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未登記建物とは?放置するリスクと登記の流れ・費用をわかりやすく解説
相続した実家の名義を変えようとして、法務局に建物の記録がないと言われた方は少なくありません。
固定資産税は毎年課されているのに登記簿だけが存在しない状態は、未登記建物と呼ばれます。
本記事のテーマは、未登記建物の意味と、登記済みの建物との違いです。
あわせて放置したときの不利益、登記の流れと費用、相続や売却でつまずく点までまとめました。
読み終えるころには、登記して残すか、登記してから売るか、解体して土地だけ手放すかを費用と手間で比べられます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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未登記建物とは登記記録がない建物のこと
未登記建物とは、法務局の登記記録に建物の情報が載っていない建物を指します。
建物の登記は表題登記と権利登記の2階層で、表題登記すらない状態が未登記建物です。
まずは登記記録に何が載るのかを押さえましょう。

| 用語 | 一言説明 | 情報が記録される場所 |
|---|---|---|
| 未登記建物 | 表題登記が申請されていない建物 | 市区町村の固定資産課税台帳のみ |
| 一部未登記 | 増築部分や附属建物の登記が抜けている建物 | 登記記録には母屋のみ・課税台帳には全体 |
| 表題登記 | 建物の所在・種類・構造・床面積を記録する登記 | 法務局の登記記録(表題部) |
| 所有権保存登記 | 最初の所有者を記録する登記 | 法務局の登記記録(権利部甲区) |
未登記建物|法務局に表題登記がされていない建物
未登記建物とは法務局の登記記録に建物の情報が一切載っていない建物です。
未登記家屋、未登記物件という呼び方も同じ状態を指します。
登記記録がないため、建物には家屋番号が付いていません。
家屋番号がなければ登記事項証明書も取得できず、法務局の窓口では「該当なし」との回答です。
一方で、市区町村は航空写真や現地調査で建物の存在を独自に把握しています。
把握した建物は固定資産課税台帳へ登録され、毎年の固定資産税と都市計画税の対象です。
登記の有無と課税の有無は別の話だと理解してください。
税金の通知が届いているから登記されているはずだ、という思い込みが未登記の発見を遅らせます。
納税通知書が届いていても、登記記録の有無は別に確かめる必要があります。
一部未登記|増築部分や附属建物だけが登記されていない建物
一部未登記とは母屋の登記はあるものの、後から加えた部分が登記記録へ反映されていない状態です。
増築した2階部分、庭に建てた離れ、車庫や物置が代表例にあたります。
不動産登記法は、表題部の記載に変更があった場合、所有者に建物表題部変更登記の申請を義務づけています。
期限は変更があった日から1か月以内です。
床面積が変わる工事をしたら、工事完了後1か月が申請の期限です。
一部未登記は、売却や住宅ローンの借り換えで発覚しやすくなります。
金融機関が登記記録の床面積と現況の床面積を照合し、差があると審査を止めます。
増築工事の記憶があるなら、売り出す前に登記記録を確認してください。
母屋と別に建てた離れや車庫は、屋根と三方の壁があり土地に定着していれば登記の対象になります。
物置でも基礎で固定されていれば同じ扱いです。
屋根だけの簡易な車庫は対象外なので、迷ったら土地家屋調査士に現地を見てもらってください。
表題登記と権利登記|建物の登記は2つの階層に分かれる
表題登記とは建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積を登記記録に起こす手続きです。
建物が物理的にどこにどう建っているかを公示します。
権利登記のうち最初に行うのは所有権保存登記です。
所有者が誰かを記録する登記で、申請の義務はありません。
ただし第三者に対して自分の所有権を主張するには不可欠です。
未登記建物では2つとも欠けているため、表題登記から順に進めます。
担当する専門家も次のとおり分かれます。
- 表題登記|土地家屋調査士が担当し、登録免許税はかからない
- 所有権保存登記|司法書士が担当し、登録免許税は不動産の価額の0.4%
依頼先を間違えると手続きが進みません。
表題登記を司法書士に頼んでも受けられず、所有権保存登記を土地家屋調査士に頼んでも同様です。
順序も入れ替えられません。
表題登記が完了して初めて登記記録が作られ、表題部所有者が記録されます。
所有権保存登記は表題部所有者を最初の名義人として記録する手続きで、表題登記なしでは申請ができない仕組みです。
