を提示してもらう即日〜3日
② 現地調査業者が建物と土地の状態、境界、周辺環境、役所での法令制限を確認する1日(日程調整に数日)
③ 買取価格の提示調査結果をもとに買取価格と契約条件が提示される数日〜1週間
④ 売買契約契約内容を確認し、売買契約を締結する。手付金が支払われる場合がある1日
⑤ 決済・引き渡し残代金の支払いと所有権移転登記をおこない、鍵を引き渡す契約から1週間〜3週間

各ステップで売主が対応する内容も決まっています。最初の相談では、物件の不具合や権利関係を正確に伝えましょう。隠して進めても、現地調査で判明すれば減額の理由になります。

現地調査の日は、鍵を用意して立ち会うか、遠方なら代理を立てます。買取価格が提示されたら金額の内訳を確認し、売買契約では条項を読み込んでから署名しましょう。決済日までに必要書類をそろえれば、当日は残代金の受け取りと鍵の引き渡しで完了します。

相続登記や遺産分割が終わっていない場合は、現地調査の前に権利の整理が入ります。司法書士に相続登記を依頼すると、戸籍の収集から登記完了まで1ヵ月〜2ヵ月かかります。売却を急ぐなら、登記の手配から先に着手しましょう。

買取を行っている業者は、提携している司法書士がいることが多いので、依頼する司法書士が決まっていない場合には、業者に相談してみると良いでしょう。

買取で必要になる主な書類

訳あり物件の売却に主に必要となる書類は、下記の5点です。

  • 登記識別情報通知または登記済権利証
  • 実印・発行から3ヵ月以内の印鑑証明書
  • 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
  • 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
  • 売買代金の振込先が分かる書類

加えて、測量図・建築確認済証・検査済証・間取図・修繕の履歴があれば査定が早く進みます。境界が確定していない土地では、境界確認書の有無で対応の早さが変わります。

相続した物件では、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式、被相続人の住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、物件を取得する相続人の住民票と身分証の写し、不動産の評価証明書、遺産分割協議書が追加で必要です。戸籍の収集には時間がかかるケースが多いため、売却を決めた段階で着手しておきましょう。

訳あり物件を少しでも高く買い取ってもらう5つのコツ

訳あり物件を少しでも高く買い取ってもらうなら、本章で解説する5つのコツを参考にしてください。

なお、修繕やリフォームをしてから売る方法は、コツの中に含めていません。かけた費用が査定額の上昇として返ってくるとは限らず、費用倒れになりやすいためです。

最低3社から相見積もりを取る

あえて得意類型の異なる3社以上に依頼すれば、自分の物件を高く評価する業者に当たる確率が上がります。訳あり物件は業者ごとの評価差が大きく、1社目の提示額が最高額である保証はどこにもありません。

おすすめの相見積もりの方法は、物件の類型を専門とする業者2社と、物件所在地の地元業者1社に相談することです。得意分野の違う業者を混ぜると、価格の幅が見えてくるでしょう。

依頼の際は、同じ資料と同じ事情を全ての業者に渡しましょう。条件がそろっていなければ比較になりません。査定を受ける順番も、先に地元業者、次に専門業者などと決めておくと、あとから出た金額を前の業者に伝えて交渉しやすくなります。

瑕疵は隠さず先に開示する

不具合を先に開示すると、減額の根拠が明確になり、契約後の減額交渉や解除を避けられます。査定額が一時的に下がっても、最終的な手取りは守られます。

開示の準備として、告知書(物件状況等報告書)に記載する下記のような内容を整理しておきましょう。

  • 雨漏りやシロアリ被害の有無と時期
  • 給排水管の不具合
  • 増改築の履歴
  • 心理的瑕疵に当たる事案の内容・時期・場所

記録が残っているものは資料もそろえておくと、説明が早く済むでしょう。

あとから発覚した瑕疵は、契約解除や損害賠償の原因になります。開示済みの瑕疵は査定に織り込まれるため、決済直前の突然の減額も起きにくくなります。査定額が下がったとしても、取引が確定に近づくと考えるほうが結果的に得になります。

