事故物件

孤独死は事故物件になる?国の基準でわかる該当ケースと売却の進め方

孤独死は事故物件になる?国の基準でわかる該当ケースと売却の進め方

一人暮らしだった親が自宅で亡くなり、実家を相続して売ろうとしたところで手が止まった。
所有するアパートの一室で入居者が亡くなり、次の募集をどうすべきか決めかねている。
売却や募集を考え始めた場面で最初に浮かぶのが、「うちの物件は事故物件と呼ばれてしまうのか」という問いです。

事故物件という言葉に法律上の定義はありません。
取引の場で拠りどころになっているのは、2021年10月に国土交通省が公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」です。
同じ孤独死でも、ガイドラインに照らすと扱いが分かれます。

本記事では、告げる必要が生じるケースとそうでないケースの線引きを最初に示します。
そのうえで日数の考え方、買主へ伝える内容と期間、よく語られる回避策の実際を順に整理し、売却の進め方まで解説する構成です。
読み終えるころには、自分の物件がどちらに当てはまるかを自分で判定できる状態になります。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

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孤独死があっただけで事故物件と決まるわけではない

孤独死が起きたという事実そのものが、住まいを事故物件にするわけではありません。
国土交通省のガイドラインは、老衰や病死などの自然死と、日常生活の中で生じた不慮の死について、売買・賃貸のいずれでも原則として告げなくてよいと整理しています。

分かれ目になるのは2つです。
ひとつは死因が自然死や日常生活の中での不慮の死に当たるかどうか、もうひとつは発見が遅れたことなどに伴って特殊清掃や大規模なリフォームが行われたかどうかです。
2つの分かれ目を確かめれば、判断の入口には立てます。

孤独死という語は、統計や報道で使われる言葉であって、不動産取引の制度用語ではありません。
ガイドラインの本文にも孤独死という区分は登場せず、死因と事後の対応で扱いが決まる構造です。

まずは、死の種類ごとに扱いがどう分かれるかを確認します。

死の種類売買での扱い賃貸での扱い根拠
自然死[老衰・病死]原則として告げなくてよい原則として告げなくてよいガイドライン4.(1)①
日常生活の中での不慮の死[転落・溺死・誤嚥]原則として告げなくてよい原則として告げなくてよいガイドライン4.(1)①
上記の死で特殊清掃等が行われた場合重要な影響を及ぼす場合は告げる発覚から概ね3年は告げるガイドライン4.(1)②・4.(2)
自然死等に当たらない死[自死・他殺]重要な影響を及ぼす場合は告げる発覚から概ね3年は告げるガイドライン4.(1)②・4.(2)
隣接住戸で起きた事案原則として告げなくてよい原則として告げなくてよいガイドライン4.(1)③

【参考】宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省

事故物件という言葉に法律上の定義はない

事故物件を定義した条文は存在しません。
取引の実務では、買主や借主が契約するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす心理的瑕疵があるかどうかで扱われています。
心理的瑕疵(しんりてきかし)とは取引の対象になる不動産の欠陥のうち、買主や借主が心理的な抵抗を覚える事情を指す言葉です。

雨漏りのように目で確かめられる欠陥と違い、心理的瑕疵は物件の状態には現れません。
そのため、どこまでが該当するかの線引きは当事者によってばらつきやすい領域でした。

ガイドラインは、心理的瑕疵は時間の経過とともに希釈され、やがて消滅するとの裁判例があることにも触れています。
つまり、いったん該当したら永久に固定されるという性質のものではないという理解が前提です。

自分の物件を考えるときは、事故物件かどうかという分類で悩むより、買主に告げる必要があるかどうかで考えるほうが答えを出しやすくなります。

判断の拠りどころは国土交通省が示したガイドラインになる

2021年10月に国土交通省が公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が、不動産会社の対応の一般的な基準になっています。
過去の裁判例と取引実務を踏まえ、宅地建物取引業者が負うべき義務の解釈を整理したものです。