登記の有無|売却と担保と相続で扱いが変わり税金は変わらない
登記があるかないかで実生活に差が出るのは、売却・担保・相続・権利主張の場面です。
固定資産税の負担だけは変わりません。
| 場面 | 登記済みの建物 | 未登記建物 |
|---|---|---|
| 売却 | 買主名義へ所有権移転登記ができる | 買主名義へ移せず現金で買う相手に絞られる |
| 住宅ローン等の担保 | 抵当権を設定して融資を受けられる | 担保に入れられず審査が通らない |
| 相続手続き | 登記記録をもとに相続登記を申請できる | 表題登記からやり直しになる |
| 第三者への権利主張 | 登記を根拠に所有権を対抗できる | 対抗できず権利を失う可能性がある |
| 固定資産税 | 課される | 同じように課される |
登記があれば、自分が所有者であると登記事項証明書1通で示せます。
未登記だと、所有を裏づける資料は課税明細書や工事の請負契約書に限られます。
実生活で差が出るのは、建物を手放したり活用したりする場面だけです。
住み続けるだけなら未登記でも支障はなく、電気や水道の契約も通常どおり結べます。
手放す・貸す・借入れに使うといった行動を取る段階で、登記の有無が問題になります。
登記を急ぐべきかどうかの分かれ目は、売却や相続の予定の有無です。
当面手放す予定がなくても、相続人の負担を減らす目的で早めに手を打つ選択肢もあります。
未登記建物が生まれる4つの理由
未登記のまま残る理由は、特殊な事情ではありません。
資金の出どころや地域の慣習など、どの家庭にも起こりうる背景が重なった結果です。
古い木造家屋や地方の農家住宅では珍しくない状態だと考えてください。
住宅ローンを使わずに自己資金で建てた
住宅ローンを組むと、金融機関は建物に抵当権を設定します。
抵当権を設定するには表題登記と所有権保存登記が前提になるため、ローンを使う限り登記は必ず行われます。
一方、現金や親族からの資金で建てた建物に、登記を促す第三者は不在です。
工事代金を支払えば引き渡しが完了し、登記されないまま住み始める流れになります。
昭和期に建てた自宅や作業場、農機具小屋に未登記が多いのは、資金を自前で用意した例が多かったためです。
心当たりがあるなら、登記記録の有無を先に確かめてください。
親から資金援助を受けて建てた建物も同じ経路をたどります。
贈与税の申告だけ済ませ、登記まで手が回らないまま年月が過ぎる例が目立ちます。
建築当時の請負契約書や領収書が残っていれば、後から登記する際の証拠として使えるため保管しておきましょう。
地域や時代の慣習で登記が行われてこなかった
登記制度の運用が現在ほど徹底されていなかった時期に建てられた建物は、未登記のまま現在に至っています。
取引を予定しない納屋・作業小屋・離れほど、登記されにくい傾向があります。
市区町村が頼るのは登記記録ではなく、航空写真や現地調査です。
把握した建物を固定資産課税台帳に登録し、所有者へ課税します。
地方税法は、家屋の所有者を登記簿だけでなく家屋補充課税台帳に登録された者からも把握すると定めています。
固定資産税が課されていても、登記されているとは限りません。
課税されているから登記済みだ、という判断は誤りです。
納税通知書は登記の証明になりません。
登記記録と課税台帳は別々に作られる帳簿です。
課税台帳は市区町村が税を課すために作り、登記記録は法務局が権利関係を公示するために作ります。
目的が違うため、片方にだけ載っている建物が生まれます。
【参考元】地方税法第343条(固定資産税の納税義務者)|e-Gov法令検索
増改築や附属建物の登記を申請しなかった
床面積が変わる工事をしたら、建物表題部変更登記が必要です。
新たに車庫や物置を建てた場合も同じです。
実際には、工務店が代行してくれるはずだと施主が考え、双方とも申請しないまま完了する例が目立ちます。
工事完了から時間が経つほど、当時の図面や契約書が散逸して手続きが重くなります。
増築部分も固定資産税の対象です。
税額が上がっていても登記は別なので、税金の通知だけでは登記漏れに気づけません。
登記漏れを確かめる手がかりは、登記事項証明書の床面積です。
現況の延べ床面積と数字が食い違えば、差の部分が未登記だと判断できます。
登記記録と現況で床面積が食い違うと住宅ローンの審査で問題になりやすいため、借り換えを考えているなら先に確認してください。
相続した人が未登記だと気づいていない
被相続人あての固定資産税の納税通知書は、相続後も同じ住所へ届き続けます。
相続人は登記済みだと思い込んだまま年月が過ぎ、売却や相続登記の段階で初めて未登記だと知ります。
