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いわくつき物件とは?事故物件との違いと5パターンの見分け方・売却方法を解説
いわくつき物件とは、過去に起きた出来事や法令上の制限が原因で、買主から敬遠されやすい不動産を指す俗称です。
法律上の定義はなく、不動産取引の現場では「瑕疵(かし/法的な欠陥)」という言葉で整理されます。
相続した実家や長く空き家にしていた建物について、不動産会社から「いわくつきなので価格が下がる」と説明された売主は少なくありません。
瑕疵の種類が違えば、価格の下がり方も、売主が負う告知義務の範囲も別です。
売れないと決めつける前に、自分の物件がどの瑕疵に当たるかを切り分ける必要があります。
いわくつき物件を5つの瑕疵に分けて整理し、事故物件との違いを示します。
自分の物件が該当するかの判定方法、告知義務の範囲、売却方法も本文で扱う内容です。
読み終えるころには、自分の物件の類型を判断し、次にとる行動を決められる状態になります。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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いわくつき物件は5つの瑕疵で整理できる

いわくつき物件という呼び方は俗称のため、範囲を決めるには瑕疵の種類で分けるのが確実です。
不動産取引では、心理的瑕疵・物理的瑕疵・環境的瑕疵・法的瑕疵・権利関係の瑕疵という5つの分類が使われます。
まず5類型の中身を確認します。
| 類型 | 内容 | 代表例 |
|---|---|---|
| 心理的瑕疵 | 買主が心理的な抵抗を感じる過去の出来事 | 自殺・他殺・特殊清掃をともなう孤独死 |
| 物理的瑕疵 | 建物や土地そのものに生じている欠陥 | 雨漏り・シロアリ被害・地盤沈下・土壌汚染 |
| 環境的瑕疵 | 周辺環境に由来して住み心地を損なう事情 | 嫌悪施設の隣接・工場の騒音や臭気 |
| 法的瑕疵 | 法令の制限で自由に建て替えや利用ができない状態 | 再建築不可・違法建築・市街化調整区域 |
| 権利関係の瑕疵 | 所有者が単独で処分を決められない状態 | 共有名義・借地権・底地・未登記建物 |
心理的瑕疵|自殺や事件など買主が心理的な抵抗を感じる事情
心理的瑕疵とは物理的な欠陥がなくても、過去の出来事で買主が住むことをためらう事情をいいます。
自殺、他殺、火災による死亡、特殊清掃をともなう孤独死が代表例です。
判断の分かれ目は、死因そのものより「買主が知っていれば契約しなかった可能性があるか」に置かれます。
国土交通省は2021年10月8日、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。
老衰や病死といった自然死は、原則として告げなくてよいと整理されています。
転倒や誤嚥(ごえん/食べ物が気管に入る事故)のような不慮の死も同じ扱いです。
ただし自然死でも、発見が遅れて特殊清掃や大規模なリフォームが必要になった場合は告知の対象です。
自分の物件で人が亡くなっているなら、死因と発見までの経過、清掃の有無を先に確認してください。
判断に迷うときは、査定の段階で不動産会社と弁護士に事実関係を伝えると安全です。
物理的瑕疵|雨漏りやシロアリ被害など建物や土地そのものの欠陥
物理的瑕疵とは建物や土地の性能・安全性が損なわれている状態をいいます。
代表的なのは次の欠陥です。
- 雨漏り・給排水管の詰まり
- シロアリ被害・基礎のひび割れ
- 地盤沈下・土壌汚染・地中埋設物
物理的瑕疵は5類型のなかで唯一、修繕によって解消できる余地があります。
一方で、修繕費が下落幅を上回る場合もあるため、直してから売るか、現状のまま売るかは見積もりを取ってから判断してください。
売却後に発覚すると責任問題に直結する点も特徴です。
引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合、買主は契約どおりの状態にする追完を請求できます。
民法562条1項が、修補や代替物の引き渡しによる追完請求を認めているためです。
売主が知っていた欠陥を隠しても、責任を免れる仕組みにはなっていません。
環境的瑕疵|嫌悪施設や騒音など周辺環境に起因する事情
