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事故物件の判定基準と告知義務の範囲を解説! 所有者が売却を進める手順まで
相続した実家で親を看取った。
所有するアパートの一室で入居者が亡くなった。
持ち物が「事故物件」に当たるのか、売るときに何を伝える義務があるのか、判断がつかないまま手が止まっている方は少なくありません。
事故物件は法令用語ではありません。
判断の基準になっているのは、国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」です。
ガイドラインは、告げなくてよい場合を3つに整理したうえで、売買と賃貸で期間の扱いを分けています。
売買には期間の定めがありません。
年数が経っていても告げる前提で準備を進めてください。
黙って売れば、代金の減額や契約の解除を求められる可能性があります。
本記事では、訳あり物件の5類型のなかで事故物件がどこに当たるかを整理します。
あわせて扱うのは、告知義務の範囲と期間、告げる内容、価格への影響と売り方です。
読み終えるころには、自分の物件をどう扱えばよいかを決められる状態になります。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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訳あり物件は5つの類型に分けて整理できる

訳あり物件には法令上の定義がなく、実務では次の5類型で整理します。
- 心理的瑕疵
- 物理的瑕疵
- 環境的瑕疵
- 法的瑕疵
- 権利関係の問題
事故物件は心理的瑕疵の一類型です。
類型が変われば、売るときに必要な対応も変わります。
| 類型 | 内容 | 代表例 |
|---|---|---|
| 心理的瑕疵 | 買主・借主が住むのに抵抗を感じる出来事があった | 自死・他殺・特殊清掃を伴った孤独死 |
| 物理的瑕疵 | 建物や土地そのものに欠陥がある | 雨漏り・シロアリ被害・地盤沈下 |
| 環境的瑕疵 | 周辺環境によって住み心地が損なわれる | 騒音・悪臭・嫌悪施設が近い |
| 法的瑕疵 | 法令の制限で建て替えや利用ができない | 再建築不可・市街化調整区域 |
| 権利関係の問題 | 所有者が単独で処分を決められない | 共有持分・借地権・底地 |
心理的瑕疵|事故物件など買主に心理的な抵抗を与える物件
心理的瑕疵とは、建物や設備に問題がなくても、過去の出来事によって買主・借主が住むのに抵抗を感じる状態を指します。
該当するのは、自死・他殺・特殊清掃を伴った孤独死が起きた住戸です。
建物の性能は落ちていません。
にもかかわらず購入をためらう人がいるため、取引の判断に影響する事実として扱われます。
周辺に墓地や工場があって気が進まないという事情は、物件の外側に原因があるため環境的瑕疵の扱いです。
心理的瑕疵は、取引の対象となる住戸のなかで起きた出来事に限られる点で異なります。
本記事が扱う事故物件は、心理的瑕疵の代表例です。
告知義務のルールも、心理的瑕疵をどこまで伝えるかという枠組みで組み立てられています。
物理的瑕疵|雨漏りやシロアリ被害など建物自体に欠陥がある物件
物理的瑕疵とは雨漏り・シロアリ被害・地盤沈下・給排水管の故障など、建物や土地自体に欠陥がある状態を指します。
代表例は次の3つです。
屋根や外壁からの雨漏り、床下や柱のシロアリ被害、そして地盤沈下による建物の傾きです。
いずれも工事によって直せます。
修繕すれば欠陥が消える点が、心理的瑕疵とは大きく違います。
引渡しの後に欠陥が判明した場合、買主が求めるのは修補や代金の減額です。
築年数の古い住宅では、給排水管の劣化や基礎のひび割れが後から見つかる例が目立ちます。
売る前に建物の状態を点検してください。
把握した不具合は、金額が下がるのを恐れずに告知書へ書き出してください。
先に開示した不具合は価格交渉の材料で済みますが、隠した不具合は損害賠償の対象になり得ます。
環境的瑕疵|騒音や嫌悪施設など周辺環境に問題がある物件
環境的瑕疵とは騒音・振動・悪臭や、墓地・工場・暴力団事務所など周辺環境に起因して住み心地が損なわれる状態を指します。
代表例は、線路や幹線道路からの騒音、近隣工場からの悪臭、隣接する反社会的勢力の事務所です。
原因が物件の外側にある点で、心理的瑕疵と区別されます。
受け止め方には個人差があります。
線路沿いを気にしない買主もいれば、避けたい買主もいる点が難しいところです。
告知の要否は事案ごとに判断され、一律の基準を置きにくい領域になっています。
判断に迷う場合は、伝えるほうを選んでください。
買主から尋ねられたときに把握している事実を隠すと、後から契約不適合を主張される余地を残します。
周辺環境の情報は現地を歩けば買主も確認できるため、先に開示したほうが信頼を得られます。
法的瑕疵|再建築不可など法令上の制限がかかる物件
法的瑕疵とは建築基準法や都市計画法などの制限により、建て替えや希望する用途での利用ができない状態を指します。
建築基準法は、建築物の敷地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないと定めています。
接道義務とは、道路の幅と接する長さについて定められた要件です。
基準を満たさない土地には、原則として建物を建てられません。
現に建っている家を取り壊すと、次の建物を建てられなくなります。
市街化を抑える区域に建つ物件や、建てた当時は適法でも法改正で基準に合わなくなった物件も同じ類型です。
買主が住宅ローンを組めない例が多く、売却の難易度は上がります。