納税通知書に同封される課税明細書の家屋番号欄が空欄なら、未登記の可能性が高いと判断してください。
司法書士に相続登記を依頼した際、登記事項証明書が取得できず発覚する経路もあります。
発覚が遅れるほど、手続きは重くなります。
被相続人からさらに次の世代へ相続が起きると、遺産分割協議の相手が増えるためです。
親名義の不動産があると分かった時点で、土地と建物の両方について登記記録を取り寄せておきましょう。
親が健在なうちに確認しておくと、手間はさらに減ります。
建築当時の資料の在りかや、増築の有無を本人から聞き取れるためです。
未登記建物かどうかを調べる3つの方法
未登記かどうかは、手元の書類と法務局で自力で判定できます。
費用のかからない順に、課税明細書の確認、登記事項証明書の請求、名寄帳の取得と進めましょう。
所有する建物が複数ある場合は、名寄帳から入ると漏れがありません。
固定資産税の課税明細書で家屋番号の有無を確認する
家屋番号とは法務局が建物ごとに付ける識別番号で、表題登記の際に決まります。
住所とは別の番号です。
毎年4月から6月ごろ、市区町村から固定資産税の納税通知書が届きます。
同封される課税明細書の家屋欄を開き、家屋番号が記載されているかを見てください。
家屋番号欄が空欄、または「未登記」「家屋番号なし」と印字されていれば、未登記建物の可能性が高い状態です。
郵送物だけで確認できるため、最初に行う作業として適しています。
課税明細書が見当たらない場合は、市区町村の資産税担当課で固定資産評価証明書を取得してください。
手数料は1件あたり数百円で、記載内容は課税明細書とほぼ同じです。
相続人であれば、被相続人名義の証明書も戸籍を添えて請求できます。
法務局で登記事項証明書を請求して記録の有無を確かめる
登記事項証明書は、全国どの法務局の窓口でも請求できます。
郵送とオンラインにも対応しており、手数料は窓口での書面請求が1通600円です。
家屋番号が分からない場合は、建物が建っている土地の地番を伝えれば、窓口で建物を検索してもらえます。
該当する記録が出てこなければ未登記と確定します。
記録が出てきた場合も安心は禁物です。
登記記録の床面積と現況の床面積を比べ、差があれば増築部分が未登記だと分かります。
土地の登記事項証明書もあわせて取得しておくと、判断は早く付きます。
土地の登記記録に、同じ敷地に建つ建物の家屋番号が載っている場合もあるためです。
取得の手数料は建物と同じく1通600円です。
土地の記録に建物の記載がなければ、未登記である疑いはさらに濃くなります。
【参考元】登記手数料について(法務省)
市区町村の名寄帳で所有する建物を一覧で確認する
名寄帳とは同じ市区町村内で同一人が所有する不動産を一覧にした帳簿です。
課税のために市区町村が作成しており、登記されていない納屋や物置も載ります。
相続人は、被相続人との関係が分かる戸籍などを添えて請求できます。
相続財産の全体像を把握する資料としても有効です。
把握していない建物が見つかった場合、権利関係の整理と売却の見通しを同時に確かめておくと判断が早まります。
ベンナビ不動産売却なら、提携する弁護士への無料相談と査定を並行して受けられます。
名寄帳は市区町村ごとに作る帳簿です。
複数の市区町村に不動産があれば、役所ごとに請求してください。
被相続人が引っ越しを繰り返していた場合は、住民票の除票で住所の履歴をたどってから請求先を決めてください。
未登記建物を放置すると起きる5つの不利益
未登記のままだと過料の対象になり、所有権を第三者に主張できず、建物を担保にも使えません。
売却先は現金で買う相手に絞られ、相続が重なるたびに手続きが重くなります。
代償は金銭面と権利面の両方です。

10万円以下の過料に処せられる可能性がある
不動産登記法は、新築した建物や区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者に、表題登記の申請を義務づけています。
期限は所有権を取得した日から1か月以内です。
義務を負うのは所有権を取得した人です。
同法は、申請すべき義務がある者が正当な理由なく申請を怠ったときは10万円以下の過料に処すると定めています。
相続で未登記建物を取得した相続人も、義務を負う立場です。
実際に過料が科された例は多く報告されていません。
ただし法律上の義務である以上、リスクがゼロだとは言えません。
登記の予定がないとしても、義務がかかっている状態だと認識しておきましょう。
過料は刑罰ではなく行政上の制裁です。
前科は付きませんが、裁判所から通知が届き納付を求められます。
義務の起算点は所有権を取得した日で、相続で取得した場合の基準は被相続人の死亡日です。
建物の所有権を第三者に主張できなくなる
