空き家

空き家をもらってくださいと譲る4つの方法|手順と税金・引き取り手がいないときの方法

空き家をもらってくださいと譲る4つの方法|手順と税金・引き取り手がいないときの方法

誰も住まなくなった実家を売りに出しても、問い合わせが1件も来ないことがあります。
それでも固定資産税の納付書は毎年届き、庭木は伸び続けます。
空き家のまま数年が過ぎた所有者が行き着くのが、お金はいらないから誰かにもらってほしいという考えです。

一方で、同じ言葉を検索している人のなかには、少ない元手で家をもちたいと考えている人もいます。
0円で譲られている物件を見つけて、なぜタダなのか、もらったあとに何がかかるのかを確かめようとしている人たちです。

無償で譲るという選択は実際に成立します。
相手の探し方には向き不向きがあり、代金のやり取りがなくても税金は動きます。
渡す側ともらう側で、確かめるべき点も正反対です。

本記事では、まず2つの立場の違いと、無償で譲る4つの方法を整理します。
続いて0円で譲られる家がタダである理由と、誰にいくら税金がかかるかを見ていきます。
後半で扱うのは、手順5ステップと必要書類、もらう側の確認事項、引き取り手が見つからないときの出口です。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

「空き家をもらってください」には譲る側ともらう側の2つの立場がある

「空き家をもらってください」という言葉は、2つのまったく違う場面で使われています。
ひとつは、家を手放したい所有者が引き取り手に向けて発する呼びかけです。
もうひとつは、無料で住める家を探している人が検索窓に打ち込む言葉です。

同じ物件を前にしていても、両者が見ている場所は重なりません。
譲る側は税と管理の負担がいつ止まるかを気にし、もらう側は引き受けたあとに総額でいくらかかるかを気にします。

そのため、片方の立場だけで書かれた情報を読んでも、そろう判断材料は半分です。
以下の表で、それぞれの目的と確かめる点を並べます。

立場目的確かめる点
譲る側税と管理の負担を止める引き取り手が現れるか/渡すまでにかかる費用
もらう側少ない元手で家をもつ建物が使えるか/取得後にかかる総額

本記事は、方法・税金・手順のいずれについても両方の立場から並べて示します。
必要な箇所を絞り込むには、自分がどちら側かを先に決めるのが順序です。

譲りたい側が抱えている負担

住んでいない家であっても、所有している限り支出は続きます。
固定資産税と都市計画税は毎年課され、建物が古くなっても土地の分が軽くなるわけではありません。

管理の手間も同じです。
草刈りや通水、郵便物の確認、台風のあとの見回りといった作業は、放っておくと近隣への影響に直結します。
遠方に住んでいて自分で通えない場合は、管理を代行してもらう費用が上乗せされます。

火災保険料や、現地へ往復する交通費も毎年の支出です。
積み上げると、使っていない資産のために年間で数万円から十数万円になることもあります。

売却の見込みが立たない物件では、手取りを増やすことよりも、税と管理の負担が止まること自体に価値が出てきます。
無償で譲るという判断は、負担と手取りを比べた計算の結果として出てくるものです。

もらいたい側が求めているもの

もらう側の中心にいるのは、移住や二拠点生活、あるいは自分で手を入れて住むことを前提に、初期費用を抑えて家をもちたいと考えている層です。
取得費が0円という条件は、家をもつ入り口として目を引きます。

ただし判断はそこで終わりません。
見ているのは、建物が使える状態か、修繕にいくらかかるか、取得の時点で払う税金がいくらかを合算した総額です。

つまり、もらう側にとって0円は初期費用の話であって、総額の話ではありません。
そのため、譲る側が現況を隠さずに開示できるほど、相手の計算が早く終わります。

雨漏りの有無やシロアリの被害、接道の状況、境界標の有無を先に調べておいてください。
用意しておいた情報が、結果として話を前に進める近道になります。

空き家を「もらってください」と譲る4つの方法

無償で手放す方法は、大きく4つに分かれます。
1つ目は自治体の空き家バンクへの登録で、2つ目は民間のマッチングサイトへの掲載です。
3つ目は自治体や法人への寄付の打診、4つ目は訳あり物件を扱う買取業者への引き渡しになります。

4つの方法は、相手を「探す」ものと、相手が「決まっている」ものに大別できます。
探す方法は費用がほとんどかからない一方、相手が現れる時期は読めないままです。
掲載してから1年以上動きがない場合もあります。