環境的瑕疵とは物件ではなく周辺環境が原因で住み心地や資産価値が下がる事情をいいます。
嫌悪施設(けんおしせつ/多くの人が近くにあることを避けたい施設)の隣接が代表例です。
挙げられるのは次の事情です。
- 指定暴力団の事務所・火葬場・汚水処理施設の隣接
- 風俗店や遊興施設の隣接
- 工場の騒音や振動、臭気、電波障害
環境的瑕疵は受け止め方に個人差が大きく、線路沿いの騒音を気にしない買主もいます。
そのため一律に価格が下がるとは限らず、周辺の成約事例を集めて実際の値付けを確認する手順が要ります。
売主が注意すべきは、近隣に嫌悪施設があると認識しながら伝えなかった場合です。
宅地建物取引業法47条1号は、宅建業者が勧誘に際して事実を故意に告げない行為を禁じています。
対象は、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項です。
売主自身も、把握している事情は仲介会社へ伝えてください。
法的瑕疵|再建築不可や違法建築など法令の制限を受ける状態
法的瑕疵とは法令上の制限によって建て替えや増改築が自由にできない状態をいいます。
幅員4m以上の道路に2m以上接していない再建築不可物件、建ぺい率や容積率を超えた違法建築、市街化調整区域内の土地が代表例です。
一方で法的瑕疵の重さは、買主が住宅ローンを組めるかどうかに直結します。
金融機関は担保価値を重視するため、再建築不可の土地には融資を出さない扱いが一般的です。
買主が現金購入者や投資家に限られる結果、成約までの期間が延びます。
なお、自分の物件が該当するかは、役所の建築指導課で接道状況と用途地域を確認すれば判断できます。
制限の内容が複雑な物件では、弁護士や司法書士と連携した会社に査定を依頼してください。
売却の可否まで含めた回答を得られます。
権利関係の瑕疵|共有名義や借地権など単独で処分できない状態
5つ目の権利関係の瑕疵とは所有権の形が原因で所有者ひとりでは売却を決められない状態をいいます。
当てはまるのは次の不動産です。
- 共有名義の不動産
- 借地権付き建物・底地
- 相続登記が済んでいない不動産・未登記建物
共有不動産の場合、民法251条1項により、共有物に変更を加える行為には他の共有者全員の同意が必要です。
建物全体の売却は変更にあたるため、共有者の1人が反対すると手続きが止まります。
ただし自分の持分だけを売る行為に他の共有者の同意は不要です。
相続登記が済んでいない不動産も同じく、名義が被相続人のままでは買主へ所有権を移せません。
売却を検討する段階で、登記事項証明書を取得して名義と権利関係を確かめてください。
いわくつき物件と事故物件は対象範囲の広さが違う

「いわくつき物件」と「事故物件」を同じ意味で使う記事は多いものの、指す範囲は一致しません。
事故物件は人の死に関する心理的瑕疵に限られ、いわくつき物件は5類型すべてを含む広い呼び方です。
範囲の違いは、告知義務の考え方にも影響します。
- 事故物件は人の死にまつわる心理的瑕疵に限られる
- 訳あり物件と告知事項ありは使われる場面が違う
- 呼び方が変わっても売主が負う告知義務は変わらない
事故物件は人の死にまつわる心理的瑕疵に限られる
まず事故物件とは対象の建物や部屋で人が亡くなった経緯があり、買主や借主が心理的な抵抗を感じる不動産を指します。
自殺、他殺、火災による死亡、特殊清掃をともなう孤独死が中心です。
一方でいわくつき物件には、雨漏りのような物理的な欠陥や、再建築不可のような法令上の制限も含まれます。
人が亡くなった事実がない物件も、いわくつき物件の対象です。
事件や火災の噂だけで、いわくつきと言われる例もあります。
不動産会社から「いわくつき」と言われた売主は、まず何を指しているのかを具体的に確認してください。
心理的瑕疵なのか法的瑕疵なのかによって、打つべき手はまったく異なります。
賃貸では告知の要否が経過年数で変わる一方、売買には年数の区切りが置かれていません。
訳あり物件と告知事項ありは使われる場面が違う
訳あり物件は、いわくつき物件とほぼ同じ範囲を指す言葉で、買取業界や売却の場面で使われます。
5類型に加えて、ローン滞納中の物件や再建築不可の土地までまとめて扱う点が特徴です。
一方で告知事項ありは、賃貸や売買の募集広告に載せる表示です。
心理的瑕疵を中心に、買主や借主へ伝えるべき事情がある場合に記載されます。