民法は、不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ第三者に対抗できないと定めています。
対抗とは、争いになった相手に自分の権利を認めさせることです。
未登記建物には所有権保存登記がないため、第三者に権利を主張するための条件を満たしていません。
土地の所有者と建物の所有者が別々の場合や、共有者の1人が単独で処分を進めた場合に争いへ発展します。
先に他人が登記を備えてしまえば、所有権を失う結果もあり得る状況です。
建物を長期間使い続けている事実だけでは、権利の証明として弱い点に注意してください。
借地に建てた建物では影響がさらに大きくなります。
借地借家法は、借地上の建物を登記していれば、土地の所有者が変わっても借地権を新しい所有者へ主張できると定めています。
建物が未登記だと、土地が売られた際の借地権の主張は困難です。
明渡しを求められる可能性も生じます。
【参考】民法(e-Gov 法令検索)
建物を担保にした融資を受けられない
金融機関は、建物に抵当権を設定したうえで融資を実行します。
抵当権の設定登記の前提は表題登記と所有権保存登記で、未登記建物は担保として使えない扱いです。
リフォームローンの申込み、住宅ローンの借り換え、事業資金の借入れは、いずれも建物の登記がない段階で止まります。
金額の大小にかかわらず、金融機関は審査の入り口で判断します。
残る手は、土地だけを担保に入れる方法です。
ただし建物の評価が加算されないため、借入可能額は縮みます。
希望額に届かない場合は、申込みの前に登記を済ませましょう。
融資の申込みから登記完了までは1か月から2か月かかります。
金融機関の審査期間と重ねられないため、資金が必要な時期から逆算して動いてください。
急ぎで登記を進める場合は、土地家屋調査士に事情を伝えて日程を調整しましょう。
買主が限られて売却が難しくなる
未登記のままでは、買主名義への所有権移転登記ができません。
住宅ローンを利用する買主は登記を前提に審査を受けるため、購入自体を見送ります。
結果として、売却先は現金で買う相手だけです。
売買契約では、売主が引き渡しまでに表題登記と所有権保存登記を済ませる特約を求められる取り扱いが一般的です。
登記費用を負担してから売るか、現状のまま引き受けてもらうかは、手取り額を比べて決めましょう。
権利関係が複雑な物件を直接買い取る事業者なら、登記や解体の費用を負担したうえで買い取る対応も可能です。
ベンナビ不動産売却の無料査定なら、費用の負担条件まで含めて確認できます。
仲介で売り出す場合、登記が済んでいない事実は重要事項として買主へ説明されます。
説明を受けた買主は価格の引下げを求めるのが通常です。
登記費用を負担する場合と値引きに応じる場合の金額を並べて、どちらが有利かを判断してください。
相続のたびに手続きが重くなり所有者が分からなくなる
登記記録がなければ、誰が相続し誰が譲り受けたかを示す公的な資料が残りません。
世代が変わるたびに権利者が増え、最終的には所有者不明の建物になります。
相続人が孫やひ孫まで広がれば、遺産分割協議の相手は10人以上です。
全員の同意がなければ売却も解体も進められません。
相続登記は2024年4月から義務化されました。
相続人の1人が単独で処分することもできません。
全員の同意が要る状態が続き、意見がまとまらないまま固定資産税だけを払い続ける結果です。
不動産登記法は、所有権の登記名義人について相続が開始した場合、相続で所有権を取得した者に移転登記の申請を義務づけています。
期限は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内です。
自分の代で処理しておくほど、後の負担は軽くなります。
未登記建物を登記して得られる3つのこと
登記を済ませれば、相続時の名義の証明が簡単になり、改修資金を借りられるようになり、買主の候補が増えます。
登記費用に見合う結果が得られるかどうかを、次の3点で判断してください。
次の世代へ引き継ぐときに名義の証明で揉めずに済む
登記記録には所有権の移転の経緯が残ります。
相続人は登記事項証明書1通で建物の帰属を示せるため、遺産分割の話し合いが短く済みます。
未登記のままだと、相続人は建物の存在自体を把握できず、遺産の洗い出しからのスタートです。
名寄帳や課税明細書をたどる作業が加わり、協議の開始が遅れます。
登記があれば相続登記も通常の手続きで完了します。
表題登記からのやり直しが不要なぶん、司法書士へ支払う報酬も低く抑えられるためです。
遺言を残す場合にも登記は役に立ちます。
遺言書で不動産を指定するには、登記記録の表示を書き写して物件を特定するのが確実だからです。
未登記のままだと物件の特定が甘くなり、遺言の解釈をめぐる争いを招きかねません。
