再建築不可物件

未接道物件とは?4つの類型と売れにくい理由・手放す方法をわかりやすく解説

未接道物件とは?4つの類型と売れにくい理由・手放す方法をわかりやすく解説

相続した実家や長年持っている土地について、不動産会社や役所から「未接道だから建て替えられない」と告げられた方は少なくありません。
聞き慣れない言葉のまま話が進み、売れる不動産なのかどうかもわからず手が止まった状態です。

本記事では、未接道物件に当たる4つの類型と、自分の物件が該当するかを調べる方法を整理します。
あわせて売れにくいといわれる理由、価格の目安、再建築できるようにする手立て、手放す方法までまとめました。

読み終えたときの到達点は、自分の土地がどの類型に当たるかを判定できる状態です。
持ち続けるか、隣地と交渉して再建築できる土地に変えるか、売却するかを比べて選べるようになります。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

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自分の物件はどれに当たる?未接道物件の4つの類型

自分の物件はどれに当たる?未接道物件の4つの類型

未接道物件は、袋地・間口不足地・旗竿地の路地部分不足・非道路接地の4つに分かれます。
いずれも建築基準法が求める「敷地を道路に2メートル以上接させる」状態を満たしていません。
まず一覧で全体像をつかんでから、順に確認しましょう。

類型どんな状態か判定の目印
袋地周囲をすべて他人の土地に囲まれ、道路に接していない公図で敷地が道路に接していない
間口不足地道路に接しているが、接する長さが2メートル未満実測した間口が2メートルに届かない
旗竿地の路地部分不足通路の途中が2メートル未満に狭まっている通路の最も狭い部分が2メートル未満
非道路接地接している道が建築基準法上の道路に当たらない役所の道路種別図に道路として載っていない

袋地|周囲を他人の土地に囲まれて道路にまったく接していない土地

袋地とは周囲をすべて他人の土地に囲まれ、道路に1メートルも接していない土地です。
囲んでいる側の土地は囲繞地(いにょうち)と呼ばれ、袋地の所有者は囲繞地を通らなければ公道へ出られません。

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者には、囲んでいる土地を通行する権利が民法上認められています。
通行の場所と方法として選ぶべきなのは、通行する側に必要でありながら、通られる側の損害が最も少ないものです。
通路を開設した場合は、損害に応じた償金を支払わなければなりません。

ただし、通行できる状態と建物を建てられる状態は別ものです。
通行権があっても敷地は道路に接していないため、接道義務は満たしません。
袋地は4類型のなかで最も再建築が難しく、隣地との交渉が避けて通れない類型といえます。

【参考】民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)|e-Gov法令検索

間口不足地|道路には接しているが接する長さが2メートル未満の土地

間口とは敷地が道路に接している部分の長さです。
建築基準法は建築物の敷地について、道路に2メートル以上接するよう求めています。
間口が2メートルに届かない敷地では、建物を新たに建てられません。

2メートルという数字は、火災や急病のときに人が出入りし、消防用のホースを引き込むために必要な幅です。
目安ではなく必ず満たすべき数値のため、1.9メートルであれば原則として建築の確認は下りません。

図面上は2メートルあるのに、現地で測ると足りない敷地もあります。
境界標が動いていたり、隣地の塀が越境していたりする場合です。
手元の地積測量図と現地の実測が食い違うときは、測量士に確認を依頼して数値を確定させてください。

【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索

旗竿地の路地部分不足|通路の途中が2メートル未満に狭まっている土地

旗竿地とは道路から細長い通路が伸び、奥に建物の敷地が広がっている土地です。
上から見た形が旗と竿に似ているため旗竿地と呼ばれ、竿にあたる細長い部分を路地状部分といいます。

判定でつまずきやすいのは、道路に接する入口だけを測って安心してしまう場合です。
接道義務は通路の全区間で2メートル以上を求めるため、入口が2.2メートルあっても中間で1.8メートルに狭まっていれば満たしません。
入口・中間・敷地の手前の3点は必ず測りましょう。

塀や擁壁の内側で有効な幅が減っている旗竿地も多く見られます。
図面上の数値と実際に人が通れる幅は一致しないため、構造物の内側で測った数値で判定してください。

路地状部分の長さにも注意が要ります。
自治体によっては条例で、路地状部分が20メートルを超える敷地に3メートル以上の幅を求めている場合もあります。
2メートルを確保していても建てられない場合があることが、役所での確認が欠かせない理由です。

