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囲繞地とは?袋地との違いや通行権のルールとトラブル回避策を解説
相続した土地について、隣の家から「公道に出られないので通らせてほしい」と言われて戸惑っていませんか。
囲繞地(いにょうち)とは公道に通じていない土地を取り囲んでいる周囲の土地をいいます。
囲まれている側の土地は袋地と呼ばれ、袋地の所有者には民法210条が囲繞地を通行する権利を認めています。
囲繞地の所有者にとって、袋地からの通行を一方的に拒むのは不可能です。
囲繞地と袋地の違い、通行権で認められる範囲、通行料の決め方を順に整理します。
通路や車の通行で起きやすいトラブルと、囲繞地を手放すときの選択肢も対象です。
読み終えるころには、自分の土地がどちらに当たるかを判定でき、隣地との取り決めを書面にするか売却に進むかを選べます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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囲繞地とは袋地を取り囲んでいる周囲の土地のこと

囲繞地は「いにょうち」と読み、袋地と対になって使われます。
まずは囲繞地・袋地・準袋地の3語を切り分け、自分の土地がどれに当たるかを判定しましょう。
| 用語 | 意味 | 公道への接し方 | 建物の建築 |
|---|---|---|---|
| 囲繞地 | 公道に通じない土地を取り囲んでいる周囲の土地 | 公道に接している | できる |
| 袋地 | 他の土地に囲まれて公道に接していない土地 | 公道に接していない | 原則としてできない |
| 準袋地 | 川や崖に隔てられて公道へ直接出られない土地 | 形のうえで接する場合もある | 原則としてできない |
囲繞地|公道に通じない土地を取り囲んでいる周囲の土地
囲繞地とは、公道に通じていない土地を取り囲んでいる周囲の土地をいいます。
自分の土地が公道に接していて、なおかつ奥の土地が公道に出られない配置であれば、囲繞地に当たります。
囲繞地の所有者は、袋地の所有者を敷地内に通す立場です。
通行を認める義務は法律から直接生まれるため、隣地と契約を結んでいなくても発生します。
囲繞地は1筆とは限りません。
袋地が三方や四方を別々の所有者の土地に囲まれている場合、囲んでいる土地すべてが囲繞地です。
袋地の所有者は、囲んでいる土地のなかから通行する経路を選びます。
囲繞地であるかどうかは、登記事項証明書を見てもわかりません。
土地の配置を示す資料は法務局で取得できる公図です。
公図と現地の状況を照らし合わせれば、奥の土地が公道に接しているかを確かめられます。
まずは公図を取り寄せて、隣地との位置関係を確認してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
袋地|他の土地に囲まれて公道に接していない土地
袋地とは他の土地に囲まれて公道に接していない土地をいいます。
「ふくろち」と読み、無道路地と呼ばれる場合もあります。
袋地が抱える最大の問題は、建物を建てられない点です。
建築基準法43条1項は、建築物の敷地が道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。
公道に接していない袋地では、接道の条件を満たせません。
条件を満たせない土地は、原則として建て替えが不可能です。
袋地は再建築不可物件の一種として扱われるため、周辺の相場より価格が下がります。
現に建っている建物は修繕やリフォームができるものの、取り壊して新築する場合は、建築基準法43条2項にもとづく特定行政庁の認定または許可が必要になります。
自分の土地が袋地に当たるかどうかは、市区町村の建築指導課で確かめてください。
前面の通路が建築基準法上の道路として扱われているかを聞けば、接道の条件を満たすかがはっきりします。
通行の取り決めが絡む場合は、弁護士に見通しを聞くと安全です。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
準袋地|川や崖に隔てられて公道へ直接出られない土地
準袋地とは池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に出られない土地、または崖があって公道と著しい高低差がある土地をいいます。