自分の物件が該当するかどうかは、法務局の公図と市区町村の窓口で確認できる道路の種別からわかります。
接道が2メートルに満たないなら、隣地の一部を買い取る手も選択肢です。
まず不動産会社へ現況を伝えてください。
権利関係の問題|共有持分や借地権など権利が単独でない物件
権利関係の問題とは共有持分・借地権・底地・相続登記未了など、所有者が単独では処分を決められない状態を指します。
民法は、共有物に変更を加える行為には共有者全員の同意が必要と定めています。
建物と土地をまとめて売る行為は変更に当たるため、共有者のうち1人でも反対すれば売却は進められません。
自分の持分だけを売る行為なら、単独で決められます。
相続した実家が事故物件で、かつ相続人が複数いる場合は、心理的瑕疵と権利関係の問題が重なります。
必要になるのは、告知の準備と共有者との調整を並行して進める段取りです。
登記事項証明書を取り寄せて、名義が誰になっているかを先に確かめてください。
亡くなった親の名義のままなら、売る前に相続登記を済ませる必要があります。
共有者と連絡が取れない、話し合いがまとまらないといった段階なら、早めに弁護士へ相談しましょう。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
事故物件に法令上の定義はなく心理的瑕疵の有無で判断する
事故物件は法令用語ではなく、不動産広告やメディアを通じて広まった呼び方です。
実務では、次の3点から扱いを判断します。
- 買主・借主が抵抗を感じる出来事があったか
- 特殊清掃が行われたか
- 通常の物件と比べて何が変わるか
事故物件とは買主や借主が心理的な抵抗を感じる出来事があった物件を指す
事故物件とは、他殺・自死・特殊清掃を伴う孤独死など、買主や借主が住むのに抵抗を感じる出来事が過去に起きた物件を指します。
火災で死者が出た住戸や、事件現場となった住戸も同じ扱いです。
雨漏りのような建物の欠陥や、近隣の騒音といった周辺環境の問題は別の類型として扱います。
同じ「訳あり」でも告知のルールが違うため、両者を区別して扱います。
判断の基準になっているのが、国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課が令和3年10月に策定したガイドラインです。
ガイドラインは、人の死に関する事案について宅地建物取引業者がとるべき対応を整理しています。
売主が準備を進めるうえでも同じ基準が使えます。
まず自分の物件で何が起きたかを、時期・場所・死因・特殊清掃の有無に分けて書き出してください。
4点がそろえば、告げる必要があるかどうかをガイドラインの基準に当てはめて判断できます。
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
自然死と孤独死は特殊清掃の有無で扱いが分かれる
老衰や病死といった自然死は、原則として事故物件の扱いになりません。
ただし発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、扱いが変わります。
ガイドラインが自然死を告知の対象から外したのは、自宅での死因のうち老衰や病死が9割を占めるためです。
根拠として厚生労働省の人口動態統計(令和元年)が挙げられています。
居住用の住宅で自然死が起きるのは当然に予想される事態であり、買主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと整理されました。
特殊清掃とは、孤独死などが起きた住居で、原状回復のために消臭・消毒や清掃をおこなうサービスを指します。
実施の有無が分岐点になります。
階段からの転落、入浴中の溺死、食事中の誤嚥といった日常生活の中での不慮の死も、自然死と同じ扱いです。
通常の物件と比べて売却価格・告知の手間・買い手の広さが変わる
事故物件を売ると、価格が下がりやすく、事実を整理して伝える手間がかかり、購入を検討する買主の層も狭まります。
| 比較項目 | 通常の物件 | 事故物件 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 相場どおり | 事案の内容と経過年数で下がる |
| 告知の要否 | 建物の不具合のみ | 人の死に関する事案も対象 |
| 買主層 | 一般の実需層 | 価格重視層・投資家・買取業者 |
| 売却期間 | 3ヵ月前後が目安 | 仲介では長期化しやすい |
価格の下がり幅は、事案の内容と経過年数で変わります。
一律の割合を示す情報には根拠がない場合が多いため、数字をうのみにせず出所を確かめてください。
買い手が狭まるぶん、事故物件の取扱いに慣れた買取業者を候補に入れる価値があります。
仲介と買取の両方に査定を出し、金額と期間の差を並べて選びましょう。
事故物件の告知義務は宅地建物取引業法とガイドラインで決まる
告知義務の枠組みは、次の3点で押さえられます。
- 宅地建物取引業法47条が禁じている行為
- ガイドラインが対象とする不動産の範囲
- 宅地建物取引業者に求められる調査の程度
売主本人は信義則上の告知義務を負い、宅地建物取引業者は宅地建物取引業法上の義務を負います。
義務の出どころが違う点を先に押さえてください。
宅地建物取引業法47条は重要な事実を故意に告げない行為を禁じている
宅地建物取引業法は、業者が契約の締結を勧誘する際の行為を制限しています。
相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げない行為が禁止対象です。
事実と異なる内容を告げる行為も同じく禁じられています。