注意したいのは、ガイドラインが法律そのものではない点です。
示された対応を行わなかったことだけで直ちに宅地建物取引業法違反になるわけではありません。
ただしトラブルになった場合には、行政庁の監督にあたって参考にされます。

対象になる不動産の範囲も定められています。
ガイドラインが扱うのは住宅として用いられる不動産、いわゆる居住用不動産です。
事務所などとして使われる不動産は対象外に置かれました。
契約の判断に与える影響が一様でないという理由からです。

自分の物件の扱いを調べるときは、不動産会社の説明ページより先に、ガイドライン原文を確かめるのが確実です。

自然死と日常生活の中での不慮の死は原則として告げなくてよい

ガイドラインが「告げなくてもよい場合」の筆頭に挙げているのが、自然死と日常生活の中での不慮の死です。
老衰や持病による病死は自然死に当たり、居住用の不動産で起きることが当然に予想されるものとして扱われています。

日常生活の中での不慮の死についても、具体例が示されています。
自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥といった事故死がこれに当たり、自然死と同様に原則として告げなくてよいとされました。

根拠として2つのことが挙げられています。
人口動態統計で自宅での死亡のうち老衰や病死が9割を占めるという一般性と、自然死について心理的瑕疵への該当を否定した裁判例が存在することです。

ただし但書があります。
自然死や日常生活の中での不慮の死であっても、長期間にわたって人知れず放置されたことなどに伴い特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、別の扱いに移ります。

孤独死が事故物件として扱われる3つのケース

孤独死が事故物件として扱われる3つのケース

告げる必要が生じるのは、次の3つのいずれかに当てはまる場合です。
ひとつでも該当すれば対象になります。

  • 特殊清掃や大規模リフォームが行われた
  • 死因が自然死や日常生活の中での不慮の死に当たらない
  • 事件性や周知性が特に高い事案に当たる

発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームが行われた

自然死であっても、長期間にわたって人知れず放置されたことなどに伴い特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は例外に移ります。
買主が契約するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるとして、告げる対象になるためです。
判定の中心はここにあります。

特殊清掃とは孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスを指します。
特殊清掃の定義は、ガイドラインの脚注が総務省行政評価局の調査報告書から引いているものです。

通常のハウスクリーニングとの違いは、体液や臭気への対応が必要になるかどうかにあります。
床材の下まで浸透した汚れを取り除く、専用の薬剤で消臭処理をするといった作業が入るなら、扱いは特殊清掃です。

特殊清掃を依頼したかどうかは、請求書や管理会社の記録で確かめられます。
判定に迷ったら、まず手元の資料を探すところから始めてください。

【参考】宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省

死因に事件性があり自然死に当たらない

死因が自死や他殺の場合は、自然死にも日常生活の中での不慮の死にも当たりません。
自死や他殺の場合は特殊清掃の有無にかかわらず、告げる対象になります。
ガイドラインが死因として挙げているのは、自然死・他殺・自死・事故死等の別です。

一人暮らしの人が室内で亡くなった場合、警察が扱う死体として検視が行われることがあります。
死因を判断するのは遺族ではなく、警察や医師です。
手元の書類に記載された死因を確かめるのが出発点になります。

警察庁の統計によれば、令和6年中に警察が取り扱った死体は20万4,184体でした。
自宅で死亡した一人暮らしの人は7万6,020体で、全体の37.2%にあたります。
室内での死亡が警察の扱いになること自体は、珍しいことではありません。

なお、売主・貸主・管理会社に照会しても死因が不明であると回答された場合は、不明である旨を告げれば足りると整理されています。

【参考】令和6年中における警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者について|警察庁

事件性や周知性が特に高い事案に当たる

ガイドラインは複数の箇所で、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではないという但書を置いています。
原則として告げなくてよいとされる場面でも、但書に当たれば例外として扱われます。

周知性とは事案がどれだけ広く知られているかの度合いです。
近隣住民のあいだで事情が広く知られている状態は、周知性が高いと評価される可能性があります。
自分の物件について近隣がどこまで把握しているかは、事前に確かめておきたい判断の材料です。