民法210条2項は、準袋地の所有者にも袋地と同じ通行権を認めています。
他の土地に完全に囲まれていなくても、水路や崖が実際の出入りを妨げていれば救済の対象です。
崖の場合は「著しい高低差」があるかどうかが分かれ目です。
数十センチの段差では認められにくく、階段や擁壁がなければ上り下りできない程度の差が求められます。
判断に迷う場合は、現地の写真と測量図をそろえて弁護士に相談してください。
準袋地に隣接する土地の所有者は、囲繞地の所有者と同じ立場に立ちます。
通行を求められたら、袋地のケースと同じルールで場所と方法を話し合います。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
現在の民法に「囲繞地」という言葉は残っていない
民法の条文を検索しても、囲繞地という語は出てきません。
民法210条の見出しは「公道に至るための他の土地の通行権」で、条文中では、袋地を囲んでいる他の土地という表現が使われています。
そもそも囲繞地は、条文に置かれていた言葉ではなく、判例と実務のなかで定着した呼び方です。
2004年の民法改正で文語体が現代語に改められた際、旧210条の「囲繞セラレテ」「囲繞スル」も「囲まれて」「囲んでいる」に置き換わりました。
制度そのものは変わっていません。
一方、不動産の実務では囲繞地と囲繞地通行権の呼び方が今も広く使われています。
不動産会社の説明資料や重要事項説明書にも登場するため、用語だけは押さえておいてください。
条文を自分で確かめたい場合は、民法210条から213条までをまとめて読んでください。
通行権の内容・通路の選び方・通行料・分割で生じた袋地の扱いが、4つの条文に分かれて定められています。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
囲繞地と袋地の違いは通行させる側か通行する側かで決まる
囲繞地と袋地は、同じ状況を反対の立場から見た言葉です。
囲繞地は通行させる側、袋地は通行する側を指します。
| 項目 | 囲繞地 | 袋地 |
|---|---|---|
| 公道との関係 | 公道に接している | 公道に接していない |
| 通行権 | 通行を認める義務を負う | 通行する権利を持つ |
| 建物の建築 | できる | 原則としてできない |
| 通行料 | 受け取れる場合がある | 支払う場合がある |
| 売却のしやすさ | 通路の負担があると下がる | 買い手が限られる |
囲繞地は建物を建てられる分だけ条件がよいものの、負担は残ります。
通路として使われる部分には塀や物置を置けず、駐車場としても使いにくい土地です。
実際に使える面積が減るため、評価額も下がります。
自分がどちらの立場かで、取るべき行動は変わります。
囲繞地の所有者なら通行の範囲と通行料を決める話し合いが先です。
袋地の所有者なら、通行権が認められる範囲の確認から始めてください。
売却を視野に入れている場合も、立場によって選べる方法が変わります。
囲繞地なら隣の袋地を買い取る道があり、袋地なら囲繞地の一部を譲ってもらう道があります。
どちらも隣地の協力が前提になるため、関係が良好なうちに切り出しましょう。
囲繞地通行権は民法210条が袋地の所有者に認めた通行の権利
囲繞地通行権は、袋地の所有者が公道に出るために囲繞地を通れる権利です。
範囲・対価・登記の3点について、条文がどこまで定めているかを順に見ていきます。
通行できる場所と方法は損害が最も少ないものに限られる
通行権が認められても、袋地の所有者が好きな場所を自由に通れるわけではありません。
民法211条1項は、通行の場所と方法について2つの条件を課しています。
通行権を持つ人にとって必要な場所と方法であり、なおかつ囲繞地の損害が最も少ない点の2つです。
同条2項は、必要があるときに通路を開設できるとも定めています。
土のままでは通れない場所なら、砂利を敷いたり舗装したりする工事が認められます。
通路の幅は、法律に定めがない事項です。
建築基準法43条が求める2メートルが当然に確保されるわけでもありません。
徒歩で足りるか車が入る幅まで必要かは、袋地の使われ方で変わります。
通路の位置は囲繞地の所有者からも提案できるため、希望があれば早めに伝えてください。
庭の中央を横切る経路より、敷地の端を通る経路のほうが損害は小さくなります。