呼び方は営業上の分類であり、法律上の効果を持つのは告知の中身のほうです。
なお、広告に告知事項ありと出ていても、理由は心理的瑕疵に限りません。
設備の不具合や近隣とのトラブルが理由になるケースも同じ表記です。
そのため自分の物件を売りに出す際は、広告にどの表現を使うかを仲介会社と決めてください。
表現の選び方より、伝えるべき事実を漏れなく共有する手順を優先してください。
呼び方が変わっても売主が負う告知義務は変わらない
呼び方がいわくつき物件でも訳あり物件でも、売主が把握している不利な事実を伝える義務は変わりません。
宅建業法35条は、宅建業者に重要事項の説明を義務づけています。
契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が書面を交付して説明する仕組みです。
売主本人には宅建業法上の説明義務はないものの、仲介会社へ事実を伝えなければ重要事項説明書に反映されません。
結果として、買主から契約不適合責任を追及されるのは売主自身です。
「呼び方を変えれば安く見られずに済む」という発想は、後の紛争につながります。
伝えるべき事実を整理したうえで、価格を交渉する順序が安全です。
告知の範囲を自分で判断できないときは、査定の段階で弁護士に事実関係を伝えてください。
自分の物件がいわくつき物件に当たるかを判定する方法
自分の物件が該当するかは、書類・履歴・現況・第三者の情報という4つの方向から確かめられます。
1つの方法だけでは漏れが出るため、順に照らし合わせてください。
- 登記事項証明書と重要事項説明書で確認する
- 過去の所有者と入居者の履歴から洗い出す
- 周辺相場との価格差とリフォーム跡を見る
- 公示サイトや近隣への聞き取りで裏を取る
登記事項証明書と重要事項説明書で法的瑕疵と権利関係を確認する
まず取得するのは登記事項証明書です。
取得費用は1通あたり数百円で、オンライン請求なら自宅に届きます。
法務局の窓口またはオンラインで請求でき、所有者の名義、共有持分の割合、抵当権や差押えの登記が分かります。
名義が被相続人のままなら、相続登記が未了の状態です。
次に、購入時の重要事項説明書が手元にあれば以下の項目を確認してください。
- 接道状況(敷地が道路に接している状況)と私道負担の有無
- 用途地域と建ぺい率・容積率
- 法令にもとづく制限の内容
再建築不可や違法建築に当たるかは、記載内容から読み取れます。
書類が見つからない場合の再取得先は、市区町村の建築指導課と法務局です。
権利関係が複雑で読み解けないときは、司法書士や弁護士と連携した不動産会社に書類を持ち込むと、売却の可否まで含めた判断を得られます。
過去の所有者と入居者の履歴から心理的瑕疵を洗い出す
一方で心理的瑕疵は書類に残りません。
所有権の移転履歴は登記事項証明書で追えるため、短期間に所有者が入れ替わっている場合は、事情を確認する手がかりになります。
売主が短期間で手放した理由には、把握しておきたい事情が隠れている場合があるためです。
また、賃貸に出していた期間があるなら、管理会社に入居者の入退去記録と原状回復工事の内容を照会してください。
特殊清掃や大規模なリフォームの記録が残っていれば、心理的瑕疵に該当する可能性が高まります。
相続した実家では、被相続人がいつ、どこで、どのように亡くなったかを親族へ確認してください。
自宅で亡くなった場合でも、発見までの日数と清掃の有無によって告知の要否が分かれます。
管理会社と親族の双方から情報を集めると、抜けを防げます。
周辺相場との価格差と部分的なリフォーム跡を見る
購入時の価格が周辺相場より明らかに安かった場合、売主が把握していない事情が隠れている場合があります。
国土交通省の不動産情報ライブラリで、同じ地域・同じ築年数の成約価格を調べて比較してください。
さらに現地では、一部屋だけ壁紙やフローリングが新しい、天井の一角だけ塗り直されているといった不自然な修繕跡を探してください。
雨漏りや事故のあった箇所だけを補修すると、跡が残ります。
外壁や屋根を塗り直した時期も、記録が残っていれば確かめてください。
床下や小屋裏の点検口から、シロアリ被害や湿気の状況も確認できます。
判断がつかない場合は、住宅診断を実施している会社へ依頼すると、物理的瑕疵の有無を客観的な数値で把握できます。
公示サイトや近隣への聞き取りで裏を取る