同じ孤独死でも、報道された事案かどうかで扱いが変わる場合があります。
地域のニュースとして取り上げられた、インターネット上に記録が残っているといった事情があれば、原則の側ではなく例外の側で考えるほうが安全です。

判断に迷う場合は、把握している事情を不動産会社に伝えたうえで対応を決めてください。

死後何日で事故物件になるという日数の基準は示されていない

「何日以内なら大丈夫」という基準を探している方は多いのですが、ガイドラインに日数の定めはありません。
確認すべきは次の3点です。

  • ガイドラインが線を引いている位置
  • 発見までの日数の実際の分布
  • 同じ日数でも結果が変わる条件

ガイドラインは日数ではなく特殊清掃等の有無で線を引いている

ガイドラインが告げる対象を分けている基準は、経過日数ではありません。
長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、特殊清掃等が行われたかどうかです。
原文は「長期間」としか書いておらず、何日という数値は定めていません。

インターネット上でよく見かけるのは、夏場は数日、冬場は2週間程度で事故物件に当たるといった説明です。
日数の目安は特殊清掃の業者や不動産会社が実務の経験から示しているものであって、ガイドラインに書かれている内容ではありません。

目安として参考にする分には差し支えありませんが、日数だけを根拠に「うちは3日で見つかったから該当しない」と結論づけるのは早計です。
判定を左右するのは、実際に特殊清掃が必要になったかどうかという事実のほうです。

日数を探すより、当時の作業内容を確認するほうが早く答えが出ます。

発見までの平均日数は19日で3日以内の発見は4割に届かない

日本少額短期保険協会が孤独死保険の支払データを集計した「第10回孤独死現状レポート」によれば、孤独死の発見までの平均日数は19日です。
男性が19日、女性が17日という内訳になっています。

同レポートで発見までの日数の分布を見ると、3日以内に発見された割合は37.0%でした。
15日以上が経過してから発見された事案は3割を超えており、早期に見つかるとは限らない実態が読み取れます。

発見までの日数割合
3日以内37.0%
4日〜14日28.3%
15日〜29日15.4%
30日〜89日15.8%
90日以上3.5%

第一発見者の内訳も参考になります。
不動産管理会社や大家などの職業上の関係者が50.4%を占め、親族や友人・知人といった近親者は33.6%にとどまりました。
所有者が現地に住んでいない場合、発見の起点は管理側になりやすいということです。

日数は、腐敗の進み方を通じて特殊清掃の要否に影響します。
判定の直接の基準ではありませんが、無関係でもありません。

【参考】第10回孤独死現状レポート|日本少額短期保険協会

同じ日数でも季節や室内の状況で扱いが変わる

同じ経過日数であっても、特殊清掃が必要になるかどうかは条件によって変わります。
気温の高い時期と低い時期では進み方が異なり、暖房が入ったままだった場合は冬でも夏に近い状態になることがあります。

室内の状況も結果を左右する要素です。
畳やカーペットのように吸い込みやすい床材か、フローリングやタイルのように表面で止まる床材かで、原状回復の規模が変わります。
臭気が壁の内側まで達していれば、清掃だけでは収まらずリフォームに進みます。

つまり、他人の事例をそのまま自分に当てはめることは困難です。
「1週間で見つかったが特殊清掃は不要だった」という話も、「3日でも清掃が必要だった」という話も、どちらもありえます。

自分のケースの扱いは、管理会社や清掃業者に作業内容を確認したうえで、不動産会社と相談して決めるのが確実です。

事故物件として扱う場合に買主へ伝える内容

告げると決めたら、次は何をどこまで伝えるかです。
伝える範囲には限りがあり、故人や遺族の個人的な情報まで開示する必要はありません。

  • 伝えるのは発生時期・場所・死因・特殊清掃の4点
  • 氏名や具体的な死の様子は伝える必要がない
  • 分からない点は分からないと伝えれば足りる

伝えるのは発生時期・場所・死因・特殊清掃の4点

告げる場合の内容は4つに整理されています。
事案の発生時期、場所、死因、特殊清掃等が行われた旨です。
特殊清掃等が行われた場合の時期は、発生時期ではなく発覚時期を伝えます。

