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位置指定道路とは?公道や2項道路との違いと売却前に確認すべき点を解説
相続した土地の登記簿や重要事項説明書に「位置指定道路」と書かれていて、公道でも普通の私道でもない扱いに戸惑う方は少なくありません。
位置指定道路は建築基準法上の道路にあたる私道です。
2メートル以上接している土地なら、原則として建て替えができます。
本記事では、位置指定道路の定義、公道や2項道路との違い、指定が認められる基準を扱います。
あわせて役所での調べ方、接する土地のメリットとデメリット、売却前に用意すべき書類まで整理しました。
読み終えるころには、自分の土地で何を確認すればよいかを順番に把握できます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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位置指定道路は建築基準法上の道路6種類のうち42条1項5号にあたる
建築基準法は、幅員4メートル以上の道を5種類に分けたうえで、幅員が足りない道を例外として道路に加えています。
位置指定道路は5種類のうち5号にあたる私道です。
6種類の全体像から確認します。
| 種別 | 通称 | 道路になった経緯 |
|---|---|---|
| 42条1項1号 | 道路法上の道路 | 国道・都道府県道・市町村道として道路法で認定された |
| 42条1項2号 | 開発道路 | 都市計画法や土地区画整理法などの事業でつくられた |
| 42条1項3号 | 既存道路 | 建築基準法の適用時にすでに存在していた幅員4メートル以上の道 |
| 42条1項4号 | 計画道路 | 都市計画法などの事業計画があり2年以内に執行予定として特定行政庁が指定した |
| 42条1項5号 | 位置指定道路 | 土地所有者などが築造し特定行政庁から位置の指定を受けた私道 |
| 42条2項 | 2項道路(みなし道路) | 法の適用時にすでに建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道 |
読者が取り違えやすいのは1号、5号、2項の3つです。
順に見分け方を示します。
1項1号道路|国や自治体が管理する道路法上の公道
1項1号道路とは、道路法による道路のことです。
国道、都道府県道、市町村道が該当し、いずれも認定路線名と路線番号が付されています。
管理者は国、都道府県、市町村のいずれかで、舗装の打ち替えや側溝の清掃も管理者が費用を負担します。
沿道の土地所有者へ補修費の請求が回ることもない仕組みです。
自分の土地の前面道路が1号道路であれば、私道特有の負担は生じません。
市区町村の道路管理課で認定路線かどうかを照会すれば、その場で確認できます。
前面道路が公道だと判明すれば、承諾書や持分をめぐる問題とは無縁です。
道路台帳の閲覧図を開けば、路線名と幅員もあわせて確認できます。
前面が公道でも、敷地の一部だけが私道に接している土地はあります。
公図で敷地の四方を確かめてください。
1項5号道路|1号の公道と違い民間が築造した私道
1項1号道路が行政のつくった公道であるのに対し、1項5号道路は民間が築造した道です。
建築基準法は、土地を建築物の敷地として使うために築造した道を道路に含めています。
ただし対象は、政令の基準に適合し、築造する者が特定行政庁から位置の指定を受けたものに限られます。
特定行政庁とは建築主事を置く市区町村長または都道府県知事のことです。
2項道路が既存の道を行政の側から指定するのに対し、5号道路は先に道を築造してから指定を受ける点が異なります。
道路法や都市計画法によらずに民間がつくった道であるため、所有者は個人や法人です。
分譲業者が造成時に築造し、そのまま所有権を持ち続けている例も珍しくありません。
指定を受けた道は幅員4メートル以上が前提です。
接している敷地は接道義務を満たします。
接道義務とは建築物の敷地が道路に2メートル以上接していなければならない決まりです。
位置指定を受けているかどうかが、建て替えの可否を分ける境目になります。
【参考】建築基準法第42条(道路の定義)|e-Gov法令検索
2項道路|幅員4メートル未満でも道路とみなされる道