事故物件の公示サイトには、投稿にもとづく死亡事案の情報が地図上に掲載されています。
ただし投稿は誰でもでき、事実確認を経ていない情報も含まれるため、掲載の有無だけで判断はできません。
そのため、近隣住民や集合住宅の管理人への聞き取りが確実です。
長く住んでいる住民は、過去の事件や火災、周辺施設の変遷を記憶しています。
情報の裏づけが取れない場合は、掲載の有無だけを理由に価格を下げる必要はありません。
集めた情報は、日付・出来事・情報源をメモに残してください。
売却時に仲介会社へ渡す資料になり、告知漏れを防ぐ材料になります。
事実関係が入り組んでいるときは、弁護士に相談して伝えるべき範囲を確認すると判断が固まります。
いわくつき物件の価格が下がる理由と下落幅の目安
価格が下がる理由は、買主の対象が狭まる点と住宅ローンが通りにくくなる点の2つです。
下落幅は瑕疵の種類ごとに傾向が異なるため、目安を押さえてから査定を受けてください。
- 下落幅は瑕疵の種類と経過期間で決まる
- 心理的瑕疵は相場の1割〜3割下がる例が多い
- 法的瑕疵と権利関係の瑕疵は下落幅が大きい
| 瑕疵の種類 | 下落幅の傾向 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 心理的瑕疵 | 相場の1割〜3割程度下がる例が多い | 買主が心理的に敬遠する |
| 物理的瑕疵 | 修繕費の相当額が差し引かれる | 引き渡し後の補修費が読める |
| 環境的瑕疵 | 個人差が大きく下落しない例もある | 受け止め方に幅がある |
| 法的瑕疵 | 相場の5割前後まで下がる例がある | 住宅ローンが通りにくい |
| 権利関係の瑕疵 | 持分単独では大きく下がる | 単独で利用・処分ができない |
なお、下落幅は買取会社や仲介会社が公表している事例にもとづく目安です。
公的統計は存在しないため、実際の金額は査定で確かめてください。
下落幅は瑕疵の種類と発生からの経過期間で決まる
まず同じ心理的瑕疵でも、報道された事件と、公表されていない孤独死とでは価格への影響が変わります。
社会的な注目を集めた事案ほど下落幅は大きくなります。
経過期間も判断材料です。
年数の数え方は事案の発生日を起点にしますが、特殊清掃をおこなった場合は発覚した日が起点です。
賃貸では、事案の発生からおおむね3年が経過すると原則として告知が不要になると国土交通省のガイドラインが示しています。
売買に期間の区切りはなく、年数が経つほど買主の抵抗は薄れる傾向です。
そのため自分の物件でどの程度下がるかは、事案の内容と経過年数を伝えたうえで複数社の査定を比べると見えてきます。
査定額に幅が出た場合は、根拠の説明が具体的な会社を基準に判断してください。
心理的瑕疵は相場の1割〜3割下がる例が多い
心理的瑕疵のある物件では、周辺相場の1割〜3割程度安い価格で成約する例が多いと、訳あり物件を扱う不動産会社が公表しています。
人気の住宅地では下落幅が小さく、需要の薄い地域では大きくなります。
下落幅を抑えたい場合の選択肢は、室内のリフォームと供養を済ませてから売り出す方法です。
ただし工事費を回収できるとは限らないため、査定額の差を確かめてから着手してください。
同じ建物でも、事案があった部屋と別の部屋とでは価格の下がり方が変わります。
マンションでは、専有部分と共用部分のどちらで起きたかも確かめてください。
投資用として貸し出す前提の買主なら、価格の安さを利回りの高さとして評価します。
居住用の買主に絞らず、投資家も含めて募集する方針が成約につながります。
法的瑕疵と権利関係の瑕疵は住宅ローンが通らず下落幅が大きい
一方で再建築不可の土地や共有持分は、金融機関が担保として評価しにくい対象です。
買主が住宅ローンを利用できないため、購入できる層は現金を用意できる投資家や隣地所有者に限られます。
買主が限られる結果、相場の5割前後まで価格が下がる例もあります。
持分だけを売る場合、価格は持分割合どおりの金額ではなく、さらに低い水準です。
一方で、隣地を所有する人にとっては土地をまとめて有効活用できる材料になり、相場に近い価格で売れる場合もあります。
法的瑕疵や権利関係の瑕疵を抱えている場合は、仲介での一般売却にこだわらないでください。
買取と隣地への打診を並行して進めると、選択肢が広がります。
いわくつき物件を売るときに負う告知義務の範囲