項目伝える内容不明な場合の扱い
発生時期亡くなった時期[特殊清掃等があれば発覚時期]不明である旨を告げれば足りる
場所建物内のどこで起きたか不明である旨を告げれば足りる
死因自然死・他殺・自死・事故死等の別不明である旨を告げれば足りる
特殊清掃等特殊清掃や大規模リフォームを行ったか不明である旨を告げれば足りる

伝え方にも決まりがあります。
売主・貸主・管理会社に照会した内容は、そのまま告げるべき対象です。
聞き取った内容を売主の判断で和らげたり、一部を省いたりすることは想定されていません。

後日のトラブルを防ぐ観点から、口頭ではなく書面の交付等によることが望ましいとも述べられています。
売買契約書や重要事項説明書に記載してもらい、控えを手元に残しておくことが、後から説明の内容を示す備えです。

死因の欄には、自然死・他殺・自死・事故死等の別を記載します。
医師や警察から伝えられた内容をそのまま用い、遺族の推測で埋めることはしません。
場所についても、伝えるのは居室か浴室かといった建物内の位置までです。

氏名や具体的な死の様子まで伝える必要はない

告げる際に、氏名や年齢、住所や家族構成、具体的な死の態様や発見状況までを伝える必要はありません。
ガイドラインは、亡くなった方やその遺族等の名誉および生活の平穏に十分配慮し、名誉と平穏を不当に侵害することのないようにする必要があると定めています。

買主に伝わるのは、取引の判断に必要な範囲だけです。
故人がどのような経緯で一人暮らしになったのか、親族との関係がどうだったのかといった事情まで説明する義務はありません。

近隣に事情が広まることを心配される方もいますが、告げる相手は取引の相手方です。
不動産会社が近隣へ触れ回るわけではなく、周知の範囲とは別の話になります。

伝える内容が4点に限られているとわかるだけでも、売却に踏み出しやすくなります。

分からない点は分からないと伝えれば足りる

相続した物件では、当時の状況を知る人がすでにいないことがあります。
当時の事情をたどれない場合に備えて、照会しても不明と回答された場合や無回答の場合は、不明である旨を告げれば足りるという扱いが用意されています。

不動産会社の側にも、無制限の調査義務が課されているわけではありません。
人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情がないのであれば、自発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められないと整理されています。

とはいえ、売主が知っている事実を伏せてよいという意味ではありません。
売主が把握している情報が買主へ適切に告げられるかどうかは、売主から不動産会社へ渡される情報で決まります。

管理会社や近隣から得られた情報は、整理せずそのまま不動産会社へ渡すのが安全です。

孤独死があった物件の告知はいつまで必要になるのか

告げる必要がいつまで続くのかは、売買と賃貸で扱いが分かれます。
期間の目安が置かれているのは賃貸だけです。

  • 賃貸は発覚から概ね3年で告げなくてよくなる
  • 売買には経過期間による基準が置かれていない
  • 問われた場合は期間に関係なく答える必要がある

賃貸は発覚から概ね3年を過ぎると告げなくてよくなる

賃貸借取引には期間の目安があります。
自然死以外の死が発生した場合、または特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年を経過した後は、原則として借主に告げなくてよいとされています。
起算点は死の発生または発覚の時点で、終期が概ね3年です。

対象の範囲にも定めがあります。
借主が日常生活において通常使用する共用部分は、賃貸借取引の対象不動産と同様に扱われます。
対象は、共用の玄関やエレベーター、廊下や階段のうち日常的に使うと考えられる部分です。

一方で、隣接住戸や、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で起きた事案は、賃貸・売買のいずれでも原則として告げなくてよいとされています。
同じ建物内で起きた事案でも、場所によって扱いが変わります。

ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は例外です。

売買には経過期間による基準が置かれていない

ガイドラインは、賃貸借取引についてのみ経過期間の目安を示しています。
売買取引には、年数による免除の基準が置かれていません。
売買と賃貸の違いは誤解が広がりやすいところです。

