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告知事項ありとは?該当する5つの瑕疵と売主が告知すべき範囲をわかりやすく解説
物件情報に「告知事項あり」と書かれていたら、買主や借主に伝えるべき欠点が物件にあります。
欠点は人の死にまつわるものだけではありません。
雨漏りやシロアリ被害、周辺の嫌悪施設、建て替えができない土地なども対象です。
ただし売主の立場では、どこまで伝えれば義務を果たしたといえるのかが判断の分かれ目になります。
国土交通省は令和3年10月に人の死の告知に関するガイドラインを公表し、告げなくてよい範囲を示しました。
基準を知らないまま黙って売ると、契約を解除されたり損害賠償を求められたりします。
本記事では、告知事項に当たる5つの瑕疵と、人の死をめぐる告知の線引きを整理します。
伝えなかった売主が負う責任と、告知したうえで売る手順も解説の対象です。
読み終えるころには、自分の物件について何を書面に書くべきかを判断できます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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告知事項ありとは物件の欠点を買主や借主に伝えるための表示

不動産の広告や物件資料に出てくる「告知事項あり」は、取引の判断に影響する欠点が物件にあると知らせる表示です。
法律に「告知事項」という用語の定義はありません。
実務では、宅地建物取引業法が売主側に課す説明義務の対象になる事実を、瑕疵(かし/法的な欠陥)としてまとめて呼んでいます。
根拠は2つの条文です。
宅地建物取引業法35条は、契約が成立するまでに宅地建物取引士が書面を交付して重要事項を説明するよう求めています。
あわせて47条1号は、判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げない行為と、事実と違う説明をする行為を禁じています。
つまり「告知事項あり」は、説明義務の対象になる事実が存在する物件だという合図です。
欠点の内容は、次の5つの類型に分けると判定しやすくなります。
| 類型 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 心理的瑕疵 | 買主や借主が住むことに抵抗を感じる事実 | 室内での自死や他殺、火災による死亡 |
| 物理的瑕疵 | 建物や土地そのものの欠陥 | 雨漏り、シロアリ被害、地盤沈下 |
| 環境的瑕疵 | 周辺環境に起因する住みにくさ | 墓地や火葬場、暴力団事務所、騒音や異臭 |
| 法的瑕疵 | 法令上の制限で自由に使えない状態 | 再建築不可、建ぺい率を超えた違法建築 |
| 権利関係の瑕疵 | 所有権の行使が制限される状態 | 共有持分、借地権、底地、隣地からの越境 |
心理的瑕疵|事故物件など買主に心理的な抵抗を与える欠点
心理的瑕疵とは建物に壊れた箇所がなくても、買主や借主が住むことに抵抗を感じる事実を指します。
室内で起きた自死や他殺、火災による死亡が代表例です。
一般に「事故物件」と呼ばれる物件の多くは心理的瑕疵に当たります。
なお、抵抗の感じ方は人それぞれです。
同じ事実でも、価格の安さを優先する買主なら許容し、幼い子どもと住む買主なら見送る場合があります。
売主が「気にする人は少ないだろう」と自分で線を引いて伝えないやり方は危険です。
判断するのは買主だという前提に立ち、把握している事実を書面へ残してください。
人の死が起きた物件で、どこまで伝える必要があるかについては、国土交通省のガイドラインが実務の基準になっています。
物理的瑕疵|雨漏りやシロアリ被害など建物や土地そのものの欠陥
物理的瑕疵とは建物や土地に生じている物理的な不具合を指します。
該当するのは次のような欠陥です。
- 雨漏りとシロアリによる柱の腐食
- 基礎のひび割れや地盤沈下
- 土壌汚染
- 地中に残された古い基礎や浄化槽
物理的瑕疵の特徴は、修繕すれば解消する場合が多い点にあります。
修繕したという事実自体も、買主にとっては判断材料になります。
過去に雨漏りが起き、屋根を葺き替えたのであれば、発生時期と修繕内容の両方を伝えてください。
とくに地中の埋設物や土壌汚染は、引き渡し後に判明すると撤去費用の負担をめぐって争いになりやすい欠陥です。
売買代金を大きく上回る撤去費用が生じる場合もあるため、心当たりがあるなら契約前に調査しておくと安全です。