いわくつき物件の売却でつまずきやすいのは告知の範囲です。
何をどこまで伝えるかは、宅建業法と国土交通省のガイドライン、そして民法の契約不適合責任の3つで枠組みが決まります。
- 宅建業法35条による契約成立前の書面交付と説明
- 人の死に関する国土交通省のガイドライン
- 告げなかった場合の契約不適合責任
宅地建物取引業法35条は契約成立前の書面交付と説明を義務づける
まず宅建業法35条1項は、宅建業者に重要事項説明書の交付と説明を義務づけています。
時期は、売買や貸借の契約が成立するまでの間です。
説明にあたるのは宅地建物取引士で、契約後ではなく契約前に済ませる必要があります。
具体的には、登記された権利の種類や法令にもとづく制限が書面に記載されます。
私道負担、飲用水や電気・ガスの供給施設の整備状況も対象です。
法的瑕疵や権利関係の瑕疵は、書面の記載事項として表に出ます。
説明を怠った宅建業者に待っているのは、免許を出した行政庁からの監督処分です。
売主は宅建業者ではないため、35条の名宛人にはなりません。
ただし仲介会社が正確な説明をするには売主からの情報提供が前提になるため、把握している事情はすべて伝えてください。
人の死については国土交通省のガイドラインが判断の目安を示す
国土交通省は2021年10月8日、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。
告知の実務にばらつきがあった状況を整理し、判断の目安を示す内容です。
ガイドラインでは、老衰や病死などの自然死は原則として告げなくてよいと整理されています。
転倒事故や誤嚥のような不慮の死も同じ扱いです。
賃貸では、事案の発生からおおむね3年が経過した後は告知が不要とされました。
特殊清掃をおこなった場合の起算点は、発生日ではなく事案が発覚した日です。
一方で売買には期間の区切りが置かれていません。
買主から死亡事案の有無を尋ねられた場合は、経過期間にかかわらず告げる必要があります。
社会的影響の大きさから買主が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合も同じです。
告げずに売ると契約不適合責任を追及される
告知を怠った場合に問題になるのは、民法の契約不適合責任です。
民法562条1項は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合に、買主の追完請求を認めています。
対象は種類・品質・数量の不適合で、請求できるのは修補や代替物の引き渡しです。
請求には期間制限があります。
民法566条は、買主が不適合を知った時から1年以内の通知を求めています。
通知を怠った買主は、追完請求も契約解除もできない立場です。
ただし売主が引き渡しの時点で不適合を知っていた場合や、重大な不注意で知らなかった場合は、1年の制限が働きません。
さらに民法572条は、担保責任を負わないという特約を結んだ場合の扱いを定めています。
売主が知りながら告げなかった事実については、責任を免れない仕組みです。
免責特約を付けても、隠した事実は守られません。
売却後の紛争を避けるには、把握している事情を書面で伝える手順が確実です。
【参考】民法(e-Gov法令検索)
いわくつき物件を手放す方法

いわくつき物件の売り方は、仲介・買取・隣地や共有者への売却・解体して土地として売る方法の4つに分かれます。
価格を優先するか期間を優先するかで選択が変わります。
- 仲介で一般の買主を探す
- 訳あり物件に対応した会社へ直接買い取ってもらう
- 隣地所有者や共有者に売る
- 建物を解体して土地として売る
| 方法 | 価格水準 | 期間の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 仲介で買主を探す | 高い | 3ヵ月〜1年 | 瑕疵が軽く、時間に余裕がある |
| 買取会社へ売る | 低め | 数日〜1ヵ月 | 早く現金化したい・権利が複雑 |
| 隣地所有者や共有者へ売る | 中〜高い | 1ヵ月〜半年 | 再建築不可・共有持分 |
| 解体して土地として売る | 中程度 | 3ヵ月〜半年 | 建物の老朽化が進んでいる |
仲介で一般の買主を探す
まず仲介は、不動産会社に買主を探してもらう方法です。
