【専門の業者への依頼】がおすすめ!
事故物件の買取相場はいくら?売却の流れ5ステップと業者の選び方を解説
相続した実家やマンションが事故物件になり、売れるのかどうかわからないまま時間が過ぎていませんか。
結論から言えば、事故物件は専門の買取業者に依頼すれば現状のまま売却できる可能性があります。
買取価格の目安は、仲介で売れると想定される価格の7割から8割です。
本記事では、該当判定・相場・手順・業者の選び方・告知義務までを解説します。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
【専門の業者への依頼】がおすすめ!
事故物件の買取とは
買取とは、不動産会社が自ら買い主になって物件を買い取る売却方法です。
これに対して仲介は、不動産会社が買い主を探してきて取引を成立させる方法を指します。
事故物件は一般の買い主が心理的な抵抗を持ちやすく、仲介では売り出してから成約まで期間が延びがちです。
買い手探しの工程がない買取は、事故物件と相性のよい方法だといえます。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 買い主 | 不動産会社 | 一般の個人・法人 |
| 売却価格 | 仲介想定価格の7割〜8割 | 市場価格に近い |
| 売却期間 | 1週間〜1ヵ月 | 3ヵ月〜6ヵ月 |
| 仲介手数料 | かからない | かかる |
| 契約不適合責任 | 免責の特約を結べることが多い | 原則として売主が負う |
| 広告掲載・内覧 | なし | あり |
| 現状のまま売れるか | 売れる | 清掃・修繕を求められることがある |
価格を優先するなら仲介、期間と確実性を優先するなら買取という住み分けになります。
買取は不動産会社が直接の買い主になる
買取では、査定を出した不動産会社がそのまま買い主になります。
業者は買い取った物件を自社で特殊清掃やリフォームにかけ、再販や賃貸で運用して利益を出す仕組みです。
買い手を探す売却活動が発生しないため、査定の依頼から代金の受け取りまでは1週間から1ヵ月程度で完了します。
もう一つの特徴が、仲介手数料の扱いです。
仲介手数料は不動産会社が売主と買主の間を取り持った報酬として受け取るものなので、業者自身が買い主になる買取では発生しません。
売却にかかる諸費用は、登記費用と印紙代、譲渡所得が出た場合の税金が中心です。
買取業者は再販できるかどうかで判断するため、築年数の古い建物や室内の汚損が残る物件でも検討の対象になります。
一般の買い主なら購入を見送る状態でも、原状回復の見積もりが立てば買い取れるという点が、仲介との根本的な違いです。
仲介は一般の買い手を探して売る
仲介では、不動産会社と媒介契約を結んだうえで売却活動が始まります。
ポータルサイトへの掲載やチラシの配布で買い手を募り、内覧を経て売買契約、決済という流れです。
一般的な住宅で売却期間は3ヵ月から6ヵ月かかり、事故物件ではさらに長引く傾向があります。
期間が延びる理由は、募集図面や広告に「告知事項あり」と表示する必要があるためです。
告知事項ありの表示が付くと問い合わせの数は目に見えて減り、内覧まで進んでも成約に至らない事態が起こります。
売り出し価格を段階的に下げていくうちに、当初の想定を大きく割り込むことも珍しくありません。
買い手が見つかれば、市場価格に近い金額で売れる可能性が残る点は仲介の強みです。
時間に余裕があるかどうかが、仲介を選べるかどうかの分かれ目だと考えてください。
事故物件に当たるかどうかを確認する
人が亡くなった物件が全て事故物件になるわけではありません。
老衰や病死といった自然死、日常生活のなかで起きた不慮の事故による死亡は、原則として告知の対象外です。
国土交通省が2021年10月8日に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が、実務上の判断基準になっています。
該当するかどうかは、次の3つに整理すると判断しやすくなります。
- 心理的瑕疵に当たるケース
- 物理的瑕疵に当たるケース
- 事故物件に当たらないケース
心理的瑕疵に当たるケース
自殺、他殺、火災による死亡が発生した物件は、買い主が心理的な抵抗を感じる心理的瑕疵に当たります。
室内での自殺や殺人事件がその典型です。
心理的瑕疵という言葉に法律上の明確な定義はなく、買い主の意思決定に影響を与えるかどうかという観点から実務上判断されています。
注意したいのが、発生場所の扱いです。
駐車場やエレベーター、階段といった共用部分で事案が起きた場合、物件全体が事故物件として扱われることがあります。
マンションの一室を売る場合でも、建物全体の評価に影響が及ぶと考えておいてください。
報道されるほどの事件では、周辺の記憶が長く残る点も価格に影響します。
近隣住民が事案を認識しているかどうかは、業者が査定の際に現地で確認する項目の一つです。
物理的瑕疵に当たるケース
発見が遅れて特殊清掃や大規模なリフォームが必要になった場合は、死因を問わず告知の対象になります。
遺体から染み出た体液でフローリングが変色している、臭いが壁や天井に染み込んでいるといった状態が該当します。
実務上の分岐点は、特殊清掃が入ったかどうかです。
同じ孤独死でも、翌日に発見されて通常の清掃で原状回復できたのであれば、ガイドライン上は告知が不要な自然死として扱われます。
反対に、発見までに時間がかかって特殊清掃が必要になったのなら、死因が病死であっても告知の対象になります。
発見までの日数と清掃の内容は、記録として残しておいてください。
清掃業者が発行した作業報告書や見積書が、後の査定や告知の場面で客観的な資料になります。
事故物件に当たらないケース
老衰や病死などの自然死、日常生活のなかで起きた不慮の事故による死亡は、原則として告知の対象になりません。
ガイドラインは、自宅の階段からの転落死、入浴中の溺死、食事中の誤嚥による死亡を例に挙げています。
人が住む以上は当然に予想される事態であり、取引に影響を及ぼすとまではいえないという考え方です。
警察が現場に入ったからといって事故物件になるわけでもありません。
事件性がなく病死と診断されていれば、事故物件ではなく病死があった物件です。