先に提案しておけば、不利な場所を求められる事態を避けられます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
通行料は1年ごとの分割で支払ってもらえる
民法212条は、通行権を持つ人に対して償金の支払いを義務づけています。
償金とは通行によって囲繞地に生じる損害への対価です。
ただし、通路を開設したときに生じた損害への償金は例外で、一括で支払われます。
通路を開設した損害以外の償金については、1年ごとの分割払いが認められています。
地代を毎年受け取る形に近く、囲繞地の所有者にとっては継続的な収入です。
金額の基準は法律にありません。
近隣の地代の水準、通路として使われる面積、通行の頻度を材料に、当事者どうしで決めるのが実務です。
固定資産税の負担割合を目安にする例もあります。
支払いが滞っても、囲繞地の所有者が通行を止める行為は違法です。
取り立てのために通路をふさげば、逆に妨害として責任を問われます。
金額と支払い時期を覚書にまとめ、書面で請求してください。
支払いに応じてもらえない状態が続くなら、弁護士に督促を任せる方法もあります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
土地の分割で生じた袋地は無償で通行できる
通行料を受け取れない例外があります。
民法213条1項が扱うのは、土地の分割によって公道に通じない土地が生じた場合です。
袋地の所有者は、他の分割者の所有地のみを通行できると定められています。
そして償金の支払いは不要です。
同条2項は、土地の一部を譲り渡した場合にも同じ扱いを準用しています。
無償になる理由は、袋地を作り出した責任が分割した当事者の側にあるためです。
分割に関わっていない第三者の土地に負担を広げず、当事者の間で処理させる仕組みになっています。
親の土地を兄弟で分けた、宅地を分譲して奥の区画が公道に接しなくなった、といった場面が典型です。
分割から何十年たっていても、無償の通行権はそのまま引き継がれます。
分割の経緯は、登記事項証明書の地番の履歴と公図で追えます。
通行料を請求する前に、袋地がいつどのように生まれたかを確認してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
自動車の通行が認められるかは事情ごとに判断される
囲繞地通行権をめぐって最も争いになりやすい点は、自動車の通行です。
徒歩なら1メートル程度で足りる一方、普通乗用車には2メートル以上の幅が必要になります。
負担の差が大きいため、車の通行は当然には認められません。
判断の材料は次の3点です。
- 袋地に車庫や駐車場があり、車の使用が生活に組み込まれているか
- 車を使える別の経路が現実に存在するか
- 過去に車の通行が続いており、囲繞地の所有者が黙認してきた経緯があるか
袋地の側に強い必要性があり、囲繞地の負担が小さければ、車の通行まで認められやすくなります。
反対に、庭を横切って通す形になるなら認められにくくなります。
話し合いで折り合えない場合の決着先は、簡易裁判所の民事調停か地方裁判所の訴訟です。
裁判所が幅と経路を具体的に定める形になるため、感情的な対立が長引く前に手続きへ進めてください。
囲繞地通行権は登記できない
囲繞地通行権は、登記の対象になりません。
袋地という状態から法律上当然に発生する権利のため、契約も登記も必要としないからです。
登記事項証明書を取っても、通行権の有無はわかりません。
登記できないかわりに、権利は土地の所有者が変わっても有効です。
袋地が売られれば新しい所有者が通行権を引き継ぎ、囲繞地が売られれば新しい所有者が通行を認める立場を引き継ぎます。
問題は、通行の範囲や通行料といった個別の取り決めが登記に残らない点です。
先代どうしの口約束は、代替わりのタイミングで失われます。
対策は書面化しかありません。
通路の位置を示した図面と幅、車の可否、通行料の金額と支払い方法を覚書にまとめてください。
双方が署名して1通ずつ保管しましょう。
すでに隣地と主張が食い違っているなら、覚書を作る段階から弁護士に入ってもらうと、後から蒸し返される余地を減らせます。
囲繞地通行権と通行地役権は成立の仕方と対価で異なる

囲繞地通行権と似た権利に、通行地役権があります。
民法280条は地役権について、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自分の土地の便益に使う権利と定めています。