市場価格に近い金額で売れる可能性が高く、価格を優先する売主に向いています。
一方で、いわくつき物件は買主が限られるため、売り出してから成約までに3ヵ月〜1年かかる例もあります。
売却期限が決まっている場合は、期間の見通しと売れ残ったときの対応を最初に確認してください。
媒介契約は専属専任・専任・一般の3種類から選びます。
訳あり物件では、販売活動の報告義務がある専任媒介以上を選ぶと進捗を把握しやすくなります。
仲介では引き渡し後に契約不適合責任を負う点も押さえてください。
物理的瑕疵の有無を事前に調べ、判明した内容を契約書へ明記しておくと、後の紛争を防げます。
訳あり物件に対応した会社へ直接買い取ってもらう
次に買取は、不動産会社が直接買主となる方法です。
買主を探す期間が不要なため、数日から1ヵ月程度で現金化できます。
共有持分や再建築不可の土地など、仲介では買主が見つかりにくい物件でも売却先を確保できる点が利点です。
買取価格は仲介での成約価格より低くなる傾向があります。
会社側がリフォームや権利整理の費用とリスクを負担するためです。
価格差をどう見るかは、売却までにかけられる時間との兼ね合いで決まります。
契約不適合責任を免責とする条件で契約できる会社も選択肢です。
引き渡し後の責任を残したくない売主にとっては、価格差を上回る利点になります。
買取でも複数社に査定を依頼してください。
1社だけでは価格の妥当性を判断できません。
隣地所有者や共有者に売る
また、再建築不可の土地や共有持分では隣地の所有者や他の共有者が有力な売却先になります。
隣地所有者が買い取れば土地をまとめて活用でき、共有者が買い取れば単独名義になるためです。
接道が足りない土地でも、隣地と合わせれば建て替えができる場合があります。
そのため、いずれの相手にとっても価値が上がる取引になり、市場での売却より高い金額で成立する場合もあります。
打診の前に、登記事項証明書で隣地の所有者を確認してください。
所有者が遠方に住んでいるなら、書面での連絡から始めてください。
ただし交渉が長引いたり、共有者との関係が悪化していたりする場合は、当事者同士で話を進めない判断も必要です。
弁護士に間に入ってもらうと、条件の整理と合意書の作成まで任せられます。
建物を解体して土地として売る
また、老朽化した建物が残っている場合、解体して更地にすると買主の幅が広がります。
心理的瑕疵のある建物を取り壊せば、抵抗感が薄れる効果も期待できます。
土地として売り出せば、住宅を建てたい個人まで買主の候補です。
一方で解体費は所有者の負担になり、木造住宅でも100万円〜200万円程度かかります。
更地にすると住宅用地の特例が外れ、翌年度から固定資産税の負担が上がる点も見込んでおいてください。
住宅用地の特例では課税標準が最大6分の1に軽減されており、特例から外れると税額が数倍に上がる場合があります。
解体を選ぶ前に、更地渡しと現況渡しの両方で査定を取り、手取り額を比べてください。
差額が解体費を下回るなら、現況のまま売る判断が合理的です。
投資家が買主になるなら、建物を残したままでも取引は成立します。
いわくつき物件の買取を依頼する会社の見極め方
いわくつき物件の買取は、どの会社に依頼しても同じ結果になるとは限りません。
得意分野・査定根拠・専門家との連携という3点で比べると、判断がぶれません。
- 瑕疵の種類ごとに得意な会社は分かれる
- 査定額の根拠を示せるかで判断する
- 弁護士や司法書士と連携しているかを確認する
| 得意分野 | 会社の特徴 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 心理的瑕疵に強い | 特殊清掃や供養、リフォームの体制を自社で持つ | 過去の買取事例の件数 |
| 権利関係に強い | 弁護士・司法書士と連携し共有持分や借地権を扱う | 権利整理の実績と費用負担 |
| 法的瑕疵に強い | 再建築不可や違法建築の再生ノウハウを持つ | 買い取った後の活用方法 |
| 空き家・老朽物件に強い | 残置物の処分や解体まで一括で請け負う | 処分費用の負担者 |
瑕疵の種類ごとに得意な会社は分かれる
たとえば心理的瑕疵の物件を多く扱う会社は、特殊清掃や供養、リフォームの手配まで自社で完結できます。
共有持分や借地権を扱う会社の強みは、弁護士や司法書士と組んで権利の整理から進められる点です。