ガイドラインの構造を見ると、告げなくてよい場合として3つの類型が並んでいます。
自然死等の類型と隣接住戸等の類型は売買にも適用されますが、概ね3年という類型は賃貸借取引に限った定めです。

インターネット上では「売買は時効がない」という表現をよく見かけます。
正確には、時効が定められていないというより、経過期間の基準そのものが示されていない状態です。
永久に義務が続くとガイドラインが述べているわけでもありません。

売買では、年数の経過を待つのではなく、買主の判断に重要な影響を及ぼすかどうかで個別に考える必要があります。

買主から問われた場合は期間に関係なく答える必要がある

原則として告げなくてよいとされる事案であっても、答える必要が生じる場面があります。
買主や借主から事案の有無について問われた場合です。
問われた場合は、発覚からの経過期間や死因にかかわらず、調査を通じて判明した点を告げる必要があります。

ガイドラインは、問われた場合と、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合を、原則の例外として明記しています。

内覧の場では、買主から前の所有者について尋ねられることも普通です。
売主が不動産会社に事実を伝えていなければ、その場で答えられず不信を招きます。
事前に共有しておくのが結果的に近道です。

年数の経過だけを根拠に判断せず、問い合わせがあったかどうかを合わせて確認してください。

手を加えれば事故物件でなくなるという3つの誤解

手を加えれば事故物件でなくなるという3つの誤解

費用をかける前に確かめておきたい点があります。
よく語られる回避策には、期待した効果が得られないものが含まれます。

  • 解体して更地にしても扱いが定まったわけではない
  • 特殊清掃やリフォームをしても事案そのものは消えない
  • 誰かが一度住んでも告げなくてよくなるとは限らない

解体して更地にしても扱いが定まったわけではない

建物を解体すれば事故物件でなくなる、という説明を見かけることがあります。
人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱いは、実際にはガイドラインの対象外です。
裁判例や不動産取引の実務の蓄積がないとして、現時点では対象としていないと明記されています。

対象としていないという位置づけは、告げなくてよいという結論とは異なります。
基準が示されていないため、個別の事情に応じて判断せざるをえない領域が残っているという意味です。
解体すれば安全という読み方はできません。

費用の面でも慎重に判断したいところです。
木造住宅の解体には数百万円規模の費用がかかることがあり、建物がなくなると住宅用地の特例から外れて固定資産税の負担が上がる場合もあります。

解体するかどうかは、査定額の見込みと合わせて決めるのが順序です。

特殊清掃やリフォームをしても事案そのものは消えない

特殊清掃や大規模リフォームは、室内の状態を元に戻すための作業です。
ガイドラインでは、特殊清掃等が行われた旨そのものが告げる内容の1項目に挙げられています。
実施したことが扱いを軽くする方向には働きません。

費用の目安も押さえておいてください。
日本少額短期保険協会の集計によれば、原状回復費用の平均損害額は49万4,344円、遺品整理(残置物処理)費用の平均損害額は29万4,131円です。
原状回復費用の最大額は756万4,673円に達しています。

いずれも孤独死保険の支払データに基づく数値であり、賃貸住宅の居室が対象です。
持ち家の一戸建てにそのまま当てはまるわけではありませんが、規模感の参考にはなります。

買主が現況を確認したうえで判断する買取であれば、清掃前の状態でも相談が可能です。
作業を発注する前に、金額の見当をつけておく手もあります。

【参考】第10回孤独死現状レポート|日本少額短期保険協会

誰かが一度住めば告げなくてよくなるとは限らない

一度誰かに貸してから売れば告げる必要がなくなる、という説明も流通しています。
しかし、第三者が住んだという事実そのものが売買での扱いを変える仕組みは、ガイドラインには置かれていません。

賃貸で概ね3年という目安があるのは、あくまで賃貸借取引についての整理です。
売買では経過期間の基準自体が示されていないため、間に入居者を挟んでも売却時の判断材料は変わりません。

さらに、事件性や周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は、期間の経過にかかわらず告げる対象が残ります。
事件性や周知性に関する但書は、賃貸にも売買にも共通の定めです。