告知が必要な事案にあたるかどうか迷う場合は、弁護士に確認しておくと安心です。判断を誤れば、売却後に契約解除や損害賠償を求められる恐れがあります。

仲介と買取を同時に進める

仲介の査定額を把握していれば、買取の提示額が妥当かどうかを比べる基準ができます。判断材料が1つしかない状態を避けるための方法です。

仲介の一般媒介契約なら複数の不動産会社に同時に依頼でき、自分で買主を見つけることもできます。専任媒介や専属専任媒介では制約があるため、並行させる前提なら一般媒介を選びましょう。

進め方は単純です。仲介で買主が付けば高く売れ、付かなければ買取に切り替えます。ただし、切り替えの期限をあらかじめ決めておかないと、判断が先送りになる恐れがあるため、「3ヵ月動かなければ買取」といった形で、着手前に線を引いておくのがおすすめです。

買取業者の提示額には有効期限が設けられることも多いため、その期限も含めて予定を組んでおきましょう。

売却の期限に余裕をもたせる

売却の期限に余裕がないと、価格を上げる手段がひとつずつ使えなくなります。

相談から価格提示まで1社あたり1週間ほどかかる場合もあるため、3社を回すと1ヵ月近くかかる可能性があります。仲介と並行して様子を見るなら、さらに3ヵ月は必要です。時間がないほど、目の前の1社で決めるしかありません。

期限が近いと知られること自体も不利に働きます。いつまでに現金が必要かを最初から明かせば、業者は下げても断られないと判断できるためです。急いでいる事情は、契約条件が固まるまで伏せておきましょう。

なお、相続した物件なら、相続税の申告・納付期限は相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月です。納税資金を売却代金でまかなうなら、期限から逆算して3ヵ月前には査定を始めましょう。

残置物は撤去せず現況渡しで交渉する

家財や家具が残っている場合、自分で処分を手配するより、業者の処分費を差し引いた条件で売るほうが手取りが多くなることがあります。

買取業者は解体や廃棄物処理の業者と継続的に取引しているため、個人が単発で依頼するより処分費を抑えられる場合があるためです。残置物の量や品目によって費用は大きく変わるため、自分で手配した場合の見積もりと、業者が示す処分費を並べて比べましょう。

比べたうえで業者に任せると決めたら、貴重品や思い出の品だけを先に引き取り、残りは現況のまま引き渡します。査定を依頼するときに、片付けずに見てほしいと伝えれば、訳あり物件を扱う業者の多くはそのまま対応します。

相続した物件で、家財の扱いを相続人の間で決めきれていない場合は、先に弁護士へ相談しましょう。遺産分割が済まないまま処分すると、あとからトラブルになるリスクがあります。

買取で失敗しないために知っておきたい注意点

訳あり物件の売却後に問題が起きるのは、契約前に確認できたはずの点を見落としたときです。本章で解説する4つの注意点を押さえておきましょう。

知っている瑕疵を隠すと売却後に責任を問われる

契約不適合責任の免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れられません。

売主が知っていて伝えなかった事実は免責の対象外になると、民法第572条で定められているためです。免責特約があるから何も伝えなくてよいという理解は、誤りにあたります。

責任を問われた場合、買主は契約の解除や損害賠償のほか、修補や代金の減額も請求できます。売却から数年後に雨漏りが発覚し、修繕費を請求されるケースもあります。

告知書(物件状況等報告書)には、把握している不具合や事案を漏れなく記載しましょう。記憶があいまいな部分は「不明」と記載し、断定を避けるのが安全です。修繕をおこなった箇所は、見積書や領収書を添えておくと説明の裏づけになります。

告知すべきか判断がつかない事案があれば、契約前に弁護士へ相談しておきましょう。隠したと受け取られれば、免責特約があっても契約を解除される恐れがあります。

三為契約では買主が別にいる場合がある

三為契約では、買取業者が売主と売買契約を結びながら、所有権の移転は受けない特約を付けます。所有権は売主から、業者が見つけた転売先へ直接移ります。

業者が転売先を確保してから決済をおこなう形になるため、転売先の資金調達や都合によって決済日が動く可能性があります。

業者が自己資金で買い取る通常の買取なら、決済日が転売先の事情に左右されません。契約前に確認したいのは、下記の3点です。

  • 契約形態が通常の買取か三為契約か
  • 決済日が確定しているか
  • 転売先の事情で決済が延びた場合にどうなるか

三為契約そのものは違法ではありませんが、決済日が確定していることを前提に資金計画を立てているなら、条件の確認は欠かせません。

売却益が出れば譲渡所得税がかかる

取得費を上回る価格で売れた場合、譲渡所得として所得税と住民税の対象になります。譲渡所得は「譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算し、所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として税率が軽くなります。