建物を住み続けられる状態に改修する資金を用意できる
登記を済ませれば、土地と建物をあわせて担保に入れられます。
建物の評価が加算されるため、借入可能額は上向きです。
耐震改修や空き家の活用に自治体の補助金を使う場合、登記事項証明書の提出が条件になる例もあります。
制度の利用を考えているなら、申請前に登記を済ませておいてください。
借入額に余裕が出れば、古い建物を解体して建て替える選択肢も現実的になります。
修繕を繰り返すより費用対効果が高い場合もあるため、両方の見積もりを取って比べてください。
賃貸に出す場合も登記が役立ちます。
入居者や管理会社は登記事項証明書で所有者を確認するため、登記があれば契約手続きが早く進みます。
所有者が確認できない建物は、管理の引き受けを断られがちです。
買主の候補が増えて価格を交渉できるようになる
登記済みなら、住宅ローンを使う買主にも売れます。
仲介で市場に出せるようになり、複数の購入希望者を比べられます。
成約までの期間の見通しが立てやすいのも、買主が金融機関の審査を通せるからです。
買い手が1人しかいない状況と比べ、価格の交渉余地が生まれます。
登記費用と売却見込み額のどちらが大きいかは、査定を受けなければ分からない部分です。
ベンナビ不動産売却は、登記前の状態の建物でも査定に応じています。
登記にかかる十数万円を負担しても、買主が増えて売却価格が上がれば十分に回収できます。
一方、建物に価値がほとんどなく解体前提の取引になるなら、登記せずに土地ごと売ったほうが手取りは大きくなるケースです。
建物の築年数と状態で判断を分けてください。
未登記建物を登記する手続きの流れ
資料を集めて土地家屋調査士に表題登記を依頼し、続けて司法書士に所有権保存登記を依頼します。
相続した建物は遺産分割協議を先に整えます。
全体の所要期間はおおむね1か月から2か月です。

1. 建物の資料と登記記録を確認する|1〜2週間
最初に、建物の存在と所有を裏づける資料を集めます。
必要になる主な書類は次のとおりです。
- 建築確認済証・検査済証
- 工事の請負契約書と領収書
- 固定資産税の納税通知書と課税明細書
- 建物の所在地の登記事項証明書(土地)
古い建物では建築確認の書類が残っていない場合も多くあります。
書類がない場合は、火災保険証券や電気・ガスの使用開始時期が分かる書類、近隣住民が作成する上申書で代替します。
資料がそろわないほど調査の手間が増え、費用と期間も余分にかかると考えてください。
手元の書類を先に洗い出してから専門家へ相談してください。
相続した建物なら、被相続人の自宅にある書類箱や貸金庫も確認の対象です。
建築当時の資料は建物の権原を示す証拠として扱われます。
1枚でも多く見つかれば、上申書の作成にかかる手間と費用を減らせます。
2. 土地家屋調査士に表題登記を依頼する|2〜4週間
土地家屋調査士とは不動産の表示に関する登記の調査・測量・申請代理を行う国家資格者です。
表題登記は土地家屋調査士の担当分野にあたります。
依頼を受けた調査士が行うのは、現地での測量と、各階平面図・建物図面の作成です。
作成した図面と所有権を証する書面を添えて、法務局へ表題登記を申請します。
表題登記に登録免許税はかかりません。
費用は調査士への報酬が中心です。
申請から完了までは、法務局の審査を含めて2週間から1か月かかります。
登記官が現地を確認する場合はさらに延びます。
完了後は登記完了証が交付され、建物の登記事項証明書も取得できる状態です。
申請できるのは所有権を取得した本人か、委任を受けた土地家屋調査士に限られます。
自分で申請する道もありますが、図面の作成に専門的な技能が要るため、依頼したほうが確実です。
3. 司法書士に所有権保存登記を依頼する|1〜2週間
所有権保存登記とは表題部所有者として記録された人を最初の所有権登記名義人にする手続きです。
表題登記の完了後に申請します。
申請では住民票と固定資産評価証明書を添えます。
評価証明書の取得先は市区町村役場、東京23区では都税事務所です。
所有権保存登記に申請義務はありません。
ただし売却や融資には不可欠なため、表題登記と続けて済ませてください。
申請できるのは、表題部所有者として記録された人と、相続人に限られます。
相続人が申請する場合は、被相続人との関係が分かる戸籍も必要です。
登記が完了すると、登記識別情報通知が交付されます。
売却時に必要となる重要な書類にあたるため、紛失しないよう保管してください。
紛失した場合でも売却はできますが、司法書士による本人確認情報の作成が必要になり、数万円の追加費用がかかります。
4. 相続した建物は遺産分割協議を整えてから申請する|1か月〜