売却を前提に進めるなら、告知すべき範囲を弁護士に確認してから査定に進みましょう。
環境的瑕疵|嫌悪施設や騒音など周辺環境に起因する問題
環境的瑕疵とは物件自体に欠陥がなくても、周囲の環境が原因で快適に住めない状態を指します。
墓地や火葬場、ごみ処理施設、暴力団事務所が近い場合や、工場の騒音・異臭が続く場合が典型です。
なお、環境的瑕疵は感じ方の差が特に大きい類型です。
線路沿いの音を気にしない買主もいれば、眠れないと訴える買主もいます。
判断の幅が広いため、伝えるかどうかを迷ったら伝える側へ寄せてください。
一方で、周辺住民どうしの騒音トラブルのように、原因が特定できず継続するかも読めない事情までは説明義務が及びません。
過去に警察や自治体が関与した事案があるなど、記録として残る事実は伝える対象になります。
自治体への苦情の受理歴や指導の記録が残っているなら、内容を書面へ控えておいてください。
法的瑕疵|再建築不可や違法建築など法令上の制限
法的瑕疵とは法令の制限によって物件を自由に使えない状態を指します。
代表例が再建築不可物件です。
建築基準法は、建物の敷地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接するよう求めています。
条件を満たさない土地では建て替えができません。
また、建ぺい率や容積率を超えて建てられた違法建築も法的瑕疵です。
建築時は適法でも、法改正で基準を満たさなくなった既存不適格建築物も含まれます。
市街化調整区域にあり新築が原則として認められない土地も同様です。
法的瑕疵は買主の資金計画に直結します。
再建築ができない土地は担保としての評価が低く、住宅ローンの審査が通らない例が珍しくありません。
売主が制限を把握しているなら、契約前に伝えてください。
権利関係の瑕疵|共有持分や借地権など所有権が制限される状態
権利関係の瑕疵とは所有権の行使に他人が関わる状態を指します。
兄弟で相続した不動産のように複数人が持分を持つ共有物件が典型です。
建物は自分の所有でも土地を地主から借りている借地権付き建物、逆に土地だけを所有する底地も当てはまります。
たとえば共有物件では、共有者全員の同意がなければ不動産全体を売却できません。
借地権付き建物を売るには、原則として地主の承諾が必要です。
買主から見れば、自分の意思だけで使えない不動産であり、価格にも影響します。
さらに、隣地の塀や樹木が敷地へ入り込んでいる越境や、相続登記が済んでいない状態も権利関係の欠点です。
登記名義が亡くなった親のままなら、売却の前に名義を変える手続きが必要になります。
権利関係が複雑な物件は、弁護士や司法書士と連携している会社に相談すると解決の道筋が早く見えます。
人の死をめぐる告知の線引きは国土交通省のガイドラインが基準になる

5つの類型のうち、売主が特に判断に迷う類型は、人の死をめぐる心理的瑕疵です。
裁判では、取引の目的、事案の内容、発生からの時間の経過などを踏まえて判断されてきました。
近隣住民に知られている程度も、裁判所は考慮します。
基準が明文化されていなかったため、実務では対応にばらつきが出ていました。
そこで国土交通省は令和3年10月にガイドラインを公表しました。
「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が、告げなくてよい場合を整理しています。
対象は居住用の不動産の売買と賃貸で、オフィスなどの事業用不動産は含まれません。
ガイドラインは宅地建物取引業者の義務の判断基準を示したものです。
売主が民事上の責任を免れるかどうかまで決めるものではありません。
まずは、告知が不要とされる場合から確認します。
【参考元】宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(国土交通省)
自然死と日常生活のなかでの不慮の死は原則として告げなくてよい
ガイドラインは、老衰や病死といった自然死について、居住用不動産で起こることが当然に予想されるとしています。
自宅での死因のうち老衰や病死が9割を占めるという人口動態統計が根拠です。
売買・賃貸のいずれでも、原則として告げなくてよいとガイドラインは整理しました。
また、自宅の階段からの転落や入浴中の溺死、食事中の誤嚥による死亡も同じ扱いです。
日常生活のなかで生じた不慮の事故は、自然死と同様に告知が不要とされています。