通行のために設定したものが通行地役権です。
| 項目 | 囲繞地通行権 | 通行地役権 |
|---|---|---|
| 根拠 | 民法210条 | 民法280条 |
| 成立の仕方 | 袋地であれば当然に発生する | 当事者の合意で設定する |
| 通行できる範囲 | 損害が最も少ない場所と方法に限られる | 合意した内容による |
| 対価 | 償金の支払い義務がある | 有償・無償を自由に決められる |
| 登記 | できない | できる |
大きな違いは3点あります。
囲繞地通行権が法律から自動的に生まれるのに対し、通行地役権は当事者が話し合って設定します。
範囲も、囲繞地通行権は最小限に絞られる一方、通行地役権は合意しだいで自由です。
そして通行地役権は登記できます。
通行の範囲を確実に固定したいなら、通行地役権を設定して登記まで済ませてください。
登記があれば、隣地が売られても新しい所有者に条件をそのまま主張できます。
設定には隣地所有者の合意が要るため、通行料の見直しとあわせて交渉する方法が現実的です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
2023年4月から囲繞地に水道管やガス管を通せるようになった
2021年の民法改正で新設された213条の2が、2023年4月1日に施行されました。
同条1項の対象は、電気・ガス・水道水を引けない土地の所有者です。
必要な範囲内で他の土地に設備を設置し、または他人の設備を使用する権利が認められました。
囲繞地の所有者から見ると、負担が1つ増えました。
袋地の所有者が水道管やガス管を引く工事を求めてきた場合、設置そのものは拒めません。
設置する側にも制約があります。
同条2項が求める条件は、損害が最も少ない場所と方法を選ぶことです。
同条3項は、目的・場所・方法をあらかじめ所有者と使用者に通知する義務を課しています。
通知なしに工事へ入る行為は認められません。
通知が届いたら、図面で配管の経路と掘削の範囲を確かめてください。
庭木や駐車場に影響が出るなら、経路の変更を求められます。
損害が生じる場合は償金を請求できるため、工事の内容と補償の条件を書面で残しておきましょう。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
囲繞地の所有者には袋地を取り込んで資産価値を高められる余地がある
囲繞地は負担ばかりが目立つものの、有利な立場も持っています。
袋地を買い取れる立場にある点と、通行料を受け取れる場合がある点の2つを見ていきます。
袋地を買い取れる唯一に近い立場にある
袋地は市場でほとんど買い手が付きません。
建て替えができず、住宅ローンの担保としても評価されにくいためです。
売りに出しても長期間残るケースが多く、周辺相場を下回る価格でしか成約しない例もあります。
囲繞地の所有者にとっては、事情が別です。
袋地を取得して自分の土地と一体化すれば、公道に2メートル以上接する土地になり、建築基準法43条1項の接道の条件を満たせます。
建物を建てられる土地に変われば、合計の評価額は取得前の2筆の合計を上回ります。
買い手が限られる分、価格交渉でも有利です。
袋地の所有者が管理に困っている場合は、相手にとっても出口になります。
打診するときは、金額を先に出さず「将来的に手放す予定があるか」から尋ねてください。
売却の意思を確かめてから、測量と価格の話に進むほうがまとまりやすくなります。
まずは無料査定で一体化した場合の評価額を把握しておくと、提示できる上限が見えます。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
通行料を継続的に受け取れる場合がある
民法212条にもとづく償金は、囲繞地の所有者にとって収入になります。
通路にあてる面積が広いほど、請求できる金額も上がります。
ただし、償金を受け取れるかどうかはケースしだいです。
分割や一部の譲渡で生まれた袋地には民法213条が適用され、償金を請求できません。
売買や相続で個別に取得された土地どうしであれば、償金を請求できます。
金額を決めるときは、根拠を明示してください。
通路の面積に近隣の地代の単価を掛ける方法が最も説明しやすく、相手も納得しやすくなります。
固定資産税の相当額を上乗せする形も使われます。
取り決めた内容は覚書に残し、支払い時期と振込先まで書き込んでおきましょう。
