空き家

空き家処分の進め方|6つの方法と手順・必要書類・家財の片づけまで解説

空き家処分の進め方|6つの方法と手順・必要書類・家財の片づけまで解説

誰も住まなくなった家を持ち続けていると、固定資産税の請求は毎年届きます。
草木の手入れや建物の点検も、住んでいないからといって止められません。
困るのは、手放したい気持ちが固まっているのに最初の一歩が決まらず、数年が過ぎてしまう状態です。

止まる理由の多くは、処分という言葉が指す作業が1つではない点にあります。
選択肢を並べたところで、自分の家がどれに当てはまるのかがわからなければ、次の行動は決まりません。

そのうえ、建物の出口を決めるだけでは不十分です。
家財や仏壇が残ったままの家は、そのままでは引き渡せず、片づけの費用と段取りが別に必要になります。

本記事では、空き家を手放す方法を「売って手放す3つ」と「売らずに手放す3つ」に分けて整理します。
あわせて示すのは、自分の家がどれに当てはまるかを見分ける3つの軸と、手順5ステップと必要書類です。
家財の片づけ費用と、処分が進まないときの手当ても解説します。

クラルス法律会計事務所
監修者

クラルス法律会計事務所 久保 勇二

所属:大阪弁護士会

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空き家を持ち続けるとかかり続ける費用と負担

空き家は、置いておくだけで支出が続きます。
住んでいない家にも固定資産税と都市計画税は課され、草木の手入れや建物の点検にも費用がかかる状態です。
処分を先送りするほど、出ていく総額は積み上がっていきます。

負担は金額だけではありません。
時間が経つほど建物は傷み、傷んだ家ほど買い手の幅は狭くなる一方です。
選べる手放し方そのものが、待っているあいだに減っていきます。

処分の作業は、大きく2つに分かれます。
1つは建物の出口を決めること、もう1つは中身の家財を片づけることです。
どちらも先送りするほど重くなり、家財については相続人の記憶が薄れるほど判断がつきにくくなります。

本記事で扱う手放し方は6通りありますが、どれを選ぶ場合でも共通していることがあります。
着手が早いほど、選べる手が多く残っているという点です。

毎年かかる税金と管理の費用

空き家を持ち続けるあいだ、支出は3系統に分かれて発生します。
税金、管理の実費、そして遠方にある場合の移動費です。

固定資産税と都市計画税は、住んでいるかどうかに関係なく、1月1日時点の所有者に課されます。
建物が古くなって評価額が下がっても、土地の分の負担は残ったままです。
建物を取り壊すと住宅用地の課税標準の特例が外れ、土地の税額が上がる点にも注意が要ります。

管理の実費には、草刈りや通水、郵便物の確認、屋根や外壁の点検が含まれます。
自分で通えない場合に頼るのが管理代行で、月額での費用が別に発生する形です。
火災保険を継続していれば、保険料も毎年かかります。

遠方に住んでいる場合は、往復の交通費と宿泊費も繰り返し発生します。
年に数回の往復でも、数年続けば相応の金額です。

状態が悪くなるほど選べる手放し方が減る

空き家は、放っておくほど売りにくくなります。
雨漏りや床の傾きが出た建物は、そのままの状態では買主が見つかりにくく、話が解体を前提としたものに寄っていきます。
仲介で市場に出すという選択肢が、実質的に消えていく形です。

税制の面でも、時間の経過は不利に働きます。
相続した空き家に使える特例には売却の期限が設けられており、期限を過ぎれば適用の対象外です。
判断を先送りしているあいだに、使えたはずの控除が消えることがあります。

行政の関与も強まりました。
空家等対策の推進に関する特別措置法は、令和5年12月13日に施行された改正で「管理不全空家等」という区分を設けています。
管理が行き届かない状態で勧告を受けると、住宅用地の課税標準の特例が外れる場合があります。

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov 法令検索

売って手放す3つの方法

空き家を売って手放す方法は3通りあります。
不動産会社の仲介で買主を探す方法、買取業者に直接買い取ってもらう方法、建物を解体して更地として売る方法です。

3つの違いは、売却までの期間と手元に残る金額の関係に集約されます。
市場価格に近い金額を狙える方法ほど時間がかかり、早く終わる方法ほど手取りは低くなります。

方法売却までの目安手取りの傾向向いているケース
仲介3ヵ月〜1年以上市場価格に近い建物が使える状態で、急ぐ事情がない
買取数日〜1ヵ月程度市場価格より下がる早く手放したい・家財が残っている
解体して更地解体1ヵ月+売却期間解体費を先に負担する建物が傷んで住めない、土地に需要がある