禁止の対象になる事項として挙げられているのは、次の項目です。
宅地・建物の所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通の利便が並びます。
代金や借賃の額と支払方法も対象です。
加えて「相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」という包括的な項目も置かれています。
人の死に関する事案は、買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合にこの包括的な項目に当たります。
同条に基づいて事実を告げるのは、宅地建物取引業者の義務です。
売主が業者へ事実を伝えていなければ、業者は告げようがなく、責任は売主へ返ってきます。
人の死の告知に関するガイドラインは居住用不動産だけを対象としている
ガイドラインは国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課が策定し、令和3年10月に公表されました。
対象は住宅として使われる居住用不動産に限られます。
オフィスや店舗として使われる不動産は対象外です。
契約締結の判断に与える影響が一様でないという理由から、判断の枠組みを一般化できる段階にないと整理されました。
事業用の建物を売る場合は、取引当事者の意向を踏まえて個別に対応します。
ガイドラインに沿わなかったという一点だけで、直ちに宅地建物取引業法違反になるわけではありません。
対応をめぐって紛争になった場合には、行政庁が監督の判断材料として参考にする文書です。
実務上の基準として機能していると考えて準備を進めてください。
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
宅地建物取引業者の調査は売主への照会までで足りる
媒介をおこなう宅地建物取引業者は、売主に告知書(物件状況等報告書)への記載を求めれば、調査義務を果たしたものとされます。
事実を書くかどうかは売主しだいです。
ガイドラインは、宅地建物取引業者に対して近隣住民への聞き込みやインターネットサイトの調査までは求めていません。
亡くなった方や遺族の名誉と生活の平穏に配慮する必要があり、正確性の確認も難しいためです。
売主・貸主・管理業者への照会を行えば、調査はなされたものと解されます。
告知書に書かれなかった事案が後日に判明しても、業者に重大な過失がない限り調査は適正だったと扱われます。
隠した責任は売主へ向かうという構図です。
把握している事実は漏れなく書き、判断に迷う事案も業者へ伝えたうえで要否を相談してください。
ガイドラインが告げなくてよいとする3つの場合

ガイドラインは、告げなくてよい場合を次の3つに整理しています。
- 自然死と日常生活の中での不慮の死
- 賃貸借取引で発覚からおおむね3年が経過した場合
- 隣接住戸や通常使用しない共用部分で起きた場合
いずれも「原則として」であり、例外が置かれています。
| 告げなくてよい場合 | 売買取引 | 賃貸借取引 |
|---|---|---|
| 自然死・日常生活の中での不慮の死 | 該当(特殊清掃等があれば例外) | 該当(特殊清掃等があれば例外) |
| 発覚からおおむね3年の経過 | 該当しない(期間の定めなし) | 該当(事件性が特に高い事案は例外) |
| 隣接住戸・通常使用しない共用部分 | 該当 | 該当 |
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
自然死と日常生活の中での不慮の死は売買・賃貸とも告げなくてよい
老衰や持病による病死といった自然死は、売買・賃貸のいずれでも原則として告げなくてよいとされています。
階段からの転落や入浴中の溺死など、日常生活の中での不慮の死も同じ扱いです。
居住用の住宅で自然死や不慮の死が起きるのは、当然に予想される事態です。
買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと整理されました。
ガイドラインは、売買と賃貸の双方に共通する原則として自然死を告知の対象から外しています。
ただし例外があります。
長期間にわたって人知れず放置され、特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合です。
自然死であっても買主の判断に影響すると考えられるため、告げる必要が生じます。
清掃を依頼した記録が残っているなら、告知の対象になると考えて準備してください。
賃貸借取引は発覚からおおむね3年が経過すれば告げなくてよい
賃貸借取引では、自然死以外の死が起きた場合でも、おおむね3年が経過した後は原則として借主に告げなくてよいとされています。
特殊清掃を伴う死が発覚した場合も同じ扱いです。
起算点に注意してください。
基準になるのは死が発生した時期であり、特殊清掃が行われた場合は事案が発覚した時期です。
孤独死の発見が半年遅れたなら、発見時から3年を数えます。
借主が日常生活で通常使う共用部分は、賃貸借取引の対象不動産と同じ扱いです。
共用の玄関・エレベーター・廊下・階段が該当します。
ベランダのような専用使用が可能な部分も対象です。
3年という区切りは賃貸借取引の基準であり、売買には当てはまりません。
所有する物件を売るのか貸すのかで結論が変わるため、まず売るか貸すかを決めてから告知の要否を判断してください。
貸すと決めた場合は、発覚日を管理会社の記録で確定させておきましょう。
隣接住戸や通常使用しない共用部分で起きた死は告げなくてよい