口約束のままでは、代替わりの際に支払いが止まります。
金額の根拠づくりに迷うなら、無料査定で土地の評価を確かめたうえで弁護士に相談してください。
囲繞地の所有者は通行を拒めず土地の利用にも制限を受ける
囲繞地を持つ負担は、通行の受け入れだけにとどまりません。
土地の使い方と日常生活の両面に影響が及びます。
3つの制約を具体的に確認しましょう。
袋地の所有者の通行は原則として拒否できない
民法210条にもとづく通行権は法律から直接生まれるため、囲繞地の所有者が一方的に止められません。
門扉に鍵をかける、通路に車や物置を置く、フェンスで塞ぐといった行為は、通行妨害と評価されるおそれがあります。
妨害が認められた場合、袋地の所有者は妨害排除請求ができる立場です。
障害物の撤去を求められるほか、通行できなかった期間の損害賠償を請求される場合もあります。
不満があっても、実力で止める行為は避けてください。
取れる手段は、通行の場所と方法の見直しを求める話し合いです。
民法211条1項が「損害が最も少ない」経路を求めている以上、より負担の軽い経路を提案する交渉には根拠があります。
話し合いがまとまらなければ、民事調停の申し立てが次の手です。
第三者が入れば、感情的な対立を切り離して条件を詰められます。
妨害だと言われて対応に困っている段階なら、早めに弁護士へ相談してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
通路部分は建物の敷地として使いにくい
通路として日常的に使われる部分には、建物も塀も置けません。
建ぺい率や容積率の計算上は敷地面積に算入されるものの、現実には空けておく必要があります。
影響が出るのは建物の配置です。
通路を確保したうえで建物を配置すると、間取りの自由度が下がります。
駐車場や庭として使う計画も、通路の位置しだいで成り立たなくなります。
負担を減らすには、通路の位置を建物の計画に合わせて先に決めておく方法が有効です。
敷地の端に寄せられれば、残りの部分をまとめて使えます。
建て替えを予定しているなら、設計の段階で袋地の所有者と経路を協議してください。
工事が始まってから変更を求められると、設計のやり直しに費用がかかります。
協議した内容は図面に書き込み、双方で1部ずつ保管しておきましょう。
出入りが増えて防犯やプライバシーの不安が生じる
囲繞地の敷地内は、袋地の住人だけが通る場所ではありません。
来客や宅配業者、点検業者、工事関係者まで含めると、日常的に第三者が敷地を行き来します。
家族の生活音や洗濯物が見える位置に通路があると、生活のうえで気を使う毎日です。
防犯面でも、敷地内に人が入りやすい状態が続きます。
現実的な対策は、通路と生活空間を分ける工夫です。
植栽や目隠しフェンスで視線を遮る、通路側に人感センサー付きの照明を置く、防犯カメラを設置するといった方法があります。
ただし、通行そのものを妨げない範囲にとどめてください。
負担が重く、対策では解決しないと感じたら、売却や隣地との一体化を検討する段階です。
手放す場合の価格が気になるなら、無料査定で目安を確かめておきましょう。
次の章では、起きやすいトラブルを確認したうえで出口を考えます。
囲繞地で起きやすいトラブルは通路と費用負担に集中する
囲繞地のトラブルは、通路の使い方とお金の負担の2つに集まります。
揉める場面は限られているため、先回りして手を打てば防げます。
通路として使う範囲をめぐるトラブル
最も多い争いは、どこをどれだけ通れるかです。
民法211条1項は「損害が最も少ない場所と方法」と定めるだけで、具体的な位置も幅も示していません。
解釈の余地が広い分、双方の主張がぶつかります。
袋地の側は生活に必要な幅を求め、囲繞地の側は敷地の端に寄せたい立場です。
取り決めがないまま使い始めると、いつの間にか通路が広がる事態も起きます。
防ぐ方法は、通路の位置と幅を図面に示して合意する手順です。
公図や測量図に経路を書き込み、双方が署名した書面を保管します。
植栽や縁石で範囲を示しておけば、後から動きにくくなります。
すでに主張が食い違っているなら、弁護士に相談してください。
過去の裁判例をふまえて、どの範囲までが認められるかの見通しを立てられます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
通行料の金額と改定をめぐるトラブル
通行料には法定の基準がありません。