ただし発見が遅れて特殊清掃が入った場合は、死因にかかわらず物理的瑕疵として告知の対象になります。
判断に迷うときは自己判断で値下げに応じないでください。
宅地建物取引業者に事案の内容を伝え、該当するかどうかを確認してから売却の方針を決めましょう。
事故物件の買取相場はいくらか
事故物件の買取価格は、仲介で売れると想定される価格の7割から8割が目安です。
相場を読むときは、まず通常の物件からどれだけ下がるかを押さえ、下がった価格からさらに買取分を差し引く二段構えで考えるとわかりやすくなります。
事故物件の価格に関する公的な統計は存在しません。
以下の数値は不動産会社各社が公表している目安であり、社によって幅がある点に注意してください。
- 死因別に見た仲介での下落率
- 買取価格の目安
- 買取価格を左右する3つの要素
- 相場を自分で調べる4つの方法
死因別に見た仲介での下落率
仲介での下落率は、孤独死で1割から3割、自殺で3割から5割、他殺で5割以上が目安です。
死因によって買い主の受け止め方が変わるため、下げ幅にも差が出ます。
| 死因の類型 | 下落率の目安 | 下落する理由 |
|---|---|---|
| 孤独死(特殊清掃あり) | 1割〜3割 | 清掃後も心理的な抵抗が残るため |
| 自殺 | 3割〜5割 | 買い主の忌避感が強く、購入希望者が限られるため |
| 他殺 | 5割以上 | 報道による風評が長く残り、建物全体の評価が下がるため |
自殺の場合は、亡くなった場所によっても幅が生じます。
室内・バルコニー・共用部分・敷地外という順に、室内に近いほど下げ幅は大きくなる傾向です。
公表値は各社で異なるため、自分の物件がどこに当てはまるかは実際の査定で確認しましょう。
買取価格の目安
買取価格は、仲介で売れると想定される価格の7割から8割になります。
通常時の市場価格が2,000万円のマンションで自殺があった場合、仲介での想定価格は3割から5割減の1,000万円から1,400万円です。
仲介での想定価格にさらに7割から8割を掛けた700万円から1,120万円が、買取価格のおおまかな幅になります。
業者が価格を下げるのは、再販までの危険と費用を引き受けるからです。
特殊清掃やリフォームの費用、再販できるまでの保有にかかる費用、買い手が現れない場合の在庫リスクが買取価格に織り込まれます。
ただし売主から見ると、仲介手数料や特殊清掃費、売れるまでの固定資産税が不要になる点も重要です。
手取り額で比べると、両者の差は表示価格ほど大きくならないことがあります。
買取価格を左右する3つの要素
買取価格は、物件そのものの条件、事故後の状態、事故の内容という3つで決まります。
1つ目は物件の条件です。
駅からの距離・築年数・間取り・周辺環境といった通常の査定要素は、事故物件でもそのまま価格に反映されます。
立地がよければ再販の見込みが立つため、事故の内容が重くても価格が保たれることがあります。
2つ目は事故後の状態です。
特殊清掃が済んでいるか、臭気が残っていないか、原状回復にどこまで手が入っているかを業者は現地で確認します。
3つ目は事故の内容です。
孤独死であれば気にしない買い手が一定数いますが、自殺や他殺では購入希望者の母数そのものが減ります。
報道の有無も判断材料になり、事件として広く知られた物件ほど再販までの期間は長くなります。
3つのうち売主が自分で動かせるのは2つ目だけです。
立地と事故の内容は変えられないため、原状回復の状態をどう整えるかが交渉の余地になります。
相場を自分で調べる4つの方法
査定を受ける前に、通常の物件としての相場を自分で確認しておきましょう。
基準を持たずに査定額だけを見ても、提示された金額が妥当かどうかを判断できません。
① 不動産ポータルサイトで、同じエリアの類似物件の売り出し価格を調べる
② レインズ・マーケット・インフォメーションで、実際に成約した価格を調べる
③ 国土交通省の不動産情報ライブラリで、取引価格や地価公示の情報を調べる
④ 不動産鑑定士に鑑定を依頼する
1から3は無料で使えます。
不動産情報ライブラリは2024年4月1日に運用が始まったサービスです。
従来の土地総合情報システムを引き継ぎ、取引価格に災害情報や都市計画情報を重ねて地図上で確認できます。
鑑定士への依頼は20万円から50万円程度の費用がかかるため、相続人の間で価格を争う場合など、公的な評価が必要な場面に限られます。
事故物件を買取で売る5つのメリット
買取が選ばれるのは、価格の低さと引き換えに得られるものがはっきりしているからです。
次の5つが主な利点で、それぞれに期間や費用の裏づけがあります。
買取を検討するかどうかは、5つの利点が自分にとってどれだけ価値を持つかで判断してください。
- 短期間で現金化できる
- 特殊清掃やリフォームをせずそのまま売れる
- 近隣に知られずに売却できる
- 契約不適合責任を免責にできる
- 仲介手数料がかからない
短期間で現金化できる
買い手を探す期間が不要なため、査定の依頼から決済までは1週間から1ヵ月で完了するのが一般的です。
仲介の3ヵ月から6ヵ月と比べると、期間は数分の一に縮まります。
物件情報を伝えてからの机上査定であれば、即日から3日程度で概算額が返ってくることも珍しくありません。
期限が決まっている売却では、買取と仲介の期間差が結果を左右します。
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。
納税資金を売却代金で用意するつもりなら、仲介で売り出して買い手が現れないまま期限を迎えるリスクを避けられません。
空き家のまま持ち続けると固定資産税と管理費が積み上がる点も、早期の現金化が有利に働く理由です。
マンションであれば管理費と修繕積立金が毎月かかり続けます。
特殊清掃やリフォームをせずそのまま売れる
残置物や汚損がある状態でも、現状のまま買い取る業者が多くあります。
原状回復は買い取った側が自社の施工体制でおこなうため、売主が先に手を入れる工程は不要です。
遺品や家具を室内に残したまま引き渡せる業者もあります。
売主が負担を免れる費用として大きいのが特殊清掃です。
清掃業者各社が示す費用の目安は、1Kや1Rで3万円から30万円、1LDKから3LDKで7万円から50万円、4LDK以上で20万円から60万円です。