相続した空き家には、特別控除が設けられています。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例では、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円が上限です。

主な要件は下記のとおりです。

  1. 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  2. 相続時から売却時まで事業や貸付け、居住の用に供されていないこと
  3. 売却代金が1億円以下であること
  4. 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

要件をひとつでも欠けば控除は受けられません。売却の前に税務署または税理士に確認しましょう。

【参考元】No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

口頭の説明と契約書の記載が違えば契約書が優先される

署名した契約書の内容が、取引の条件になります。担当者が口頭で述べた条件は、条文に落とされていなければ効力を持ちません。「そう聞いていた」という主張は、決済後には通りにくくなります。

契約書で主に確認する項目は次の5つです。

  • 買取価格と、そこから差し引かれる費用の内訳
  • 決済日と、決済が遅れた場合の取り決め
  • 契約不適合責任に関する条項(免責の範囲と対象外になる事実)
  • 解体費・残置物処分費・測量費・登記費用の負担区分
  • 違約条項(どちらが違約した場合に、いくらの違約金が発生するか)

説明と記載が食い違っている箇所を見つけたら、署名する前に修正を求めましょう。契約書は業者側が用意しますが、内容の修正を申し入れること自体は正当な行為です。理解できない条項が残ったまま署名すると、あとから覆すのは難しくなります。

条項の意味がわからないまま署名を求められたら、弁護士に契約書を確認してもらいましょう。免責の範囲や違約金の定めは、署名後に争うより事前に直すほうが負担は軽く済みます。

訳あり物件の買取でトラブルになっているなら弁護士に相談するのがおすすめ

権利をめぐって当事者同士の意見が食い違っている場合は、買取業者より先に弁護士へ相談しましょう。権利が確定していない物件は査定の前提が整わず、業者に持ち込んでも話が止まるためです。

状況弁護士に相談する理由
共有者の一部が売却に反対している物件全体の売却には共有者全員の同意が必要で、交渉や共有物分割請求が先になる
遺産分割協議がまとまらない相続人の取り分が決まらなければ、相続登記も売却も進められない
共有者や相続人と連絡が取れない不在者財産管理人の選任など、裁判所の手続きが必要になる
借主や占有者が退去しない明渡しの交渉や訴訟を経なければ、引き渡せる状態にならない
買取業者と契約内容で対立している免責の範囲や減額の可否を、契約書と法令にもとづいて判断できる

相談先を探すときは、訳あり物件を扱う買取業者と提携している弁護士を選ぶと話が早く進みます。権利の整理と売却の出口を同時に見据えて動けるため、解決したあとに買取業者を一から探し直す手間がかかりません。

弁護士に相談する場合も、1人目の見解だけで決める必要はありません。訳あり物件は個別性が強いため、方針に迷いがあれば複数人の弁護士に意見を聞いてから進めましょう。

訳あり物件の買取に関する悩みは「ベンナビ不動産」で解決しよう

訳あり物件の売却では、共有者との対立や相続の未処理といった、先に解決すべき法律の問題が出てくる場面があります。市区町村の無料相談会や法テラスでも相談はできますが、不動産の分野に詳しい弁護士に当たるとも限らないのが実情です。

「ベンナビ不動産」は、不動産の問題を扱う法律事務所を地域と相談内容から探せるポータルサイトです。共有持分、相続した空き家、借地権といった悩みの種類で絞り込めるため、自分の状況に近い解決実績をもつ事務所を選べます。

初回相談を無料としている事務所や、電話・オンラインでの相談に対応している事務所も掲載されています。遠方の物件を抱えている方や、平日に時間を取りにくい方でも相談を進められます。

共有者と話が進まない、相続登記が終わっていない、買取業者から提示された契約書の内容に不安があるといった段階なら、売却を動かす前に相談してみましょう。

訳あり物件の買取に関するよくある質問

最後に、訳あり物件の買取に関するよくある質問と、その回答を紹介します。

Q

訳あり物件と事故物件の違いは何ですか

A

事故物件は訳あり物件の一部で、心理的瑕疵に当たるものを指します。
訳あり物件は、心理的・物理的・環境的・法的の4つの瑕疵と権利関係を含む総称です。事故物件は、なかでも人の死に関わる心理的瑕疵の通称として使われます。再建築不可物件や共有持分は事故物件ではありませんが、訳あり物件には含まれます。
どちらも法律上の定義がある用語ではありません。