3つは排他的なものではありません。
まず仲介に出してみて、一定期間で買主が見つからなければ買取に切り替えるという進め方もできます。
どれか1つを最初に選び切る必要はなく、順番として捉えるのが負担の少ない進め方です。

判断の分かれ目は、急ぐ事情があるかどうかです。
相続税の納付期限が迫っている、遠方で管理に通えない、共有者が早期の現金化を望んでいるといった事情があれば、金額より期間を優先する形になります。
急ぐ理由がなければ、仲介から順に試すほうが手取りは増えます。

不動産会社の仲介で売る

仲介は、不動産会社に買主探しを任せて市場価格に近い金額を狙う方法です。
広告の掲載から問い合わせ対応、内見の立ち会い、契約手続きまでを不動産会社が担います。
買主が見つかって初めて売買が成立します。

報酬は成功報酬です。
売買が成立しなければ手数料は発生せず、成立した場合の上限は宅地建物取引業法にもとづく国土交通大臣の告示で定められています。
売買価格が800万円以下の低廉な空家等に用意されているのが、売主から受け取れる報酬の特例です。

期間の見通しは長めに見ておく必要があります。
不動産会社各社の公表値では、成約までの目安は3ヵ月〜1年以上とされており、築古の空き家ほど長引きやすい傾向があります。
売れないまま持ち続けるあいだも、税金と管理費は発生し続ける点が負担です。

【参考】宅地建物取引業法|e-Gov 法令検索

買取業者に直接買い取ってもらう

買取は、業者自身が買主となって物件を引き取る方法です。
買主を探す期間が不要なため、仲介と比べて短期間で終わります。
買取業者各社の公表値では、最短で数日での現金化も可能です。

仲介手数料が発生しない点も違いの1つです。
売主と業者の直接取引になるため、仲介を挟む場合の手数料がかかりません。
その代わり、買取価格は市場で売れる金額より低くなります。

買取価格の水準に公的な統計はありません。
物件の状態、立地、再販の見通しによって業者ごとの算定が変わるため、金額には幅が出ます。
1社の提示額だけで判断せず、複数社に当たって比べるのが実務的な対策です。

業者によっては、残置物が残ったままの状態や、傷みのある建物をそのまま引き取ります。
片づけと解体の手間を省ける点は、遠方に住んでいる人にとって現実的な利点です。

解体して更地にしてから売る

建物を解体して土地だけを売る方法は、建物が老朽化して住める状態にない場合の選択肢です。
更地にすると土地として検討されやすくなり、買主の幅が広がります。

一方で、解体費は売却前に自己負担で出ていく費用です。
解体業者や不動産会社の公表値では、木造住宅の解体費は1坪あたり3万円〜6.5万円、延床30坪で90万円〜200万円程度とされており、条件によって幅が出ます。

税負担も変わります。
住宅を取り壊すと住宅用地の課税標準の特例が外れ、土地の固定資産税は上がる方向です。
解体してから売れ残った場合、支出だけが確定して収入は入りません。

解体は引き返せない選択です。
壊した建物は戻せないため、更地にする判断は査定を受けて金額の見通しを立ててから決めることをおすすめします。

売らずに手放す3つの方法

売らずに手放す3つの方法

売却が難しい物件では、売る以外の手も検討することになります。
個人や自治体に無償で譲る方法、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう方法、相続放棄で最初から引き継がない方法の3つです。

3つには、それぞれ制約があります。
譲渡は受け取る相手がいて初めて成立し、国庫帰属の対象は土地だけで、相続放棄では空き家以外の財産も手放す形です。
売却より手軽に見えて、実際には要件審査や期限が設けられています。

順番としては、売却の可否を確かめてからでも十分です。
査定で金額が付くなら売却が成立しますし、金額が付かないとわかってから次善策を選ぶほうが、判断の後悔は残りにくくなります。
売れないと思い込んでいた家に値が付く例もあります。

個人や自治体に無償で譲る

無償譲渡は対価を取らずに所有権を移す方法です。
現実味があるのは隣地の所有者への打診で、敷地を広げたい、駐車場にしたいといった動機があれば話が進むことがあります。
近隣に住む人や親族も候補に入れてください。

自治体やNPOへの寄付は、受け入れ側の条件を満たす必要があります。
立地や建物の状態、行政としての利用目的の有無が判断材料になり、条件に合わなければ断られます。
自治体が無条件で引き取ってくれるわけではない点は、期待値として押さえておいてください。