発見までの日数と汚染の程度で大きく変動するため、実際の金額は現地見積もりで確認しましょう。
遠方に住んでいて清掃業者の手配や立ち会いが難しい場合も、買取なら窓口が一つで済みます。
遺品整理まで一括で引き受ける業者を選べば、片付けのために何度も現地へ足を運ぶ必要はありません。
交通費と休暇の負担を考えると、遠方の売主にとっては金額以上に大きい違いです。
近隣に知られずに売却できる
買取では売却活動をおこなわないため、広告掲載や内覧によって周囲に知られる心配がありません。
仲介ではポータルサイトへの掲載、チラシの配布、現地の看板、購入希望者の内覧が前提です。
売り出していること自体が近所に伝わり、事故の事実まで話題になるのを避けたいという相談は多く寄せられます。
買取は業者と売主だけの相対取引です。
現地調査も、鍵を預けて売主が立ち会わない形に対応する業者があります。
売却後の所有権移転登記は誰でも閲覧できる公開情報ですが、日常的に登記簿を確認する人はまずいません。
親族や近隣に伝えるかどうかを自分のタイミングで決められる点が、買取の実質的な価値です。
事情を説明したくない相手がいる場合には、秘匿性の高さだけでも買取を選ぶ理由になります。
契約不適合責任を免責にできる
買取では、引き渡した後に不具合が見つかっても売主が責任を負わない契約にできることが多くあります。
契約不適合責任とは引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任です。
買い主はまず修補などの追完を請求でき、追完されない場合は代金の減額を請求できます。
あわせて損害賠償の請求や契約の解除も可能です(民法562条から564条)。
仲介で個人に売った場合、売主は原則としてこの責任を負います。
引き渡しから数年後に雨漏りやシロアリ被害が見つかり、補修費を請求される事態が起こり得ます。
買取業者は宅地建物取引業者として物件の状態を評価したうえで買うため、免責の特約を結ぶことが可能です。
ただし免責が認められるのは、売主が知っている事実を隠さず伝えている場合に限られます。
告知義務を果たすことが前提だと理解してください。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
仲介手数料がかからない
買取は仲介ではないため、売買価格に応じた仲介手数料が発生しません。
仲介手数料の上限は、売買価格が800万円を超える場合は売買価格の3%に6万円と消費税を加えた額です。
1,000万円で売却したのであれば39万6,000円が上限となり、買取ではこの分がまるごと不要になります。
低価格帯では2024年7月1日に施行された報酬額の改正に注意しましょう。
売買価格が800万円以下の物件は「低廉な空家等の媒介の特例」の対象となり、上限が30万円に消費税を加えた33万円へ引き上げられました。
改正前は売主側だけに適用されていた特例が、買主側にも適用されるようになっています。
地方の戸建てなど売買価格が低い事故物件では、仲介を選ぶと手数料の負担割合が相対的に重くなります。
ただし買取価格自体が下がる以上、手数料の差だけで判断するのは避けてください。
【参考】宅地建物取引業法
事故物件を買取で売る3つのデメリット
買取には不利な面もあります。
価格が下がること、物件によっては引き受けてもらえないこと、相場を知らないまま交渉すると損をすることの3つです。
次の3点を把握したうえで、対策を打ってから交渉に臨みましょう。
いずれも事前の準備で影響を小さくできます。
- 売却価格は仲介より低くなる
- 買取を断られる物件もある
- 相場を知らないと買い叩かれる
売却価格は仲介より低くなる
買取価格が仲介想定価格の7割から8割にとどまるのは、業者が再販の危険と費用を引き受けるためです。
原状回復にかかる費用、再販できるまでの保有にかかる費用、買い手が現れない場合の在庫リスクが価格から差し引かれます。
ただし比較すべきは表示価格ではなく手取り額です。
仲介で1,000万円の物件が成約した場合、仲介手数料は39万6,000円かかります。
特殊清掃に30万円を要し、売れるまでの1年間で固定資産税を12万円負担したとすると、手取りは918万4,000円です。
買取で800万円の提示を受けた場合との差は、118万4,000円まで縮まります。
売れるまでの期間が延びるほど、価格差はさらに小さくなる計算です。
表示価格の高さだけで仲介を選ぶと、実際の手取りで逆転されかねません。
買取を断られる物件もある
再販の見込みが立たない物件は、事故物件を専門に扱う業者でも買取を断ることがあります。
断られやすいのは、需要の乏しい立地・再建築ができない土地・極端に老朽化した建物・権利関係が複雑な物件です。
事故の内容よりも、再販できるかどうかが判断を分けます。
1社に断られただけで諦めるのは早計です。
業者ごとに得意なエリアと再販の販路が異なるため、他の専門業者に当たると結果が変わることがあります。
地域密着型の業者が引き受けるケースもあるため、大手だけでなく地元の業者にも声をかけてみましょう。
それでも引き受け手が見つからない場合は、解体して更地として売る、隣地の所有者に打診する、土地であれば相続土地国庫帰属制度を検討するといった選択肢があります。
同制度は2023年4月27日に施行されました。
審査に通れば負担金を納めて土地を国に引き取ってもらえます。
負担金は原則20万円です。
相場を知らないと買い叩かれる
相場を把握しないまま1社だけと交渉すると、不当に低い価格で契約してしまうおそれがあります。
買取では業者の仕入れ価格が安いほど再販時の利益が大きくなるため、価格の妥当性を検証できるのは売主自身です。
注意すべき進め方として、売れにくさを強調して大幅な値下げを提案する、売買契約の直前になって理由を付けて減額する、その場での即決を求めるといったものがあります。
いずれも、売主が比較対象を持っていないことを前提にした手法です。
対策は単純で、3社以上に査定を依頼し、価格の根拠を書面で説明させることに尽きます。
買取実績を確認するときも、件数の多さだけを見ないでください。
自分の物件と種別やエリア、死因の類型が近い事例が載っているかどうかが判断材料になります。
事故物件は買取と仲介のどちらを選ぶべきか

判断を分ける軸は3つです。