渡す相手が決まっている方法は話が早い一方で、受け入れる側にそれぞれ条件があります。
寄付なら公共で使える見込みがあるか、買取なら業者の取り扱い範囲に入るかが分かれ目です。

どれか1つに絞る必要はありません。
空き家バンクに登録しながら買取の査定を受けておくといった併用もできます。
4つの違いは以下の表のとおりです。

方法早さ費用向く家
空き家バンク時期を読めない登録は無料そのまま住める状態の家
マッチングサイト数ヵ月〜1年程度が目安手数料が要る場合あり状態を問わない
寄付時期を読めない手続きの実費のみ公共で使える立地の家
買取業者数週間〜2ヵ月程度が目安売主の持ち出しなし状態を問わない

自治体の空き家バンクに登録する

空き家バンクは、市区町村が運営して物件情報を移住希望者などに届ける仕組みです。
運営主体が自治体であるため、掲載されている情報の信頼性は高く、相手方の身元もはっきりしています。

登録の際に求められるのは、建物の現況、間取り、接道の状況といった情報です。
境界が確定していない土地や、傷みが進んで人が住めない建物は、掲載の対象外とされることもあります。

掲載後も、見学の対応や条件の交渉は所有者が担う場面が残ります。
自治体が仲介業者のように交渉を代行してくれるわけではない点は、登録前に理解しておきたい前提です。

登録そのものに費用はかかりません。
ただし成約の時期を自分で決められないため、いつまでに手放したいという期限がある人には向きません。

民間の無償譲渡マッチングサイトに掲載する

0円物件を扱う民間のマッチングサイトが複数あり、譲りたい人と欲しい人を結ぶ場になっています。
全国から相手を探せる点と、自治体を通さずに掲載できる点が特徴です。

費用体系はサービスごとに異なります。
会員登録や掲載を無料とする一方で、成約時のマッチング手数料を8万円台からと公表しているサービスもあります。
掲載は無料でも成約時に手数料が発生する形は珍しくないため、申し込み前に確認してください。

条件のすり合わせと契約は、当事者どうしでおこなうのが基本です。
不動産会社が間に入らないぶん費用は抑えられますが、説明の行き違いが起きやすくなります。

引き渡したあとに不具合が見つかったとき、誰が責任を負うのかを書面に残しておいてください。
決めてあるかどうかで、あとの展開が大きく変わります。

自治体や法人への寄付を打診する

寄付が成立すれば所有権は受け入れ先へ移り、翌年からの税と管理の義務から離れられます。
相手を探し続ける必要もなくなるため、条件が合えば有力な選択肢です。

ただし自治体は、公共の用途に使える見込みがない不動産の受け入れに慎重です。
受け取れば管理費が持ち出しになるうえ、固定資産税の収入も減ります。
そのため、活用の見込みが立たない物件は断られることも少なくありません。

検討の対象になる余地が残るのは、道路や公園への転用が見込める立地や、公共施設に隣接している土地です。
まずは市区町村の担当窓口に物件の所在地と現況を伝え、可否を確かめるところから始めてください。

自治会や地縁団体、NPO法人、社会福祉法人が引き受ける例もあります。
地域の集会所や活動拠点として使える建物であれば、行政より話が進みやすい場合があります。

訳あり物件を扱う買取業者に引き取ってもらう

買取では、業者そのものが買主になります。
掲載して反応を待つ工程がないため、引き渡しの時期を自分で決められる点が、ほかの3つと大きく違います。

契約は現状のまま引き渡す形が中心で、家財が残ったままの家や、傷みが進んだ建物でも対象です。
片づけや修繕を済ませてから動く必要がないぶん、着手までの心理的な負担も軽くなります。

再建築ができない土地や、権利関係が複雑な物件を扱う業者もあります。
買取業者の取り扱いは幅広く、一般の仲介では買い手が付かなかった家も対象です。

無償で渡すつもりだった物件に金額が付く場合もあります。
譲る相手を探し始める前に、いくらで手放せるのかを確かめておくと、判断の材料が1つ増えます。
買取を選ばない場合でも、いくらで手放せるのかは先に確かめておいてください。

0円で譲られる空き家がタダである理由

「なぜ無料で譲るのか」は、無償譲渡でとくに多く投げかけられる疑問です。
裏があるのではないか、という警戒心が働くのは自然な反応といえます。

実際のところ、値が付かない理由の大半は所有者の善意ではありません。
建物や土地に、価値を上回る費用や制約が乗っているために、対価を求められる状態にないというのが正確なところです。