Q

事故物件の告知義務は何年ですか

A

賃貸借取引では概ね3年が目安で、売買取引に期間の目安は示されていません。
国土交通省が、賃貸借取引の対象不動産などで発生した死について、事案の発生から概ね3年が経過した後は原則として告げなくてもよいとしているためです。売買では年数で線を引く目安が置かれておらず、事案の内容ごとの判断になります。
自然死や日常生活の中での不慮の死は、取引の種類にかかわらず原則として告知の対象外です。ただし、ただし自然死でも、特殊清掃や大規模リフォームが必要になった場合は告知の対象です。判断に迷う場合は、告知しておくほうが安全です。

Q

仲介で売れなかった物件でも買い取ってもらえますか

A

買い取ってもらえる可能性があります。仲介と買取では買主の性質が違うためです。仲介の買主は住むために購入するため住宅ローンの審査を通る必要がありますが、買取業者は再販するために購入するので、融資の審査に左右されません。
ただし、再販の見込みが立たない物件は専門業者でも見送る場合もあります。1社に断られた場合は、得意類型の異なる他社にも当たりましょう。

Q

買取に仲介手数料はかかりますか

A

原則としてかかりません。仲介手数料は媒介の対価であり、不動産会社が直接の買主になる買取では発生しないためです。
ただし、一定期間仲介で売却を試み、売れなければ買い取る「買取保証付き仲介」のような形態では、仲介が成立した場合に手数料が発生します。契約形態と手数料の有無は、査定を受ける段階で確認しましょう。

Q

共有名義でも自分の持分だけ売れますか

A

自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却できます。持分の処分は各共有者が単独でおこなえるためです。
ただし、物件全体を売却する場合は共有者全員の同意が必要です(民法第251条第1項)。持分のみの売却は買主が限られ、価格も全体を売る場合より低くなりがちです。共有者と対立している場合は、売却の前に弁護士へ相談しましょう。

Q

残置物やゴミがある家でも買い取ってもらえますか

A

現況のまま買い取る業者が多く、片付けずに売却できる場合があります。処分費は買取価格から差し引かれる形になります。見積書で処分費の金額を確認し、自分で手配した場合の費用と比べましょう。
業者経由のほうが単価を抑えられることが多いため、手取りで見ると現況渡しが有利になる場合があります。貴重品や思い出の品だけは、先に引き取っておきましょう。

Q

近所に知られずに売却できますか

A

買取であれば、広告を出さずに手続きを進められるのが一般的です。仲介は不動産情報サイトやチラシへの物件情報の掲載が前提になるため、近隣に売却の事実が伝わりやすくなります。
買取で人の出入りがあるのは現地調査と契約、決済のタイミングです。現地調査の日時、社名入り車両での来訪の有無、近隣への挨拶回りの要否は、事前に取り決めておきましょう。決済後の登記や解体工事の進め方も、着手前に相談しておくと安心です。

Q

査定だけ依頼して売らないこともできますか

A

査定は無料でおこなう業者が多く、依頼しても売却の義務は生じません。査定は売却の申込みではないためです。相場を知る目的だけで利用しても問題ありません。
ただし、査定後に営業の連絡が入る場合はあります。問い合わせ画面で連絡手段や連絡可能な時間帯を指定できる場合は、設定しておくと負担を抑えられます。査定額に納得できなければ、断ってもかまいません。

まとめ

訳あり物件の買取で買い叩かれないかどうかは、進める順序で決まります。

まず自分の物件がどの類型に当たるかを確定し、仲介と買取の両方から査定を取り、3社以上の提示額を「手取り額」で比べましょう。段階を踏めば、提示された金額が妥当かどうかを自分で判断できます。

権利関係が絡む場合は、不動産会社より先に司法書士や弁護士に相談しましょう。権利の整理が必要なら「ベンナビ不動産」で弁護士を探してみてください。

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監修者

新静岡駅前法律事務所 長谷川 達紀・日吉 加奈恵

所属:静岡県弁護士会

幅広い相続に関するご相談に対応し、確かな実績と経験から、依頼者様の納得のいく解決に導くよう尽力しています。不動産の相続を司法書士などと連携して一貫して対応することも可能です。