いつまでに手放したいのか、価格と時間のどちらを優先するのか、近隣に知られたくないのか。
3つの問いに答えれば、選ぶべき方法はおおむね決まります。
どちらとも決めきれない場合の進め方も含めて、次の3つのケースで整理しました。
- 買取が向いているケース
- 仲介が向いているケース
- どちらとも決めきれないケース
買取が向いているケース
期限がある、近隣に知られたくない、現状のまま手放したいという条件のいずれかに当てはまるなら買取が向いています。
| ケース | 買取が向く理由 |
|---|---|
| 相続税の納付期限が迫っている | 1週間〜1ヵ月で現金化でき、10ヵ月の期限に間に合う |
| 遠方に住んでいて管理できない | 清掃や立ち会いの手配が不要で、現地へ行く回数を減らせる |
| 近隣や親族に知られずに処分したい | 広告掲載や内覧が発生しない |
| 特殊清掃やリフォームの費用を負担したくない | 原状回復は買い取った業者がおこなう |
| 仲介で売り出したが買い手が付かなかった | 買い手探しの工程がなく、売却先が確定する |
複数に当てはまるほど買取の適合度は高くなります。
特に期限と秘匿性の2つが重なるケースでは、価格差を考慮しても買取を選ぶ判断が合理的です。
仲介が向いているケース
時間に余裕があり、立地条件がよく、少しでも高く売りたいのであれば仲介が向いています。
| ケース | 仲介が向く理由 |
|---|---|
| 売却の期限がない | 買い手が現れるまで待てるため市場価格に近づけられる |
| 駅近など需要の強い立地 | 事故の内容が重くても購入希望者が現れやすい |
| 事故から年数が経っている | 周辺の記憶が薄れ、値下げ幅を抑えられることがある |
仲介を選ぶ場合は、事故物件の取り扱い実績がある会社に依頼してください。
告知事項のある物件の販売経験が乏しい会社に任せると、売却活動が長期化したまま値下げを重ねる結果になりかねません。
媒介契約を結ぶ前に、同種の物件を成約させた実績を確認しましょう。
売り出してから3ヵ月を目安に反応を見て、問い合わせがなければ買取へ切り替える判断も検討してください。
時間をかけたぶん高く売れるとは限らないためです。
どちらとも決めきれないケース
決めきれないときは、買取と仲介の両方に査定を出してください。
買取業者の買取価格と仲介会社の査定価格を並べれば、価格差と期間差を実額で比較できます。
査定はいずれも無料が一般的です。
比較するときは手取り額に直しましょう。
仲介の査定価格からは仲介手数料が差し引かれ、売れるまでの特殊清掃費と固定資産税も自己負担になります。
表示価格で200万円の差があっても、手取りで見た差は半分程度です。
一定期間内に売れなければ業者が約束した価格で買い取る買取保証付き仲介という選択肢もあります。
まず市場価格を狙い、駄目なら買取に切り替えるという進め方ができるため、期限が半年程度ある場合には有力な選択肢になります。
事故物件を買取で売る手順5ステップ

買取は次の5段階で進み、全体でおおむね1ヵ月かかります。
各ステップでやること、所要期間、注意点を順に見ていきましょう。
全体像を先に押さえておくと、業者とのやり取りで自分が今どの段階にいるかを見失わずに済みます。
① 物件と事故の情報を整理する(数日)
② 複数の買取業者に査定を依頼する(即日〜3日)
③ 現地調査を受けて買取価格の提示を受ける(1週間程度)
④ 条件を交渉して売買契約を結ぶ(数日〜1週間)
⑤ 決済と引き渡しをおこなう(1週間〜1ヵ月)
STEP1 物件と事故の情報を整理する
査定を依頼する前に、物件情報と事故の経緯を書き出してください。
情報が揃っているほど机上査定の精度が上がり、現地調査後の減額も起きにくくなります。
所要期間の目安は数日です。
物件情報として揃えるのは、所在地・面積・築年数・間取り・登記の名義・住宅ローンの残債です。
事案の情報としては、死因・発生した日・発見までの日数・特殊清掃の有無・警察の判断・報道の有無を書き出します。
物件が事故物件に当たるかどうかの確認も、情報を整理する段階で宅地建物取引業者におこないましょう。
不利に見える事実を伏せても、現地調査や登記、近隣への聞き取りで判明します。
先に伝えておいたほうが、結果として提示価格は安定するというのが実務上の傾向です。
特殊清掃の作業報告書や見積書が残っていれば、あわせて用意しておきましょう。
STEP2 複数の買取業者に査定を依頼する
3社以上に、同じ条件で査定を依頼してください。
各社のフォームや電話から申し込みます。
一括査定サイトを使う場合は、事故物件に対応している業者が登録されているかを先に確認しましょう。
各社がおこなうのは机上査定で、回答までは即日から3日程度です。
STEP1で整理した情報を各社に同じ内容で伝え、条件を揃えてください。
伝える内容が業者ごとに違うと、返ってきた金額を比較できなくなります。
査定を分散させる目的は正確な1社を選ぶことではなく、価格の幅をつかむことです。
極端に高い提示や低い提示があれば、金額の根拠を面談で確認する材料になります。
依頼先の候補は、全国対応の専門業者と、地域に根ざした業者を混ぜておくと比較の幅が広がります。
再販の販路が異なるぶん、提示額に差が出やすいためです。
STEP3 現地調査を受けて買取価格の提示を受ける
机上査定の結果を踏まえ、候補を絞った業者に現地調査を依頼します。
建物の状態、臭気の有無、原状回復の範囲を確認したうえで、正式な買取価格が提示されます。
所要時間は30分から1時間程度です。
近隣に知られたくない場合は、鍵を預けて立ち会わない形に対応できるかを事前に確認してください。
遠方に住んでいる場合も同様です。
日程は平日の日中に設定すると、近隣の目に触れる機会を減らせます。
価格の提示を受けたら、その場で決めずに次の4点を確認しましょう。
価格の根拠、契約不適合責任の扱い、残置物をどこまで処分してもらえるか、引き渡しの時期です。
複数社の提示が出そろってから比較してください。
机上査定から大きく減額された場合は、どの項目が理由なのかを具体的に説明してもらいましょう。
STEP4 条件を交渉して売買契約を結ぶ
売買契約の前に、価格以外の条件を確定させてください。
確認するのは、契約不適合責任の免責・手付金の額・違約金の定め・告知事項として記載される内容です。