非道路接地|接している道が建築基準法上の道路に当たらない土地

建築基準法上の道路とは、幅員4メートル以上で、同法42条1項1号から5号までのいずれかに当たる道です。
1号から3号は、国道や市町村道、開発や区画整理で造られた道路、法の適用時から現に存在した道です。
4号と5号は、2年以内に事業が執行される計画道路と、特定行政庁から位置の指定を受けた私道にあたります。
舗装されて車が通る道であっても、定義に当てはまらなければ法律上の扱いは通路です。

例外として、幅員4メートル未満の道でも道路とみなされる場合があります。
建築基準法が適用された時点で建物が立ち並んでいた道について、特定行政庁が指定したものです。
指定を受けた道に接する敷地では、道路の中心線から2メートル下がった線が境界線とみなされます。

公道か私道かという区別は判定に関係しません。
判断の分かれ目は所有者ではなく、建築基準法の定義に当てはまるかどうかです。
前面の道が道路に当たるかどうかは、市区町村の道路担当課で確認できます。

【参考】建築基準法第42条(道路の定義)|e-Gov法令検索

未接道物件とは接道義務を満たさない不動産を指す

未接道物件とは建築基準法が建築物の敷地に求める接道義務を満たさない不動産です。
法令に出てくる正式な用語ではなく、不動産業界で使われている呼び名にあたります。

建築基準法は、建築物の敷地を道路に2メートル以上接させるよう求めています。
火災や急病のときに消防車と救急車が敷地へ入り、住人が安全に避難できる幅を確保するための決まりです。
条件を満たさない敷地では、原則として建物を新たに建てられません。

言葉の輪郭をつかむには、比べる対象を置くとわかりやすくなります。
次の2項目で整理するのは、通常の不動産および再建築不可物件との違いです。
似た言葉が複数あるため、不動産会社の説明を正しく受け取るうえでも役立ちます。

【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索

未接道物件と通常の不動産の違い

未接道物件と通常の不動産では、建て替え・住宅ローン・買い手の幅・価格の4点で扱いが変わります。
違いが出るのは新しく建てるときであり、現に建っている建物にはそのまま住み続けられます。

項目通常の不動産未接道物件
建て替えできる原則としてできない
買主の住宅ローン使える審査が通りにくい
買い手一般の個人現金購入層と再販業者が中心
価格周辺相場どおり相場を下回る

住み続けられる一方、建物が古くなったときの選択肢は狭いままです。
取り壊して新築する道が閉ざされているため、修繕を重ねて使うか、手放すかの二択に近づきます。
売却か保有かを決めるときは、建物の残り寿命を起点に考えてください。

未接道物件と再建築不可物件の違い

再建築不可物件とは、いま建っている建物を取り壊した後に新しい建物を建てられない不動産です。
未接道物件は再建築不可物件の一種で、建てられない原因が接道にある場合を指します。

再建築できない原因は接道だけに限られません。
市街化調整区域の中にあって開発許可が下りない土地や、路地状部分の長さが自治体の条例の上限を超える土地も再建築不可です。
原因のうち接道が理由になっているものが未接道物件です。

不動産会社は「再建築不可」と説明し、役所の窓口では「接道義務を満たしていない」と説明されるなど、呼び方は場面で変わります。
呼び方が違っても物件の扱いは同じで、言葉の違いに戸惑う必要はない話です。

不動産の広告では、不動産の表示に関する公正競争規約により「再建築不可」または「建築不可」と明示することが定められています。
中古住宅を探していて広告に表示を見つけたら、原因が接道にあるのかどうかを仲介の担当者に確認してください。
原因がわかれば、解消できる見込みも判定できます。

未接道物件かどうかは手元の書類と役所の窓口で調べられる

自分の物件が未接道かどうかは、書類の確認と役所への照会で判定できます。
書類だけでは接している長さを確定できない場合もあるため、最終的には現地の実測が必要になります。
判定結果は売り方の分かれ目になるので、動き出す前に確かめておきましょう。

手元の書類で接している長さを確認する

公図とは法務局が備え付けている図面で、土地の位置と形状、地番の並びを表したものです。
公図を見れば、自分の敷地が道路として区切られた土地に接しているかどうかの見当がつきます。

判定に使う書類は3点あります。

  • 公図:敷地と前面の道の位置関係を確認する
  • 地積測量図:接している部分の長さを数値で確認する
  • 建築確認済証:過去に建築の確認が下りた経緯を確認する