2項道路とは、建築基準法の規定が適用された時点ですでに建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道です。
特定行政庁が指定したもので、みなし道路とも呼ばれます。
指定の趣旨は、幅の狭い道に沿って建物が並んでしまった市街地を、建て替えのたびに少しずつ広げる点にあります。
道路として扱う代わりに、敷地の後退を求める仕組みです。
前面道路の幅員が4メートルに満たなければ、2項道路をまっさきに疑ってください。
位置指定道路との違いは、後退が必要かどうかに現れます。
なお2項道路の指定は、道ごとではなく区域単位で一括して行われている自治体が少なくありません。
個別の告示を探しても見つからない場合があるため、窓口で指定の有無を尋ねてください。
位置指定道路とは特定行政庁から位置の指定を受けた私道
位置指定道路は、民間が築造した道に特定行政庁が位置の指定を与えたものです。
指定を受けても公道に変わるわけではなく、所有権は申請者や承継した住民に残ります。
位置指定道路は建築基準法上の道路として扱われる
位置指定道路とは、特定行政庁から位置の指定を受けた私道のことです。
指定は道ごとに与えられ、指定年月日と指定番号が台帳に記録されます。
指定を受けた効果は、接する敷地が接道義務を満たす点にあります。
位置指定道路も建築基準法上の道路に含まれるため、2メートル以上接していれば要件を満たす扱いです。
指定を受けていない私道にしか接していない土地では、建築確認が下りません。
同じ「私道に面した土地」でも、指定の有無で再建築の可否が分かれます。
まず指定の有無を確かめてください。
指定番号は、売買の際に買主や金融機関から提示を求められます。
番号が分かっていれば、役所での照会も一度で終わります。
売却を考え始めた時点で控えておいてください。
【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索
位置指定道路は分譲地や旗竿地の開発でつくられる
位置指定道路が生まれる典型は、広い土地を複数区画に分けて売り出す場面です。
奥まった区画を道路に接させるため、事業者が敷地内に私道を築造して位置の指定を受けます。
開発許可が不要な規模の小さい分譲でも、接道義務を満たす手段として位置指定が使われます。
細い進入路を挟んで数戸が向かい合う住宅地の多くは、前面が位置指定道路です。
行き止まりの道が多いのは、通り抜けできない区画割りでも一定の条件を満たせば指定が認められるためです。
自分の土地が分譲地の一角にあるなら、進入路は位置指定道路である可能性が高いと考えてください。
分譲時のパンフレットや重要事項説明書が残っていれば、私道の位置と幅員が図示されています。
役所へ行く前に、手元の書類を探してください。
位置指定道路の所有者は接する住民の共有が多い
位置指定道路の所有形態は、大きく3通りに分かれます。
売却時に生じる問題は形態ごとに違います。
| 所有形態 | 持分の扱い | 売却時に起きやすい問題 |
|---|---|---|
| 分譲業者の単独所有 | 接する住民に持分がない | 業者が解散していると承諾を取る相手がいない |
| 接する住民の共有 | 各戸が持分を持つ | 共有者全員から承諾を集める手間がかかる |
| 各戸が前面部分を分割所有 | 各戸が自宅前だけを所有 | 他人の所有部分を掘る承諾が別途必要になる |
共有の場合、道の補修や配管の掘削には他の共有者の同意が必要です。
自分の持分が分からないまま話を進めると、買主との契約直前に止まります。
登記事項証明書を取り寄せたうえで、持分の有無を弁護士に確認してもらってください。
持分の割合は、分譲時の区画数で等分されている例が目立ちます。
後から分筆や売買が重なると、割合はそろわなくなります。
登記事項証明書の共有者欄に載るのは、持分の分母と分子です。
分母が区画数と合わない道では、権利関係の整理に時間がかかります。
分筆の経緯を追う資料は、公図の旧地番です。
売買で持分だけが動いている道では、共有者の顔ぶれが分譲時と変わっています。
位置指定道路と公道・2項道路の違いは管理者と後退義務にある
公道との違いは維持管理費の負担者、2項道路との違いはセットバックの要否です。
3種類の性質を並べて確認します。
| 項目 | 公道 | 位置指定道路 | 2項道路 |
|---|---|---|---|
| 所有者 | 国、都道府県、市町村 | 個人、法人 | 市区町村または個人 |