買主から問われた場合には答える必要がある以上、住み替えを挟んだとしても説明の準備は必要になります。

伝えずに売ったときに問われる責任

告げるべき事案を伝えないまま売却した場合、責任は2つの立場それぞれに生じます。
売主が負う責任と、仲介や買取に入った不動産会社が負う責任は、別々の根拠に立っています。

立場根拠となる法律問われる内容
売主民法[契約不適合責任]追完・代金減額・損害賠償・契約の解除
不動産会社宅地建物取引業法重要な事実を故意に告げない行為の禁止

ガイドラインも、対応を行った場合であっても民事上の責任を回避できるものではないという立場です。
ガイドラインを守れば免責されるという構造にはなっていません。

売主が不動産会社へ事実を伝えることが、2つの責任を避ける出発点になります。

売主にとって特に重いのは、売却が終わった後も責任が残る点です。
代金を受け取り引き渡しを終えた段階では完結せず、買主が事情を知った時点で請求が始まります。
数年後に連絡が来る可能性を織り込んでおく必要があります。

売主は契約解除や損害賠償を求められることがある

引き渡された不動産が契約の内容に適合しないものであるとき、買主は売主に対して4つの手段を取ることができます。
修補などの履行の追完を求める、代金の減額を求める、損害賠償を請求する、契約を解除するという内容です。

心理的瑕疵は目で見て確かめられないため、引き渡しの後に発覚する経路が典型です。
買主が入居してから近隣の住民に事情を聞かされ、入居後に初めて知るという流れが実際に起きています。

告げなかったことが問題になれば、売却代金を受け取った後で減額や賠償を求められる可能性があります。
売却が終わった時点で完結しないという点が、事実を伏せて売ることの大きなリスクです。

売買契約書に事案を明記して交付しておくことが、後日の争いを避ける手段になります。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

不動産会社は重要な事実を告げない行為を禁じられている

宅地建物取引業者には、故意に事実を告げない行為や不実のことを告げる行為の禁止が課されています。
対象は取引物件や取引条件に関する事項のうち、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものです。
孤独死の事案がこれに当たると考えられる場合、不動産会社には告げる必要が生じます。

ガイドラインは、告知義務の解釈基準として作られました。
ガイドラインで示した対応を行わなかったことだけで直ちに違反となるわけではないものの、トラブルになった場合には行政庁の監督にあたって参考にされます。

重要なのは、不動産会社が把握できる情報には限りがあるという点です。
売主が事実を伝えなければ、調査の過程で把握できないまま取引が進むこともあります。

自分の物件で起きたことは、査定を依頼する段階で伝えておくのが確実です。

【参考】宅地建物取引業法|e-Gov 法令検索

孤独死があった物件の売却価格はどのくらい下がるのか

孤独死があった物件の価格について、国や自治体が公表している統計はありません。
参考になるのは、事故物件を扱う不動産会社が自社の取引経験から示している目安です。

事故物件を扱う不動産会社が示す目安は2段階です。
遺体の発見が早かった物件で10%程度、発見が遅れた物件や死因が他殺だった物件で20%〜30%程度の下落としています。
別の公表では1割〜2割という幅も示されており、いずれも各社の取引実績に基づく見解です。

幅が大きいのは、特殊清掃の有無と立地の需要で結果が変わるためです。
同じ孤独死でも、駅に近い物件と交通の便が悪い物件では買い手の集まり方が違います。

要素価格が下がりにくい場合価格が下がりやすい場合
特殊清掃実施していない実施した
死因自然死自死・他殺
立地の需要駅近・都市部交通の便が悪い
建物の状態損傷が残っていない床材・壁に損傷が残る

目安はあくまで目安です。
複数社の査定額を並べて確かめる必要があります。

特殊清掃が入ったかどうかで下がり方が変わる

特殊清掃が必要になった物件は、告げる対象になるうえに室内の損傷も伴います。
告知と損傷の2つが重なるため、早期に発見された物件より価格の下がり方は大きくなりやすい傾向にあります。