いずれも手元にない場合は取り寄せられます。
公図と地積測量図は法務局の窓口またはオンラインで請求でき、建築確認の記録は市区町村の建築指導課が窓口です。
3点がそろえば、役所へ行く前に自分でおおよそを判定できます。

【参考元】登記・供託オンライン申請システム|法務省

役所の道路担当課で前面道路の種別と幅員を照会する

前面の道が建築基準法上の道路に当たるかどうかは、市区町村の道路担当課または建築指導課で照会できます。
窓口では住所と地番を伝え、公図の写しを持参すると話が早く進む形です。

役所には道路種別図が備えられており、道ごとに種別と幅員の記載があります。
種別の記載がない道は建築基準法上の道路ではないため、接していても接道義務を満たしません。
幅員4メートル未満でも指定を受けた道かどうかは、同じ種別図で確認が可能です。

同じ窓口で、あわせて2点を確認しておきましょう。
1点目は敷地を後退させる必要があるかどうか、2点目は自治体の条例で接道の条件が上乗せされていないかです。
延べ面積が大きい建物や3階建て以上の建物には、条例で追加の制限がかかる場合があります。

【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索

判定が微妙なら測量士や不動産会社に実測を依頼する

図面上の数値と現地の実測は、しばしば食い違います。
原因は現地の事情にあります。
境界標が工事で動いた場合や、隣地の塀が越境している場合、擁壁の厚みで有効な幅が減っている場合です。
1.9メートルか2.1メートルかで結論が正反対になるため、微妙な数値のまま判断してはいけません。

実測は測量士や土地家屋調査士に依頼してください。
隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確定させる測量には、数週間から数ヵ月と数十万円規模の費用が必要です。
売却が前提なら、まず不動産会社に現況の簡易な実測を頼んで見当をつける手もあります。

実測の結果しだいで、進む道は「再建築できるようにする交渉」と「未接道のまま売却」に分かれます。
順序を逆にすると交渉の材料を失うため、先に数値を確定させてください。
隣地との境界に争いがある場合は、測量と並行して弁護士へ相談すると交渉の道筋が立てやすくなります。

未接道物件が売れにくいといわれる4つの理由

未接道物件が売れにくいといわれる4つの理由

未接道物件が売れにくい背景には、建物を建て替えられない点を起点とした連鎖があります。
買主の資金調達が難しくなり、修繕の範囲も狭まった結果、買い手の母数が絞られてしまうためです。
理由を押さえれば、打つべき手も自然に決まります。

建て替えができず更地にすると建物を建てられなくなる

未接道物件では、いま建っている建物を取り壊した後に新しい建物を建てられません。
既存の建物は建築基準法が適用される前から存在していたり、当時の基準では適法だったりするため、使い続けること自体は認められています。

問題になるのは、建物が寿命を迎えたときです。
老朽化しても壊して建て直せず、地震や火災で倒壊した場合も同じ扱いになります。
所有者に残る道は、修繕を重ねて使い続けるか、建物ごと手放すかの二択です。

更地にすれば売りやすくなると考えて解体するのは危険です。
建物という価値が消えたうえに建築もできない土地が残り、資産価値はかえって下がります。
解体費用も木造の戸建てで90万円から150万円程度かかるため、更地化は買主が決まってから検討してください。

買主が住宅ローンの審査を通しにくい

金融機関は住宅ローンの審査で、担保となる不動産の価値を評価します。
評価の軸は「返済が滞ったときに売却して回収できるか」であり、建て替えできない不動産の担保価値は低く見積もられる傾向です。

結果として、未接道物件を買おうとする個人は住宅ローンの承認を得にくい立場に置かれます。
金額を下げて申し込んでも、担保評価の低さは変わらない点が壁です。
リフォームローンでも制約は同じで、購入後の改修費まで含めた資金計画が立てにくい状態です。

買主が現金で用意できる層と投資家に限られる点は、売主にとって不利に働きます。
買い手が少なければ価格交渉で強く出られず、条件面でも譲歩を求められがちです。
売り出す前に「誰が買える物件か」を整理しておくと、交渉の場面で迷わずに済みます。

2025年4月の法改正で大規模な修繕にも建築確認が必要になった

大規模の修繕とは建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕です。
主要構造部には壁・柱・床・はり・屋根・階段が含まれ、たとえば柱の半分を超えて入れ替える工事が該当します。