理由は大きく3つに整理できます。
解体費や修繕費が建物の価値を上回っている場合、法的な制約で使い道が限られている場合、そして所有者が遠方で管理を続けられない場合です。

3つのうち前の2つは物件側の事情で、最後の1つは所有者側の事情です。
もらう側にとっては、どれに当たるかを引き受ける前に確かめられる項目でもあります。

解体費や修繕費が建物の価値を上回っている

築年数が進んだ木造家屋は、建物としての評価がほとんど残りません。
取引の場で値が付くのは土地の分だけで、建物は「付いてくるもの」という扱いです。

そのうえ、傷みが進んだ建物には修繕費がかかります。
傷みやすいのは、雨漏りやシロアリの被害、基礎のひび割れ、給排水管の劣化です。
いずれも外から見ただけでは判別しにくく、住み始めてから表面化します。

解体して更地にする道を選んでも、費用は所有者の負担です。
木造家屋の解体費は建物の規模と立地で大きく変わり、重機が入らない道幅の場所ではさらに上がります。

土地の値より解体費のほうが大きくなると、売っても手元に残らない計算になります。
土地の値と解体費が逆転したときに出てくるのが、渡してしまうほうが安く済むという判断です。

再建築不可など土地に制約がある

土地の側に法的な制約があると、価値の付き方が大きく変わります。
代表的なのが、建て替えができない土地です。

建築基準法は、都市計画区域などにおいて、建築物の敷地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接することを求めています。
接道の条件を満たさない土地では、いまの建物を壊すと次の建物を建てられません。

【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索

私道を通らないと出入りできない土地や、水道管を引くのに隣地所有者の承諾が要る土地も同様です。
境界標がなく、隣とどこが境かはっきりしない土地も、買い手にとっては引き受けにくい条件になります。

こうした土地を買えるのは、住宅ローンの担保として評価されにくいため現金で購入できる相手です。
買い手の母数が減るぶん、無償で渡す話が出てきやすくなります。

所有者が遠方で管理を続けられない

物件そのものに問題がなくても、無償で譲られることがあります。
所有者が現地から遠く、管理を続けられなくなった場合です。

相続で引き継いだ家が生活圏から数百キロメートル離れていると、年に数回の往復すら難しくなります。
仕事や子育ての合間に、片道数時間かけて草刈りに通う生活は長く続きません。

管理を業者に委託すれば費用が積み上がり、放置すれば庭木が越境して近隣に迷惑がかかる状態です。
費用と近隣への影響の板挟みから抜け出す手段として、無償譲渡が選ばれます。

遠方で管理できないという理由であれば、建物の状態が悪くないこともあります。
該当するのは、所有者が施設に入るまで住んでいた家や、定期的に手入れをしてきた別荘です。
もらう側にとっては、条件のよい物件に出会える余地が残っているケースといえます。

見分ける手がかりは、譲る理由を尋ねたときの答え方です。
管理が続かないという事情をはっきり説明できる相手であれば、物件側に隠れた問題がある可能性は下がります。

無償で譲ると誰にいくら税金がかかるか

タダで渡すのだから税金も0円になると考えられがちですが、実際には違います。
代金のやり取りがなくても、無償で不動産が移る場面には課税の仕組みが用意されています。

しかも、税額の基準は当事者が決めた金額とは別です。
相続税評価額や固定資産税評価額といった、行政が定める評価が使われます。
0円で受け取っても税額が出るのはこのためです。

税は「もらう側にかかるもの」と「渡す側で発生しうるもの」に分かれます。
金額の大きさで見ると、もらう側の負担が中心になります。
名義を移す前後で順に発生するのは、贈与税、不動産取得税、登録免許税の3つです。

負担者と基準を先に把握しておくと、話を進める前に総額の見当が付きます。
相手に費用の話を切り出すときにも、何がいくらかかるのかを示せると交渉が進みます。

税・費用負担する人何を基準に決まるか
贈与税もらう側相続税評価額から基礎控除110万円を引いた額
不動産取得税もらう側固定資産税評価額
登録免許税もらう側[契約で変更可]固定資産税評価額
測量・撤去・書類の実費渡す側がもつことが多い実際にかかった額
翌年以降の固定資産税1月1日時点の所有者固定資産税評価額