ただし例外があります。
人が亡くなった後に長期間気づかれず、特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合です。
自然死であっても買主の判断に重要な影響を及ぼすため、告知の対象になります。
売主としては「病死だから伝えなくてよい」と即断せず、発見までの経過と清掃の有無まで確認してください。
賃貸はおおむね3年、売買には期間の定めがない
自然死以外の死が起きた場合、または自然死で特殊清掃が行われた場合、いつまで伝え続けるのかが問題になります。
ガイドラインは賃貸借取引について、死亡または発覚からおおむね3年を経過した後は、原則として借主へ告げなくてよいと示しました。
売買取引には期間の定めが置かれていません。
長く住み続ける前提で購入する買主の判断への影響が大きいため、年数の経過だけでは告知義務が消えないと考えるのが安全です。
売主が「もう10年前の話だから」と自己判断で省くと、後から責任を問われる場合があります。
賃貸の3年についても例外があります。
事件性や周知性、社会に与えた影響が特に高い事案では、3年を過ぎても告知が必要です。
報道された事件や、インターネット上で場所が特定されている事案が該当します。
隣の住戸や日常使わない共用部分での死は原則として告知不要
取引の対象になっていない隣の住戸で人が亡くなった場合、ガイドラインは売買・賃貸のいずれでも原則として告げなくてよいとしています。
同じ建物の別の部屋で起きた事案まで説明を求めると、際限がなくなるためです。
一方、集合住宅の共用部分についても線引きがあります。
買主や借主が日常的に通らない場所、たとえば屋上、機械室、普段使わない裏側の階段などで起きた死亡は告知の対象外です。
反対に、玄関やエレベーターのように毎日通る場所は取引対象と同じ扱いになります。
隣室や共用部分についても、事件性や周知性が特に高い事案は例外です。
近隣で広く知られている事件なら、隣室で起きた場合でも伝える必要が生じます。
借主が日常的に使うベランダや共用の玄関で起きた事案は、部屋と同じ扱いです。
特殊清掃がおこなわれた場合は自然死でも告知が必要になる
特殊清掃とは遺体の発見が遅れた住居で、消臭や消毒、原状回復のために行う専門的な清掃を指します。
国土交通省のガイドラインも、特殊清掃等がおこなわれた事案を告知の対象に位置づけています。
そのため特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、死因が自然死であっても告知の対象です。
清掃や改修が必要になるほどの状態だったという事実自体が、買主の判断に影響すると考えられています。
伝える内容は次の4点です。
- 事案の発生時期(特殊清掃が行われた場合は発覚した時期)
- 事案が起きた場所
- 死因
- 特殊清掃を実施した事実
なお、死因が不明なら、不明である旨を伝えれば足ります。
売主が把握していない事実まで調べ上げる必要はありませんが、思い当たる事情があれば管理会社や親族へ確認しておくと安全です。
売主が告知事項を伝えないと契約解除や損害賠償を求められる
告知事項を伝えずに売った場合、売主は民法上の責任を負います。
仲介した不動産会社も、宅地建物取引業法上の処分や罰則の対象です。
「言わなければ高く売れる」という発想は、結果的に売主の負担を大きくするだけです。
しかも買主が欠点を知ったのが引き渡しの後であっても、責任は消えません。
修繕費の負担、代金の減額、契約の解除まで請求の幅が広く、裁判になれば解決に1年以上かかる場合もあります。
責任の根拠は2つの法律です。
民法は、引き渡された不動産が契約の内容に適合しない場合に買主がとれる手段を定めました。
宅地建物取引業法は、仲介する会社に対して故意の不告知を禁じています。
売主と会社の双方へ責任が及ぶ仕組みです。
まずは、買主が取りうる手段から確認します。
買主は修補・代金減額・損害賠償・契約解除を請求できる
引き渡された不動産が契約の内容に適合していない場合、買主は売主に対して4つの請求ができます。
民法は、まず修繕などによる履行の追完を請求できると定めました。
追完を求めても応じてもらえないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。
損害賠償の請求と契約の解除も、買主が選べる手段です。
告知されていれば買わなかったといえる程度の欠点なら、解除まで認められる可能性があります。