2025年4月に施行された改正建築基準法により、建築確認が必要な範囲が広がりました。
改正後は、2階建て以上または延べ面積200平方メートルを超える建築物が対象に加わりました。
大規模の修繕と大規模の模様替も、確認申請が要ります。
木造2階建ての住宅も対象に入るため、以前より制約が重くなりました。

未接道物件は建築確認が下りないため、確認申請が必要な工事も実施できません。
改修は内装の張り替えや設備の入れ替えにとどまります。
リフォームして活用する方針なら、工事の範囲を先に施工会社と詰めておきましょう。

【参考】建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)|e-Gov法令検索

買い手が限られ売却期間が長引く

未接道物件の買い手は、現金で購入できる個人、再販を手がける不動産会社、賃貸として運用する投資家に絞られます。
一般的な中古住宅と比べて母数が大きく減るため、仲介で売り出しても買主からの反応はなかなか出ない状態です。

売り出し価格を下げれば早く売れるとは限りません。
買い手が少ない市場では、値下げしても検討する人の数自体が増えないためです。
半年から1年を超えても成約しない事例は珍しくありません。

時間が経つほど、積み上がるのは建物の傷みと維持費です。
固定資産税と草木の管理費が毎年発生し、空き家であれば防犯上の不安も抱え続けます。
売り出しから一定の期間で反応を判定し、方針を切り替える期限をあらかじめ決めておきましょう。

未接道物件の価格に公的な相場統計はない

未接道物件の取引価格をまとめた公的な統計は存在しません。
取引の件数が少なく、物件ごとの条件差も大きいためです。
判断材料は、買取業者が公表している目安と税務上の評価の考え方の2つに絞られます。

買取業者の公表値では市場価格の5割〜7割が目安

訳あり物件を扱う買取業者が公表している目安では、未接道物件の価格は市場価格のおおむね5割〜7割にとどまります。
市場価格とは同じ立地で接道義務を満たす土地が取引される水準です。
数字はあくまで業者側が示している幅であり、公的な調査にもとづくものではありません。

同じ物件でも、業者によって提示額は開きます。
再販の出口が異なるためです。
隣地とまとめて売り直す想定の業者、賃貸として運用する想定の業者、資材置き場として転売する想定の業者では、見込む収益が変わります。

提示額が5割を大きく下回るときは、根拠を書面で求めてください。
再販の想定、解体費の見込み、接道を解消できるかどうかの判断を説明できない業者は、候補から外しましょう。

相続税の計算では無道路地として評価額が減額される

無道路地とは道路に接していない宅地です。
相続税や贈与税を計算する場面では、無道路地は通常の宅地より低く評価されます。
評価の方法を定めているのは、国税庁の財産評価基本通達です。

評価では、まず接道義務を満たす通路を開設したと仮定して価額を求めます。
求めた価額から、通路の開設に必要な費用に相当する金額を差し引く計算です。
差し引ける金額には上限があり、不整形地としての補正をおこなったあとの評価額の4割が限度です。
実際の減額幅は、必要な通路の広さと路線価によって変わります。

注意したいのは、相続税評価額と売買価格が別ものである点です。
評価額は課税のための計算値であり、市場で成立する売買価格を示すものではありません。
相続の場面では税理士に、売却の場面では不動産会社に、それぞれ確認してください。

【参考元】No.4620 無道路地の評価|国税庁

価格の差が広がる条件と縮まる条件

価格の下がり幅は、物件の条件によって大きく変わります。
差が縮まるのは買い手にとって使い道がはっきりしている場合で、広がるのは買い手が追加の手間と費用を負う場合です。

条件価格への影響
隣地の所有者が敷地を広げたいと考えている上がる
特定行政庁の許可が下りる見込みがある上がる
建物がまだ使える状態で残っている上がる
通路の通行や掘削について書面の承諾がない下がる
共有名義で所有者が複数いる下がる
建物が老朽化して解体が前提になる下がる

自分の物件がどちら側の条件を多く備えているかを、売り出す前に確かめてください。
書面の不備や名義の整理は、動き出す前に手を打てば価格に反映できます。
共有者との調整や通路の承諾交渉が難しいときは、弁護士に依頼して先に整えておきましょう。

未接道物件を持ち続けた場合に発生する3つの負担

未接道物件は、使っていなくても保有しているだけで負担が生じます。
毎年の固定資産税、管理を怠った場合の税負担の増加、相続による権利の複雑化の3つです。
時間が経つほど選べる手が減るため、負担の中身を金額で把握しておきましょう。

