未接道物件を売却する5つの手順と必要書類、つまずきやすい点を解説
未接道の土地や戸建ては、仲介に出しても買い手が付きにくく、手放す順序がつかみにくい不動産です。
売却そのものは可能です。
売り先を選び、順を追って進めれば現金化できます。
本記事では、未接道物件を売却するまでの5つの手順を、役所での確認から引き渡しまで時系列で整理します。
事前にそろえておく必要書類、選べる売却ルート4つの違い、価格の目安とその数字の根拠も扱う内容です。
実務で話が止まりやすい5つの点についても、回避する手立てとあわせて示します。
読み終えるころには、自分の物件がどの型の未接道に当たり、次に何をすればよいのかが決まります。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
未接道物件とは接道義務を満たしていない土地のこと
未接道物件とは、建築基準法が定める接道義務を満たしていない土地をいいます。
接道義務を欠く敷地では新しい建築確認が下りないため、原則として建て替えができません。
自分の物件が該当するかどうかを決めるのは、敷地の形と接している道の性質の2つです。
建て替えができない土地は買い手が限られるため、通常の不動産と同じ売り方では買主が見つかりにくくなります。
判断のポイントは、次の3点です。
- 接道義務の数値要件
- 未接道に当てはまる敷地の形
- 建て替えができなくなる理由
見た目では道路に面していても、建築基準法上の道路ではない通路に接しているだけの敷地は珍しくありません。
逆に、細い通路の奥にある敷地でも要件を満たしている場合もあります。
そのため、判断は自己申告ではなく役所の照会結果で確定させてください。
売却の相手方も、照会の結果を前提に価格を組み立てます。
接道義務の中身は「幅員4m以上の道路に2m以上接する」こと
接道義務は、建築物の敷地が道路に2m以上接することを求める決まりです。
建築基準法43条1項は、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。
43条がいう2mは、敷地が道に触れている長さを指します。
もう一方の「幅員4m以上」という要件があるのは、43条ではなく道路の定義を置いた42条の側です。
42条は、建築基準法第3章の規定において道路とは幅員4メートル以上のものをいう、という趣旨で道路の範囲を区切っています。
つまり幅が4mに足りない通路は、そもそも建築基準法上の道路として扱われません。
2つの要件は、どちらか一方でも欠ければ接道義務を満たさない関係です。
間口が3m取れていても、接している道の幅員が3mであれば未接道です。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
未接道に当てはまる4つのパターン
未接道の敷地は、欠けている要件の違いで4つの型に分かれます。
自分の土地がどの型かによって、あとで選べる手立てが変わります。
- 道路にまったく接していない
- 道路に接する間口が2m未満
- 間口から敷地までの通路の幅が2m未満
- 接している道の幅員が4m未満
1つ目の典型が袋地(ふくろち/周囲を他人の土地に囲まれ、公道に接していない土地)です。
3つ目は旗竿地(はたざおち/細い通路の奥に敷地が広がる形の土地)でよく起こります。
2つ目と4つ目は、古い住宅地で区画が細かく分かれた地域に多く見られます。
道路にまったく接していない型と、幅が足りないだけの型では、使える手段が別物です。
前者は隣地を巻き込まないと解決しませんが、後者は敷地を後退させる方法が効く場合があります。
間口が1.8mで2mにわずかに届かない敷地であれば、隣地から数十センチ買い増すだけで要件を満たせることもあります。
未接道物件が再建築不可とされる理由
未接道の敷地で建て替えができないのは、建築確認の段階で接道義務が審査されるためです。
建物を新築したり建て替えたりするには、着工前に建築確認を受ける必要があります。
建築確認の審査で接道義務を満たさないと判断されれば、確認済証は交付されません。
未接道と再建築不可は、指している対象が別です。
未接道は敷地が置かれた状態を指す言葉で、再建築不可はその結果として生じる制限を指す言葉です。
未接道であることがわかれば、再建築不可である可能性が高いと見当が付きます。
なお、再建築不可になる原因は未接道だけではありません。