売却代金を返したうえで、買主が支出した仲介手数料や登記費用まで負担する事態になりかねません。
請求できる期間の起点は、買主が不適合を知った時点です。
買主は不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知しなければ、4つの請求ができなくなります。
売主が引き渡しの時点で不適合を知っていた場合は例外で、期間の制限は適用されません。
隠して売った売主は長期間にわたって責任を負い続ける立場です。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
知りながら告げなかった事実は免責特約があっても責任が残る
個人が売主になる中古物件の売買では、契約不適合責任を負わない旨の特約を付ける例が多くあります。
築年数の古い建物では、引き渡し後に不具合が出ても売主は責任を負わないと定めるやり方が一般的です。
免責特約には限界があります。
民法は、担保責任を負わない特約をしていても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。
つまり、雨漏りや室内での死亡を把握したうえで黙っていた売主は、特約があっても請求から逃れられない立場です。
免責特約は「知らなかった欠点」から売主を守る仕組みであり、「知っていて隠した欠点」には及びません。
告知書に事実を書いておくほうが、結果として売主を守ります。
告知の範囲に迷う場合は、契約前に弁護士へ相談して書面の内容を固めてください。
仲介した不動産会社は業務停止や罰金の対象になる
売主が伝えた事実を、仲介した不動産会社が買主へ伝えなかった場合、会社側も責任を負います。
宅地建物取引業法は、判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げない行為を禁じています。
違反した者に科されるのは、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
両方が併科される場合もあります。
加えて、行政処分も定められています。
国土交通大臣または都道府県知事が、業務に関して取引の関係者へ損害を与えた業者へ必要な指示を出せる仕組みです。
悪質な場合は1年以内の期間を定めて業務の全部または一部を停止させられます。
ガイドラインは、媒介する会社が売主へ告知書の記載を求めれば、通常の調査義務を果たしたものと扱うとしています。
売主が書かなかった事実が後から判明した場合でも、会社に重大な過失がなければ調査は適正だったという扱いです。
責任は、事実を書かなかった売主が負うことになります。
告知事項ありの物件を取引する利点と注意点
告知事項ありの物件は、価格の安さという利点と売りにくさという注意点が併存する物件です。
売主にとっては、買主が何を懸念して価格交渉に入るのかを知っておくと、査定額の妥当性を判断しやすくなります。
利点は価格の安さです。
相場より低い金額で取引が成立するため、予算に限りのある買主や、利回りを重視する投資目的の買主が検討の対象に入れます。
注意点は、資金調達と将来の再売却で制約が残る点です。
住宅ローンの審査が通りにくく、買主が次に売るときにも告知が必要になります。
売主としては、価格が下がる理由を先に把握しておくと、提示された査定額が妥当かどうかを判断しやすくなります。
順に確認しましょう。
価格の下がり方は瑕疵の種類ごとに違うため、自分の物件がどの類型に当たるかを先に確かめてください。
利点|相場より安い価格で取引が成立しやすい
告知事項ありの物件は、同じ立地・同じ広さの物件より低い価格が付きます。
価格が下がる分、購入予算に限りがある買主や、投資として利回りを重視する買主が検討の対象に入れます。
また、心理的瑕疵の物件で多いのが、特殊清掃の後に室内を全面的に改修したケースです。
改修済みであれば、同程度の価格帯の中古物件より内装の状態がよい場合があります。
買主から見れば、価格と設備の両面で条件が合う物件になります。
売主にとっては、買い手が付かず売れ残る状況を避けやすくなる点が利点です。
事実を隠さずに提示したほうが、納得したうえで買う相手と早く出会いやすくなります。
買取を選ぶ場合も同じです。
事案を前提に価格を出す会社なら、売れ残りを心配せずに引き渡しまで進められます。
注意点|売却価格は瑕疵の種類によって下がり方が変わる
価格の下がり方は、瑕疵の種類と経過期間で変わります。
下落幅を示した公的な統計は存在しません。