取引対象の隣の住戸で自然死以外の死が起きた場合は、売買・賃貸のいずれでも原則として告げなくてよいとされています。
買主・借主が日常生活で通常使用しない共用部分も同じ扱いです。
取引の対象自体ではないため、判断への影響は限定的と考えられています。
屋上や機械室のように、住人が日常的に立ち入らない場所が典型です。
一方で、日常的に使う廊下やエレベーターは対象に含まれます。
同じ共用部分でも扱いが分かれる点に注意してください。
区分の境目は「買主や借主が普段通る場所かどうか」に置かれています。
加えて、事件性・周知性・社会に与えた影響が特に高い事案は例外です。
報道された事件なら、隣室で起きた場合でも告げる必要が生じます。
マンションの他の住戸で起きた事案は、管理組合の議事録や管理会社への照会で把握できます。
売却前に一度確認しておきましょう。
売買では期間の定めがなく年数が経っても告げる必要がある

ガイドラインが「おおむね3年」という区切りを置いたのは賃貸借取引だけです。
売買取引には経過期間の定めがありません。
売るときは年数が経っていても告げる前提で準備してください。
本章では、期間の定めがない売買で押さえる3点を確認します。
- 特殊清掃を伴った場合の扱い
- 事件性が高い事案の扱い
- 買主から問われた場合の扱い
| 取引の種類 | 期間の定め | 起算点 |
|---|---|---|
| 売買 | なし | — |
| 賃貸借 | おおむね3年 | 死の発生時期(特殊清掃を伴う場合は発覚時期) |
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
特殊清掃や大規模リフォームを行った場合は自然死でも告げる
老衰や病死であっても、長期間人知れず放置されたことなどにより特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、告げる必要があります。
買主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼすと考えられるためです。
ガイドラインは自然死を告知の対象から外す原則を置いたうえで、特殊清掃等が行われた場合を例外として切り出しました。
原則だけを読んで「病死だから伝えなくてよい」と判断すると誤ります。
売買では、発覚から何年経っていても告げる前提になります。
大規模リフォームの線引きは事案ごとです。
床材や壁の下地まで交換した場合は、大規模に当たると判断されやすくなります。
清掃業者の作業報告書や請求書を保管しておいてください。
実施時期と作業範囲を正確に伝えられるようになり、買主から後で追及される展開を避けられます。
書類を紛失している場合は、依頼した業者へ再発行を求めましょう。
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
事件性や周知性が高い事案は3年を過ぎても告げる
報道された殺人事件のような事案は、3年の経過によって告知不要になりません。
事件性・周知性・社会に与えた影響が特に高いと判断されるためです。
ガイドラインは、告げなくてよいとする各項目に留保を置いています。
「ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない」という一文です。
3年という数字だけを根拠に判断すると、留保を読み落とします。
近隣の住民が事案を記憶している、物件名で検索すると当時の報道が出てくるといった状況なら、周知性は高いと判断されやすくなります。
年数が経っても記録が残り続けるのが、テレビや新聞で扱われた事案です。
迷う事案を自己判断で省いてはいけません。
事実を仲介業者と弁護士に伝えて要否を相談してください。
相談の際は、発生時期・報道の有無・近隣の反応の3点を整理して持ち込むと、判断が早く固まります。
買主や借主から問われたら期間や死因を問わず告げる
告知が不要とされる場合でも、買主・借主から事案の有無を問われたときは対応が変わります。
発覚からの期間や死因にかかわらず、調査で判明した点を告げるのが原則です。
ガイドラインは、原則的な対応とは別に、問われた場合の取扱いを定めています。
社会的影響の大きさから買主・借主が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合も同じです。
3年が経過した賃貸物件でも、内覧時に尋ねられたら答えなければなりません。
売主・貸主・管理業者に照会して不明だった場合は、不明である旨を告げれば足ります。
回答がなかった場合も同様です。
分からないまま黙るのではなく、分からないという事実を伝えてください。
内覧の場で「事件はありましたか」と尋ねられる場面を想定しておきましょう。
答えを用意していないと、口ごもって買主の不信を招きます。
回答の文言を仲介業者と事前にすり合わせ、担当者と売主で説明がぶれない状態を作ってください。
事故物件で告げる内容は発生時期・場所・死因・特殊清掃の有無の4点

告げる内容は次の4点に絞られます。
- 事案の発生時期(特殊清掃が行われた場合は発覚時期)
- 場所
- 死因
- 特殊清掃等が行われた事実
| 項目 | 告げる内容 | 告げなくてよい内容 |
|---|---|---|
| 時期 | 発生時期、特殊清掃があれば発覚時期 | 詳細な日時 |
| 場所 | 取引対象の住戸か共用部分かの別 | 部屋のどこで発見されたか |
| 死因 | 自然死・他殺・自死・事故死の別 | 具体的な死の態様 |
| 人物 | — | 氏名・年齢・住所・家族構成 |
場所は、取引対象の住戸で起きたのか共用部分で起きたのかを区別して伝えます。