無償であっても、名義を移す登記は必要です。
登録免許税と司法書士報酬がかかり、受け取る側には贈与税の課題が生じます。
譲る前に税理士へ確認しておくと、あとから受け取り手が困る事態を避けられます。

相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈で取得した土地を、国に引き取ってもらう制度です。
令和5年4月27日に開始しました。
売れない土地を抱え続ける状態から抜ける手として、国が用意した制度です。

対象は土地に限られます。
建物が建っている土地は申請できないため、空き家を国に返したい場合は先に解体して更地にする必要があります。
解体費を負担してもなお国に返したいかという比較になる点が、実際の判断の分かれ目です。

費用もかかります。
法務省によれば、審査手数料は土地1筆あたり1万4,000円です。
承認を受けたあとは負担金を納めることになり、納付期限は負担金の額の通知を受けた日から30日以内と定められています。
期限内に納めないと、承認そのものが失効します。

【参考】相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律|e-Gov 法令検索

相続放棄で最初から引き継がない

相続放棄は相続人としての地位そのものを手放す方法です。
空き家を引き継がずに済みますが、使える場面は限られます。

注意したいのは期限です。
民法は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月を熟慮期間と定めており、3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

対象を選べない点にも注意してください。
相続放棄は被相続人の財産全体に及ぶため、預貯金や他の不動産も同時に手放す形になります。
空き家だけを外すことはできません。

相続放棄を考えている段階では、家財や遺品に手を付けないでください。
財産を処分したり隠したりする行為は法定単純承認にあたり、相続を承認したものとみなされます。
遺品整理や預金の解約も対象です。

すでに相続して名義を自分に移している場合も、相続放棄は選べません。
片づけを始める前に、弁護士や司法書士へ確認してください。

【参考】民法|e-Gov 法令検索

自分の空き家がどの方法に当てはまるかを見分ける3つの軸

手放し方を6つ並べても、自分の家がどれに当てはまるかがわからなければ判断は進みません。
絞り込みに使える軸は、建物の状態と立地の需要、そして名義の状態の3つです。

3つのうち、一番最初に整えるのは名義です。
名義が整っていない状態では、どの方法にも進めません。
建物と立地は「どの方法が現実的か」を決め、名義は「そもそも進められるか」を決める役割です。

建物がまだ使える状態か

建物の状態は、そのまま売る、買い取ってもらう、解体するのどれが射程に入るかを分けます。
判断材料になるのは4点です。
雨漏りの有無と床の傾き、シロアリ被害、基礎のひび割れを見てください。

雨漏りや傾きが出ている建物は、仲介で買主を探しても反応が鈍いままです。
修繕費の見当がつかない物件を個人が買う例は少なく、買取か解体が現実的な候補として残ります。

見た目に問題がなくても、築年数によって買主の資金調達が難しくなる場合も出てきます。
昭和56年5月31日以前に建てられた建物は現行の耐震基準より前の基準で建てられており、買主が住宅ローンの審査で不利になる場合もあるためです。

避けたいのは、自己判断でリフォームや解体を先に済ませることです。
かけた費用が売却価格に反映されるとは限らず、回収できないまま出費だけが残ります。
手を入れる前に査定を受けるほうが安全です。

土地に買い手がつく立地か

立地は、買い手の母数を決めます。
最寄り駅やバス停からの距離、商業施設や病院までの距離、周辺の人口動向が、そのまま検討者の数を決める要素です。

法的な制約も確認が要ります。
建築基準法は建物の敷地について道路に接することを求めており、接道義務を満たさない土地は原則として建て替えができません。再建築ができない土地は、更地にしても買主が限られます。

需要が薄い地域では、一般の市場に出しても反応が得られないことがあります。
その場合に現実的な相手になるのは、隣地の所有者と、訳あり物件を扱う買取業者です。
一般の買主とは判断基準が違うため、断られた経験があっても当たる価値があります。

なお立地の評価は、自分の実感と市場の評価がずれることもあります。
不便だと感じている土地でも、周辺で宅地の需要があれば値が付くものです。

【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索

名義と相続人の話がついているか

名義の状態は、処分を進められるかどうかを直接左右します。
名義が亡くなった被相続人のままでは、買主への所有権移転登記ができないため、売買の手続きが進まなくなります。