取引の現場で見られるのは、心理的瑕疵のある物件が相場より2割〜5割低い価格で売買される例です。
公表された統計に基づく数字ではなく、事案の内容によって幅が大きく動きます。
目安の数字をそのまま自分の物件へ当てはめるのは避けてください。
瑕疵の種類ごとの傾向は次のとおりです。
| 瑕疵の種類 | 価格への影響の出方 |
|---|---|
| 心理的瑕疵 | 事案の内容と経過期間で幅が大きい。報道された事件は下落幅が大きくなる |
| 物理的瑕疵 | 修繕に必要な費用の分が差し引かれる。修繕済みなら影響は小さい |
| 環境的瑕疵 | 周辺環境は変わらないため、影響が長く続く |
| 法的瑕疵 | 建て替えができない土地は担保評価が下がり、下落幅が大きい |
| 権利関係の瑕疵 | 共有持分の単独売却は、持分割合に応じた価格を下回る例が多い |
なお、権利関係の瑕疵は共有者との調整が済むかどうかで金額が動きます。
売却の前に単独名義へ整理できれば、通常の物件に近い価格を狙えます。
心理的瑕疵は、時間の経過とともに影響が薄れるというのが裁判例の傾向です。
物理的瑕疵も、修繕して記録を残せば買主の不安が小さくなります。
売り急ぐ事情がないなら、修繕してから売る選択肢も検討してください。
注意点|住宅ローンの審査が通りにくい
買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は担保としての評価をおこないます。
再建築ができない土地や違法建築は担保評価が低く、希望額までの融資が下りにくい物件です。
買主が現金を用意できなければ、契約は成立しません。
心理的瑕疵の場合、建物の担保評価そのものは下がらない例もあります。
金融機関によって判断が分かれるため、買主が複数の金融機関へ打診する時間も見込んでおくべきです。
売却までの期間が長引く要因のひとつです。
そのため売主としては、現金で購入できる買主や不動産会社による買取を並行して検討しておくと、資金面で契約が流れる事態を避けられます。
売り出す前に、買主がどの金融機関を使えるのかを不動産会社へ確認しておいてください。
注意点|買主が将来売るときも告知が必要になる
告知事項は、買主が次に売るときにも引き継がれます。
心理的瑕疵のある物件を購入した買主が数年後に売却する場合、事案を把握している以上、次の買主へ伝える立場になります。
一方、権利関係や法的な制限は状態が変わらない限り消えない性質です。
再建築ができない土地は、周囲の道路事情が変わらなければ将来も同じ制限を受けます。
共有持分も、ほかの共有者との関係が続きます。
買主が将来の売りにくさを考慮して価格交渉に入る点は、売主も理解しておくべきです。
交渉の場で根拠を示せるよう、瑕疵の内容と現在の状態を資料にまとめておくと話が進みます。
将来の制約を先に伝えておけば、引き渡し後の紛争も避けやすくなります。
売買契約書と告知書の両方へ記載を残してください。
告知事項ありの物件を売るときの進め方
告知事項ありの物件を売る手順は3段階です。
告知書へ事実を書き、売却の方法を決め、取り扱い実績のある会社へ査定を依頼します。
順序を守ると、契約後の争いを避けながら現実的な価格を把握できます。
手順の入れ替えは避けてください。
告知すべき事実を整理しないまま査定を受けると、後から事案が判明した段階で価格が下がり、交渉がやり直しになります。
先に事実を洗い出して書面にまとめ、会社への相談を後に回す流れが確実です。
査定を受ける前に、告知書の下書きを作っておくと話が早く進みます。
相続した物件なら、登記名義が現在の所有者になっているかも同時に確認しておくと、売却の直前で手続きが止まりません。
売却の方法は仲介と買取の2通りです。
両者の違いを次の表にまとめました。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却先 | 個人の買主 | 不動産会社 |
| 価格の目安 | 市場価格に近い | 仲介より低くなる |
| 期間 | 3ヵ月〜1年以上 | 3日〜4週間 |
| 告知の相手 | 買主となる個人 | 買い取る不動産会社 |
| 契約不適合責任 | 売主が負う | 免責とする契約が多い |
①告知書(物件状況等報告書)に事実を漏れなく記載する
告知書は物件状況等報告書とも呼ばれ、売主が把握している物件の状態を書き出す書面です。
売買契約で使われる主要な不動産関係団体の書式には、事件や事故に関する項目があらかじめ入っています。