| 維持管理費 | 道路管理者が負担 | 所有者が負担 | 所有者が負担 |
| 幅員 | 4メートル以上 | 4メートル以上 | 4メートル未満 |
| セットバック | 不要 | 原則不要 | 建て替え時に必要 |
| 固定資産税 | 非課税 | 公衆用道路なら非課税の場合あり | 公衆用道路なら非課税の場合あり |
3つのうちどれに面しているかで、負担する費用も建てられる建物の大きさも変わります。
まず自分の土地がどれに当たるかを確定させてください。
公道との違いは維持管理費を誰が負担するか
公道の補修は道路管理者が担いますが、位置指定道路の補修や清掃は所有者が自ら手配します。
舗装の打ち替え、側溝の入れ替え、街灯の設置と電気代が主な費目です。
共有の場合、費用は持分割合か戸数割で分担するのが実務です。
分担方法を定めた法律はないため、住民同士の取り決めが基準になります。
つまり負担額は、道の長さと工事の内容で大きく変わります。
中古の土地や建物を買うときは、過去にどの費目をいくらで分担したかを売主に確認してください。
実績が残っていない道では、将来の負担額を見積もれません。
工事の見積もりは、共有者の1人が代表して複数社から取るのが通例です。
分担額を提示する前に、比較できる見積もりを用意してください。
金額の根拠があれば、負担の話し合いも短く済みます。
2項道路との違いはセットバックが必要かどうか
セットバックとは道路の幅を確保するために敷地を後退させることです。
2項道路では、道の中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされます。
そのため後退した部分には建物も塀も建てられず、建ぺい率と容積率の計算からも外れます。
建て替えのたびに、使える敷地は少しずつ狭くなる仕組みです。
一方、位置指定道路は指定の時点で幅員4メートル以上が確保されているため、原則として後退は要りません。
同じ広さの土地でも、2項道路に面していれば大きな建物は建てられません。
後退した部分について選べる道の1つが、私道のまま市区町村へ寄付する方法です。
寄付が受理されれば固定資産税の負担は消えますが、受け入れの要件は自治体ごとに違います。
通路や通行地役権との違いは建築確認が下りるか
通行地役権とは他人の土地を通行するために設定する権利のことです。
登記された通行地役権があっても、道自体が建築基準法上の道路でなければ接道義務は満たせません。
つまり通行できる権利と、建築確認が下りるかどうかは別の話です。
単なる通路にしか接していない土地では、建て替えの申請が受け付けられません。
敷地の周囲に広い空地があるなどの条件を満たせば、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可する道はあります。
許可はあくまで個別判断です。
確実に下りるとは限りません。
前面道路の資料を持って弁護士に見てもらってください。
再建築の見込みを早い段階で判断できます。
許可の実績は、建築指導課で過去の件数を教えてもらえます。
件数がゼロに近い自治体では、許可を前提にした売却計画は避けてください。
【参考】建築基準法第43条第2項(敷地等と道路との関係の例外)|e-Gov法令検索
位置指定道路として認められる5つの基準

位置指定道路の指定を受けるには、5つの基準を満たす必要があります。
幅員の確保・両端の接続・すみ切り・路面と勾配・排水施設の5点です。
幅員4メートル以上は建築基準法が道路の定義として求める要件で、残る4点は建築基準法施行令の道に関する基準が定めています。
地方公共団体は、条例で区域を限って別の基準を定められます。
幅員4メートル以上を確保する
幅員は4メートル以上が原則です。
なお、幅員6メートル以上を求める区域もあります。
特定行政庁が地方の気候や土地の状況から必要と認め、都道府県都市計画審議会の議を経て指定した区域です。
幅員は道の端から端までの水平距離で測ります。
側溝や電柱が張り出していると、実際に通行できる有効幅員が基準に届かない場合があります。
指定図に書かれた数値だけで判断せず、現地でメジャーを当てて実測してください。
図面と現地に差があれば、幅員の不足が建て替え時の争点になります。
幅員は、道の中央だけでなく最も狭い箇所で測ります。
1か所でも4メートルを割れば、指定の基準を満たしません。