囲繞地の側は近隣の地代を基準に高めを望み、袋地の側は通路部分だけの負担にとどめたいと考えます。
相場観のずれが、そのまま争いの原因です。
金額を決めるときは、算定の根拠を先に共有してください。
通路の面積、近隣の地代の単価、固定資産税の負担額を並べて示せば、感情論から離れて話を進められます。
長期にわたって無償で通行させてきた場合、後から請求できるかも問題になります。
過去の分をさかのぼって請求するのは難しく、今後の分から見直す形が現実的です。
将来の値上げに備えて、覚書に改定の条項を入れておきましょう。
3年ごとに固定資産税の評価額の変動に応じて見直す、といった取り決めがあれば交渉の手間が減ります。
車両の通行や工事車両の進入をめぐるトラブル
徒歩は認めても車は認めない、という線引きで揉めるケースが目立ちます。
特に問題になる場面は、袋地で建て替え工事を行うときです。
工事車両や重機が通れば、通路の舗装が傷み、騒音と粉じんも発生します。
工事期間中は資材が置かれ、囲繞地の所有者が自分の敷地を使えなくなる場合もあります。
対応の目安は、恒常的な車の通行と、工事に伴う一時的な通行を分ける考え方です。
日常の車の通行は覚書で条件を決め、工事のときは期間・時間帯・復旧の範囲を定めた個別の合意を交わします。
舗装が傷んだ場合の補修費用を誰が負担するかも、着工前に決めておいてください。
工事が終わってからでは、原因の特定でさらに揉めます。
着工前と完了後に通路の写真を撮っておけば、傷んだ範囲を客観的に示せます。
水道管やガス管の設置と修繕をめぐるトラブル
民法213条の2が施行されてから、設備をめぐる相談が増えています。
争点は設置できるかどうかではなく、いつどのように工事をするかに移りました。
同条3項が求める事前の通知を怠り、いきなり掘削を始める例が典型です。
通知がないまま工事に入られた場合は、いったん中止を求めて経路と工期を確認してください。
掘削のあとの復旧範囲も揉めます。
舗装を元の状態に戻すのか、部分的な補修で済ませるのかを、着工前に書面で決めておきましょう。
既存の水道管を袋地と共用する場合は、維持費と修繕費の分担も決めます。
口径を太くする工事が必要なら、費用は原則として利益を受ける側が負担する形です。
分担の割合は、使用する世帯数を基準に決める方法がわかりやすくなります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
相続や売却で所有者が変わったあとのトラブル
通行権そのものは所有者が変わっても引き継がれます。
一方、通行料の金額や車の可否といった個別の取り決めは、新しい所有者に自動では伝わりません。
先代どうしが口約束で決めていた場合、代替わりを機に一から揉め直す展開です。
相続人が経緯を知らず、通行料の支払いを止めてしまう例もあります。
防ぐには、現在の当事者が元気なうちに覚書を作り直してください。
過去の経緯を1枚にまとめ、双方が署名しておけば、相続人にも根拠として渡せます。
売買のときに必要なのは、売買契約書へ通行に関する合意を承継させる条項です。
買主に条件をそのまま引き継がせておけば、引き渡し後の紛争を減らせます。
相続や売却が近い段階で不安があるなら、弁護士に覚書の内容を確認してもらうと安全です。
囲繞地を売却する4つの方法

囲繞地を手放す方法は4つあります。
価格を優先するか、早さを優先するかで選ぶ先が変わります。
| 方法 | 向いている人 | 価格の目安 | かかる期間 |
|---|---|---|---|
| 袋地の所有者に売る | 隣地と関係が良好な人 | 相場並みか、やや上 | 3か月〜1年 |
| 袋地を買い取って一体で売る | 資金に余裕がある人 | 一体化で相場並みへ | 6か月〜1年半 |
| 等価交換する | 現金を用意したくない人 | 交換の条件による | 6か月〜1年 |
| 専門の買取業者に売る | 早く手放したい人 | 仲介の相場を下回る水準 | 数日〜1か月 |
隣接する袋地の所有者に買い取ってもらう
囲繞地を最も高く売れる相手は、袋地の所有者です。
袋地の側にとって囲繞地は、公道への出口を確保できる土地だからです。
接道の条件を満たせば建て替えが可能になり、土地の評価が大きく上がります。
土地全体ではなく、通路にあたる部分だけを分筆して売る方法も選択肢です。
必要な幅だけを切り出せば、袋地の側の負担が減り、話がまとまりやすくなります。