重要事項説明は物件を取得する買い主に対しておこなわれる手続きであり(宅地建物取引業法35条)、売主は告知書(物件状況等報告書)に事案の内容を記載して伝えます。
所要期間は数日から1週間になります。
告知事項の記載内容は自分の目で確認しましょう。
記載すべきは死因の類型・発生時期・発生場所・特殊清掃の有無といった取引の判断に必要な事実です。
故人の氏名まで載せる必要はありません。
氏名や詳細な経緯の記載を求められた場合は、記載が必要となる根拠を確認してください。
遺族のプライバシーに関わる部分であり、取引の判断に不要な情報まで開示する義務はないためです。
【参考】宅地建物取引業法(e-Gov 法令検索)
STEP5 決済と引き渡しをおこなう
決済では、残代金の受け取りと所有権移転登記を同時におこないます。
当日の流れは、残代金の入金確認、司法書士による登記手続きの受任、鍵と関係書類の引き渡しという順です。
所要時間は1時間から2時間程度で、金融機関の一室でおこなうのが一般的です。
住宅ローンが残っている場合は、売却代金でローンを完済し、抵当権抹消登記を同じ日におこないます。
金融機関との事前調整が必要になるため、契約の段階で残債額と手続きの段取りを確認しておきましょう。
契約から決済までは1週間から1ヵ月かかります。
引き渡し後に固定資産税を日割りで清算する取り決めがある場合は、精算も決済日にあわせて済ませます。
売却で譲渡所得が出たときは、翌年に確定申告をおこなう準備が必要です。
決済時の書類は申告まで保管しておいてください。
事故物件の買取に必要な書類
買取では6種類前後の書類をそろえます。
取得に日数がかかるものがあるため、査定を依頼した段階から準備を始めてください。
| 書類名 | 入手先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 登記識別情報通知(登記済証) | 取得時に法務局から交付済み | 再発行できない |
| 固定資産税納税通知書 | 毎年市区町村から送付 | 紛失時は市区町村で評価証明書を取得 |
| 住民票 | 市区町村の窓口・コンビニ交付 | 発行から3ヵ月以内のものを求められる |
| 印鑑証明書 | 市区町村の窓口・コンビニ交付 | 発行から3ヵ月以内のものを求められる |
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 | 有効期限内のもの |
| 実印 | 手元で保管 | 印鑑登録が済んでいること |
住民票と印鑑証明書は有効期限が短いため、契約日が見えてから取得すると無駄がありません。
印鑑登録をしていない場合は、登録の手続きが先です。
相続した物件では、次の書類が追加で必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書
- 相続登記が完了していることがわかる登記事項証明書
戸籍謄本は本籍地の市区町村から取り寄せるため、転籍を重ねている場合は収集に1ヵ月前後かかります。
売却を決めた時点で着手しておきましょう。
登記識別情報通知は再発行できません。
紛失している場合は、司法書士に本人確認情報を作成してもらう方法で代替します。
数万円の費用と数日の期間がかかるため、見当たらないと分かった時点で業者と司法書士に相談してください。
事故物件の買取業者を選ぶ5つの基準
業者選びで見るのは次の5点です。
5点のうち免許と行政処分の履歴は、国土交通省が公開しているシステムで誰でも無料で調べられます。
価格の高さだけで選ぶと、契約直前の減額や引き渡し後のトラブルにつながりかねません。
- 事故物件の買取実績を件数と内容で確認する
- 宅地建物取引業の免許と行政処分歴を確認する
- 買取価格の根拠を説明できるか確認する
- 特殊清掃や相続手続きに対応できるか確認する
- 口コミと契約直前の減額の有無を確認する
事故物件の買取実績を件数と内容で確認する

実績は件数ではなく中身で見てください。
「買取実績5,000件」といった数字だけの表示は、自分のケースに対応できるかどうかの判断材料になりません。
確認すべきは次の4点です。
- 自分の物件と同じ種別の事例があるか
- 同じエリアで買い取った実績を持つか
- 死因の類型が近い事例を扱っているか
- 買取価格と取引時期が具体的に書かれているか
4点が載っていない実績紹介は、実質的に情報がないのと同じだと考えましょう。
問い合わせの際には「自分と近い条件の事例を教えてほしい」と尋ね、答えられるかどうかで判断してください。
答えが具体的な業者ほど、同じ類型の再販の販路を持っています。
逆に一般論しか返ってこない場合は、実績の中身が薄い可能性があります。
宅地建物取引業の免許と行政処分歴を確認する
免許と行政処分の履歴は、国土交通省の2つのシステムで別々に調べます。
2つのシステムを混同すると処分歴を見落とすため、順に確認してください。
免許情報は「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で商号から検索します。
免許番号は「国土交通大臣(3)第◯◯◯◯号」のように表示され、括弧内の数字は免許を受けた回数(新規取得と更新の合計)です。
免許の更新は5年ごとなので、括弧内が3であれば10年から15年の営業歴があると読めます。
行政処分の履歴は、企業情報検索システムには収録されていません。
処分歴を調べるには「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」の宅地建物取引業者の欄を使ってください。
業務停止や指示処分の記録が、公表期間5年、おおむね月1回の更新で掲載されています。
免許の有無と処分歴の2つが揃って初めて、業者の適格性を確認したことになります。
買取価格の根拠を説明できるか確認する
価格の内訳を説明できない業者は候補から外してください。
事故物件であることだけを理由に減額し、減額幅の根拠を示さない場合、金額の妥当性を検証できません。
尋ねるのは3つです。
周辺で同種の物件はいくらで取引されているか。
事故物件としての減額幅は何割で、何を根拠にしているのか。
原状回復にいくらを見込んでいるか。
3つの質問に具体的な数字で答えられる業者は、再販の計画を持ったうえで価格を出しています。