使っていなくても固定資産税がかかり続ける

固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に対して、市区町村が課す税金です。
住んでいるかどうか、使っているかどうかは関係ありません。
空き家のまま放置していても、納税の義務は毎年発生する扱いです。

未接道であっても、土地の評価額はゼロになりません。
固定資産税の評価で接道の状況は考慮されるものの、税額そのものは残ります。
市街地に近い立地なら、年間数万円から十数万円の負担が続く計算です。

税金以外の維持費も無視できません。
草木の刈り取りや雨漏りの応急処置、近隣からの苦情への対応もかかり、遠方に住んでいるほど手間と交通費はかさむ一方です。
維持費を年額で計算し、売却した場合と比べてください。

特定空家に指定されると住宅用地の特例が外れる

特定空家とはそのまま放置すれば倒壊のおそれがある空き家や、衛生上著しく有害となる空き家です。
空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづき、市区町村が指定します。
2023年の法改正では、特定空家になる前の管理不全空家も指定の対象に加わりました。

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を6分の1または3分の1に軽減する住宅用地の特例が適用されています。
特定空家や管理不全空家に指定され、市区町村から勧告を受けると特例の対象から外れてしまいます。
土地の課税標準額は最大で6倍になり、税負担が大きく増える計算です。

指定は突然おこなわれるわけではありません。
まず助言や指導があり、改善しなければ勧告へ進む流れです。
助言の段階で草木の刈り取りや破損部分の修繕をおこなえば、特例は失わずに済みます。
連絡を受けたら市区町村の担当課へ相談してください。

【参考】空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov法令検索

相続で共有になると処分がさらに難しくなる

共有とは1つの不動産を複数の人が持分割合で所有している状態です。
所有者が亡くなり相続人が複数いる場合、遺産分割協議がまとまるまで不動産は相続人全員の共有になります。

共有になると、売主は共有者全員から同意を得なければ売却できない立場です。
1人でも反対すれば、不動産そのものを売却できません。
自分の持分だけなら他の共有者の同意なく単独で売れるものの、持分だけの買い手は限られ、価格も大きく下がる結果です。

世代をまたぐほど、共有者の数は増えます。
相続人がさらに亡くなれば、子どもたちが持分を引き継ぎ、面識のない親族が共有者に加わる流れです。
10人を超える共有になると、全員の同意を集めるだけで年単位の時間がかかります。
存命のうちに方針を決めるか、共有者間の話し合いが難航する時点で弁護士に相談してください。

未接道物件を再建築できるようにする6つの方法

未接道物件を再建築できるようにする6つの方法

未接道の状態は、条件がそろえば解消できます。
手立ては大きく2つに分かれ、隣地所有者の協力を得て敷地の形を変える方法と、役所の判断を得て例外の扱いを受ける方法があります。
いずれも費用と期間がかかるため、売却と比べたうえで選びましょう。

隣地の一部を買い取って間口を2メートル以上にする

不足している幅の分だけ隣地を買い取れば、接道義務を満たす土地になります。
間口が1.5メートルであれば、0.5メートル以上の幅で奥行き分の面積を買い取る計算です。
最も確実で、解消後の資産価値も大きく回復します。

手続きでは、1筆の土地を複数に切り分けて登記する分筆登記が必要です。
分筆の前提として、隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確定させる測量をおこなうため、測量費用と登記費用を合わせて数十万円かかります。
土地の代金は、国税庁が公表する路線価や近隣の取引事例をもとに交渉します。

交渉では、隣地所有者にとっての利点を用意してください。
境界を確定できる、敷地の形が整う、将来の売却時に説明しやすくなる、といった点が材料になります。
金額だけを提示しても応じてもらえない場合が多いため、双方に利益がある形を探しましょう。

隣地と土地を等価交換して間口を確保する

等価交換とは、自分の土地の一部と隣地の一部を、同じ価値で交換する取引です。
現金を用意しなくても間口を確保できるため、買い取りの資金が足りない場合の代替手段になります。

成立しやすいのは、交換によって双方の使い勝手が良くなる組み合わせです。
自分は道路側の幅を得て、隣地は奥行きや日当たりを得る、といった形が典型になります。
交換する面積の価値が釣り合わない場合は、差額を金銭で調整します。