もらう側にかかる贈与税

個人から個人へ無償で不動産が移ると、もらった側に贈与税がかかります。
暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計から基礎控除110万円を差し引いた額が課税価格です。

税率は課税価格に応じて段階的に上がります。
国税庁の一般税率では、200万円以下が10%、600万円以下が30%で控除額65万円、3,000万円超では55%で控除額400万円です。
18歳以上の人が父母や祖父母から受け取る場合は、一般税率より負担の軽い特例税率が使われます。

【参考】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

不動産の評価は売買価格ではなく相続税評価額でおこないます。
土地は路線価などを、建物は固定資産税評価額を用いるのが基本です。

つまり、0円で受け取ったつもりでも、評価額が基礎控除を超えていれば申告と納税が必要になります。
地方の古家であれば110万円以内に収まることもありますが、都市部の土地では収まらない場合もあります。

もらう側にかかる不動産取得税と登録免許税

不動産取得税は、不動産を取得したときに一度だけかかる都道府県の税金です。
東京都主税局は、有償か無償かの別や登記の有無にかかわらず課税されると説明しています。
贈与で受け取った場合も対象になります。

課税標準は固定資産税評価額です。
令和9年3月31日までに取得した土地と住宅の税率は3%で、住宅以外の家屋は4%です。
宅地として評価される土地については、課税標準が価格の2分の1になる特例も設けられています。

【参考】不動産取得税|東京都主税局

名義を移す登記の際には、登録免許税も必要です。
国税庁の税額表によれば、贈与による所有権移転登記の税率は土地・建物とも固定資産税評価額の1,000分の20です。
相続による移転の1,000分の4と比べると、5倍の開きがあります。

【参考】No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

3つの税のほかに、登記を司法書士に依頼する場合は報酬も加わります。
取得の時点で用意しておく現金は、贈与税と不動産取得税、登録免許税に司法書士報酬を足した額です。

渡す側で発生しうる費用と課税

渡す側は代金を受け取らないため、支出だけが残ります。
境界の確定測量や残置物の撤去、契約書の作成、必要書類の取得にかかる実費は、渡す側がもつことが多くなります。

測量には隣地所有者の立会いが前提です。
依頼から完了まで数ヵ月かかることもあります。
相手が測量を求めてきた場合に備え、境界標の有無だけでも先に確認しておいてください。

課税の面では、相手が個人か法人かで扱いが変わります。
個人が法人へ不動産を無償で渡した場合、所得税法は時価で譲渡があったものとみなして所得税を課す仕組みを設けています。
代金を受け取っていなくても課税されるという点は、見落とされやすい落とし穴です。

【参考】所得税法|e-Gov 法令検索

そのため、法人へ渡す話が出てきた段階で税理士に確認しておくのが確実です。
個人へ渡す場合には、みなし譲渡の扱いは生じません。

譲る相手を探す前に、いくらで手放せるかを確かめる

無償で譲るという判断は、値が付かないという前提の上に成り立っています。
ところが、値が付かないという前提を数字で確かめないまま話を進めてしまうケースは少なくありません。

相手を探す方法の弱点は、掲載してから成約までの時期を自分で決められない点です。
待っているあいだも固定資産税は毎年課され、管理の手間も止まりません。
1年待って動きがなければ、1年分の税と管理の負担がそのまま乗ることになります。

訳あり不動産を扱う買取なら、傷んだ建物、家財が残ったままの家、再建築ができない土地も取り扱いの対象です。
仲介で買い手が付かなかった物件に、金額が提示されることもあります。

ベンナビ不動産では、空き家や訳あり不動産の無料査定を受け付けています。
金額と引き渡しまでの見通しを先に把握して、無償で譲るのか買い取ってもらうのかを同じ土俵で比べてください。
査定を受けたからといって売却を決める必要はありません。

空き家を無償で譲る手順5ステップ

空き家を無償で譲る手順5ステップ

無償譲渡は、相手が見つかってから動き出すものではありません。
渡せる状態を整えるところから始まります。
整えないまま進めると、相手が現れた時点で名義や現況の確認に戻ってしまうためです。

工程は5つに分かれます。
名義と権利関係の確認から始まり、建物と土地の現況調査、条件と費用負担のすり合わせと進みます。
最後が贈与契約書の作成と所有権移転登記です。