確認は書類でおこないます。
法務局で登記事項証明書を取得すれば、現在の所有者と抵当権の有無がわかります。
あわせて、同じ市区町村内の不動産をまとめて把握できる名寄帳も取得してください。

相続人が複数いる場合は、誰が取得するかを決めて相続登記を済ませないと売却手続きに入れません。共有名義のまま不動産全体を売る場合は、共有者全員の同意が必要になります。

手続きの担当は専門家ごとに別です。
登記の手続きは司法書士、相続人の間で合意が難しい場合は弁護士、税額の見込みは税理士というように、聞く相手を分けると話が早く進みます。

迷ったらまず査定を受けていくらで手放せるかを確かめる

処分の方法で迷っているなら、査定を先に受けるという順番をおすすめします。
金額の見当がつけば、解体費を負担する価値があるのか、譲るしかないのかという判断が一気に進む形です。

解体してから売れなかった、寄付を申し出たが断られたという順序の失敗は、先に金額を知らなかったことが原因で起きます。
数十万円から百万円台の出費を先に決めてしまうと、あとから取り返せません。

査定は無料です。
依頼したからといって売却する義務も生じず、金額を確かめたうえで保有を続ける判断もできます。
金額を知る段階と、手放すと決める段階は別のものです。

ベンナビ不動産売却では、空き家や共有持分といった訳あり不動産の無料査定と買取相談を受け付けています。
築年数が古い家、遠方にある家、家財が残ったままの家も対象です。
まずは自分の空き家にいくらの値が付くのかを確かめるところから始めてみてください。

空き家処分の手順5ステップと必要書類

空き家処分の手順5ステップと必要書類

処分は、着手順に分解すると迷いが減ります。
現況を確認し、名義を確かめ、書類を準備してから査定を受け、契約と引き渡しへ進むという5つのステップに整理できます。

5ステップのうち3番目までは、自分だけで進められる範囲です。
書類を先に揃えておくと査定の精度が上がり、概算ではなく根拠のある金額が出てきます。
結果として、査定より後ろの判断も速くなります。

逆に、書類が揃わないまま査定を依頼すると、幅の広い概算しか返ってきません。
金額の幅が広いと比較の材料にならず、方法を決める段階でまた止まることになります。

4番目の査定から先は、相手のある作業です。
会社を選び、依頼し、提示を受けて比べるという流れになるため、自分のペースだけでは進みません。
前半3つを済ませておくほど、後半の待ち時間は短くなります。

ステップ1|空き家の現況を確認する

最初にすることは、現地の状態を自分の目で確かめることです。
写真を撮りながら回ると、査定を依頼するときにそのまま使えます。

建物側で見るのは、雨漏りの跡や床の傾き、シロアリ被害、破損した箇所です。
屋根と外壁は外から見える範囲で構いません。
室内で見るのは、水回りの状態と、天井や壁のしみです。

中身の量も同時に記録してください。
家財がどの部屋にどれくらい残っているか、庭木や物置、放置された車両があるかを見ておくと、片づけ費用の見積もりが取りやすくなります。

土地については、隣地との境界標が残っているか、前面道路の幅、道路への接し方が確認の対象です。
不明な点があっても問題はなく、わからないまま査定時に伝えれば構いません。

ステップ2|名義と相続人を確認する

現況の次に確かめるのは、登記上の名義です。
法務局の窓口かオンライン申請で登記事項証明書を取得すると、所有者と抵当権の有無がわかります。

名義が被相続人のままであれば、相続登記を先に済ませてください。
相続登記は令和6年4月1日から申請が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内という期限が設けられました。
正当な理由なく怠った場合には、過料の定めがあります。

遺産分割の話し合いがまとまっていない段階でも、打つ手は残っている状態です。
相続人申告登記という制度を使えば、自分が相続人である旨を法務局に申し出ることで、申請義務を果たした扱いになります。
分割の結論を待つあいだの選択肢として使えます。

あわせて確認したいのは相続人の範囲です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどると、把握していなかった相続人が判明することがあります。

【参考】不動産登記法|e-Gov 法令検索

ステップ3|必要書類を集める

査定と売却で求められる書類は4系統に分かれます。
本人確認のもの、権利を証明するもの、物件を特定するもの、税額を確認するものです。
手元にないものは取得に日数がかかるため、早めに動くほど後半が楽です。