空き家を扱う会社なら、残置物の処分まで請け負う体制を持っています。
自分の物件の瑕疵と、会社の得意分野が合っているかを最初に確かめてください。
得意分野が合えば、買い取った後の活用先が具体的に描けるぶん、査定額も上がります。
得意分野の合わない会社に依頼すると、査定額が実勢より低く出ます。
判断材料になるのは、過去の買取事例です。
似た条件の物件を扱った実績があるかを問い合わせ、対応内容を聞き取ってください。
ホームページの掲載事例だけでなく、直近1年の取扱件数を尋ねると実態が見えます。
査定額の根拠を示せるかで判断する
なお、査定額だけを比べると高い金額を出した会社に引かれますが、契約後に減額を求める会社もあるため、金額の根拠を説明できるかどうかを重視してください。
金額の高さだけで依頼先を決めると、引き渡し直前に条件が変わります。
確認したいのは次の3点です。
- 周辺の成約事例
- 瑕疵による減額の内訳
- 買い取った後の活用方法
3点を具体的に説明できる会社は、算定の裏づけを持っています。
逆に「相場より高く買います」とだけ伝える会社は、根拠を示せていません。
査定書を書面で受け取れるかも確かめてください。
口頭の提示だけでは、後から金額が変わっても検証できません。
説明があいまいなまま契約を急がせる会社は避けてください。
査定は複数社に依頼し、金額と説明の両方を比べる進め方が安全です。
弁護士や司法書士と連携しているかを確認する
さらに共有名義、相続登記の未了、借地権付き建物では、売買契約と並行して権利の整理が必要になります。
弁護士や司法書士と連携している会社なら、権利の整理から引き渡しまで窓口を一本化できます。
費用の負担者も確認してください。
弁護士費用や登記費用を会社側が負担する条件なら、売主の手取り額は目減りしません。
相談の窓口が営業担当だけの会社では、法律問題の判断が止まります。
専門家へ直接つなげる体制があるかを、問い合わせの段階で確かめてください。
なお、他の共有者と揉めている、相続人の一部と連絡が取れないといった事情がある場合は、査定の前に弁護士へ相談してください。
売却できる状態かどうかを先に確かめると、手戻りを防げます。
いわくつき物件を売却するときの注意点
売却の手順そのものは通常の不動産と変わりません。
告知と権利の扱いを誤ると、引き渡し後に責任を問われます。
4点を押さえてから売り出してください。
- 知っている事情は口頭で終わらせず書面に残す
- 免責特約だけに頼らない
- 修繕やお祓いは費用対効果を確かめてから決める
- 共有者や相続人がいるなら先に権利を整理する
知っている事情は口頭で終わらせず書面に残す
まず売主が把握している事情は、仲介会社へ口頭で伝えるだけでは足りません。
伝えた内容と日付を書面に残し、告知書や重要事項説明書へ反映されたかを確認してください。
書面が残っていれば、買主から責任を追及された場合に、告知を尽くした事実を示せます。
口頭だけでは、伝えた・伝えないの水掛け論になります。
仲介会社とのやり取りは、メールなど記録の残る手段を選んでください。
記入には、不動産会社が用意する物件状況等報告書を使う方法が一般的です。
記入欄が足りない場合は、別紙を作って添付してください。
告知書には、人の死に関する事案、雨漏りや設備の不具合、近隣とのトラブルまで記載してください。
迷った事項は書く方向で判断すると、後の紛争を避けられます。
免責特約だけに頼らない
次に、契約書へ契約不適合責任を負わないという特約を入れれば、引き渡し後の責任をすべて回避できると考える売主もいます。
ただし民法572条が定めるのは、売主が知りながら告げなかった事実について責任を免れないという扱いです。
知っていた瑕疵を隠したまま免責特約を結んでも、買主から追完請求や損害賠償請求を受けます。
特約は、売主が知らなかった瑕疵に備える仕組みと理解してください。
隠した事実が悪質と判断されれば、契約解除まで進む場合もあります。
個人が売主となる取引でよく使われるのは、責任を負う期間を引き渡しから3ヵ月とする特約です。
免責の範囲をどう定めるかは、瑕疵の内容によって変わります。
買取会社との契約で免責条件を提示された場合は、内容を弁護士に確認してから署名してください。
修繕やお祓いは費用対効果を確かめてから決める
また、心理的瑕疵のある物件では供養やお祓いを済ませてから売り出す売主もいます。