価格の根拠を示さないまま金額だけを提示すると、交渉が決裂しやすくなります。
近隣の取引事例と、一体化したあとの評価額を並べて説明してください。
分筆には測量と登記が必要で、土地家屋調査士への費用がかかります。
境界の確定から登記の完了まで数か月かかるため、時間に余裕を持って進めましょう。
袋地を買い取って一体の土地として売る
反対に、袋地を買い取って自分の土地と一体化する方法もあります。
一体化すれば公道に2メートル以上接する土地になり、建築基準法43条1項の接道の条件を満たせます。
建物を建てられる土地に変われば、囲繞地の通路の負担も不要です。
売却の際は再建築不可の説明が不要になり、一般の買主にも売れるようになります。
袋地は市場で評価が下がるため、取得の費用は思うほどかかりません。
買い取りに必要な資金と、一体化したあとの評価額を比べて判断してください。
取得後は、2筆を1筆にまとめる合筆の登記を行います。
地目や所有者が異なると合筆できない場合があるため、登記の前に司法書士へ確認しておきましょう。
抵当権が設定されている土地も合筆できないため、登記事項証明書で先に確かめてください。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
通路部分と他の土地を等価交換する
現金を動かさずに解決する方法が、土地の等価交換です。
囲繞地のうち通路にあたる部分を袋地の所有者に渡し、かわりに袋地の一部を受け取ります。
交換の利点は、双方の土地の形を整えられる点です。
囲繞地の側は通路の負担から解放され、袋地の側は公道への出口を確保できます。
注意点は税金です。
交換する土地の価額に大きな差があると、差額分が贈与や譲渡と扱われて課税されるおそれがあります。
固定資産税の評価額を並べて確認し、差が大きい場合は差額を金銭で調整してください。
等価交換にも測量と分筆が欠かせません。
土地家屋調査士に依頼して境界を確定させたうえで、登記まで進めます。
税務の扱いに不安があれば、税理士にも確認しておくと安心です。
訳あり物件を専門に扱う買取業者に売る
隣地と交渉できない場合や、早く手放したい場合は、専門の買取業者への売却が選択肢になります。
仲介では、通行の負担がある土地に買主が付きにくいためです。
一般の買主は、通行権をめぐる将来の争いを避けたがります。
住宅ローンの審査でも評価が下がるため、募集を出しても問い合わせは低調です。
買取であれば、業者が直接買い主になるため募集期間が要りません。
業者を選ぶときは、囲繞地や袋地の扱いに慣れているかを見てください。
| 特徴 | 確認するポイント |
|---|---|
| 権利関係の調整に対応できる | 弁護士や司法書士と連携しているか |
| 再建築不可の土地の実績がある | 袋地・未接道の買取事例を示せるか |
| 現況のまま買い取れる | 測量や覚書の取得を売主に求めないか |
| 費用の内訳が明確 | 登記費用や残置物の処分費の扱いを示せるか |
査定は無料で受けられます。
通行の取り決めが曖昧なままでも、現況を伝えれば金額の目安を出してもらえる仕組みです。
複数の業者に依頼すれば、金額の幅と査定の根拠を比べられます。
まずは手元の公図と登記事項証明書をそろえて、査定を依頼してみてください。
囲繞地を売却するときの注意点
囲繞地の売却では、通行に関する情報の扱いが結果を左右します。
売り出す前に済ませておくべき3点を確認しましょう。
通行権の内容を書面にしてから売り出す
通行の条件が口約束のままだと、買主は将来の争いを警戒します。
警戒はそのまま価格交渉の材料になり、値引きを求められます。
売り出す前に、次の項目を覚書へまとめてください。
- 通路として使う位置と幅(図面を添付する)
- 自動車の通行を認めるかどうか
- 通行料の金額・支払い時期・支払い方法
- 通路の補修が必要になった場合の費用負担
覚書には袋地の所有者の署名をもらいます。
応じてもらえない場合でも、過去の経緯と現状の使われ方をまとめた書面を用意しておけば、買主への説明材料になります。
作成に不安があるなら、弁護士に内容を確認してもらってください。
条項の抜けを埋めておけば、引き渡し後の紛争を防げます。
作成した覚書は、売買の際に買主へ引き継ぐ資料としても使えます。
買主にはトラブルの有無まで伝える
隣地との争いを伏せて売ると、あとで責任を問われます。
売却後に紛争が表面化した場合のリスクは、契約不適合責任にもとづく損害賠償や契約の解除です。