書類入手先用途
登記識別情報または登記済権利証手元に保管所有者であることの証明
登記事項証明書法務局名義と抵当権の確認
固定資産税納税通知書または評価証明書手元・市区町村税額と評価額の確認
本人確認書類・実印・印鑑証明書手元・市区町村契約手続き
住民票市区町村登記上の住所との照合
測量図・境界確認書手元・法務局土地の範囲の特定
建物図面・間取り図手元・法務局建物の特定
購入時の売買契約書・領収書手元取得費の証明

相続が絡む場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書、遺産分割協議書が加わります。
戸籍の取り寄せは本籍地をたどる作業になるため、数週間が必要になる場合も出てきます。

購入時の売買契約書は、見つからないと譲渡所得の計算で不利です。
取得費が証明できない場合、売却代金の一定割合を取得費とみなす扱いになり、税額が増える可能性が出てきます。
仏壇の引き出しや金庫、貸金庫に残っている例も多いため、片づけを始める前に探しておく価値があります。

ステップ4|査定を受けて手放す方法を決める

書類が揃ったら査定を依頼します。
おすすめは、仲介と買取の両方から金額を取ることです。
同じ物件でも算定の性質が違うため、並べると判断材料になります。

仲介の査定額は、売れる見込みとして算出した想定価格で、実際の成約額とは異なります。
買取の提示額は業者が実際に支払う金額で、そのまま手取りに近い数字です。
性質の違いを踏まえた比較が前提です。

確認するのは金額だけではありません。
提示額の根拠、費用をどちらが負担するか、引き渡しの条件がどうなるかを聞いておいてください。
家財を残したまま引き渡せるかどうかは、片づけ費用に直結する条件です。

解体すべきかどうかも、査定の段階での相談事項です。
更地にしたほうが高く売れるのか、現況のままでも変わらないのかは物件ごとに違います。
自己判断で先に壊さないという原則は、査定の段階でも変わりません。

ステップ5|契約・引き渡しと税務の手続き

方法が決まったら、売買契約に進みます。
契約時に手付金を受け取り、決済日に残代金の支払いと所有権移転登記を同時におこなうのが一般的な流れです。

引き渡しの前に済ませることが2つあります。
1つは家財の撤去で、契約で残置物の扱いを取り決めていない限り、売主が空の状態にして引き渡します。
もう1つは電気、ガス、水道の精算と解約です。

売却益が出た場合は、売った年の翌年に確定申告が必要です。
譲渡所得は売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、所有期間によって税率が変わります。

特例を使う場合も申告が要件です。
申告しなければ控除は適用されないため、税額がゼロになる見込みでも手続きは省けません。
申告の時期は、売った年の翌年2月16日から3月15日までです。

【参考】No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

家財・残置物の処分にかかる費用と進め方

建物の出口が決まっても、中身が残っていれば処分は終わりません。
家財が残ったままの家は、そのままでは引き渡せず、引き渡し条件をめぐって話がこじれる原因です。

査定額にも影響します。
片づけを買主側が負担する前提になると、片づけ費用の分が提示額から差し引かれます。
誰が片づけるかという話は、そのまま金額の話です。

進め方は3通りあります。
自分で運び出す方法、片づけの業者に依頼する方法、残置物ごと買い取ってもらう方法です。
物量と、現地に通えるかどうかで選ぶことになります。

遠方に住んでいる場合は、業者に任せる比重が上がります。
数日がかりの作業を自分でおこなうには、作業のたびに現地へ泊まる必要が出るためです。

家財の処分にいくらかかるか

片づけ費用は、物量と間取りで大きく変わります。
片づけ業者や不動産会社の公表値では、一軒家の家財処分を専門会社に依頼した場合の目安はおよそ20万円〜60万円程度です。

金額を左右する要素は4つあります。
荷物の量、部屋数と階数、搬出のしやすさ、そして処分品の種類です。
前面道路が狭くてトラックを横付けできない場合や、2階からの搬出が必要な場合は、作業員の数と時間が増えて費用が上がります。

見積もりは作業員の人数と作業時間をもとに算出されるのが一般的です。
訪問見積もりを複数社から取ると、金額の妥当性を判断できます。
電話だけの概算で契約した場合に起こりやすいのが、当日の追加費用の請求です。

家電リサイクル法の対象となるエアコンやテレビ、冷蔵庫、洗濯機は、別途のリサイクル料金がかかります。
見積書に含まれているかどうかを確認しておくと、あとから金額が動きません。

自分で捨ててよいものはどこまでか

自治体の分別ルールに沿って自分で出すことはできます。
可燃ごみと不燃ごみは通常の収集に、家具などの大型品は粗大ごみとして事前申し込みのうえ排出します。
量が少なければ、自力で片づける選択も現実的です。