特殊清掃を行った事実も、実施したという一言で十分です。
調査で判明した点を告げれば足り、売主・貸主・管理業者から不明と回答された場合は不明である旨を伝えます。
発生時期は特殊清掃を行った場合に発覚時期へ置き換わる
告げるのは事案が発生した時期です。
ただし特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、死亡した時期ではなく事案が発覚した時期を基準にします。
孤独死で発見までに数ヵ月かかった住戸を例に取ります。
死亡推定日ではなく、遺体が発見されて特殊清掃の必要が判明した日が基準です。
賃貸の「おおむね3年」も、同じく発覚時期から数えます。
賃貸で「おおむね3年」を主張するなら、起算点を書面で示せる状態にしておく必要があります。
口頭で「たしか4年前」と伝えても、借主から争われれば根拠として弱いままです。
発覚時期を特定できない場合は、不明である旨を告げれば足ります。
管理会社の記録や清掃業者の作業日を確認すれば特定できる場合が多いため、まず記録を取り寄せてください。
警察が関与した事案なら、遺族が受け取った書類にも日付が残っています。
死因は自然死・他殺・自死・事故死の別まで伝える
ガイドラインが求める死因とは、自然死・他殺・自死・事故死の別を指します。
死因の区別を超えた説明までは不要です。
売主・貸主・管理業者に照会して不明だった場合は、不明である旨を告げれば足ります。
無回答だった場合も同じ扱いです。
推測で「おそらく病死」と伝えるのは避け、確認できた事実だけを渡してください。
特殊清掃が行われた事実は、死因とは別に告げる必要があります。
自然死であっても特殊清掃を伴えば告知の対象になるため、死因と清掃の有無をあわせて整理しておきましょう。
死因の区別がつかない事案もあります。
事故なのか自死なのか判然としない転落死のような場合です。
無理に断定せず、判明している範囲で伝えたうえで、判明していない点は不明であると添えてください。
判断が割れる事案は、告知書を出す前に弁護士へ確認しておくと安全です。
氏名や家族構成、発見状況は告げなくてよい
亡くなった方や遺族の名誉と生活の平穏には配慮が要ります。
氏名・年齢・住所・家族構成・具体的な死の態様・発見状況までは、告げなくてよい範囲です。
告げる4点と対比すると範囲がはっきりします。
伝えるのは「いつ・どこで・どういう種別の死が起きたか・特殊清掃をしたか」までです。
「誰が・どんな状態で見つかったか」は範囲の外にあります。
遺族から不必要に立ち入ったと抗議を受ける事態も避けられます。
配慮が求められる理由は、亡くなった方と遺族に不当な不利益を及ぼさないためです。
売却を急ぐあまり詳細を並べ立てると、遺族から抗議を受ける事態にもつながります。
告げる際は、後日の紛争を防ぐ観点から書面の交付によることが望ましいとされています。
口頭だけで済ませず、告知書や重要事項説明書に記載を残してください。
書く分量に迷ったら、告げる4点を1行ずつ並べる形式で足ります。
告知義務に違反すると契約解除や損害賠償を求められる
事案を隠して売ると、買主から次の請求を受ける可能性があります。
- 履行の追完請求
- 代金の減額請求
- 契約の解除
- 損害賠償請求
売主が事実を知りながら告げなかった場合は、通知期間の制限にも守られません。
ガイドラインに沿った対応をしても、民事上の責任を当然に免れるわけではない点にも注意してください。
買主は代金の減額や契約の解除を求められる
民法は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合の扱いを定めています。
種類・品質・数量が適合しないとき、買主は売主に対して修補や代替物の引渡しを請求できます。
追完を求めても応じられない場合に買主が使えるのが、相当の期間を定めて書面で督促したうえでの代金減額の請求です。
追完が不能なとき、売主が追完を明確に拒んだときは、督促なしで直ちに減額を請求できます。
契約をした目的を達せられない場合には、契約自体の解除まで認められます。
心理的瑕疵は修補で取り除けない性質です。
清掃やリフォームで建物をきれいにしても、過去に人が亡くなった事実は消えないためです。
追完が不能な類型に当たるため、減額や解除へ直結しやすくなります。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
隠して売ると1年の通知期間に守られなくなる
民法は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知するよう求めています。
通知しなければ、追完・代金の減額・損害賠償・契約の解除を請求できません。
原則としては、売主に有利な期間制限です。
ただし同じ条文にただし書があります。
売主が引渡しのときに不適合を知っていた場合、または重大な過失によって知らなかった場合は、1年の制限が働きません。
事故物件と知りながら黙って売った売主は、期間制限の保護を受けられない立場です。
「引渡しから何年も経ったから安全」という判断は成り立ちません。
隠した事実が5年後に近隣から買主へ伝わった場合でも、責任を問われる可能性があります。
事故物件は近隣の記憶に残りやすく、買主が住み始めてから知る展開が現実に起きています。
時間の経過を当てにせず、売る時点で告げてください。
告げたうえで価格を調整するほうが、後から解除や賠償を求められるより負担は小さく収まります。
仲介した宅地建物取引業者は監督処分を受ける
宅地建物取引業者が重要な事実を故意に告げなかった場合は、宅地建物取引業法違反に当たります。