相続した未登記建物は、遺産分割協議で取得者を決めてから登記へ進みます。
取得者が決まらなければ表題部所有者を特定できず、申請自体が不可能です。
協議には、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書、遺産分割協議書がそろう必要があります。
相続人の人数が多いほど、書類収集に時間がかかります。
相続人の間で取得者が決まらない場合や、連絡が取れない相続人がいる場合は、権利関係の整理が先です。
ベンナビ不動産売却の無料相談では、提携する弁護士に協議の進め方から確認できます。
遺産分割協議を経ずに、相続人全員の共有名義で登記する方法もあります。
ただし共有にすると、売却のたびに全員の同意が要る状態です。
次の相続では権利者がさらに増えます。
将来売る予定があるなら、単独名義にまとめておきましょう。
未登記建物の登記にかかる費用の目安
表題登記の調査士報酬がおおむね8万〜15万円、所有権保存登記の司法書士報酬が2万〜5万円です。
加えて登録免許税がかかります。
報酬は事務所ごとに異なるため、2社以上で見積もりを取って比べてください。

| 手続き | 依頼先 | 報酬の目安 | 登録免許税 |
|---|---|---|---|
| 表題登記 | 土地家屋調査士 | 8万〜15万円 | なし |
| 所有権保存登記 | 司法書士 | 2万〜5万円 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 建物滅失登記 | 土地家屋調査士 | 4万〜6万円 | なし |
報酬額の裏づけになるのは、各連合会が公表している全国調査です。
日本土地家屋調査士会連合会の令和4年度の調査では、木造2階建ての居宅の建物表題登記について、全国の中央値が82,500円、平均が85,174円でした(いずれも税抜)。
日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した報酬アンケートでは、課税価格1,000万円の新築建物の所有権保存登記で平均が29,060円です。
上の表の幅は、この水準に建物の規模や資料の有無による上振れを見込んだものです。
【参考元】業務報酬統計資料(令和4年度 土地家屋調査士業務報酬に関する調査)|日本土地家屋調査士会連合会
【参考元】司法書士の報酬(報酬アンケート結果 2024年3月実施)|日本司法書士会連合会
表題登記|土地家屋調査士への報酬が中心で登録免許税はかからない
表題登記の費用は、現地調査・図面作成・申請代理の3つで構成されます。
建物の規模と資料の有無によって変わり、8万円から15万円程度が中心です。
登録免許税は課されません。
税金の負担がないぶん、費用の見通しは立てやすい手続きです。
建築確認の書類がない古い建物では、所有を裏づける資料集めと現地調査に手間がかかります。
報酬は上振れすると考えて予算を組みましょう。
相場の上限である15万円を超える見積もりも珍しくありません。
費用の内訳を書面で示すかどうかが、依頼先を選ぶ判断材料です。
調査費・図面作成費・申請代理費を分けて提示する事務所なら、追加費用が生じた理由も確認しやすくなります。
総額だけを伝えて内訳を示さない事務所は、契約前に説明を求めてください。
所有権保存登記|司法書士報酬と評価額の0.4%の登録免許税がかかる
国税庁の登録免許税の税額表は、建物の所有権の保存について、課税標準を不動産の価額、税率を1,000分の4と定めています。
固定資産税評価額が500万円なら2万円、1,000万円なら4万円です。
課税標準となる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格が原則です。
登録された価格がない場合は、登記官が認定した価額になります。
司法書士への報酬は2万円から5万円程度が目安です。
所有権保存登記だけで見ると、評価額500万円の建物で4万円から7万円になります。
表題登記とあわせた総額は12万円から22万円程度と見込んでください。
登録免許税は現金納付のほか、収入印紙を申請書に貼る方法でも納められます。
司法書士に依頼する場合は、報酬とあわせて立て替えてもらうのが一般的です。
資料不足の古い建物|現地調査の手間が増えて費用が上乗せされる
建築確認済証や図面が残っていない建物では、上申書の作成や近隣住民への確認が加わります。
作業が増えるぶん、報酬も数万円単位で上振れします。
建物の一部だけが未登記の場合に必要なのは、表題登記ではなく建物表題部変更登記です。
手続きが変われば金額も変わるため、見積もり時に増築の有無を必ず伝えてください。
登記費用を負担してから売るか、費用をかけずに現状のまま手放すかは、査定額と並べて比べると判断できます。