電柱や擁壁のある地点を重点的に測ってください。
実測の結果は写真と一緒に残しておくと、買主への説明にそのまま使えます。
【参考】建築基準法第42条(道路の定義)|e-Gov法令検索
両端を他の道路に接続する(行き止まりは延長35メートル以下)
政令は、位置指定を受ける道の両端が他の道路に接続していることを原則としています。
次のいずれかに当たれば、袋路状の道でも指定が認められます。
| 例外の類型 | 条件 |
|---|---|
| 延長が短い | 道の延長が35メートル以下である |
| 終端が広場に接続 | 終端が公園や広場に接続し、自動車の転回に支障がない |
| 転回広場を設ける | 延長35メートル超でも、終端と35メートル以内ごとに転回広場を設ける |
| 幅員が広い | 幅員が6メートル以上である |
袋路状道路とは一端のみが他の道路に接続した道です。
政令は上の4類型に準ずる場合で、特定行政庁が周囲の状況から避難と通行の安全上支障がないと認めたときも指定を認めています。
したがって、いずれにも当てはまらない行き止まりの道は指定を受けられず、接する土地は原則として再建築ができません。
転回広場とは自動車が向きを変えるために道の一部を広げた区画です。
基準は国土交通大臣が定めており、指定の際に図面へ明示されます。
延長は直線距離では測りません。
判定に使うのは、道なりに測った長さです。
35メートルを少し超える道では、実測値が指定の可否を左右します。
指定図に延長の数値が記載されていれば、実測と突き合わせてください。
すみ切り・路面・勾配・排水の構造基準を満たす
道が同一平面で交差、接続、屈曲する箇所には、すみ切りを設けます。
角地の隅角を挟む二辺の長さが2メートルの二等辺三角形の部分を道に含める形です。
交差によって生じる内角が120度以上であれば、すみ切りは要りません。
路面は砂利敷きなど、ぬかるみとならない構造にします。
階段状の道は認められず、縦断勾配の上限は12パーセントです。
排水のための側溝や街渠も必要です。
道と接する敷地の排水量に見合う断面を確保します。
いずれの基準にも、特定行政庁が周囲の状況から支障がないと認めた場合の例外があります。
すみ切りの部分も道の一部です。
塀や門扉は出せません。
角地に工作物を置いている場合、基準違反として是正を求められます。
現地では、角の部分に私物が置かれていないかもあわせて確認してください。
【参考】建築基準法施行令第144条の4(道に関する基準)|e-Gov法令検索
位置指定道路に接する土地のメリット
位置指定道路に接する土地は、私道でありながら建て替えが認められます。
住環境や税負担の面でも、公道沿いの土地に見劣りしない条件です。
売り出す際の訴求材料としても使えます。
接道義務を満たすため建て替えができる
建築基準法が求めるのは、建築物の敷地が道路に2メートル以上接していることです。
位置指定道路は建築基準法上の道路にあたるため、2メートル以上接していれば建て替えの建築確認が下ります。
指定を受けていない私道や単なる通路にしか接していない土地は、原則として再建築ができません。
指定の有無は、同じ私道沿いの土地でも資産価値を大きく分ける要素です。
注意が必要なのは、間口が細い旗竿地です。
通路部分の幅が2メートルを下回っていると、位置指定道路に面していても建て替えが認められません。
通路の実測値を先に確かめてください。
間口の実測は、敷地境界の杭から杭までを測ります。
境界標が見当たらない土地では、土地家屋調査士に測量を依頼してください。
測量図があれば、買主との交渉でも数値を示せます。
【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索
通り抜け車両が少なく住環境が落ち着く
袋路状の位置指定道路には、用のない車が入ってきません。
通過交通がないぶん車の往来は少なく、子どもの安全面で買主から評価される環境です。
道に接する住民が限られるため、使い方についての合意も形成しやすくなります。
清掃や除雪の当番を決めやすい点も、住みやすさを支える要素です。
緊急車両の進入経路が限られる道もあります。
転回広場があるか、消防車が入れる幅員かどうかを確認しておくと、買主からの質問に答えられます。
消防車が入れるかどうかは、市区町村の消防本部へ住所を伝えて確認してください。
回答を書面で残しておけば、買主から安全面を尋ねられたときに提示できます。