市街化調整区域にある土地や、災害の危険がある区域に指定された土地も建て替えの制限を受ける対象です。
本記事は、未接道を原因として再建築ができない物件の売却を扱います。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
未接道物件の売却は5つのステップで進める

未接道物件の売却では、方法を選ぶ前に順序があります。
売り方の選択肢だけを先に並べても、自分の敷地の条件が固まっていないため決められません。
進め方の骨格は、次のとおりです。
- 役所での照会
- 資料の収集
- 建て替えの可否の判断
- 売却ルートの選択
- 契約と引き渡し
最初の役所での確認を飛ばすと、あとの判断がやり直しになります。
道路の種別が分からないまま買い増しの交渉を始めたり、査定を依頼したりしても、前提が変われば結論も変わるためです。
実際に、幅員4m未満の道路だと思って敷地の後退を検討していたところ、照会の結果そもそも道路に当たらないと判明する例があります。
全体では、数週間から数ヵ月かかる幅があります。
隣地との交渉や行政への申請を挟む場合は、半年から1年以上が見込みです。
急いで現金化したい事情があるなら、改善を試みずに買取へ進む判断もあります。
STEP1 役所で道路の種別と接道の状況を確かめる
最初にすることは、市区町村の窓口で道路の種別を照会することです。
窓口は建築指導課と道路管理課に分かれており、建築指導課では接している道が建築基準法42条の何項に当たるかを確認できます。
道路管理課では、接している道の管理者が誰なのかを確かめられます。
幅員を調べる資料は、道路台帳や指定道路図です。
閲覧は窓口のほか、自治体によっては地図情報のサイトでも可能です。
図面上の幅員と現況の幅員が食い違う場合もあるため、両方を照らし合わせます。
注意したいのは、見た目が道路でも建築基準法上の道路ではない通路がある点です。
私有地を長年通路として使っているだけの場合、幅が4mあっても道路には当たりません。
照会の結果は、後の交渉と査定の前提になります。
STEP2 登記と境界の資料をそろえる
次に、法務局で登記事項証明書、公図、地積測量図の3点を取得します。
登記事項証明書では名義と抵当権の有無を、公図では周囲の土地との位置関係を、地積測量図では面積と形状を確かめられます。
見落とせないのが、境界が確定しているかどうかです。
境界が未確定のままだと、隣地との買い増し交渉も、買取業者の査定も途中で止まります。
買主は、引き渡し後に隣地から異議が出る事態を避けたいためです。
そろえる書類は、法務局のもの、役所のもの、手元で用意するものの3か所に分かれます。
登記事項証明書は法務局で1通600円、公図と地積測量図は1通450円の手数料がかかります。
取得には日数もかかるため、早めに動いてください。
STEP3 再建築できる余地があるかを見きわめる
資料がそろったら、手を入れて再建築可能にできる敷地かどうかを判断します。
使える手立ては、隣地の一部を買い増す方法、敷地を後退させる方法、43条2項の認定または許可を受ける方法の3つです。
3つは効く前提条件が違います。
隣地の買い増しは相手の同意が要り、敷地の後退は接している道が幅員4m未満の道路である場合に限られます。
43条2項の手続きに求められるのは、敷地の周囲に広い空地があるなどの基準です。
見込みは、特定行政庁への事前相談で聞けます。
窓口では、包括同意基準に当てはまるかどうかの感触も得られます。
改善には時間と費用がかかる点も見落とせない要素です。
かけた分を売却価格の上昇で回収できるかどうかが判断の分かれ目です。
STEP4 売却ルートを決めて査定を取る
改善の見込みがわかったら、売り先を決めて査定を依頼します。
売り先の候補は、隣地の所有者、仲介を通じた一般の買主、訳あり物件を扱う買取業者の3系統です。
どこに当たるかで、価格も期間も買主の性質も変わります。
査定は、金額だけを見て決めるものではありません。
引き渡しまでの期間、契約不適合責任を負うかどうか、境界の確定を求められるかどうかといった条件も、同時に比べる対象です。
依頼先は2社以上に分散させます。
未接道の評価は事業者ごとの再販の見立てで差が出やすく、1社だけでは水準の判断が付かないためです。
同じ敷地でも、隣地との一体化を想定できる事業者は高めの数字を出します。
査定額に開きがあるときは、算定の根拠を聞いて比べます。