見積もりを取る際は、資料の不足がどこにあるかを事務所に確認してもらってください。
不足を埋める作業ごとに金額が変わるため、内訳を示してもらえば追加費用の見通しが立ちます。
1社の金額だけで決めず、2社以上を比べてください。
未登記建物の相続で押さえておく手続き
相続した未登記建物は、表題登記と所有権保存登記で名義を整えるのが基本です。
登記とは別に、市区町村へ未登記家屋所有者変更届を出して課税上の名義だけを変える方法もあります。
登記と課税台帳は別の制度だと理解してください。
遺産分割協議で建物を取得する相続人を決める
未登記であっても、建物は相続財産に含まれます。
相続人全員で遺産分割協議を行い、建物を取得する人を決めてから登記へ進んでください。
遺産分割協議書では、登記記録を前提とした通常の物件目録は使えません。
所在・種類・構造・床面積を課税明細書から書き写し、家屋番号がない旨を明記して物件を特定してください。
取得者を決めずに登記を申請しても、表題部所有者を特定できないため受理されません。
順序を守って進めてください。
協議書には、建物が未登記である旨も書き添えてください。
登記官が物件を特定できるよう、課税明細書の写しを添付する取り扱いも一般的です。
相続人が1人だけの場合、遺産分割協議は不要です。
戸籍で相続人が自分だけだと示せれば、協議書なしで表題登記へ進めます。
相続登記の義務化は未登記建物にも影響する
不動産登記法は、所有権の登記名義人に相続の開始があった場合、相続人に移転登記の申請を義務づけています。
期限は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内です。
未登記建物には所有権の登記名義人が存在しません。
3年の期限が直接かかるのは、登記済みの不動産に限られます。
ただし所有権を取得した相続人も、表題登記の申請義務の対象です。
土地が登記済みで建物だけが未登記という組み合わせは珍しくありません。
土地には3年の期限がかかるため、建物の表題登記とあわせて手続きを進めてください。
期限内に協議がまとまらない場合は、相続人申告登記を使う方法があります。
自分が相続人である旨を法務局へ申し出る手続きで、申し出れば3年の義務を果たしたものとみなされます。
ただし所有権を取得した事実までは公示されない手続きです。
遺産の分割が済んだら、分割の日から3年以内に移転登記を申請してください。
未登記家屋所有者変更届で課税上の名義だけ変えられる
市区町村へ未登記家屋所有者変更届を提出すれば、固定資産課税台帳の名義を変更できます。
届出先と必要書類は市区町村ごとに異なるため、資産税の担当課へ確認してください。
届出をしないと、亡くなった人あてに納税通知書が届き続けます。
相続人の誰が支払うのかも曖昧なまま残ります。
課税台帳の名義変更は、登記の代わりとしては不十分です。
第三者に所有権を主張する効力がなく、売却や融資にも使えません。
建物を手放す予定があるなら、届出だけで済ませず登記まで進めてください。
届出に必要な書類は、変更届の用紙のほか、戸籍謄本と遺産分割協議書が一般的です。
手数料はかからない市区町村がほとんどです。
当面売却も解体も予定がなく、納税義務者だけを整理したい場合には有効な手段になります。
未登記建物を手放すときの注意点
売る前に登記するか、解体して土地だけ売るかで手続きは分かれます。
名義人が亡くなっている建物では、相続人全員の関与が前提です。
未登記のままでは買主へ名義を移せない
所有権移転登記を申請するには、登記記録が存在していなければなりません。
未登記の状態では買主名義に移せないため、売主が引き渡しまでに登記を済ませる取り決めが一般的です。
建物を取り壊す前提の取引では、未登記のまま土地と一緒に売る例もあります。
買主が解体費用を見込んで価格を提示する形になり、更地渡しより手取りは下がります。
権利関係が複雑な物件を直接買い取る事業者なら、登記や解体の費用を負担したうえで引き受ける対応も可能です。
買取業者を選ぶときは、費用の負担者を契約前に書面で確認してください。
登記が得意な業者かどうかは、宅地建物取引業の免許番号と、権利関係が整理されていない物件の取扱実績で判断します。
免許番号は国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで確認できます。
査定額の根拠を書面で示さない相手とは、契約を見送ってください。
土地だけを売るなら解体後に建物滅失登記が必要になる
不動産登記法は、建物が滅失した場合、表題部所有者または所有権の登記名義人に建物の滅失の登記の申請を義務づけています。
期限は滅失の日から1か月以内です。