税務上の扱いには注意してください。
土地の交換は譲渡にあたり、原則として譲渡所得の課税対象になります。
同じ種類の資産を交換した場合に課税を繰り延べる特例もあるものの、交換する資産の時価の差が2割以内であることなど要件は細かく定められています。
交換の話がまとまる前に、税理士へ確認しましょう。

セットバックして前面道路の幅員を4メートルにする

セットバックとは、道路の幅を確保するために敷地の境界線を後ろへ下げる措置です。
幅員4メートル未満の道でも、道路として扱われる場合があります。
建築基準法が適用された時点で建物が立ち並んでいた道を、特定行政庁が指定した場合です。

指定を受けた道に接する敷地では、道路の中心線から2メートル下がった線が道路の境界線とみなされます。
道の向かい側が崖地や川に沿っている場合の境界は、崖地側の境界線から4メートルの線です。
後退した部分は道路として扱われるため、建物も塀も建てられません。

敷地面積が実質的に減る点は、あらかじめ織り込んでください。
建ぺい率や容積率の計算からも後退部分は除かれるため、建てられる建物の規模は小さくなります。
後退しても再建築できる土地に変わる意味は大きく、費用対効果は高い部類に入ります。

【参考】建築基準法第42条(道路の定義)|e-Gov法令検索

建築基準法43条2項1号の認定を受ける

認定とは法律が定めた基準に当てはまるかどうかを特定行政庁が確認し、接道義務の適用外として扱う手続きです。
建築審査会の同意が不要なため、許可を受ける場合より手続きが軽く、期間も短く済みます。

対象になるのは、幅員4メートル以上の道に2メートル以上接している敷地です。
道が建築基準法上の道路に当たらなくても、避難と通行の安全に必要な国土交通省令の基準を満たしていれば対象に含まれます。
利用者が少数である小規模な建築物という条件も付き、建築基準法施行規則10条の3第3項2号により延べ面積は原則として500平方メートル以内です。
想定されているのは一戸建ての住宅です。

自分の敷地が対象になるかどうかは、市区町村の建築指導課で確認できます。
前面の道の幅員が4メートル以上あるにもかかわらず未接道と説明された場合は、認定の可否を必ず尋ねてください。

【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索

建築基準法43条2項2号の許可を受ける

許可とは個別の事情を審査したうえで特定行政庁が建築を認める手続きです。
認定の基準に当てはまらない敷地でも、許可を受けられれば建築できます。
かつて「43条但し書き」と呼ばれていた制度で、いまも同じ呼び方をする不動産会社があります。

対象になるのは、敷地の周囲に広い空地をもつ建築物などです。
特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上の4つの観点で支障がないと認め、建築審査会の同意を得たうえで許可します。
自治体ごとに包括同意基準を定めている場合もあり、基準に当てはまれば審査会の個別審査は不要です。

許可は物件ごとの個別判断であり、一度受ければ永久に有効というものではありません。
建て替えのたびに取り直す必要があるため、買主に説明する際も「許可を受けられる見込みがある」という表現にとどめてください。

【参考】建築基準法第43条(敷地等と道路との関係)|e-Gov法令検索

私道の位置指定を受けて建築基準法上の道路にする

位置指定道路とは、土地を建築物の敷地として利用するために築造された私道のうち、特定行政庁から位置の指定を受けたものです。
指定を受けると、私道は建築基準法上の道路になり、接する敷地は接道義務を満たせます。

指定を受けるには、幅員や形状について政令が定める基準を満たさなければなりません。
私道の所有者全員からの承諾も必要です。
所有者が複数いる通路では、承諾を集める作業が最も重い負担になります。

測量と道の整備工事、申請手続きを合わせると費用は数百万円規模になり、期間も半年以上かかります。
隣地の一部を買い取る方法と比べて負担が重いため、通路に面する敷地が複数あって費用を分担できる場合向きの手立てです。
承諾が得られず話が進まないときは、弁護士に交渉を依頼しましょう。

未接道物件を手放す4つの方法

未接道物件を手放す4つの方法

未接道物件の出口は4つあります。
隣地の所有者に売る方法、隣地とまとめて売る方法、買取業者に直接売る方法、仲介で個人の買主を探す方法です。
まず隣地に買う動機があるかどうかを確かめ、なければ買取と仲介を比べる順番で進めましょう。