答えは書面で提示するよう求めましょう。
口頭のやり取りだけで進めると、契約直前に減額を持ちかけられたときに、当初の説明との食い違いを指摘しづらくなります。
査定書の形で残しておけば、他社との比較にも使えます。
減額の内訳が原状回復費に集中している場合は、見積もりの根拠まで確認してください。
特殊清掃や相続手続きに対応できるか確認する
周辺の業務まで対応できる業者を選ぶと、売主が別々に手配する手間と費用を減らせます。
対応範囲として確認したいのは、特殊清掃・遺品整理・残置物の処分・司法書士や税理士と連携した相続登記や税務申告です。
とくに士業との連携は、権利関係が複雑な物件で役立ちます。
共有名義で相続人が複数いる、被相続人の名義のまま登記が放置されている、未登記の増築部分があるといったケースでは、売買の前に登記や協議を整えなければなりません。
連携先を持つ業者であれば、登記や協議を売買と並行して進められる体制です。
窓口が一つにまとまる分、遠方に住んでいる売主の負担は目に見えて軽くなります。
清掃業者と司法書士を別々に探して日程を合わせる手間を考えると、多少の価格差なら一括対応を選ぶ合理性があります。
口コミと契約直前の減額の有無を確認する
口コミは、対応の速さや親切さではなく、提示額が最後まで維持されたかどうかを見てください。
契約直前の減額や強引な即決の要求があった業者は、同じ指摘が繰り返し書かれる傾向があります。
高評価だけが並ぶ口コミは、母数と投稿時期を確認しましょう。
件数が少なく、投稿が特定の時期に集中しているものは判断材料になりません。
実名や物件の種別まで書かれた具体的な投稿のほうが、参考になります。
実務上の防御策として有効なのは、複数社と並行して検討していることを最初に伝えておくことです。
他社の提示額と比較される前提であれば、直前の減額や即決の要求は起こりにくくなります。
口コミが少ない業者であっても、免許と行政処分歴に問題がなく、価格の根拠を書面で示せるのであれば候補から外す必要はありません。
事故物件の買取価格を下げない4つのコツ
買取価格は交渉前の準備で変わります。
やるべきこととやってはいけないことを、次の4点で整理しました。
特に2つ目の先行工事は、よかれと思って支出した費用が回収できない典型例なので注意してください。
- 3社以上に査定を依頼して比較する
- 解体やリフォームを先におこなわない
- 特殊清掃は業者に相談してから判断する
- 事故から一定期間を空けて売り出す
3社以上に査定を依頼して比較する
同じ物件でも業者によって買取価格に差が出るため、3社以上の比較を前提にしてください。
差が生まれるのは、再販の販路、自社で施工できるかどうか、対象エリアが得意かどうかが業者ごとに違うためです。
自社でリフォーム部門を持つ業者は原状回復費を安く見積もれるため、圧縮できた費用を買取価格に乗せられます。
比較するのは金額だけではありません。
契約不適合責任の扱い、残置物をどこまで処分してもらえるか、引き渡し時期を含めた条件全体で見てください。
残置物の処分費を売主負担とする業者と、価格に含める業者とでは、実質的な手取りが数十万円変わることがあります。
相見積もりであることを伝えておくと、最初から実勢に近い価格が提示されやすくなります。
解体やリフォームを先におこなわない
売主が先に解体やリフォームをおこなっても、かけた費用を上回る買取価格にはなりにくいと考えてください。
買取業者は自社の施工の体制で原状回復するため、売主が個別に発注した工事より安く仕上げられます。
売主が支出した金額がそのまま査定額に上乗せされることは、まずありません。
解体費用は木造の戸建てで1坪あたり3万円から5万円程度が目安です。
30坪なら120万円から180万円ほどで、産業廃棄物の処分費が上がっている近年は坪5万円から7万円になる工事も増えています。
更地にしたからといって、同額が買取価格に反映されるわけではない点が落とし穴です。
建物を取り壊すと、固定資産税の住宅用地特例も外れます。
特例は課税標準額を最大で6分の1に圧縮する制度です。
1月1日の時点で建物がなくなっていれば、同じ年の4月から始まる年度分の土地の固定資産税は最大でおよそ6倍になります。
売却が長引くほど負担が増える点にも注意しましょう。
解体は査定を受けてから業者と相談して決めましょう。
特殊清掃は業者に相談してから判断する
特殊清掃は、査定額を上げる場合と費用倒れになる場合の両方があります。
依頼する前に、買取業者に相談して判断してください。
臭気が残ったままだと現地調査での評価は下がります。
業者が自社で特殊清掃までおこなう前提であれば、売主が先に支出する意味は薄くなります。
清掃業者各社が公表している費用の目安は1Kや1Rで3万円から30万円、1LDKから3LDKで7万円から50万円、4LDK以上で20万円から60万円です。
査定の際に「特殊清掃を入れた場合と入れない場合で買取価格はどれだけ変わるか」を尋ねましょう。
差額が清掃費を下回るなら、そのまま引き渡したほうが手取りは多くなります。
複数社に同じ質問をすれば、回答の妥当性も検証できます。
事故から一定期間を空けて売り出す
報道された事件では、時間の経過とともに周辺の記憶が薄れ、価格が戻ることがあります。
売却を急ぐ理由がないのであれば、期間を空けるのも一つの判断です。
ただし保有し続ける費用と比べてください。
空き家のままでは固定資産税、マンションであれば管理費と修繕積立金が毎月かかります。
建物は使われないほど傷みが早く、査定額は下がっていきます。
1年待って周辺の記憶が薄れても、建物の劣化で相殺されては本末転倒です。
相続税の納付期限が控えている場合や、遠方で管理できない場合は、期間を空ける選択肢を優先すべきではありません。
風評の沈静化を待つ効果があるのは、報道されるほどの事件で、かつ立地に需要が見込める物件に限られます。
事故物件を売るときの告知義務
事故物件の売買では、期間の制限なく告知義務を負います。
賃貸で「概ね3年」とされる考え方を売買にそのまま当てはめるのは誤りです。
告知を怠ると、損害賠償や契約の解除を請求されるおそれがあります。
期間、対象、記載範囲、違反時のリスクの4点を順に押さえておきましょう。
- 告知義務を負う期間
- 告知が必要な死因と不要な死因
- 告知書面に記載する情報の範囲