告げる対象になるかどうかは、買い手の母数を左右する要素です。
事情を聞いたうえで検討する買主は限られるため、購入希望者の数が減れば価格の交渉力も下がります。

原状回復にかかる費用も、不動産会社は査定額に織り込みます。
日本少額短期保険協会の集計では原状回復費用の平均損害額が49万4,344円、最大額は756万4,673円でした。
買取であれば、原状回復費用を見込んだうえで金額が提示されます。

清掃が済んでいるか未実施かで買い手の見方が変わるため、査定を受ける前に作業の記録を揃えておいてください。

仲介と買取では買い手の性質が違う

売却の方法は大きく2つに分かれます。
仲介は不動産会社に買主を探してもらう方法で、買取は不動産会社が直接買主になる方法です。
買い手の性質が異なるため、向いている場面も変わります。

方法買い手売却までの期間価格の傾向向いている場面
仲介自分で住む個人3ヵ月〜6ヵ月程度市場価格に近い時間に余裕があり事情が軽い場合
買取不動産会社数日〜1ヵ月程度仲介より低くなりやすい早く手放したい場合・事情が重い場合

買取では、契約不適合責任を免責とする契約形態を取る会社があります。
引き渡した後で買主から責任を追及される心配を減らせる点は、事情のある物件では大きな利点です。

告げる相手が変わる点も見落とせません。
仲介では自分で住む個人が相手になるため、事情の受け止め方は人によって幅があります。
買取で相手になるのは不動産会社で、提示される金額は事情を織り込んだものです。

どちらが有利かは、物件の立地と急ぎ具合で変わります。
両方の見積もりを取って比べるところから始めてください。

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孤独死と事故物件に関するよくある質問

Q

孤独死で事故物件になるのは死後何日から?

A

日数の基準は示されていません。
国土交通省のガイドラインが線を引いているのは、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い特殊清掃等が行われたかどうかです。
夏場は数日、冬場は2週間程度という説明は実務上の目安であり、公的な基準ではありません。
実際に特殊清掃を依頼したかどうかで判断してください。

Q

賃貸の入居者が孤独死した場合も同じ扱いになる?

A

賃貸には期間の目安があり、売買とは扱いが分かれます。
賃貸借取引では、自然死以外の死または特殊清掃等が行われることとなった死の発覚から概ね3年を経過した後は、原則として借主に告げなくてよいとされています。
売買に経過期間の基準は置かれていない点が違いです。

Q

事故物件を紹介するサイトに載っていたら売れなくなる?

A

掲載の有無と、告げる必要があるかどうかは別の話です。
事案が広く知られている状態は周知性が高いと評価される可能性があり、告げる判断には影響します。
買主が事前に調べて把握しているケースもあるため、掲載されている場合は不動産会社へ先に伝えておくのが安全です。

Q

相続放棄をすれば孤独死のあった家の管理を免れる?

A

相続放棄をしても、管理の負担がすぐに消えるとは限りません。
放棄した時点で対象の不動産を現に占有していた場合は、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が残ります。
相続放棄には自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月という期限もあるため、家庭裁判所や専門家に早めに相談してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索

まとめ|孤独死は特殊清掃の有無と死因で事故物件かどうかが決まる

孤独死が起きたという事実だけで、住まいが事故物件になるわけではありません。
国土交通省のガイドラインは、自然死と日常生活の中での不慮の死を原則として告げなくてよい範囲に置いています。
告げる対象になるのは、特殊清掃等が行われた場合や死因が自然死に当たらない場合です。

日数の基準は示されていません。
買主へ伝えるのは発生時期・場所・死因・特殊清掃の4点で、氏名や具体的な死の様子まで開示する必要はありません。
期間の目安が置かれているのは賃貸だけで、売買は年数の経過だけで判断できない領域です。

解体やリフォームを先に決める前に、まず査定で金額の見当をつける順序をおすすめします。
作業に費用をかけた後で、現況のままでも同等の金額がついたとわかる例があるためです。

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判定に迷う段階でも相談できるので、次の一歩として活用してください。

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監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。