5つの工程のうち最初の2つは、相手を探し始める前に済ませておけます。
先に手をつけておくほど、話がまとまったあとの進みが早くなります。

期間の目安は、名義に問題がなければ全体で1ヵ月〜2ヵ月程度です。
相続登記が未了だったり共有者が複数いたりすると、名義を整えるだけで数ヵ月かかることもあります。
測量が必要な土地では、さらに時間を見込んでください。

STEP1 名義と権利関係を確認する

最初に確かめるのは、登記簿上の名義が誰になっているかです。
法務局で登記事項証明書を取得すれば、現在の所有者と、抵当権などの登記が残っていないかを確認できます。

名義が亡くなった親のままになっている場合は、先に相続登記を済ませる必要があります。
不動産登記法が求めるのは、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内の登記申請です。

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

申請を怠った場合には過料の対象になることもあります。
兄弟姉妹との共有になっている場合は、共有者全員の合意がないと譲渡できません。
連絡が取れない人がいると手続きが長引くため、早い段階で意向を確認してください。

住宅ローンの抵当権が残っているときは、完済して抹消登記をしてからでないと話が進みません。
返済が終わっていても抹消手続きだけ未了というケースもあるため、証明書で実際の登記内容を見ておくことが大切です。

STEP2 建物と土地の現況を調べる

現況を把握しておくと、相手の判断が早くなり、引き渡しあとの行き違いも減ります。
まず建物について、雨漏りや傾き、シロアリの被害、給排水の状態を確認します。

自分では判断が難しいのが、床下や小屋裏、構造材の状態です。
基礎や構造材の状態が気になる場合は、建築士やホームインスペクターに調査を依頼する選択肢があります。
費用はかかりますが、相手に示せる資料が手に入ります。

土地で見るのは、接道の状況と境界標の有無です。
境界が不明であれば測量が必要になる場合があり、測量の費用と期間も見込んでおく必要があります。

確認した内容は、日付を入れた写真と書面で残しておいてください。
そのまま相手への説明資料として使えるうえ、あとから「聞いていない」と言われる事態を防げます。

STEP3 条件と費用の負担をすり合わせる

相手の候補が挙がったら、まず引き渡しの時期と物件の現況について、お互いの認識をそろえます。
認識にずれがあると、契約の直前で話が戻ります。

次に決めるのが費用の負担区分です。
登記費用や測量費、残置物の撤去費、固定資産税の日割り分について、どちらがいくらもつのかを1つずつ確認します。
口頭のやり取りだけで進めると、あとで食い違いが出ます。

同時に決めておきたいのが、引き渡し日と、引き渡しまでの管理の担当です。
契約から引き渡しまでに時間が空く場合、その間の草刈りや通水の担当を決めていないと放置されてしまいます。

決めた内容は、契約書に落とし込む前にメモで共有しておくと確実です。
合意したつもりの項目が相手の理解と食い違っていた場合、契約前なら手戻りが小さく済みます。

登記の手続きに必要な書類は、次の5点が基本になります。

書類用意する人取得先
登記識別情報または登記済証渡す側手元に保管
印鑑証明書渡す側市区町村の窓口
固定資産評価証明書渡す側市区町村の窓口
住民票もらう側市区町村の窓口
贈与契約書両者当事者が作成

STEP4 贈与契約書を作る

無償のやり取りであっても、契約書は作ってください。
民法は、書面によらない贈与について各当事者が解除できると定めています。
引き渡しを終えた部分は、解除の対象から外れます。
書面に残しておくことが、引き渡し前の段階で合意を確定させる手立てです。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

盛り込む内容は4点です。
物件の表示と引き渡し日、費用の負担区分、契約不適合責任を負わないという取り決めが中心になります。
物件の表示は登記事項証明書の記載どおりに書き写します。

契約不適合責任についての条項は、渡す側にとって重要です。
免責の記載がないと、引き渡しあとに見つかった不具合の修繕を求められる可能性が残ります。

書式のひな形はインターネットでも手に入りますが、物件ごとの事情を反映させる作業は残ります。
記載内容に迷う場合の選択肢が、司法書士や弁護士への確認依頼です。

STEP5 所有権移転登記をする

最後の工程が、法務局への所有権移転登記の申請です。
登記が完了して初めて名義が移り、翌年からの固定資産税の納税義務者も変わります。

申請には贈与契約書のほか、登記識別情報や印鑑証明書、固定資産評価証明書、もらう側の住民票を添えます。
自分で申請することもできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。