STEP5 契約から引き渡しまで進める
最後は契約と引き渡しです。
契約書には、再建築ができない土地である旨を明記します。
伝えずに売却すると、引き渡し後に契約不適合責任を問われる可能性があります。
買取業者に売る場合は、契約不適合責任を免除する取り決めを置くのが一般的です。
事業者は現況を前提に価格を決めているため、売主が引き渡し後の責任を負わない形にできます。
仲介で一般の買主に売る場合は、免除の取り決めが付かないこともあります。
引き渡しまでの期間は、ルートによってまちまちです。
買取であれば数週間で終わることもありますが、仲介では買主が見つかるまでの時間が読めません。
隣地との交渉を挟むと、さらに長引きます。
決済と引き渡しの日程が確定するのは、買主の資金の準備が整ってからです。
未接道物件の売却でそろえておく必要書類
未接道物件の売却では、通常の不動産より道路まわりの資料が重く効きます。
買主も事業者も、再建築ができるかどうかを資料で確かめてから価格を決めるためです。
口頭で「再建築できるはずだ」と説明しても、書面の裏付けがなければ価格には反映されません。
そろえる書類は、法務局で取る書類、役所で取る書類、手元で用意する書類の3か所に分かれます。
取得先ごとに整理したものが次の表です。
| 取得先 | 書類名 | 何を示すか |
|---|---|---|
| 法務局 | 登記事項証明書 | 名義・抵当権の有無 |
| 法務局 | 公図 | 周囲の土地との位置関係 |
| 法務局 | 地積測量図 | 面積と形状 |
| 役所 | 道路種別の照会結果 | 接している道の法的な扱い |
| 役所 | 指定道路図・道路台帳 | 幅員と道路の位置 |
| 役所 | 建築計画概要書 | 過去の建築確認の履歴 |
| 役所 | 固定資産税の課税明細 | 評価額と課税地目 |
| 手元 | 建物の図面 | 建物の構造と間取り |
| 手元 | 通行に関する取り決めの書面 | 出入りの権利関係 |
取得には手数料と日数がかかります。
登記事項証明書は法務局の窓口で1通600円、公図と地積測量図は1通450円です。
役所の書類は無料で閲覧できるものもありますが、写しの交付には手数料がかかります。
売却を決めてから集め始めると査定が遅れるため、検討の段階で動いておくと進みが速くなります。
法務局でそろえる書類
法務局では、登記事項証明書、公図、地積測量図の3点を取得します。
登記事項証明書は、名義人が誰か、抵当権が残っていないかを示す書類です。
売却の交渉に入る前に、名義の状態を確かめておきます。
公図は、対象の土地と周囲の土地の位置関係を描いた図面です。
隣地の一部を買い増す交渉をする際には、どの土地の誰に当たればよいかを公図から読み取ります。
地積測量図は、面積と形状を示す図面で、間口の長さの確認にも使います。
地積測量図が備え付けられていない土地もある点は要注意です。
古くから区画が変わっていない土地では、法務局に図面が存在しない場合があります。
相続した物件で登記名義が亡くなった方のままだと、売却の手続きに進めません。
役所でそろえる書類
役所では4種類の書類を集めます。
道路種別の照会結果、指定道路図、建築計画概要書、固定資産税の課税明細です。
中でも売却の結果を左右するのが、道路の種別です。
接している道が42条2項の道路なのか、そもそも道路に当たらない通路なのかで、取れる手立てと価格の水準が変わります。
建築計画概要書は、過去にその敷地で建築確認を受けた記録を追える書類です。
既存の建物が建築確認を受けて建てられたのか、それとも確認を受けずに建てられたのかを確かめられます。
買主にとっては、建物の素性を確かめる材料になります。
過去に43条2項の認定や許可を受けていれば、認定書や許可書も資料です。
許可の内容と条件を併せて示さないと、買主が誤解する原因になります。
課税明細は、評価額と課税地目を確かめるために使います。
手元で用意する書類
手元で整えるのは、建物の図面、通行に関する取り決めの書面、過去の測量や工事の記録です。
建物の図面は、構造と間取りを示すもので、買主がリフォームの可否を判断する材料になります。
未接道の物件は建て替えができないため、既存の建物をどこまで使えるかが価格に効きます。
通行に関する書面は、私道を通って出入りする敷地では特に重要です。
通行承諾書や掘削承諾書があるかどうかで、買主の判断が変わります。
書面がないまま長年通行してきた敷地も少なくありません。