売り出す前に取り寄せておくと、商談が滞りません。
ごみ収集車が入れるかどうかも、清掃部署に確認しておくと安心です。
地目が公衆用道路なら固定資産税が非課税になる場合がある
地方税法は、公共の用に使われている道路へ固定資産税を課すことはできないと定めています。
位置指定道路でも、不特定多数の通行に使われていれば非課税として扱われます。
公共の用に使われているかどうかの認定は、各市区町村が現況に基づいて行う扱いです。
門扉や車止めで通行を制限している道は、非課税と認められません。
宅地のまま課税されている道もあります。
固定資産税の課税明細書を開き、道路部分の課税地目を確かめてください。
実態が道路であれば、市区町村の資産税課に申し出て見直しを求められます。
非課税の扱いは、申し出た年の翌年度から適用されます。
申し出の期限は市区町村で異なるため、年内の早い時期に問い合わせてください。
【参考】地方税法第348条(固定資産税の非課税の範囲)|e-Gov法令検索
位置指定道路に接する土地のデメリット

位置指定道路に接する土地には、私道であるがゆえの負担が残ります。
費用の面でも手続きの面でも、公道沿いの土地にはない手間が前提です。
いずれも事前の準備で影響を抑えられます。
舗装や側溝の補修費を所有者が負担する
位置指定道路の補修や清掃に公費は入りません。
対象は、舗装の打ち替え・側溝の入れ替え・街灯の設置と電気代です。
所有者や共有者が費用を出し合います。
分担割合を定めた法律はないため、持分割合か戸数割で取り決めるのが実務です。
取り決めが書面に残っていない道では、工事のたびに分担でもめます。
自治体によっては、私道の舗装や排水設備の整備に助成金を出しています。
工事を検討する段階で、市区町村の建設課や道路課に助成制度の有無を問い合わせてください。
助成の対象は、幅員や接する戸数で線引きされています。
位置指定道路であることを条件にしている自治体もあります。
申請は着工前という決まりです。
工事を始めたあとでは受け付けられません。
水道管の引き込みに掘削承諾が必要になる
掘削承諾とは私道を掘削して配管工事をすることへの所有者の同意のことです。
他人が所有する位置指定道路を掘って給排水管を引く場合、所有者や共有者から承諾を得なければなりません。
なぜなら承諾がなければ、給湯設備の更新も建て替えに伴う配管の引き直しも進まないからです。
工事業者が着工前に確かめるのは、承諾書の有無です。
口頭の了解だけでは着工に至りません。
承諾は必ず書面で残してください。
所有者が応じない場合は、弁護士に交渉を任せる方法があります。
当事者同士でこじれた案件ほど、第三者が入ると条件面の話に戻せます。
承諾書には、承諾する工事の範囲と有効期限を書き入れてください。
期限を切らずに交わすと、所有者が代わったときに効力を争われます。
私道の持分がないと買主が住宅ローンを組みにくい
買主が私道の持分を持たず、通行掘削の承諾もない場合、金融機関が担保評価を下げて融資を断る場合があります。
金融機関が見ているのは、将来の建て替えと配管更新が確実に進むかどうかです。
審査基準は金融機関ごとに異なります。
承諾書が揃っていれば融資が通る例もあるため、一律に諦める必要はありません。
売主としてやることは2つです。
登記事項証明書で持分の有無を確認し、持分がなければ承諾書の取得を先に進めてください。
売り出してから慌てるより、準備してから売り出すほうが価格を守れます。
金融機関によっては、承諾書に加えて私道の持分移転を融資の条件にします。
買主が持分を取得できる形へ整えておくのが確実です。
つまり融資が付きやすい状態に整えるほど、値引きを求められる余地は小さくなります。
私道が廃止・変更されると再建築できなくなる
私道の変更や廃止によって、接する敷地が接道義務に反することになる場合があります。
建築基準法が定めるのは、変更や廃止を特定行政庁が禁止または制限できる仕組みです。
法律上の歯止めはあるものの、通行を妨げる工作物が無断で置かれる例はあります。
ブロックやポールで車の出入りを止められると、生活にも売却にも影響します。
廃止の相談が持ち上がったら、接する土地の所有者として特定行政庁へ事情を伝えてください。
行政が事前に事情を把握していれば、禁止や制限の判断が働きやすくなります。
工作物が置かれた場合は、市区町村の建築指導課に相談してください。