買主の抵抗を和らげる効果はあるものの、実施しても告知義務がなくなるわけではありません。
物理的瑕疵の修繕も同じです。
雨漏りの補修に100万円かけても、査定額が同額上がるとは限りません。
修繕前と修繕後の査定を両方取り、差額と費用を比べてください。
供養やお祓いの費用は数万円から10万円程度が目安です。
実施した記録は、買主への説明材料として残しておいてください。
差額が費用を下回るなら、現状のまま売って価格で調整する方針が合理的です。
買取会社に売る場合は、会社側がリフォームを前提に算定するため、売主が先に手を入れる必要はほとんどありません。
共有者や相続人がいるなら先に権利を整理する
そして共有名義の不動産全体を売るには、民法251条1項により共有者全員の同意が必要です。
1人でも反対すると売買契約は成立しません。
相続登記が済んでいない不動産も同じで、名義を相続人へ移すまで買主へ所有権を移せない状態です。
同意が得られない場合の選択肢は2つあります。
自分の持分だけを売る方法と、共有物分割請求によって共有関係を解消する方法です。
持分の売却に他の共有者の同意は要りません。
共有物分割請求は、話し合いがまとまらない場合に裁判所へ申し立てる手続きです。
どちらを選ぶかは、共有者との関係と手元に残る金額で判断してください。
話し合いが進まない、連絡が取れない相続人がいるといった場合は、弁護士に相談して分割の手続きを進めてください。
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いわくつき物件に関するよくある質問
いわくつき物件の意味を一言で説明するとどうなりますか
過去の出来事や法令上の制限が原因で、買主から敬遠されやすい不動産を指す俗称です。
法律上の定義はなく、心理的瑕疵・物理的瑕疵・環境的瑕疵・法的瑕疵・権利関係の瑕疵の5類型で整理されます。
人の死に限らず、雨漏りや再建築不可も含まれます。
いわくつき物件は漢字でどう書きますか
漢字では「曰く付き物件」と書きます。
「曰く」は事情やわけを意味する言葉で、表に出しにくい事情を抱えた物件という意味合いで使われます。
不動産の広告では漢字を使わず、「告知事項あり」と表示される場合がほとんどです。
いわくつき物件でも売却できますか
売却できます。
選べる手段は4つあります。
仲介での売却、訳あり物件に対応した会社への買取、隣地所有者や共有者への売却、解体して土地として売る方法です。
仲介で買主が見つからない場合でも、買取なら数日から1ヵ月程度で現金化できます。
賃貸で3年経過すれば売買でも告知は不要になりますか
なりません。
国土交通省のガイドラインが示すおおむね3年という目安は賃貸の取扱いであり、売買には期間の区切りがない点が違いです。
買主から尋ねられた場合や、社会的影響の大きさから買主が把握しておくべき事情がある場合は、経過期間にかかわらず告げる必要があります。
告知せずに売った場合はどうなりますか
売主は買主から契約不適合責任を追及されます。
請求されるのは、民法562条にもとづく追完や代金減額、損害賠償、契約解除です。
契約不適合責任を負わないという特約を結んでいても、民法572条により、知りながら告げなかった事実については責任を免れません。
まとめ|いわくつき物件は5類型で切り分けてから売り方を選ぶ
いわくつき物件とは、心理的瑕疵・物理的瑕疵・環境的瑕疵・法的瑕疵・権利関係の瑕疵という5類型のいずれかを抱えた不動産の俗称です。
人の死に限られる事故物件より範囲が広く、自分の物件がどの類型に当たるかで、価格の下がり方も告知の範囲も変わります。
売却を進めるなら、登記事項証明書と重要事項説明書で権利と法令上の制限を確認してください。
所有者や入居者の履歴から心理的瑕疵も洗い出します。
把握した事実は書面で仲介会社へ伝えてください。
民法572条により、免責特約を結んでも隠した事実は守られない扱いです。
仲介で買主が見つかりにくい物件でも、買取や隣地への売却という選択肢があります。
共有者との交渉や相続登記が絡む場合は、弁護士・司法書士と連携した会社に相談すると、権利の整理から引き渡しまで一度に進められます。
迷う場合は、「ベンナビ不動産売却」で無料査定を依頼してみてください。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。