書面が見つからない場合でも、経緯を時系列で整理しておいてください。
いつから誰の土地を通っているのか、過去に異議を受けたことがあるのかを書き出しておきます。
口頭の経緯でも、記録があれば買主の不安を減らせます。
未接道物件の売却ルートは4つに分かれる
未接道物件の売り先は、大きく4つに分かれます。
どれが向いているかは、急いでいるか、費用をかけられるか、隣地と話ができるかの3つで決まります。
4つのうち3つは相手の同意や行政の判断を必要とするため、自分の意思だけで完結しない方法です。
裏を返せば、自分だけで完結するのは買取業者に売る方法だけです。
| 売却ルート | 価格の目安 | 期間の目安 | 向いている条件 |
|---|---|---|---|
| 隣地の所有者に売る | 高め | 数ヵ月〜1年 | 隣地と話ができる |
| 隣地を買い増して売る | 高め | 半年〜1年以上 | 費用をかけられる |
| 43条2項の許可を得て売る | 高め | 半年〜1年以上 | 基準に当てはまる |
| 買取業者に売る | 低め | 数週間〜1ヵ月 | 早く手放したい |
表のとおり、価格が上がるルートほど時間と手間がかかります。
隣地の同意や行政の判断という、自分では動かせない要素が挟まるためです。
逆に取引の速さを優先するなら、現況のまま買い取ってもらう方法になります。
複数のルートを同時に進めることも可能です。
隣地に打診しながら買取の査定を取っておけば、交渉が不調に終わっても手が止まりません。
隣地の所有者に売る
隣地の所有者に売る方法は、価格が付きやすいルートです。
買い手にとっては土地が広がり、自分の敷地と一体にすることで接道の条件を満たせる場合があるためです。
使う理由を持った買い手に売れるのは、未接道の売却では大きな利点になります。
打診は、不動産会社を通じて行うのが穏当です。
直接持ちかけると、価格の交渉が関係の話にすり替わりやすく、断られたあとの付き合いにも影響します。
第三者を挟めば、条件だけを淡々と詰められます。
一方で、交渉が長引く点は織り込んでおくべき前提です。
隣地の所有者に買う意思がなければ話は進みませんし、資金の都合が付かない場合もあります。
数ヵ月かけて断られる展開もあるため、並行して他のルートも検討しておきます。
隣地の一部を買い取ってから売る
隣地の一部を買い取って間口を広げる方法もあります。
接道の長さが2mに届いていない敷地であれば、足りない分だけ隣地を買えば接道義務を満たせます。
再建築ができる土地になれば、価格の水準は別物です。
かかるのは買収の費用だけではありません。
買い取る部分を切り分ける分筆登記の費用、境界を確定させる測量の費用、所有権移転登記の費用が加わります。
測量と登記だけでも数十万円が目安です。
判断の分かれ目は、かけた費用を売却価格の上昇で回収できるかどうかです。
周辺の相場が高い地域であれば見合いますが、地価の低い地域では持ち出しになる場合もあります。
買い増しの交渉に入る前に、改善後の想定価格を査定で確かめておきます。
43条2項の認定・許可を得てから売る
行政の判断を受けて再建築できるようにする方法もあります。
建築基準法43条2項には2つの入口があり、1号は特定行政庁の認定、2号は建築審査会の同意を得たうえでの許可です。
手続きの重さが違うため、どちらに当たるかで見通しが変わります。
流れは、特定行政庁への事前相談から始まります。
相談で見込みを確かめたうえで、必要な書類を提出する順序です。
申請書、図面、現況写真、権利関係を示す書類などが求められます。
2号の許可では、提出後に建築審査会の審査を経ます。
ただし、認められる保証はない点が前提です。
基準に当てはまっているように見えても、許可が出ない場合があります。
申請の結果を待つ間に売却の機会を逃さないよう、他のルートも並行して用意しておきます。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
訳あり物件を専門に扱う買取業者に売る
現況のまま売る方法が、訳あり物件を扱う買取業者への売却です。
事業者は再販や活用の見込みを立てたうえで買い取るため、未接道であっても値段が付きます。
隣地との交渉も行政への申請も、売主が抱え込まずに済みます。
価格が下がるのは、事業者が再販までのリスクと費用を引き受けるためです。