行政が所有者へ是正を促す例もあります。
もっとも行政の指導に強制力はないため、写真と日付の記録を残しながら交渉を進める必要があります。
【参考】建築基準法第45条(私道の変更又は廃止の制限)|e-Gov法令検索
前面道路が位置指定道路かどうかは役所で調べられる

指定の有無を確定できる場所は、市区町村の窓口と法務局です。
窓口で図面を見て、書類の写しを取り、登記で所有者を押さえる流れになります。
自治体によっては指定道路図をウェブで公開しています。
市区町村の建築指導課で指定道路図を確認する
最初に向かう窓口は、市区町村の建築指導課です。
自治体によって建築審査課、都市整備課などと名称が異なるため、代表番号で担当課を確認してから出向くと確実です。
窓口には住宅地図と公図を持参してください。
職員が指定道路図と照合し、該当の道が位置指定を受けているかどうかをその場で教えてくれます。
指定道路図で分かるのは指定の有無と位置です。
幅員の実測値までは載らない図面もあります。
電話での回答を受け付けない自治体もあるため、来庁して図面を見る前提で予定を組んでください。
指定道路図の写しは、有料で交付を受けられる自治体もあります。
写しがあれば、買主や金融機関へ同じ資料を渡せます。
窓口で交付の可否をあわせて確認してください。
道路位置指定申請書の写しで指定年月日と指定番号を取る
次に取り寄せるのが、道路位置指定申請書の写しです。
指定を受けている道であれば交付を受けられます。
写しには指定年月日・指定番号・幅員・延長が記載されており、重要事項説明の裏付けになります。
取得方法は閲覧または写しの交付です。
手数料は自治体ごとに異なります。
古い指定では図面が保存されていない場合もあり、図面がなければ指定台帳の記載で確認します。
写しは売買契約の添付資料としてそのまま使える書類です。
売却を決める前に取り寄せておくと、買主から資料を求められたときに商談が止まりません。
申請書には、当時の申請者名も記載されています。
所有者をたどる手がかりになるため、氏名や名称の欄まで写しを取ってください。
法人名であれば、商業登記から現状を追えます。
登記事項証明書と公図で所有者と持分を確かめる
最後に、道路部分の所有者を法務局で確認します。
公図で道路部分の地番を特定し、特定した地番の登記事項証明書を請求する順序です。
登記事項証明書には、所有者の名義、共有持分の割合、地目が記載されています。
地目欄が公衆用道路か宅地かで固定資産税の扱いが変わるため、必ず目を通してください。
所有者が分譲業者のままになっている土地もあります。
法人の登記情報から存続の有無を調べ、解散していれば清算人の有無まで追う必要があります。
所有者を追いきれない場合は、弁護士に調査を依頼してください。
次の手続きへ進めやすくなります。
解散した法人でも、清算人が登記されていれば承諾を求める相手になります。
清算結了まで済んでいる場合は、別の手続きが必要です。
【参考】不動産登記法第119条(登記事項証明書の交付等)|e-Gov法令検索
位置指定道路のトラブルを解決する方法
位置指定道路のもめごとは、当事者間の話し合いから始めるのが原則です。
相手が誰か、何を拒んでいるかによって、取れる手段は変わります。
通行を妨害されたら妨害の排除を求める
位置指定道路は建築基準法上の道路で、一般の通行が予定された道です。
最高裁判所は平成9年12月18日の判決で、位置指定道路の通行について人格権的な権利に基づく妨害の排除を認めました。
対象は、日常の生活に道の通行が欠かせない人です。
そのため所有者であっても、正当な理由なく通行を妨げることはできません。
ブロックやポールが置かれた場合、撤去を求められます。
進め方は、書面で撤去を求め、応じなければ仮処分や訴訟へ移る順序です。
着手する前に、妨害の状況を写真と日付で記録してください。
なぜなら記録が残っていなければ、いつから妨害が続いたかを主張できないからです。
撤去を求める書面は、内容証明郵便で送ると到達した日を証明できます。
口頭のやり取りだけでは、いつ求めたかの立証が困難です。
【参考】最高裁判所平成9年12月18日判決(民集51巻10号4241頁)|裁判所 裁判例検索
掘削承諾を断られたら対価と条件を提示して交渉する
掘削承諾を断られた場面では、承諾料の支払い、原状回復の約束、工期の限定といった条件を書面で示すと合意に近づきます。