登録免許税は原則としてもらう側が負担します。
ただし当事者の合意で変更できるため、どちらが払うのかを契約書に書いておけば、当日に揉めることはありません。

固定資産税を1年分負担するのは、1月1日時点の所有者です。
年の途中で渡す場合、引き渡し日を基準にした日割りで精算するのが慣行です。
精算するかどうかも含めて、事前に決めておいてください。

もらう側が引き受ける前に確認しておくこと

0円という条件は、あくまで初期費用の話です。
引き受けた瞬間から自分が所有者となり、修繕も管理も税も自分に移ります。
総額で見て見合うかどうかは、自分で計算しておきます。

引き受けたあとでは確かめられない項目もあるためです。
建物の状態、責任の範囲、毎年かかる費用の3点は、契約前にしか動かせません。

タダだからと調査を省いた結果、修繕に数百万円かかると判明したという展開は実際に起きています。
無料で手に入れたはずの家が、いちばん高い買い物になってしまう形です。

判断の順序としては、まず建物が使えるかを見て、次に不具合が出たときの責任の所在を確かめ、最後に維持の費用を計算します。
建物・責任・費用の順で確かめれば、途中で見送ると決めても余計な出費が出ません。
確認する項目は次の3つです。

建物の状態を専門家に見てもらう

見た目がきれいでも、構造や設備が傷んでいることがあります。
雨漏りやシロアリの被害、基礎のひび割れ、給排水管の劣化は、素人目には判別しにくい箇所の代表です。

建築士やホームインスペクターに住宅診断を依頼すると、劣化の状況と、修繕にどれくらいかかるかの見当が付きます。
調査には費用がかかりますが、引き受けたあとの修繕費と比べれば判断材料として見合います。

とくに確認したいのが、屋根と外壁、床下、そして給排水の3箇所です。
屋根と外壁、床下、給排水に大きな問題がなければ、住める状態まで持っていける可能性が高くなります。

譲る側が調査を嫌がる場合は、断る理由を確かめてください。
急かされるまま引き受けると、あとから交渉する手立てがなくなります。

引き渡し後の責任がどこまで残るかを確かめる

契約不適合責任とは、引き渡された物件が契約の内容に適合しない場合に、渡した側が負う責任のことです。
通常の売買では、買主はこの責任を根拠に修繕や代金の減額を求められます。

ところが無償譲渡では、契約不適合責任を負わないという条項を契約書に入れるのが一般的です。
渡す側は対価を受け取っていないため、引き渡しあとの不具合まで負担するのは筋が通らないという考え方によります。

つまり、もらった家に問題が見つかっても、修繕は自分の負担になる前提で判断します。
どこまでが免責の範囲なのかを、契約前に文言で確認してください。

口頭で「大丈夫です」と言われただけでは根拠になりません。
気になる点があれば、契約書に個別の記載を入れてもらえるか交渉する余地があります。

もらった後に毎年かかる費用を試算する

取得時には不動産取得税と登録免許税が一度だけかかり、名義を移す年に限った支出になります。
問題は、翌年から続く費用のほうにあります。

固定資産税と都市計画税は毎年課され、所有している限り終わらない支出です。
火災保険料、地域によっては自治会費も継続します。
自分で住まない場合は、管理の手間か委託費が上乗せされます。

つまり、もらう側が引き継ぐのは、譲る側が負担に感じていた費用です。
譲る側がなぜ手放したかったのかを考えると、負担をそのまま引き継ぐ構造が見えてきます。

自治体によっては、耐震改修や省エネリフォームへの補助制度、移住者向けの支援制度が用意されています。
要件と金額は市区町村ごとに違うため、物件の所在地の窓口で確認してから試算に組み込んでください。

引き取り手が見つからないときの選択肢

引き取り手が見つからないときの選択肢

無償で譲ると決めても、相手が現れないことがあります。
掲載から半年、1年と過ぎるあいだも税と管理の負担は続き、建物の傷みも進みます。

相手が現れないときに考えられる方向は3つです。
相続で取得した土地を国に引き取ってもらう方法、相続の段階で引き継がない方法、そして買取業者に引き取ってもらう方法です。

ただし、3つの方向は使える場面がまったく違います。
国庫帰属は建物を残したままでは使えず、相続放棄が選べるのは名義が自分に移る前の段階です。
使える条件を取り違えると、時間だけが過ぎます。