買い取ったあとに隣地と交渉したり、活用の方法を組み立てたりする手間を、価格の差で吸収しています。
向いているのは、隣地と話が付かない場合や、早く手放したい場合です。
相続で引き継いだ物件を共有者の間で早く清算したい場合にも合います。
遠方に住んでいて現地の管理が難しい場合も同様です。
価格の高さだけでなく、取引が成立する見込みと手間の少なさを含めて比べると判断しやすくなります。
未接道物件に関する悩みは「ベンナビ不動産」で解決しよう
5つの手順を踏んでも、自分の物件がいくらになるのかはわかりません。
未接道の評価は、複数の条件の組み合わせで決まるためです。
道路の種別、間口の長さ、隣地の状況、建物の傷み具合が価格に影響します。
一般論の相場を読んでも、価格の幅のどこに当たるかまでは見当が付きません。
ベンナビ不動産が受け付けているのは、訳あり不動産の無料査定と買取の相談です。
未接道の土地や戸建て、共有持分、空き家といった、仲介では扱いにくい不動産が対象です。
現況のまま、値段と引き渡しの条件を確かめられます。
権利関係が絡む場合も相談できます。
通路の取り決めがはっきりしない、相続の登記が済んでいないといった事情があるときは、提携する弁護士・司法書士と連携して進める体制です。
ベンナビ不動産では、買取が成立した場合の弁護士費用と登記費用を0円としています。
費用の負担範囲や対応の可否は物件の状況によって異なるため、実際の条件は相談時にご確認ください。
査定だけの利用もでき、依頼するかは見積もりを見てから決められます。
未接道物件の価格は市場価格の5割〜7割が目安
未接道物件の売却価格は、同じ地域の通常の物件と比べて5割〜7割の水準が目安とされます。
5割〜7割という数字は買取事業者や不動産会社が公表している目安であり、公的な統計に基づくものではありません。
相場を示す記事は多いものの、出どころをたどれば各社の取引実感が根拠です。
価格の考え方を整理すると、次のようになります。
| 比較の対象 | 目安 | 根拠の出どころ |
|---|---|---|
| 通常の物件との比較 | 50%〜70% | 各社の公表値 |
| 道路に接していない敷地 | さらに下がる傾向 | 各社の公表値 |
| 相続税の評価での減価 | 40%が控除の上限 | 国税庁 |
幅が広いのは、道路の種別と改善の見込みで差が出るためです。
43条2項の認定が見込める敷地と、周囲を完全に囲まれた袋地では、買い手が想定できる出口が違います。
前者は再建築できる土地に変わる可能性があるため、事業者は上振れを織り込んで価格を出します。
後者に値段が付くのは、既存の建物を使う前提の場合だけです。
各社が公表する目安は市場価格の50%〜70%
複数の買取事業者と不動産会社が、未接道物件の価格の目安として市場価格の50%〜70%という水準を公表しています。
同じ地域の通常の物件が3,000万円で取引されている場合、1,500万円〜2,100万円が目安という説明です。
同じ未接道でも、幅の中での位置は条件で動きます。
間口が1.8mで2mにわずかに届かない敷地と、四方を他人の土地に囲まれた袋地では、買い手の見立てが変わります。
前者は隣地から数十センチ買い増せば解決する見込みがあるためです。
示した水準はあくまで目安であって、査定額の約束ではありません。
価格は、建物の状態や隣地の所有者の意向によって上下します。
目安は検討の入口として使い、判断の材料には査定額を使ってください。
買取の相場に公的な統計は存在しない
未接道物件の買取価格を集計した公的な統計は、国や自治体から公表されていません。
国土交通省が公表する地価公示や不動産価格指数は、通常の取引を対象としており、未接道という条件で切り出した数字は含まれていません。
そのため、記事ごとに示される相場の数字はまちまちです。
「5割〜7割」と書く記事もあれば「3割〜5割」と書く記事もありますが、いずれも各社が扱った取引の実感に基づく目安です。
出どころを確かめずに数字だけを受け取ると、判断を誤ります。
自分の物件の値段は、査定でしかわかりません。
相場の記述は、査定額が極端に低い場合に気付くための目盛りとして使うのが現実的な向き合い方です。
複数社から査定を取れば、目安の数字よりも実態に近い水準をつかめます。
相続税の評価では通路開設費用の控除に40%の上限がある
価格の目安に公的な統計はありませんが、公的な制度が価格の下落をどこまで認めているかは確かめられます。