売却先価格の傾向期間の目安向いているケース
隣地の所有者相場を上回る場合もある1ヵ月〜半年隣地に敷地を広げる動機がある
隣地との同時売却通常の土地に近い3ヵ月〜1年隣地所有者も売却を考えている
買取業者市場価格の5割〜7割数日〜1ヵ月期間を優先して現金化したい
仲介買取より高い場合がある半年〜1年以上時間をかけても高く売りたい

隣地の所有者に売る

隣地の所有者にとって、未接道の土地は自分の敷地を広げる材料になります。
取得すれば土地の形が整い、建ぺい率にも余裕が生まれるため、第三者より高い価格の提示を受けられる場合もあります。
売却を考え始めたら、最初に打診すべき相手です。

打診は不動産会社を介しておこなうのが無難です。
直接持ちかけると、足元を見られたり近隣の関係がぎくしゃくしたりする場合があります。
第三者が間に入れば、価格の根拠も冷静に伝えられます。

断られた場合に備え、伝え方も整えておきましょう。
「売却を検討しているので、まずお声がけしました」という順序で伝えれば、断られた後も関係は保てます。
将来の通路の使い方について話し合う余地も残ります。

価格の根拠も用意しておいてください。
路線価と近隣の取引事例に加え、隣地と一体になった場合の評価額を示せば、交渉は現実的な数字の話に移ります。

隣地とまとめて売る

隣地の所有者と歩調を合わせ、2筆をひとまとまりの土地として売り出す方法です。
一体になれば接道義務を満たす通常の土地になるため、買い手の幅が一気に広がります。

進めるうえで欠かせないのは、売却代金の配分を先に書面で決めておく作業です。
面積の比率で分けるのか、路線価の差を反映するのかで金額は変わります。
売り出してから配分を決めようとすると、成約直前に話がこじれる展開になりがちです。

前提として、隣地所有者も売却を考えている必要があります。
相続や住み替えのタイミングが重なれば実現しやすくなるため、隣地の状況が変わったときは声をかけてみてください。

実務では、2筆をまとめて1つの売買契約にする方法と、それぞれが同じ買主と個別に契約する方法があります。
どちらでも一体の土地として評価されるため、契約の形は仲介の担当者と相談して決めましょう。

訳あり物件を扱う買取業者に直接売る

買取とは、不動産会社が買主となって直接購入する取引です。
仲介が買主を探す仕事であるのに対し、買取は業者自身が買い主になるため、買い手を探す期間が要りません。
訳あり物件を扱う業者であれば、未接道のままの状態でも取引が成立します。

売主の負担が軽い点も特徴です。
内覧の対応が不要で、契約不適合責任を免責とする契約にできる場合もあります。
相続した遠方の物件や、早く現金化したい事情がある場合に向いています。

価格は仲介より下がるため、複数社に査定を依頼して根拠を見比べてください。
1社だけの提示で決めると、相場より低い金額で手放す結果になりかねません。
共有者や隣地とのもめごとを抱えている場合は、買取と並行して弁護士に相談し、権利関係を整理してから売却しましょう。

仲介で個人の買主を探す

仲介とは不動産会社に依頼して買主を探してもらう方法です。
買主候補は、現金で購入できる個人や、賃貸として運用する投資家になります。
買取より高く売れる可能性がある一方、成約までの期間は読みにくくなります。

売り出し価格は、再建築できない前提で設定してください。
周辺の相場をそのまま当てはめると反応が出ず、値下げを繰り返す展開になります。
最初から根拠のある価格を示したほうが、結果的に早く高く売れる形です。

期限を決めて動くことも欠かせません。
3ヵ月から6ヵ月の期間を区切り、内覧の申し込みが一定数に届かなければ買取へ切り替える、といった判断基準を先に作っておきましょう。
判断を先送りするほど、維持費だけが積み上がります。

未接道物件を売却するときの3つの注意点

未接道物件の売却では、契約後のもめごとを防ぐ準備が要ります。
私道の承諾を書面で残す、再建築できない事実を告知する、査定の根拠を見比べる、という3点です。
いずれも売り出す前の段階で手を打てます。

私道の通行と掘削の承諾は書面で残す

通行承諾とは、私道の所有者から通行の許可を得る合意です。
掘削承諾とは、上下水道やガスの管を引き込むために私道を掘る許可を得る合意を指します。
未接道物件の多くは私道を通って出入りするため、2つの承諾が売却の前提になります。

承諾がないと、買主は水道管の引き込み工事をおこなえない状態です。
給排水の工事ができなければ住宅として使えないため、契約直前で話が流れる原因になります。
買主側の金融機関が承諾書の提出を求める場合もあります。