すでに自分の名義になっている空き家であれば、現実に選べるのは国庫帰属と買取の2つです。
前者は解体を前提とするため、更地にする費用を負担できるかが分かれ目になります。
それぞれの条件を順に見ていきます。

相続土地国庫帰属制度を検討する

相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人への遺贈によって取得した土地の所有権を、国に引き取ってもらう仕組みです。
売買などで取得した土地は対象になりません。

【参考】相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律|e-Gov 法令検索

注意したいのが対象の範囲です。
法務省は、建物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地などを却下の理由として挙げています。
空き家を建てたままでは申請の段階で通りません。

【参考】相続土地国庫帰属制度について|法務省

費用の面では、審査手数料が土地1筆あたり1万4,000円です。
承認されたあとは、国有地の種目ごとに管理費10年分の標準的な額を考慮して算定される負担金を納める必要があります。

つまり、国庫帰属の制度を使うには先に建物を解体して更地にしなければなりません。
選ぶ前に確かめたいのは、解体費と負担金の合計が買取で手放す場合と比べてどうかです。

相続する前の段階なら相続放棄を検討する

相続放棄は、空き家だけを外す仕組みではありません。
預貯金や有価証券を含め、亡くなった人の財産を一切引き継がないという選択です。
ほしい財産だけを選ぶことはできません。

放棄したからといって、管理の責任がその場で消えるわけでもありません。
民法が定めるのは、放棄した人が放棄の時点で現に占有していた財産について、ほかの相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務です。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

また、相続放棄はこれから相続する段階でしか使えません。
すでに相続して自分の名義になっている空き家では、放棄という手段は残っていません。

放棄をするには、家庭裁判所への申述が必要です。
申述の期限は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内で、申述には収入印紙などの実費がかかります。
判断に迷うときは、期限を確かめたうえで弁護士や司法書士に相談してください。

訳あり物件を扱う買取業者に相談する

買取では、相手を探して待つ工程がありません。
業者が買主になるため、査定から引き渡しまでの期間を自分で見通せます。
期限がある人にとっては、時期を見通せる点が最大の違いです。

業者が扱う物件の範囲も広くとってあります。
再建築ができない土地、家財が残ったままの家、長く放置して傷みが進んだ建物も、対象になる場合があります。
一般の仲介で反応がなかった物件でも、一度は相談してみてください。

提示される金額は業者ごとに開きが出ます。
得意とする物件の種類や、買い取ったあとの活用方法が違うためです。
1社だけの査定で判断せず、複数の会社を比べてから決めてください。

無償で渡すつもりだった物件に金額が付けば、査定額の分が手元に残ります。
値が付かない前提で動く前に、確かめておく価値があります。

譲る相手を探さないまま放置した場合に起きること

相手が見つからないまま何年も過ぎると、建物の傷みと近隣への影響が同時に進みます。
庭木の越境、郵便物の山、外壁の剥がれといった変化が現れるのは、数年のうちです。

こうした状態に対しては、法律上の枠組みが整備されています。
市区町村からの働きかけは段階的に強まり、最終的には所有者の負担で建物を撤去する事態にもつながります。

放置は、選択をしないという選択です。
何もしないでいると、税の負担が増え、選べる手放し方が減っていきます。
傷みが進んだ建物は、無償譲渡の相手にも買取の対象にも届きにくくなります。

言い換えると、放置している期間は出口が細くなっていく時間です。
相手を探しているあいだであっても、最低限の管理を続けることが選択肢を守ることにつながります。
税の面と安全の面から、何が起きるのかを見ていきます。

勧告を受けると固定資産税の優遇が外れる場合がある

空家等対策の推進に関する特別措置法は、令和5年12月13日に施行された改正で「管理不全空家等」という区分を新たに設けました。
そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態を、早い段階で対象にする仕組みです。

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov 法令検索

市区町村からは、まず助言や指導がおこなわれます。
それでも改善されない場合に勧告へ進み、勧告を受けると住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例から外れる場合があります。

住宅用地の特例は、税額を大きく抑える仕組みです。
特例から外れると、翌年度の固定資産税が数倍に跳ね上がることもあります。

譲る相手を探している段階であっても、草刈りや点検といった管理は続ける必要があります。
管理を止めて税が増えると、手放すまでの負担は重くなる一方です。

建物の不具合で損害賠償を問われることがある

民法は、土地の工作物の設置または保存に欠陥があって他人に損害を生じたときの責任について定めています。
建物も工作物に含まれるため、所有者が責任を負う場面が出てきます。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