相続税の財産評価では、無道路地について通路を開くのに必要な費用を差し引く扱いがあります。
国税庁による無道路地の定義は、「道路に接していない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む)」です。
そのうえで、接道義務に基づいて最小限度の通路を開設する場合の費用に相当する金額を差し引くとしており、控除できる金額はその価額の40%の範囲内にとどまります。
相続税の評価額と実際の売買価格は別物です。
それでも、公的な制度が通路の欠如による価格の下落を4割までと区切っている点は、価格感を確かめる際の手がかりになります。
市場で5割以上の値下がりが生じるのは、税の評価にはない買い手の少なさが加わるためです。
未接道物件の売却でつまずきやすい5つの点

手順どおりに進めても、途中で止まる箇所があります。
未接道の売却では、自分の判断だけでは動かせない要素が複数挟まるためです。
判断に関わるのは4者です。
隣地の所有者、通路の共有者、建築審査会、買主の金融機関がそれぞれ別の段階で登場します。
止まりやすいのは、次の5つです。
- 敷地を後退させる方法の適用範囲
- 建築審査会の同意
- 認定や許可の引き継ぎ
- 通路の共有者の同意
- 買主の住宅ローン
いずれも、役所への事前相談と書面の確認によって早い段階で把握できます。
契約の直前に発覚すると手戻りが大きくなるため、資料をそろえる段階で見ておきます。
特に買主の資金の裏付けは、契約の直前まで見えないまま進みやすい項目です。
5つのうち前半の3つは行政の手続きに関わるもので、後半の2つは相手方の事情に左右されます。
前者は事前相談で見通しを立てられますが、後者は契約条件の組み方で備えます。
セットバックで解決できる物件は限られる
敷地を後退させて道路の幅を確保する方法は、セットバックと呼ばれます。
セットバックが効くのは、接している道が幅員4m未満の道路として扱われている場合に限られます。
道の中心線から2mの位置まで敷地を下げることで、幅員4mを確保する仕組みだからです。
道路にまったく接していない敷地では、敷地を後退させても要件を満たせません。
袋地のように周囲を他人の土地で囲まれている場合、下がる先に道路がないためです。
袋地では、隣地を巻き込む方法か行政の判断を受ける方法に絞られます。
自分の物件がどのパターンに当たるかで、使える手立てが決まります。
役所で照会した道路の種別が、そのまま手段の選択を決める材料です。
敷地を後退させる場合は、下げた部分に建物や塀を建てられなくなる点も織り込んでおきます。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
43条2項2号の許可には建築審査会の同意が必要になる
43条2項2号の許可は、行政の判断だけで出るものではありません。
条文は、敷地の周囲に広い空地をもつ建築物などを対象としています。
特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上の支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可したものが対象です。
同意という手続きが挟まる点が、1号の認定との違いです。
自治体によっては、包括同意基準を設けています。
基準に当てはまる案件であれば、個別に審査会にかけずに処理できるため、手続きが軽くなります。
窓口で、自分の敷地が基準に当てはまるかどうかを確かめておいてください。
基準を満たしているように見えても、許可が出ない場合があります。
避難や消防活動の観点から総合的に判断されるためです。
申請の結果を前提に売却の予定を組むと、下りなかったときに動けなくなります。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
認定・許可は建築計画ごとの判断で自動的には引き継がれない
43条2項の認定や許可は、土地そのものに恒久的に付く資格ではありません。
個別の建築計画に対する判断であるため、買主が別の建物を建てようとすれば、あらためて手続きが必要になります。
許可を受けたあとも、建築確認の申請は別途必要です。
許可と建築確認は目的の違う手続きで、許可が出たからといって着工できるわけではありません。
買主にこの2段階を伝えておかないと、認識の食い違いが起こります。