まとめて任せる場合は、業者の許可を確認してください。
家庭から出る家財は一般廃棄物にあたり、収集運搬を業として請け負うには市区町村の許可が要ります。
無許可の回収業者に渡すと、不法投棄につながりかねません。

確認するのは、一般廃棄物収集運搬業の許可の有無と遺品整理の実績です。
「無料回収」を掲げて巡回する業者には、あとから高額の料金を請求する例もあります。

もう1点、権利の面でも注意してください。
名義が自分でない場合や相続人が複数いる場合、単独の判断で家財を処分すると、あとで責任を問われます。
相続放棄を検討中なら、片づけそのものが法定単純承認とみなされる可能性も残ります。

【参考】廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov 法令検索

仏壇や神棚はどう扱うか

仏壇、位牌、神棚は、ほかの家財と同じ扱いにしにくいものです。
一般的には、寺社に依頼して閉眼供養や魂抜きをおこなってから引き取ってもらいます。
最初の相談先は菩提寺です。

菩提寺がわからない場合でも、遺品整理業者の多くが供養の手配を含めて請け負っています。
仏壇の引き取りと供養をまとめて依頼できるため、遠方に住んでいる人でも段取りが付きます。

神棚については、神社に納めて焚き上げてもらう方法が一般的です。
地域の神社に問い合わせると、受け入れの可否と時期を教えてもらえます。

作業に入る前に、抜き出しておくものがあります。
権利証や購入時の売買契約書、保険証券、通帳、写真などです。
片づけが始まると探すのが難しくなるため、先にまとめて持ち出しておくことをおすすめします。

残置物を残したまま引き取ってもらえるか

片づけずに手放せる場合があります。
買取業者の中には、残置物が残ったままの状態で引き取る会社があるためです。
自社で再販や解体をおこなうため、片づけを含めて対応できる仕組みになっています。

残置物ごと引き取ってもらう形なら、片づけ費用は自分で出さずに済む計算です。
費用そのものが消えるわけではなく、業者側の作業費が買取価格に織り込まれます。
自分で片づけて売った場合と、残置物ごと引き取ってもらった場合の手取りを比べて選ぶことになります。

比較の考え方は単純です。
片づけ費用の見積額と、残置物ありの買取額と残置物なしの買取額の差を並べます。
差額のほうが小さければ、任せるほうが手間も含めて有利です。

仲介で売る場合は、原則として引き渡しまでに撤去します。
条件は契約で決まるため、残置物の一部を残す形での合意も可能です。
可能かどうかは、査定の段階で確認しておいてください。

空き家処分にかかる費用の内訳

処分にかかる費用は、大きく3系統に分かれます。
物件を売れる状態にするための費用、手続きのときに支払う費用、そして売却益が出たときの税金です。

選んだ方法によって、消える費目が出てきます。
買取なら仲介手数料はかかりません。
現況のまま売るなら解体費は不要です。
すべての費目が常に発生するわけではない点を押さえると、見通しが立てやすくなります。

費目目安発生する場面
解体費木造1坪あたり3万円〜6.5万円更地にして売る場合
家財処分費一軒家で20万円〜60万円程度残置物を自分で処分する場合
測量・境界確定費30万円〜60万円境界が確定していない場合
登録免許税評価額の0.4%〜2%相続登記・所有権移転登記
司法書士報酬3万円〜10万円以上登記を依頼する場合
仲介手数料売買価格に応じた上限あり仲介で売る場合
印紙代売買価格に応じて変動売買契約書の作成時
譲渡所得税所有期間によって税率が変わる売却益が出た場合

金額に幅があるものは、各社が公表している値です。
物件の条件によって変わるため、目安として読んだうえで、実際の金額は見積もりで確かめてください。

支払いの時期にも差があります。
解体費と家財処分費、測量費は売却代金が入る前に出ていくため、手元資金の準備が要ります。
仲介手数料と譲渡所得税は、売却代金が入ったあとの支払いです。
資金繰りの心配は小さくて済みます。

物件を売れる状態にするための費用

売り出す前に自己負担で出ていく費用が、1つ目の系統にあたります。
代表的なものは解体費、測量費、家財処分費の3つです。

解体費は構造と延床面積で決まります。
公表されている目安では木造住宅が1坪あたり3万円〜6.5万円、延床30坪で90万円〜200万円程度です。
立地や付帯工事の有無によって、公表元ごとに値の幅が変わります。