指示処分・業務停止処分・免許取消処分の対象です。
責任の所在は、売主が業者へ事実を伝えたかどうかで変わります。
売主が告知書に書かず業者にも伝えていない状態では、業者は事実を知らないままです。
伝えていなければ、買主からの請求は売主へ向かいます。
業者と認識をそろえてください。
告知書に記載したうえで写しを手元に残し、重要事項説明書へ反映されたかを確認してください。
契約前に説明書の原案を受け取り、書いた内容が漏れていないかを読み合わせておきましょう。
書面が残っていれば、後から「伝えていない」と言われる展開を防げます。
業者が記載をためらう場合は、理由を確かめてください。
取引の途中で疑問が出たら、契約を進める前に弁護士へ確認しましょう。
事故物件の売却価格は事案の内容と経過年数で下がり幅が変わる
下がり幅を決めるのは、次の3点です。
- 事案の内容(事件性と周知性の高さ)
- 発生からの経過年数
- 立地と建物の種類
一律の割合を示す情報には根拠がない場合が多いため、数字の出所を確かめてから使ってください。
買取価格の目安に公的な統計はなく業者の公表値も幅がある
国や自治体が事故物件の価格下落率を統計として公表した例はありません。
流通している数字は、買取業者や仲介会社が自社の取扱実績から示した目安にとどまります。
数字を引用する記事を読むときは、出所を確かめてください。
「相場は3割減」といった断定が、どの会社の何件の実績に基づくのかを示していなければ、判断材料としては弱いままです。
会社ごとに扱う物件の種類も地域も違うため、公表値には幅が出ます。
一律の割合を前提に売り急がないでください。
複数社へ査定を依頼し、提示額と算出の根拠を並べて比べてください。
根拠として求めるのは、近隣の成約事例、事案による減額の考え方、想定する買主層の3点です。
3点を書面で示せない業者は候補から外しましょう。
金額だけを大きく提示して契約を取り、後から引き下げる進め方もあるためです。
査定は無料で受けられるため、3社前後に出して比べてください。
下がり幅は事件性の高さと経過年数で変わる
報道された事件や自死は、下がり幅が大きくなりやすい傾向があります。
特殊清掃を伴わない自然死や、年数が経って周知性が薄れた事案は影響が小さく収まる傾向です。
| 事案の性質 | 下がり幅の傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 報道された事件 | 大きい | 物件名で検索すると事案が出てくる |
| 自死 | 大きい | 買主層が狭まりやすい |
| 特殊清掃を伴う孤独死 | 中程度 | 清掃済みでも告知の対象が続く |
| 特殊清掃のない自然死 | 小さい | 原則として告知の対象外 |
同じ事案でも、地域によって買主の反応は変わります。
単身者向け賃貸が多い地域と、分譲マンションが中心の地域では、購入を検討する層の厚みが違うためです。
リフォームやお祓いをおこなっても告知義務は消えません。
費用をかけたぶんを売却価格で回収できるとは限らないため、実施前に効果を見積もりましょう。
更地にしても告知が不要になるとは限らない
ガイドラインは、人の死が生じた建物を取り壊した後の土地取引を対象に含めていません。
解体すれば告知が不要になると判断するのは危険です。
対象外は、次の3つに限られます。
建物が取り壊された後の土地取引、搬送先の病院で死亡した場合の取扱い、転落によって死亡した場合の落下開始地点の扱いです。
一般的に妥当と整理できるだけの裁判例と実務の蓄積がないため、判断の枠組みが示されていません。
対象外は「告げなくてよい」という意味ではありません。
判断の基準がない領域だという意味です。
基準がない以上、告げずに売れば争いになったとき売主が不利な立場に置かれます。
木造住宅の解体費用の目安は、建物の規模や搬出経路によっては100万円超です。
費用を投じたうえで告知も必要となれば、負担だけが残ります。
解体を決める前に、告知の要否と解体後の想定価格を仲介業者と弁護士へ確認してください。
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
事故物件を売る方法は仲介・買取・隣地や共有者への売却から選ぶ
売り方は次の3つです。
- 仲介
- 買取
- 隣地所有者や共有者への売却
時間をかけてでも価格を優先するなら仲介、告知や内覧の負担を抑えて早く手放したいなら買取を選んでください。
| 方法 | 価格の目安 | 売却までの期間 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 仲介 | 相場から下がるが買取より高い | 数ヵ月〜1年以上 | 立地がよく時間に余裕がある |
| 買取 | 仲介より低い | 数日〜1ヵ月 | 期限を区切って手放したい |
| 隣地・共有者へ売却 | 条件次第で高くなる | 交渉次第 | 隣地と一体で活用できる |
仲介|時間をかけて相場に近い価格を狙う方法
仲介とは不動産会社に買主を探してもらう売り方を指します。
買取より高い価格を狙える一方、事故物件は買主が限られるため売却まで時間がかかりやすくなります。
売却期間が延びるほど、固定資産税と管理費用の負担は重くなる一方です。
空き家のまま持ち続ければ、庭木の手入れや通水といった維持の手間も続きます。
半年で売れる想定が1年に延びた場合の負担を、先に見積もっておいてください。
内覧のたびに事案を説明する負担も売主にかかります。
買主から尋ねられたら答える義務があるため、説明の内容を仲介業者と事前にすり合わせておきましょう。
仲介を選ぶなら、媒介契約の期間を3ヵ月で区切って様子を見てください。