宅地建物取引業法35条1項3号は、建物の貸借以外の契約について、私道の負担に関する事項を契約前に説明するよう宅地建物取引業者へ義務づけています。
通行の条件も説明の対象です。
ただし、売主が把握している事情を業者へ伝えなければ、説明資料にも載りません。
伝えるべき内容は、通行料の未払い、通路の範囲をめぐる言い争い、過去の調停や訴訟の有無です。
解決済みの案件も、経緯を含めて共有してください。
伝えた内容は書面に残し、控えを保管します。
口頭だけでは、伝えた事実そのものが争いの種です。
告知書に記載し、買主の署名をもらっておけば証拠として残せます。
どこまで伝えるべきか判断できない場合は、弁護士に範囲を確認してください。
通行料の取り決めが買主に引き継がれるとは限らない
通行権そのものは土地に付いて移るため、買主が自動的に引き継ぎます。
通行料の金額や車の通行に関する合意は、当事者どうしの約束です。
買主に当然に引き継がれるわけではありません。
対策は、売買契約書に承継の条項を入れる方法です。
覚書の内容を買主が引き継ぐと明記しておけば、条件を維持したまま引き渡せます。
袋地の所有者の同意が必要になる場合もあります。
通行料の支払先が変わるため、事前に説明して了解を得ておきましょう。
引き渡しの前に、売主・買主・袋地の所有者の三者で条件を確認する場を設けると確実です。
全員が同じ内容を把握していれば、引き渡し後に食い違いが出ません。
確認した内容は議事録の形で残し、三者が1部ずつ持ちましょう。
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囲繞地に関するよくある質問
囲繞地の読み方は何ですか?
「いにょうち」と読みます。
囲繞地通行権は「いにょうちつうこうけん」です。
「囲繞」は取り囲むという意味で、袋地を囲んでいる土地を指します。
現在の民法では、袋地を囲んでいる他の土地という表現に置き換えられています。
囲繞地の所有者は袋地の所有者の通行を拒否できますか?
拒否できません。
民法210条1項が袋地の所有者に通行を認めているため、囲繞地の所有者が一方的に止める行為は妨害と評価されます。
不満がある場合は、通行の場所と方法の見直しを求める話し合いに進んでください。
実力で塞ぐと、撤去や損害賠償を求められます。
囲繞地通行権が無償になるケースはありますか?
あります。
民法213条は、土地の分割や一部の譲渡によって袋地が生じた場合、他の分割者の土地のみを無償で通行できると定めています。
親の土地を兄弟で分けた場合が典型です。
分割の経緯は登記事項証明書と公図で確認できます。
囲繞地通行権は登記する必要がありますか?
登記できません。
袋地という状態から法律上当然に発生する権利のため、登記の対象になっていないからです。
範囲を確実に固定したい場合は、当事者の合意で通行地役権を設定し、登記まで済ませる方法を選んでください。
囲繞地は袋地よりも高く売れますか?
囲繞地のほうが高く売れる傾向にあります。
建物を建てられるため、再建築不可となる袋地より評価が上がるからです。
通路の負担がある分、通路のない土地と比べれば価格は下がります。
実際の金額は、通路の面積と取り決めの内容によって変わります。
まとめ|囲繞地は袋地の通行を拒めず利用に制限を受ける側の土地
囲繞地とは公道に通じていない土地を取り囲んでいる周囲の土地をいいます。
袋地の所有者には民法210条にもとづく通行権があり、囲繞地の所有者は通行を拒否できません。
通行料は民法212条で請求できるものの、分割で生じた袋地は例外です。
負担を軽くする鍵は、取り決めを書面に残す点にあります。
通路の位置と幅、車の可否、通行料の金額と支払い方法を覚書にまとめ、双方で保管してください。
書面があれば、代替わりのあとも同じ条件を維持できます。
まず取るべき行動は、法務局で公図と登記事項証明書を取得し、袋地がいつどのように生まれたかを確認する作業です。
分割の経緯が分かれば、通行料を請求できるかどうかも判断できます。
通行の範囲や通行料で争いになっているなら弁護士へ、負担を抱えたまま持ち続けたくないなら無料査定へ進んでください。
覚書がそろっていない状態でも、現況のまま買い取ってもらえます。
迷う場合は、「ベンナビ不動産売却」で無料査定を依頼してみてください。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。