記載する内容は次の5点です。
- 雨漏りやシロアリ被害の有無と修繕の履歴
- 給排水設備の不具合
- 境界や越境の状況
- 周辺環境
- 人の死に関する事案
記憶があいまいな項目は「不明」と書けば足ります。
無理に断定して書くほうが後の争いを招きます。
ガイドラインは、媒介する会社が売主へ告知書の記載を求めた時点で、通常の調査義務を果たしたものと扱うと整理しました。
裏を返すと、書かなかった事実の責任は売主に残ります。
後日トラブルになったとき、告知書は証拠です。
事実を書き切る対応が、売主自身を守る有効な手段になります。
②仲介と買取のどちらで売るかを決める
仲介は個人の買主を探す方法で、市場価格に近い金額を狙えます。
告知事項ありの物件は買い手が限られるため、売却まで1年以上かかる場合があります。
売れるまで固定資産税と管理の手間が続く点も見込んでおくべきです。
これに対して買取は、不動産会社が直接買い取る方法です。
価格は仲介より低くなりますが、3日〜4週間で現金化できます。
買主が事業者になるため、契約不適合責任を免責とする契約が結ばれる例が多く、引き渡し後の請求リスクを抑えられます。
判断の目安は次のとおりです。
期限が決まっていない、少しでも高く売りたい場合は仲介を選びます。
相続税の納付期限が迫っている、共有者との関係を早く清算したい、引き渡し後の責任を負いたくない場合は買取を選んでください。
迷う段階なら、両方の査定を取って金額差を確認したうえで決めると納得できます。
③訳あり物件の取り扱い実績がある会社に査定を依頼する
告知事項ありの物件は、一般の仲介会社では「うちでは扱えない」と断られがちです。
取り扱いの実績がある会社を選ぶと、事案を前提にした価格と売却の道筋を提示してもらいやすくなります。
会社選びでは、次のような得意分野の違いを確認してください。
| 得意分野 | 会社の特徴 |
|---|---|
| 心理的瑕疵に強い会社 | 特殊清掃やリフォームの手配を自社で完結できる。事案を前提に価格を提示する |
| 権利関係に強い会社 | 弁護士や司法書士と連携し、共有者との調整や相続登記の不備に対応できる |
| 物理的瑕疵に強い会社 | 建物調査や修繕見積もりを自社で行い、現況のまま買い取れる |
とはいえ、実績の確認方法は難しくありません。
会社のサイトで事故物件や共有持分の買取事例が公開されているか、弁護士や司法書士と提携しているかを見てください。
買取価格の高さだけで選ぶと、契約の直前で減額を求められる場合があります。
査定を依頼するときは、告知すべき事案を先に伝えてください。
後から伝えると価格の見直しが入り、話が振り出しに戻ります。
複数社へ同じ情報を渡して比較すると、価格の妥当性を判断できます。
告知事項ありの物件を売買するときの注意点
告知の実務で気を配るのは、伝える範囲だけではありません。
伝え方と記録の残し方も対象です。
ガイドラインが示す線引きを守っていても、争いになる場合があります。
聞かれたのに答えなかった、口頭で伝えただけで証拠がない、といった対応が原因です。
売主が押さえるべき注意点は、問われたときの対応、遺族や近隣への配慮、記録の残し方の3点です。
3点はいずれも、売主自身の負担を軽くするための手当てにあたります。
買主が納得したうえで契約すれば、引き渡し後に請求を受ける可能性は下がります。
告知を渋って契約を急いだ場合の帰結は、解除や損害賠償の請求です。
売却を有利に運ぶ手段として告知を位置づけ、順を追って確認してください。
買主から問われたら期間に関係なく答える
買主や借主から事案の有無について問われた場合、経過期間や死因にかかわらず答える必要があります。
ガイドラインが求めているのは、調査で判明した点を伝える対応です。
賃貸の3年という目安は、聞かれていない場合の基準にすぎません。
また、社会的な影響が大きく、買主が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合も同じです。
報道された事件や、インターネット上で場所が知られている事案なら、問われる前に伝えるほうが安全です。
売主・貸主・管理会社に照会しても不明だと回答された場合は、不明である旨を伝えれば足ります。
分からない事実を推測で埋める対応は不要です。
問われた事実を隠すと、告知義務違反として責任を問われます。
答えられる範囲を契約の前に整理しておいてください。
遺族や近隣の名誉に配慮した伝え方をする