期間内に買主が現れなければ、価格を見直すか買取へ切り替えるかを判断してください。
契約を漫然と更新し続けると、維持費だけが積み上がる結果になります。
買取|告知や内覧の負担を抑えて短期間で手放す方法
買取とは不動産会社が直接買主になる売り方を指します。
内覧や広告を経ずに短期間で現金化できる一方、仲介より価格は下がります。
買主が事業者になるため、契約不適合責任を免責とする条件が示されるのも一般的です。
免責の範囲を確認したうえで契約すれば、引渡し後に責任を追及される心配を減らせます。
近隣に売却の事実を知られにくい点も、事故物件で買取が選ばれる理由です。
広告を出さずに取引が完結するため、周囲への説明を最小限に抑えられます。
残置物が残ったままでも引き取る業者が多く、片付けの手間も省けます。
査定は無料で受けられるので、仲介と並行して依頼するのも自由です。
仲介の査定額は「売れるであろう価格」の予想にすぎず、買取査定額は支払われる金額として確定します。
性質の違う数字を並べて、期間と金額のどちらを取るかで決めてください。
隣地所有者や共有者への売却|立地条件が合う場合に選ぶ方法
隣地所有者への売却とは隣の土地を持つ人に直接買い取ってもらう売り方を指します。
土地をまとめて活用できる立場にあるため、一般の買主より高い価格で引き取る場合があります。
共有名義の物件では、選択肢の意味合いが別です。
民法は共有物に変更を加える行為に共有者全員の同意を求めているため、建物全体の売却は1人でも反対すれば進みません。
自分の持分だけを他の共有者へ売る方法なら、単独で決められます。
相手が限られるぶん、価格交渉では不利になりやすい点が難点です。
先に買取査定を受けて金額の目安をつかんでから話を持ちかけてください。
目安がないまま交渉に入ると、提示された金額が妥当か判断できません。
隣地所有者への打診は、仲介業者を通す方法をおすすめします。
売主が直接持ちかけると、事案を知る相手から足元を見られる展開になりやすいためです。
業者を挟めば、価格の根拠を示しながら交渉を進められます。
事故物件の売却を任せる業者は取扱実績と査定根拠で見極める
候補を絞る基準は次の3つです。
- 事故物件の取扱実績を具体的に示せるか
- 査定額の根拠を書面で出せるか
- 諸費用の負担者を明示できるか
宅地建物取引業の免許番号は必ず確認してください。
3つの基準を満たさない業者は候補から外しましょう。
事故物件を得意とする業者の特徴を押さえる
事故物件を得意とする業者は、特殊清掃や残置物処分まで自社で手配でき、告知を前提とした買主層を持っています。
| 得意分野 | 業者の特徴 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 事故物件 | 特殊清掃・残置物処分を自社手配できる | 取扱件数と対応エリアの公開 |
| 共有持分 | 弁護士・司法書士と連携している | 共有者との交渉実績 |
| 再建築不可 | 隣地との交渉や活用方法を提案できる | 接道の解消実績 |
| 空き家 | 解体・草刈りの手配ができる | 現地対応の範囲 |
取扱件数と対応エリアを公開しているかどうかを、判断材料に使ってください。
件数を示せない業者は、実績を確かめようがありません。
1社の提示額で決めないでください。
複数社の査定額と根拠を並べ、金額だけでなく算出の考え方を比べてください。
根拠を説明できない業者は候補から外しましょう。
契約不適合責任の免責条項を確認する
契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任を指します。
買主が事業者の場合、責任を免責とする条項が置かれる場合があります。
免責が付いた場合、引渡し後に追及されるリスクは小さめです。
免責の範囲が「知りながら告げなかった事実」まで及ぶわけではありません。
告げた事案を契約書と重要事項説明書へ記載してもらえば、後から争われにくくなります。
確認する箇所は3つです。
免責の対象となる瑕疵の範囲、免責が及ばない例外の書き方、告知した事案が契約書へ反映されているかどうかです。
3つを押さえておけば、引渡し後の争点は大きく減らせます。
条項の意味が分からないまま署名しないでください。
契約書の文言は取り消しがきかないため、弁護士に内容を確認してもらってから進めましょう。
特殊清掃や残置物処分の費用負担者を確認する
特殊清掃・残置物の処分・解体の費用を売主と買主のどちらが負担するかで、手取り額は大きく変わります。
査定額とあわせて確認してください。
査定額が高くても、費用を売主負担にされると手取りは減ります。
残置物の量が多い住戸なら、処分費だけで数十万円という規模です。
金額の高さだけを見て決めると、引渡し後に想定と違う結果を招きます。
見積書で費用項目と負担者を書面にしてもらってください。
項目として挙がるのは、特殊清掃費・残置物の処分費・解体費・測量費・登記費用です。
複数社を比べるときは、査定額ではなく手取り額を並べてください。
査定額から売主負担の費用を差し引いた金額を、業者ごとに1枚の表へ書き出してください。
同じ条件で比較できる状態を作ってから決めましょう。
事故物件を売る前に確認したい注意点
売却の前に確認しておく点は次の3つです。
- 告知書に把握している事実をすべて書く
- 口頭ではなく書面で告げる
- 近隣に伝える範囲を事前に決めておく
いずれも売却後の紛争を防ぐための備えです。
判断に迷う点を自己判断で処理しないでください。
告知書には把握している事実をすべて書く
告知書(物件状況等報告書)とは、売主が把握している事実を仲介業者と買主へ伝える書面を指します。