- 告知義務に違反した場合のリスク
告知義務を負う期間
国土交通省のガイドラインが「概ね3年」を示しているのは、賃貸借取引と集合住宅の共用部分で起きた自然死や不慮の死についてです。
事案の発生から3年が経過した後は、原則として告げなくてよいとしています。
一方、売買については期間の定めがありません。
つまり売買では、事故から何年経過していても告知の対象になり得ます。
「一度誰かが住めば告知義務がなくなる」という説を目にすることがありますが、法的な根拠はありません。
ガイドラインにも、居住の有無で告知義務が消えるという記載はないためです。
賃貸の3年についても例外があります。
ガイドラインは、事件性や周知性、社会に与えた影響がとくに大きい場合について、3年を超えても告げる必要があるとしています。
報道された事件では、期間だけを理由に告知を省略しないでください。
告知が必要な死因と不要な死因
告知が必要になるのは、他殺・自殺・焼死のほか、特殊清掃を伴った死亡です。
早期に発見された自然死や、日常生活のなかで起きた不慮の事故死は原則として対象外になります。
| 死因の類型 | 告知の要否 | 補足 |
|---|---|---|
| 他殺 | 必要 | 社会的影響が大きい場合は長期間にわたり告知が必要 |
| 自殺 | 必要 | 発生場所が室内か共用部分かで買い主の受け止めは変わる |
| 焼死・事件性の高い事故死 | 必要 | 建物への損傷の有無も併せて説明する |
| 特殊清掃を伴った死亡 | 必要 | 死因が病死でも清掃が入れば対象になる |
| 早期発見された自然死 | 原則不要 | 老衰・病死で、通常の清掃で足りた場合 |
| 日常生活での不慮の事故死 | 原則不要 | 階段からの転落、入浴中の溺死、誤嚥など |
隣室や、日常的に使用しない共用部分で起きた事案も原則として告知の対象外です。
ただし社会的な影響が大きい場合は例外として扱われます。
告知書面に記載する情報の範囲
告知は口頭と書面の両方でおこないます。
重要事項説明書と売買契約書の告知事項欄に記載するのが実務上の形です。
記載するのは死因の類型・発生した時期・発生した場所・特殊清掃の有無といった、取引の判断に必要な事実に限られます。
故人の氏名や、亡くなった経緯の詳細まで記載する必要はありません。
遺族のプライバシーに関わるためです。
不特定多数が閲覧する広告や募集図面では「告知事項あり」の表示にとどめるのが通例で、個人が特定される情報を掲載することは想定されていません。
業者から氏名や死亡日の記載を求められた場合は、なぜその情報が必要なのかを確認しましょう。
取引の判断に必要な範囲を超える求めであれば、応じる義務はありません。
告知義務に違反した場合のリスク
告知を怠ると契約不適合責任を問われます。
買い主が求められるのは、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除です。
代金の減額は、追完を請求しても応じられなかった場合に請求できます。
売買代金の返還に加え、買い主が支出した登記費用や引っ越し費用の賠償まで及ぶことがあります。
隠し通せると考えるのは危険です。
買い主は事故物件の情報サイトを確認し、近隣に聞き取りをおこない、必要であれば警察の記録や報道を調べます。
入居後に事実を知った買い主から訴えを起こされる例は珍しくありません。
買取業者に売る場合も告知は必要です。
契約不適合責任の免責特約を結んでいても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないためです。
事実を伝えておくことが、結果として売主自身を守ります。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
相続・住宅ローン・共有名義など状況別の進め方
物件の状況によって、買取に入る前に済ませておくべき手続きが変わります。
よくある4つのケースを見ていきましょう。
いずれも、前提となる手続きを飛ばすと契約の直前で止まってしまう項目です。
査定と並行して進めておくと、決済までの期間を短縮できます。
- 相続した事故物件を売る場合
- 住宅ローンが残っている場合
- 共有名義の場合
- 賃貸物件で入居者が亡くなった場合
相続した事故物件を売る場合
相続した不動産は、相続登記を済ませてからでなければ売却できません。
被相続人の名義のままでは所有権を移転できないためです。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
準備するのは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書と印鑑証明書になります。
収集に1ヵ月前後かかることがあるため、売却を決めた時点で着手しましょう。
期限は2つあります。
相続税の申告と納税の期限が相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内、取得費加算の特例を使える期限が相続開始の翌日からおよそ3年10ヵ月以内です。
後者の期間内に売却すれば、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を圧縮できます。
住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っていても、売却代金で完済して抵当権を抹消できるのであれば買取に出せます。
まず金融機関に残債額を確認し、買取価格が残債を上回るかどうかを見てください。
上回るのであれば、決済日に売却代金でローンを完済し、抵当権抹消登記を同時におこないます。
下回る場合は、差額を自己資金で補填するか、金融機関の同意を得て任意売却として進めてください。
任意売却は債権者との調整が必要になるため、通常の売却より時間がかかります。
いずれの場合も、査定を依頼する前に残債額を把握しておくと業者との話が早く進みます。
返済予定表や金融機関の残高証明で確認しておきましょう。
相続した物件で被相続人のローンが残っている場合は、団体信用生命保険で完済されているかどうかを先に確認してください。
共有名義の場合
物件全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