実際に起こりうるのは、台風で屋根材が飛んで隣家の窓を割る、外壁が剥がれて通行人に当たる、ブロック塀が地震で倒れるといった事態です。
庭木が越境して隣地の設備を傷つけることもあります。

空き家を対象にした保険は、住んでいる住宅向けの火災保険と扱いが異なる場合があります。
長期間人が住んでいない建物が契約の対象外とされる例もあるためです。

現在加入している保険が空き家の状態でも有効かどうかを、契約内容で確認しておいてください。
無保険のまま事故が起きると、賠償の全額が自己負担になります。

空き家の無償譲渡でトラブルになっているなら弁護士に相談するのがおすすめ

無償で譲る話は、契約書の内容や引き渡し後の責任、相続人どうしの意見の食い違いなど、法律の判断が絡む場面でつまずきやすくなります。
贈与契約書の条項に漏れがあると、引き渡しのあとに修繕や費用の負担をめぐって相手と争いになることがあります。
名義が共有のまま話が進まない場合や、相続放棄の期限が迫っている場合も、自分だけで判断するのは危険です。

ベンナビ不動産は、弁護士や司法書士と連携した買取会社に相談できる窓口です。
権利関係の整理と査定を同時に進められるため、譲るか手放すかを決めかねている段階でも相談できます。
まずは物件の名義と現況を整理して、状況を伝えるところから始めてみてください。

空き家をもらってくださいに関するよくある質問

Q

家をタダであげると言ったら贈与税はかかりますか?

A

もらう側に贈与税がかかる場合があります。
個人から個人への無償の移転は贈与に当たり、1年間に受け取った財産の合計から基礎控除110万円を差し引いた額が課税対象です。
評価は売買価格ではなく相続税評価額でおこないます。
0円で受け取っても税額が出ることがあります。

Q

空き家を無料で譲る人はなぜそうするのですか?

A

解体費や修繕費が建物の価値を上回っている、接道の条件を満たさず建て替えができない、遠方で管理を続けられないといった事情が主な理由です。
所有しているだけで税と管理費が出ていくため、手取りを得ることよりも負担が止まることを優先した判断といえます。

Q

自治体は空き家を寄付として受け取ってくれますか?

A

受け取ってもらえる場合はありますが、公共の用途に使える見込みがある物件に限られます。
活用の予定がなく管理費が持ち出しになる不動産は断られることが多いため、まず市区町村の担当窓口に所在地と現況を伝えて可否を確かめてください。

Q

建物が建ったままでも国に引き取ってもらえますか?

A

引き取ってもらえません。
相続土地国庫帰属制度は土地を対象とする仕組みで、建物がある土地は却下の対象になります。
使うには先に解体して更地にする必要があり、解体の費用は所有者の負担です。

Q

無償譲渡と買取のどちらを選ぶべきですか?

A

引き渡しの時期を自分で決めたい場合は買取が向きます。
無償譲渡は費用がかからない一方で相手が現れる時期を読めず、待っているあいだも税と管理費が続きます。
値が付かないと思っていた物件に金額が出ることもあるため、査定で比べてから決めるのが確実です。

まとめ|空き家をもらってくださいは名義の確認と査定から始める

空き家を無償で譲る方法は、空き家バンクや民間のマッチングサイト、自治体などへの寄付、買取業者の4つに整理できます。
相手を探す方法は費用がかからない反面、成約の時期を自分で決められません。

無償のやり取りであっても、動くのが税金です。
もらう側には贈与税、不動産取得税、登録免許税がかかり、いずれも評価額を基準に計算されます。
渡す側も、測量や書類の実費を負担することが多くなります。

どの方法を選ぶ場合でも、先に必要になるのは名義の確認と現況の把握です。
登記簿の名義が古いままだと手続きが止まり、現況がわからないと相手の判断も進みません。
2つとも、相手を探す前に済ませておける準備です。

ベンナビ不動産では、空き家や訳あり不動産の無料査定を受け付けています。
無償で譲ると決める前に金額と見通しを確かめておけば、譲るか買い取ってもらうかを同じ基準で比べられます。
まずは手元の物件がいくらで手放せるのかを確かめてください。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。