売買の際は、許可の内容と付された条件を書面で共有してください。
「許可済み」とだけ伝えると、買主は自由に建て替えられると受け取ります。
条件の中に建物の規模や用途の制限が含まれている場合は、制限の内容も明示します。
認識の食い違いは、引き渡し後の紛争の火種です。
通路の共有者全員の同意を求められることがある
出入りに使う道が私道で、複数人の共有になっている敷地があります。
私道が共有の場合、43条2項の申請にあたって共有者全員の同意を求める自治体があります。
通路の維持や工事に関わるため、関係者の合意を前提とする運用です。
同意を集める作業は、想定より重くなりがちです。
共有者が相続で増えていて連絡先が分からない、遠方に住んでいて話が進まない、過去の経緯から協力を得にくいといった事態が起こります。
1人でも同意が得られなければ、申請そのものが進みません。
権利関係が入り組んでいる場合は、専門家と組んで進めるのが現実的です。
共有者の所在を調べる作業や、合意の内容を書面にまとめる作業は、司法書士や弁護士が扱う領域です。
同意が集まらないまま時間だけが過ぎる状況を避けられます。
買主が住宅ローンを使えず契約が流れる
未接道の物件は、金融機関の担保評価が低くなります。
再建築ができない土地は、貸したお金を回収できなくなったときに売却しにくいと見られるためです。
その結果、買主が住宅ローンの審査に通らない事態が起こります。
買い手は、現金で購入できる層や投資家に絞られます。
母数が小さいため、仲介に出しても買主が見つかるまでの時間は読めないままです。
売れ残ると値下げが重なり、結果として買取業者の提示額と変わらない水準まで下がる例もあります。
契約にローン特約が付いている場合、審査に通らなければ契約は白紙に戻ります。
売主に残るのは、失った時間だけです。
買主の資金の裏付けを契約前に確かめておくと、白紙解約の空振りを減らせます。
現金での購入であれば、審査による破談は起こりません。
未接道物件を売らずに持ち続けたときに起きること
売却を先送りしても、負担は続きます。
使っていない不動産でも保有には費用がかかり、時間が経つほど選択肢が減っていきます。
未接道の物件は買い手が限られるぶん、条件が悪くなってから動き始めると出口はさらに狭くなる一方です。
持ち続けた場合に起きるのは、次の3つです。
- 税の負担の継続
- 管理不全空家の指定
- 共有者の増加
いずれも、時間の経過とともに解消が難しくなります。
税の負担は毎年積み上がり、建物の傷みは管理の手間を増やし、相続は関係者の数を増やします。
3つは互いに絡み合っており、放置の期間が長いほど同時に悪化する関係です。
建物が傷めば買い手はさらに絞られ、共有者が増えれば売却の意思決定も遅くなる一方です。
未接道の物件は買い手の母数がもともと小さいため、条件の悪化がそのまま出口の消滅につながります。
負担が増える前に出口を決める意味があります。
使っていなくても固定資産税がかかり続ける
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課されます。
住んでいるかどうか、使っているかどうかは関係ありません。
市街化区域にある土地であれば、都市計画税も併せて課税対象です。
住宅が建っている土地には、住宅用地の特例が適用されています。
面積200平方メートルまでの部分については、固定資産税の課税標準が6分の1に軽減される仕組みです。
空き家であっても建物が建っていれば、住宅用地の特例による軽減を受けられます。
保有を続けるかどうかは、毎年の税負担と管理の手間を、売却で得られる金額と並べて比べると判断しやすくなります。
10年持ち続ければ、税負担の合計は無視できない金額です。
遠方の物件では、現地へ出向く交通費も加わります。
管理不全空家に指定されると税の軽減が外れる
空家等対策の推進に関する特別措置法は、放置された空き家への対応を定めた法律です。
2023年の改正で、特定空家に至る前の段階として管理不全空家の区分が設けられました。
窓が割れている、雑草が生い茂っているといった状態が対象です。
管理不全空家に指定され、市区町村から勧告を受けると、住宅用地の特例が外れます。
課税標準の軽減がなくなるため、土地の固定資産税は大きく上がります。
軽減が外れるのは指定の段階ではなく、勧告を受けた段階です。
未接道の敷地は、工事車両や資材が入りにくい立地にあります。
修繕も草刈りも通常より手間と費用がかかるため、管理が滞りやすい敷地です。