長年の付き合いで口頭の了解があるだけの場合は、必ず書面にしてください。
私道の所有者が代われば、口頭の了解は引き継がれません。
相続で私道の共有者が増えている場合は、早い段階で全員から承諾を取り直しましょう。

【参考】民法第213条の2(継続的給付を受けるための設備の設置権等)|e-Gov法令検索

再建築できない事実を隠さず告知する

再建築できない事実は、買主が購入を判断するうえで欠かせない情報です。
不動産会社は、契約前におこなう重要事項説明のなかで、敷地と道路との関係を買主へ説明します。
売主は不動産会社に対し、把握している事実を正確に伝えてください。

隠して売った場合の責任は重くなります。
引き渡した不動産が契約の内容に適合しない場合、買主が売主に請求できるのは、修補や代金の減額、損害賠償、契約の解除です。
売主が知りながら告げなかった事実については、免責の特約を結んでいても責任を免れません。

先に開示したほうが、結果的に交渉は短く済む展開です。
買主は再建築できない前提で価格を検討するため、後から発覚した場合の大幅な減額要求を避けられます。
役所で確認した内容は書面に残し、買主へそのまま示しましょう。

【参考】宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)|e-Gov法令検索

査定は1社で決めず複数社の根拠を見比べる

未接道物件の査定額は、業者ごとに開きます。
再販の出口が違うためで、同じ物件に2倍近い差が付く場合もあります。
少なくとも3社に依頼し、金額ではなく根拠を見比べてください。

確認する項目は3つあります。

  • 再販の想定:誰に、どういう形で売り直すのか
  • 接道の解消可否:隣地の買い取りや許可の見込みをどう見ているか
  • 解体費の見込み:建物を壊す前提か、残す前提か

3項目を説明できない業者は、候補から外しましょう。
金額だけを大きく提示して、契約後に減額を求めてくる例もあります。
査定書を書面で受け取り、根拠の記載があるかどうかを判定の基準にしてください。
判断に迷う場合や、共有者との調整が必要な場合は、弁護士に同席してもらう方法もあります。

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未接道物件に関するよくある質問

Q

接道がない土地に家を建てたいときはどうすればいい?

A

隣地の一部を買い取るか、等価交換で間口を2メートル以上確保する方法が基本です。
前面の道の幅員が4メートル以上あれば、建築基準法43条2項1号の認定を受けられる場合もあります。
いずれも当てはまらないときは、市区町村の建築指導課で許可の可否を確認してください。

Q

接道していない建物は建て替えられない?

A

原則として建て替えられません。
特定行政庁の認定または許可を受ければ、建築できる場合もあります。
まず役所で前面の道の種別と幅員を確認し、認定と許可のどちらが使えるかを尋ねましょう。

Q

未接道の土地は固定資産税が安くなる?

A

評価額に接道の状況は反映されるため、同じ広さの土地より税額が下がる場合もある一方、課税そのものは続き、ゼロになる扱いではありません。
空き家のまま放置して勧告を受けると住宅用地の特例が外れ、かえって税負担は増えます。

Q

接道していないマンションの一室は売却できる?

A

区分所有の一室は売却できます。
敷地が接道義務を満たしていない場合、将来の建て替え決議が成立しても再建築は不可能です。
担保評価も下がるため、売却価格への影響は避けられません。

まとめ|未接道物件は4類型のどれかを特定してから出口を選ぶ

未接道物件とは、建築基準法が求める「道路に2メートル以上接する」条件を満たさない不動産です。
袋地・間口不足地・旗竿地の路地部分不足・非道路接地の4類型に分かれます。
公図と地積測量図で接している長さを確認し、役所の道路担当課で前面の道の種別を照会すれば判定が可能です。

建て替えができないため買主が住宅ローンを使いにくく、価格は買取業者の公表値で市場価格の5割〜7割が目安になります。
隣地の協力が得られるなら、隣地の一部買い取りや等価交換で再建築できる土地に変える道を選びましょう。
協力が得られない場合は、買取業者への直接売却で現金化する判断が現実的です。

持ち続けるほど固定資産税と維持費が積み上がり、相続が起きれば共有になって処分はさらに難しくなります。
隣地や共有者との交渉が進まないときは、弁護士に間に入ってもらって権利関係を整えてから売却へ進んでください。

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監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。