承諾料に公的な統計はありません。
実務での合意額は、数万円から十数万円の幅です。
工事範囲・工期・復旧方法を図面で示してください。
相手が生活への影響を具体的に判断できます。
口頭で「すぐ終わる」と伝えるだけでは、不安が残ったままです。
交渉が決裂した場合は、弁護士を通じた協議や民事調停に進む道があります。
感情的な対立が長引くほど売却時期も遅れるため、早めに相談してください。
承諾料を支払う場合は、金額と支払時期を承諾書へ明記してください。
口約束のまま工事に入ると、あとから追加の支払いを求められる場合があります。
所有者が所在不明なら不在者財産管理人の選任を申し立てる
所有者の所在が分からない場合は、登記事項証明書の住所から住民票や戸籍の附票をたどってください。
転居を重ねていても、附票をつなげば現住所に行き着く例は多くあります。
調査で見つからないときに使うのが、不在者財産管理人の制度です。
民法は、従来の住所を去った者が管理人を置かなかった場合の扱いを定めています。
家庭裁判所が、利害関係人の請求により財産の管理に必要な処分を命じられます。
協議の相手になるのは、選任された管理人です。
申立てには数十万円の予納金が必要になる場合があり、選任までに数ヵ月かかります。
売却の時期から逆算し、早めに着手してください。
予納金は管理人の報酬や実費に充てられ、余った分は返還されます。
申立ての前に、家庭裁判所の手続案内で必要書類を確認してください。
【参考】民法第25条(不在者の財産の管理)|e-Gov法令検索
位置指定道路に接する土地を売却するときの注意点
売却でつまずくのは、私道であることを買主へ説明しきれない場面です。
準備が整っていれば、買主の不安が減り価格の下振れを抑えられます。
承諾が揃わない場合の出口もあわせて示します。
通行掘削承諾書を売却前に取得しておく
通行掘削承諾書に入れる項目は、通行の承諾・掘削の承諾・第三者への承継の3つです。
承継条項があれば、売主が得た承諾をそのまま買主へ引き継げます。
共有者が複数いる場合は、全員分を揃えるのが原則です。
1名でも欠けると、金融機関の審査で指摘を受けます。
承諾が揃わないまま売り出すと、契約の直前に破談になる例があります。
物件を市場に出す前に、承諾書の取得から着手してください。
承諾書の書式は、宅地建物取引業の団体が公開している雛形を使うと項目の漏れが出ません。
署名と押印は所有者本人から受け、代理人が対応する場合は委任状も添えてください。
所有者が遠方にいる道では取得までに数週間かかる例もあるため、早めに動いてください。
書類が整っていれば、買主の金融機関を待たせません。
私道の持分は土地とセットで売る
宅地だけを売って私道の持分を手元に残すと、買主は通行と掘削のたびに承諾を求める立場に置かれます。
売主に残るのは、使わない持分の管理責任と固定資産税です。
対応は単純です。
持分の移転登記を宅地と同時に行う旨を売買契約書へ明記してください。
持分が細かく分かれている道では、登記事項証明書ですべての持分を洗い出してください。
持分の一部が亡くなった親の名義のままになっている例もあります。
相続登記を済ませないと移転登記ができないため、売却の準備と並行して登記を進めてください。
移転登記の申請は、宅地と私道の持分をまとめた1件で済む扱いです。
司法書士に依頼すれば、必要書類の収集から登記まで任せられます。
登録免許税は土地の評価額に応じて決まるため、事前に見積もりを取ってください。
【参考】不動産登記法第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)|e-Gov法令検索
私道負担を重要事項説明で正確に伝える
宅地建物取引業法は、建物の貸借以外の契約について、私道に関する負担についての事項を重要事項として説明するよう定めています。
説明は契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が書面を交付して行います。
説明する内容は、私道の面積・持分・負担金の有無・通行や掘削の制限です。
実際に負担している金額や、過去の工事の分担実績まで伝えると、買主の判断材料になります。
負担を告げなかった場合、引渡し後に契約不適合や説明義務違反を問われる可能性があります。
調査で判明した事実は隠さず開示してください。
説明の裏づけとして、道路位置指定申請書の写しと登記事項証明書を添付します。