ガイドラインは、告げる際に亡くなった方や遺族の名誉と生活の平穏へ十分配慮するよう求めています。
氏名や年齢、住所や家族構成までは伝える必要がありません。
具体的な死の態様や発見時の状況も同じ扱いです。
伝える範囲は、事案の発生時期と場所、死因、特殊清掃が行われた事実にとどめます。
死因は自然死・他殺・自死・事故死といった区別を指し、詳細な経緯まで説明する義務はありません。
さらに近隣住民への聞き込みやインターネット上の情報収集についても、ガイドラインは慎重な対応を求めています。
正確性の確認が難しく、遺族の生活を不当に侵害する恐れがあるためです。
売主が自分の物件の履歴を調べる場合も、同じ配慮が求められます。
書面へ記載する内容は簡潔で構いません。
告知した内容は書面に残す
ガイドラインは、事案の存在を伝える際に、後日のトラブル防止の観点から書面の交付によることが望ましいとしています。
口頭で説明しただけでは、伝えた・聞いていないという水掛け論になります。
具体的には、告知書に記載し重要事項説明書へも反映したうえで、買主の署名を受け取る流れが確実です。
契約後、引き渡しまでの間に新たな事実を知った場合も、伝えたうえで書面へ追記してください。
契約後に知った事実についても告知義務があるとした裁判例があります。
記録が残っていれば、後から請求を受けても対応できます。
書面が残っていれば、買主も安心して契約に進める状態です。
告知事項ありの物件の売却の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう
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告知事項ありに関するよくある質問
「告知事項あり」の意味を教えてください
物件に、買主や借主の判断へ影響する欠点があると知らせる表示です。
欠点は5つの類型に整理できます。
心理的瑕疵と物理的瑕疵、環境的瑕疵、法的瑕疵、権利関係です。
人の死にまつわる事案だけを指すわけではありません。
詳しい内容は不動産会社へ確認できます。
告知事項はいつ消えるのか知りたいです
賃貸では、自然死以外の死または特殊清掃が行われた事案が対象です。
発生や発覚からおおむね3年を過ぎれば、ガイドラインは原則として告げなくてよいとしています。
売買には期間の定めがありません。
事件性や社会的な影響が大きい事案は、3年を過ぎても告知が必要です。
告知事項ありの物件を見分ける方法を教えてください
物件情報に「告知事項あり」「心理的瑕疵あり」と記載されているかを確認します。
周辺の相場より大幅に安い、室内の一部だけリフォーム済みと書かれている場合も確認の余地があります。
気になる点は、契約前に不動産会社へ質問してください。
新築なのに告知事項ありと書かれている理由を教えてください
建物が新しくても、土地や周辺環境に欠点がある場合があります。
建て替え前の建物で事案が起きていた、隣に嫌悪施設がある、接道の条件を満たさず将来の建て替えができない、といった事情が考えられます。
記載の理由は不動産会社へ直接確認してください。
告知事項を隠して売るとどうなるのか知りたいです
買主から修繕費の負担や代金の減額、損害賠償や契約の解除を求められます。
担保責任を負わない特約を結んでいても、知りながら告げなかった事実については責任を免れない扱いです。
仲介した不動産会社も、業務停止や罰則の対象になります。
まとめ|告知事項ありは5類型・書面に書き切るほうが売主を守る
「告知事項あり」は、取引の判断に影響する欠点が物件にあると知らせる表示です。
欠点は5つの類型に整理できます。
心理的瑕疵と物理的瑕疵、環境的瑕疵、法的瑕疵、権利関係です。
人の死をめぐる告知は、国土交通省が令和3年10月に公表したガイドラインを基準に判断します。
自然死と日常生活のなかでの不慮の死は原則として告知が不要ですが、特殊清掃が行われた場合は対象です。
賃貸はおおむね3年で不要になる一方、売買に期間の定めはありません。
一方、伝えずに売れば買主から修繕・減額・賠償・解除を求められます。
免責特約があっても、知りながら告げなかった事実の責任は残ったままです。
告知書に事実を書き切り、記録を残して売るやり方が、結果として売主の負担を軽くします。
権利関係が絡む物件は、弁護士へ相談して方針を決めてください。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。