民法251条1項は、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意を得なければならないと定めています。
所有権そのものを移す売却は変更を超える処分行為にあたるため、共有者全員の同意が必要です。
相続で兄弟が共有している実家などは、まず全員の意思をまとめるところから始まります。
全員の同意が得られない場合でも、自分の持分だけを売却することは可能です。
持分の処分は各共有者が単独でできるためです。
ただし持分だけを買っても物件を自由に使えないため、価格は大きく下がります。
持分の買取に対応できるのは、共有不動産を専門に扱う業者です。
司法書士や弁護士と連携している業者であれば、他の共有者との協議や共有物分割の手続きまで見据えた提案を受けられます。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
賃貸物件で入居者が亡くなった場合
賃貸物件のオーナーは、原状回復と告知の整理を済ませてから収益物件として買取に出してください。
入居者がいる状態でも、オーナーチェンジ物件として売却できます。
先に整理すべきは費用の精算です。
特殊清掃や原状回復にかかった費用は、連帯保証人や入居者の相続人に請求できる場合があります。
相続人が相続放棄をしていると請求できないため、早めに確認してください。
告知義務については、賃貸で概ね3年という考え方があるものの、物件を売却する際には買い主に対する売買の告知義務が別に発生します。
3年が経過して入居者募集での告知が不要になっていても、売却時には告げる必要があると理解しておきましょう。
収益物件として売る場合、買い主は利回りで判断します。
事案の発生後に家賃を下げていると、下げた後の家賃を前提に価格が算定される点にも注意してください。
事故物件の売却の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう
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事故物件の買取に関するよくある質問
事故物件は本当に売れますか
専門の買取業者であれば、現状のまま買い取れる場合があります。
仲介では買い手が付きにくい物件でも、買取なら売却先が確定した状態で進められる点が強みです。
需要の乏しい立地や再建築ができない土地は、専門業者でも断られることがあります。
1社の回答で判断せず、複数社に相談してください。
業者ごとに得意なエリアと再販の販路が異なるため、結果が変わることがあります。
事故物件であることを隠して売るとどうなりますか
契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約の解除を請求されるおそれがあります。
買い主は事故物件の情報サイトや近隣への聞き取りで事実を把握できるため、隠し通すのは不可能です。
契約不適合責任の免責特約を結んでいても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません。
売買代金の返還に加え、買い主の登記費用や引っ越し費用まで賠償の対象になることがあります。
一度誰かが住めば告知義務はなくなりますか
売買では、期間の経過や居住の有無によって告知義務が免除される定めはありません。
国土交通省のガイドラインが「概ね3年」を示しているのは賃貸借取引と共用部分の自然死等についてであり、売買には期間の記載がないためです。
売買では事故から年数が経っていても告知の対象になります。
誰かが住んだ実績があっても、告知義務が消えるという法的な根拠は存在しません。
買取価格は通常の物件と比べてどのくらい下がりますか
仲介で売れると想定される価格の7割から8割が目安です。
仲介での想定価格自体も、通常の物件から死因に応じて1割から5割程度下がります。
孤独死で1割から3割、自殺で3割から5割、他殺で5割以上というのが各社が公表している水準です。
物件の立地や築年数、特殊清掃の実施状況によって幅があるため、複数社の査定で実際の水準を確認してください。
近所に知られずに売却できますか
買取では売却活動をおこなわないため、広告掲載やチラシ、内覧は発生しません。
現地調査についても、鍵を預けて売主が立ち会わない形に対応できるかどうかは業者しだいです。
日程を平日の日中に設定すれば、近隣の目に触れる機会をさらに減らせます。
売却後の所有権移転登記は公開情報ですが、日常的に登記簿を閲覧する人はほとんどいません。
お祓いや供養はしたほうがよいですか
買取価格への直接的な影響は限定的です。
業者は再販の見込みで価格を算定するため、お祓いの有無が査定額を大きく動かすことはありません。
費用の目安は3万円から10万円程度になります。
売主自身の気持ちの整理や、買い主が気にする場合の安心材料としておこなうものだと考えてください。
実施したのであれば、お祓いをおこなった事実を業者に伝えておきましょう。
まとめ|事故物件の買取は仲介想定価格の7割〜8割・3社比較で買い叩きを防ぐ
事故物件は、専門の買取業者に依頼すれば現状のまま売却できる可能性があります。
本記事の要点は次の5点です。
- 買取価格は仲介で売れると想定される価格の7割から8割が目安になる
- 早期に発見された自然死や日常生活での不慮の事故死は、原則として事故物件に当たらない
- 買取は査定から決済まで1週間から1ヵ月で完了し、広告掲載や内覧が発生しない
- 業者は買取実績の中身に加え、免許と行政処分歴を2つのシステムで確認する
- 売買の告知義務に期間の定めはなく、隠せば契約不適合責任を問われる
最初にやるべきことは、物件情報と事故の経緯を書き出して整理することです。
そのうえで3社以上に査定を依頼し、価格の根拠と条件を並べて比較してください。
査定は無料で受け付ける業者が多くあります。
相場を把握したうえで交渉に臨むことが、買い叩きを防ぐ最短の手段です。
ベンナビ不動産売却では、事故物件をはじめとする訳あり不動産の無料査定と買取相談を受け付けています。
まずは金額を確かめるところから始めてみてください。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。