登記済みの建物を解体した場合にかかる義務にあたります。
未登記建物には登記記録がないため、滅失登記の対象になりません。
代わりに市区町村へ家屋の滅失を届け出てください。
届出を怠ると、存在しない建物に固定資産税が課され続けます。
解体業者からは取毀証明書と会社の印鑑証明書を受け取っておきましょう。
滅失登記と市区町村への届出の双方で使えます。
解体前に、建物が本当に未登記かを法務局で確認してください。
未登記だと思い込んで届出だけ済ませ、後から登記記録が見つかると滅失登記の期限を過ぎてしまいます。
登記記録があった場合の期限は、滅失の日から1か月以内です。
名義人が亡くなっている建物は相続人全員の関与が必要になる
登記も遺産分割も済んでいない建物は、相続人全員の共有状態にあります。
売却も解体も、全員の同意がなければ進められません。
連絡が取れない相続人や、協議に応じない相続人がいる場合の受け皿は、家庭裁判所の遺産分割調停です。
手続きには数か月から1年以上かかるため、早めに着手してください。
相続人の人数が多い、行方の分からない相続人がいるといった状況では、登記の前に弁護士へ相談しましょう。
行方が分からない相続人がいる場合は、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立ててください。
本人に代わって協議に参加するのは、選任された管理人です。
手続きを前へ進められます。
選任までに数か月かかるため、早い段階で着手してください。
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未登記建物に関するよくある質問
未登記建物の固定資産税は追徴される?
市区町村が課税漏れに気づいた場合、過去にさかのぼって課税されるので注意してください。
地方税法は、固定資産税の賦課決定は法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後はできないと定めています。
さかのぼる期間は最長で5年です。
増築部分だけが未登記の建物でも同じ扱いになります。
想定外の負担を避けるため、増築の届出が済んでいるかを資産税の担当課で確認しておきましょう。
【参考】地方税法(e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
未登記建物を勝手に登記されたらどうなる?
先に登記を備えた相手に所有権を対抗されるため、取り戻すには訴訟で自分の所有を立証しなければなりません。
工事の請負契約書や領収書、固定資産税の納付履歴が証拠になります。
立証には時間も費用もかかるため、争いの兆しがある段階で弁護士へ相談してください。
未登記建物のメリットは?
登記費用がかからない点だけで、実質的なメリットはほとんどありません。
固定資産税は登記済みの建物と同じように課され、売却・担保・相続のすべてで不利になります。
当面売る予定がない場合でも、相続人の負担を減らす目的で登記を検討してください。
未登記建物でも火災保険に入れる?
加入できる保険会社は多くあります。
契約時には建物の所在・構造・床面積を申告し、固定資産税の課税明細書や工事の請負契約書で内容を裏づけます。
ただし住宅ローンとセットの火災保険は登記が前提になるため、借入れを考えているなら先に登記を済ませてください。
未登記建物を解体したら固定資産税はどうなる?
市区町村へ家屋の滅失を届け出れば、翌年度から建物分の課税はなくなります。
届出をしないと課税が続くため、解体後すぐに手続きしてください。
ただし住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税は上がります。
解体前に増減を試算しておいてください。
まとめ|未登記建物は表題登記から始めて売却の前に名義を整える
未登記建物とは法務局の登記記録に建物の情報が載っていない建物です。
要点は次の3点に整理できます。
- 未登記かどうかは課税明細書の家屋番号欄と登記事項証明書で判定できる
- 放置すると過料の対象になり、売却・担保・相続のすべてで不利になる
- 登記は表題登記から始め、土地家屋調査士と司法書士へ順に依頼する
次の一歩として、手元の課税明細書で家屋番号の有無を確かめてください。
未登記だと分かったら、登記費用を負担して残すか売るか、解体して土地だけ手放すかを手取り額で比べましょう。
相続人が複数いる場合や共有者と揉めている場合は、弁護士への相談から始めてください。
判断を先送りするほど、相続人が増えて手続きは重くなります。
動くなら早いほうが費用も手間も少なく済みます。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。