書面に残しておくのが、引渡し後の争いを防ぐ確実な方法です。
【参考】宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)|e-Gov法令検索
承諾書が揃わないときは買取での売却も検討する
共有者と連絡が取れない土地や、承諾を断られたまま止まっている土地もあります。
仲介で買主が付かない場合は、訳あり不動産を扱う買取が現実的な選択肢になります。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買主 | 一般の個人 | 不動産会社 |
| 期間 | 数ヵ月かかる場合が多い | 数日から数週間 |
| 価格の傾向 | 市場相場に近い | 仲介より下がる |
| 承諾書の要否 | 買主のローン審査で必要 | 業者の判断で不要な場合がある |
買取は価格が下がる一方、権利関係が整わない状態でも進められる方法です。
業者を選ぶときは、弁護士や司法書士と連携して権利調整まで扱えるか、買取の実績を公開しているかを見てください。
判断に迷う段階で弁護士に相談すると、仲介と買取のどちらを選ぶべきかを整理できます。
買取を選ぶ場合も、複数の会社から査定を取ってください。
1社だけで決めると、提示額が相場から外れていても気づけません。
査定額の根拠を書面で示さない会社は、候補から外して構いません。
根拠が示されていれば、仲介の想定価格と手取りで比べられる状態です。
位置指定道路に接する土地の売却の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう
位置指定道路に接する土地の売却を検討しているなら、「ベンナビ不動産売却」の活用がおすすめです。
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接道義務を満たさない、建物が古いなど、ほかの業者では断られやすい土地や建物でも相談できます。
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位置指定道路に関するよくある質問
位置指定道路の指定は誰が申請する?
道を築造しようとする者が申請します。
申請するのは分譲業者や土地の所有者で、指定を受けたあとも所有権は申請者や承継した住民に残ります。
すでに指定済みの道について、接する住民による申請は不要です。
位置指定道路は廃止できる?
所有者の申請で廃止できる場合はあります。
実務では、接する土地の所有者全員から同意を得なければ受理されない運用が一般的です。
1戸でも反対すれば手続きが止まる可能性があるため、廃止を前提にした売却計画は立てないでください。
位置指定道路は誰でも通行できる?
建築基準法上の道路として一般の通行が予定されているため、所有者であっても正当な理由なく通行を妨げられません。
所有権が私人にある点は変わりません。
認められないのは、駐車や資材の設置など通行を超える利用です。
幅員が4メートル未満の位置指定道路はどう扱われる?
古い時期の指定では、幅員4メートル未満のまま残っている道があります。
建て替えの際に後退を求められる場合があるため、指定図の幅員と現地の実測値を確認してください。
差があれば建築指導課に扱いを問い合わせてください。
まとめ|位置指定道路は特定行政庁の指定を受けた私道で管理は所有者が負う
位置指定道路は、特定行政庁から位置の指定を受けた私道です。
接する土地は接道義務を満たすため建て替えができる一方、補修費の負担と掘削承諾の取得は所有者に残ります。
公道との違いは維持管理費の負担者、2項道路との違いはセットバックの要否で見分けられます。
売却を考えているなら、通行掘削承諾書の取得と私道の持分の確認を先に進めてください。
道路位置指定申請書の写しまで揃えば、買主とのやり取りで止まる場面がなくなります。
共有者との調整が進まない、承諾を断られたまま動けない、という段階であれば、弁護士への相談で売却までの道筋を描きやすくなります。
前面道路の種別が分からないまま売り出しても、契約の直前で話が止まるだけです。
調べる順番は、役所の指定道路図、道路位置指定申請書の写し、登記事項証明書です。
迷う場合は、「ベンナビ不動産売却」で無料査定を依頼してみてください。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。