放置の期間が長いほど、指定を受ける可能性が高まります。
【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov 法令検索
相続が重なると共有者が増えて売りにくくなる
不動産を共有で持っている場合、売却には共有者全員の同意が必要です。
1人でも反対すれば、不動産を丸ごと売ることはできません。
未接道の物件は買い手が限られるため、同意を得る難度がさらに上がります。
名義人が亡くなるたびに、相続人は新たに増える一方です。
当初は兄弟2人の共有だったものが、次の世代では甥や姪を含む6人になるといった増え方をします。
世代が下るほど、連絡が取れない相続人や面識のない相続人が出てきます。
2024年4月からは相続登記が義務化され、期限は不動産を取得したことを知った日から3年以内です。
登記を放置したまま世代が進むと、名義をたどる作業から始めることになります。
戸籍を集めて相続人を確定させるだけで、数ヵ月かかる場合もあります。
未接道物件の売却でトラブルになっているなら弁護士に相談するのがおすすめ
未接道物件の売却では、法律の判断が絡む場面で足が止まります。
私道の通行や掘削の承諾が得られない状態、共有者の一部と連絡が取れない状態は、当事者だけのやり取りでは動きません。
隣地との境界で認識が食い違っている場合や、相続登記が終わっていない場合も同じです。
承諾や合意が取れないまま売りに出しても、買主が付ける値は不確実な部分を差し引いた金額です。
弁護士に相談すれば、相手方との交渉や調停、共有物分割の手続きまで任せられます。
ベンナビ不動産は弁護士や司法書士と連携した買取会社に相談できる窓口のため、権利関係の整理と査定を同時に進められます。
未接道物件の売却についてよくある質問
未接道物件はそもそも売却できますか
売却できます。
建て替えができないことと、所有権を売買できるかどうかは別の話であり、法律上の制限はありません。
買い手の中心は、現金で購入できる層や訳あり物件を扱う事業者です。
そのため、売り方の工夫が必要になります。
売却までにどのくらいの期間がかかりますか
ルートによって幅があります。
買取業者に売る場合は数週間で終わることもありますが、仲介では買主が見つかるまで数ヵ月以上かかる例があります。
隣地との交渉や43条2項の申請を挟むと、半年から1年以上が見込みです。
期間を優先するか価格を優先するかで、選ぶルートが変わります。
43条2項の申請にはどのくらい費用がかかりますか
自治体に納める手数料のほか、図面の作成を設計事務所に依頼する場合はその報酬がかかります。
金額は自治体と敷地の条件によって幅があるため、事前相談の際に確かめます。
申請しても認められない場合があり、費用は先行して負担する形です。
隣地の所有者と面識がなくても打診できますか
打診できます。
面識がなくても、不動産会社を通じて条件を伝える形であれば話を始められます。
直接持ちかけると関係がこじれる場合があるため、第三者を挟む方法が穏当です。
打診の経緯を記録に残しておくと、後の交渉で役立ちます。
売却したときに税金はかかりますか
売却益が出た場合に譲渡所得税がかかります。
売却価格が取得費と譲渡費用の合計を下回れば、課税されません。
相続した物件では被相続人の取得費を引き継ぎますが、取得費がわからない場合は売却価格の5%を概算取得費とする扱いです。
まとめ|未接道物件の売却は道路種別の照会から始めて4ルートで選ぶ
未接道物件の売却は、役所で道路の種別を照会するところから始まります。
そのうえで登記と境界の資料をそろえ、再建築できる余地を見きわめ、売却ルートを決めて査定を取り、引き渡しに進みます。
売り先は4つです。
隣地の所有者、隣地の買い増し、43条2項の許可取得、買取業者から選びます。
途中で止まりやすいのは5点です。
敷地の後退が効かない、建築審査会の同意が得られない、許可が買主に引き継がれないという3点に、通路の共有者の同意と買主の住宅ローンが加わります。
資料をそろえる段階で確かめれば、手戻りを減らせます。
価格の目安は市場価格の5割〜7割とされますが、公的な統計はなく、実際の金額は敷地の条件しだいです。
ベンナビ不動産の無料査定であれば、現況のまま値段と引き渡しの条件を確かめられます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。