測量と境界確定は、公表されている目安で30万円〜60万円です。
隣地との境界標が失われている土地や、公図と現況が食い違う土地では必要になります。
買主が境界の確定を条件にすることも多く、売却前に済ませておく場面が出てきます。

家財処分費は物量次第で、一軒家で20万円〜60万円程度が目安です。
3つに共通するのは、売却代金が入る前に支払う点です。
手元資金の準備が必要になります。

手続きのときに支払う費用

売買の手続きに伴って発生するのが、登記関係の費用と仲介手数料です。

登録免許税は評価額に対する割合で計算します。
売買による所有権移転は、本則で固定資産税評価額の2パーセントです。
土地については租税特別措置法72条により、令和11年3月31日までの登記であれば1.5パーセントに軽減されます。
相続登記は0.4パーセントです。
司法書士報酬は所有権移転のみで3万円〜7万円、相続登記を含む場合は10万円以上が目安です。

仲介手数料は、宅地建物取引業法にもとづく国土交通大臣の告示で上限が定められています。
売買価格が400万円を超える場合、上限は売買価格の3パーセントに6万円を加えた額に消費税を加えた額です。
1,000万円で売れた場合、上限はおよそ39.6万円になります。

売買契約書には印紙を貼ります。
印紙代は契約金額によって変わり、1,000万円の売買であれば5,000円です(令和9年3月31日まで軽減措置の適用有り)。なお買取で売る場合、仲介手数料は発生しません。

【参考】宅地建物取引業法|e-Gov 法令検索

売却益が出たときの税金

売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて利益が出た場合、譲渡所得として課税されます。
税率は所有期間で変わり、短期保有でおよそ39パーセント、長期保有でおよそ20パーセントです。

相続した空き家には控除の特例が用意されています。
国税庁によれば、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象です。

主な要件は4点あります。
昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物登記がされていないことが2点です。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることも求められます。

控除額は最高3,000万円です。
令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上なら2,000万円です。
適用の可否は税理士か税務署に確認してください。

【参考】No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

空き家の処分が進まないときの手当て

手を尽くしても動かないことがあります。
行き詰まりの型は3つです。

  • 買い手が付かない
  • 親族の合意が取れない
  • 費用が出せない

止まっている原因が物件側にあるのか、人の側にあるのかで打ち手が変わります。
物件側なら条件を変える、人の側なら判断材料を揃えるという方向です。
費用が理由なら、自治体の補助制度を先に探す価値があります。

行き詰まりが長引く理由の1つは、原因の切り分けをしないまま同じ手を繰り返してしまう点にあります。
買い手が付かないのは価格のせいなのか、売り出し方のせいなのか、そもそも相手先が合っていないのか。
切り分けができれば、次に変えるものが決まります。

どの型にも共通するのは、金額の目安を持つことが突破口になる点です。
数字が入ると、感情や漠然とした不安が具体的な比較に変わります。
維持費の年額と査定額を並べるだけでも、話し合いの前提はそろいます。

買い手が付かないとき

売り出しても反応がない場合、変えられるものは3つあります。
価格、売り出し方、そして相手先です。

売れない空き家の対処として挙げられるのは、価格を2割以上値下げする方法、隣地に声をかける方法、不動産会社を変える方法です。
同じ物件でも、扱う会社によって販売力と得意分野は違います。

空き家バンクへの登録も選択肢の1つです。
自治体が運営する仕組みで、移住希望者とつながる可能性が出てきます。
ただし成約まで時間がかかりやすいため、早く手放したい場合の主軸にはなりにくい選択です。

一般の市場で反応がない物件でも、訳あり物件を扱う買取業者なら検討対象になることがあります。
一般の買主とは判断の基準が違うためです。
仲介で断られた経験があっても、当たる先を変える価値は残っています。

仲介で断られた経験がある空き家でも、訳あり物件を扱う会社へまとめて当たるのは有効な手です。
ベンナビ不動産売却では、築年数の古い家や残置物が残ったままの家の買取査定を無料で受け付けています。

親族の合意が取れないとき

共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できません。
まず確かめるのは、誰が反対していて、理由が何かという点です。

反対の理由は、金額への不満、思い出のある家を手放すことへの抵抗、費用の負担割合への不公平感などに分かれます。
理由が違えば、必要な材料も変わります。

材料として有効なのは数字です。
査定額、維持費の年額、解体費の見積もりを全員に共有すると、話が感情の応酬から条件の比較に移ります。
持ち続けた場合に毎年いくら出ていくかという数字も、判断の基準です。