記載が不十分だと、後から責任を問われます。
売買契約用の告知書には、主要な不動産関係団体の様式で事件・事故などの項目が最初から用意ずみです。
項目が用意されている以上、空欄のまま出せば「該当なし」と伝えたのと同じ意味になります。
故意に告知しなかった場合は民事上の責任を問われる可能性があります。
迷った事案も書いたうえで、告げる必要があるかどうかを業者に判断してもらってください。
書いて相談する順序を守れば、売主側の落ち度は残りにくくなります。
書き方に迷ったときは、時期・場所・死因・特殊清掃の有無を1行ずつ並べてください。
文章として整えようとすると、かえって事実があいまいになります。
記入した告知書は、提出前に写しを取って保管してください。
口頭ではなく書面で告げる
ガイドラインは、事案の存在を告げる際、後日のトラブル防止の観点から書面の交付によることが望ましいとしています。
口頭だけでは伝えた事実の証明が困難です。
内覧の場で説明したつもりでも、買主が「聞いていない」と主張すれば水掛け論になります。
重要事項説明書や告知書へ記載を残し、写しを手元に保管してください。
契約が済んだ後に新たな事実を知った場合も、告げずに引き渡せば責任を問われる可能性があります。
契約が済んだから終わりではありません。
引渡しまでに判明した事実は、判明した時点で伝えてください。
伝える手段は、仲介業者を通した書面が確実です。
売主から買主へ直接連絡すると、記録が残らないうえに感情的なやり取りになりかねません。
追加で告げた内容も、写しを取って保管しておきましょう。
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
売却活動で近隣に伝える範囲を事前に決めておく
売却活動の中で近隣から事情を尋ねられる場面に備え、どこまで話すかを仲介業者と事前にすり合わせておきましょう。
ガイドラインは、近隣住民への聞き込みや過去の報道の調査に慎重な対応を求めています。
正確性の確認が難しいうえ、遺族の名誉と生活の平穏を侵害しかねないためです。
売主自身が近隣へ説明する場合も、同じ配慮が要ります。
内覧時に買主から質問された場合の答え方も、業者と決めておいてください。
近隣との関係が悪化すると売却活動自体が滞ります。
近隣が買主へ独自の説明をした結果、話がまとまらなくなる例もあります。
対応方針を書面で共有し、担当者が代わっても同じ説明ができる状態にしておきましょう。
決めておくのは、誰が答えるか、どこまで答えるか、答えられない質問をどう扱うかの3点です。
事故物件の売却の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう
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事故物件に関するよくある質問
事故物件かどうかは自分で調べられる?
民間の事故物件情報サイトや過去の報道を使えば、ある程度は調べられます。
投稿内容の正確性は保証されていません。
確実なのは、売主・管理会社へ直接確認する方法です。
売買では告知書で確認できます。
一度誰かが住んだら告知義務はなくなる?
「入居者が1人挟まれば不要になる」というルールは、ガイドラインに存在しません。
賃貸で告知不要となる基準は、発覚からおおむね3年の経過です。
売買には期間の定めがないため、入居者の有無に関係なく告げる必要があります。
建物を解体して土地だけにすれば告知しなくていい?
ガイドラインは、建物を取り壊した後の土地取引を対象に含めていません。
対象外は「告げなくてよい」という意味ではなく、判断の基準がない状態を指します。
解体前に仲介業者と弁護士へ確認してください。
事故物件を売ると税金の扱いは変わる?
譲渡所得の計算方法は通常の不動産と同じです。
売却価格が下がれば譲渡所得も減るため、結果として税額が下がる場合があります。
相続した空き家の売却では特例の対象になる場合があるため、税理士に確認してください。
【参考元】国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
お祓いやリフォームをすれば告知しなくてよくなる?
お祓いやリフォームで告知義務は消えません。
告知の要否を決めるのは、事案の内容と経過期間です。
室内の状態を整えれば、買主の心理的な抵抗を和らげる効果は見込めます。
告知とは別の目的で検討してください。
まとめ|事故物件の売買に告知の期間制限はなく年数が経っても告げる
事故物件は心理的瑕疵のある物件を指し、訳あり物件の5類型のなかでは、建物の欠陥や周辺環境の問題とは別の枠に入ります。
判断の基準になるのは、国土交通省が令和3年10月に策定したガイドラインです。
告げなくてよいのは3つの場合です。
自然死と日常生活の中での不慮の死、賃貸で発覚からおおむね3年が経過した場合、隣接住戸で起きた場合が当たります。
売買には期間の定めがありません。
年数が経っていても告げる前提で準備してください。
隠して売れば、代金の減額や契約の解除を求められる可能性があります。
売主が事実を知りながら告げなかった場合は、1年の通知期間にも守られません。
告知の要否に迷う事案は自己判断で省かず、仲介業者と弁護士へ事実を伝えて相談しましょう。
【参考元】国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
迷う場合は、「ベンナビ不動産売却」で無料査定を依頼してみてください。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。