遺産分割そのものが決着していない場合や、話し合いで折り合えない場合は、弁護士に相談する領分になります。
共有物分割請求という手続きもありますが、選択の是非は個別の事情によります。

遺産分割や共有の問題が絡む空き家では、査定と並行して弁護士へ相談するのが有効です。
ベンナビ不動産売却では、弁護士や司法書士と連携する会社へ、共有名義の不動産の査定と相談を無料で依頼できます。

解体や片づけの費用が出せないとき

先立つ費用がない場合、探すべきは自治体の補助制度です。
老朽化した空き家の解体費やリフォーム費に補助を設けている自治体は多くあります。

金額と要件は自治体ごとに異なります。
自治体の公表例では、群馬県高崎市が上限100万円、長野市が最大4分の3で上限150万円です。
埼玉県行田市と栃木県鹿沼市は、いずれも解体工事費の2分の1以内で上限50万円としています。
いずれの制度も年度ごとに見直されるため、最新の金額と要件は所在地の自治体で確かめてください。

申請のタイミングには注意が要ります。
補助金は着工前の申請が原則で、契約や工事のあとに申請しても認められないことが多くあります。
解体業者と契約する前に、所在地の自治体の担当課へ確認してください。

もう1つの手として、費用を出さずに済ませる方向もあります。
現況のまま買い取ってもらえば、先に出ていく費用はゼロです。
手取りは下がりますが、資金を用意できない場合の現実的な選択肢になります。

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空き家処分に関するよくある質問

Q

空き家の処分費用はいくらかかりますか?

A

選ぶ方法によって変わります。
現況のまま買取に出す場合、解体費も仲介手数料もかからず、登記費用と印紙代が中心です。
更地にして仲介で売る場合は、解体費で90万円〜200万円程度、仲介手数料で数十万円が加わります。
家財が残っていれば、一軒家で20万円〜60万円程度の片づけ費用が別に必要です。

Q

空き家の処分にはどれくらいの期間がかかりますか?

A

買取なら数日〜1ヵ月程度、仲介なら3ヵ月〜1年以上が目安です。
名義が被相続人のままの場合は、相続登記の手続き期間が加わります。
戸籍の収集に数週間、登記の完了に1週間〜2週間程度を見込んでおくと、全体の見通しが立ちます。

Q

空き家の家財を勝手に処分してもよいですか?

A

自分が単独の所有者であれば、自分の判断で処分できます。名義が被相続人のままの場合、所有者を特定できない場合、相続人が複数いる場合は、ほかの相続人の同意を得てから作業に入ってください。
価値のある品を無断で処分すると、あとで責任を問われることがあります。

Q

田舎の空き家でも処分できますか?

A

一般の市場では買い手が限られますが、当たれる先はあります。
隣地の所有者への打診、自治体の空き家バンクへの登録、訳あり物件を扱う買取業者への相談という順で試す方法が現実的です。
1社に断られただけで諦める必要はありません。

Q

お金をかけずに空き家を処分する方法はありますか?

A

現況のまま買い取ってもらう方法が中心になります。
解体も片づけもせずに引き渡せるなら、先に出ていく費用は不要です。
隣地の所有者に引き取ってもらう形や、自治体の解体補助を使って自己負担を抑える形も検討できます。

まとめ|空き家処分は名義の確認と査定から始める

空き家を手放す方法は6通りあります。
売って手放すなら、仲介、買取、解体して更地の3つです。
売らずに手放すなら、無償で譲る、相続土地国庫帰属制度で国に返す、相続放棄の3つが選択肢になります。

絞り込みに使う軸は3つです。
建物がまだ使える状態か、土地に買い手がつく立地か、名義と相続人の話がついているか。
3つの軸のうち名義は、整っていないとどの方法にも進めない前提条件にあたります。

進め方は5ステップです。
現況の確認から始めて名義を確かめ、書類を準備してから査定を受け、契約と引き渡しへ進みます。
並行して、家財と残置物の片づけの進め方も決めてください。

ベンナビ不動産売却では、空き家や共有持分などの訳あり不動産について、無料査定と買取相談を受け付けています。
家財が残ったままの家、遠方にある家、築年数の古い家も対象です。
解体や片づけに費用を投じる前に、まず金額の幅を確かめるところから始めてみてください。

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クラルス法律会計事務所
監修者

クラルス法律会計事務所 久保 勇二

所属:大阪弁護士会

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