再建築不可物件

道路斜線制限とは?計算方法と5つの緩和ルール・土地を売るときの影響をわかりやすく解説

道路斜線制限とは?計算方法と5つの緩和ルール・土地を売るときの影響をわかりやすく解説

相続した土地や自宅の建て替えを考えたとき、前面道路が狭いせいで思った高さの建物を建てられないと言われた方は少なくありません。
理由がわからないまま検討が止まってしまう状態です。
原因の多くは道路斜線制限にあります。
本記事で扱うのは、道路斜線制限の定義と根拠、そして高さの上限を出す計算方法です。
制限を緩める5つのルールと、土地を売るときに価格へどう跳ね返るかもあわせて解説します。
読み終えるころには、自分の土地でどこまで建てられるかを確かめる手順と、売却前に押さえるべき確認事項を整理できます。

監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。

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道路斜線制限とは道路の採光と通風を守るための高さ規制

道路斜線制限とは、前面道路の反対側の境界線を起点に斜めに引いた線の内側までしか建物を建てられない規制です。
道路と沿道に光と風を通すために設けられており、前面道路が狭いほど建てられる高さは低くなります。
適用されるのは都市計画区域と準都市計画区域の内側だけです。

道路斜線制限の内容は建築基準法が定めている

道路斜線制限の根拠は建築基準法にあります。
法律は、前面道路の反対側の境界線から測った水平距離が一定の距離以下となる範囲を対象にしています。
対象の範囲では、水平距離に一定の数値を掛けて得た高さが建築物の上限です。

上限を決める要素は「距離」と「数値」の2つで、いずれも別表という一覧表で地域ごとに指定されています。
別表の欄は「建築物がある地域・地区」「容積率の限度」「距離」「数値」の4つです。

用途地域と容積率が決まれば、制限が及ぶ距離と掛け合わせる数値は自動的に定まります。
自分の土地で上限を出すには、用途地域と容積率、そして前面道路の幅員という3つの情報を集めてください。
3要素をそろえて掛け算をすると、目安の数値を導き出せます。

【参考】建築基準法(e-Gov 法令検索)

道路斜線制限が適用されるのは都市計画区域と準都市計画区域の中だけ

建築基準法の規定は、単体規定と集団規定の2つに分かれています。
単体規定は全国どこでも適用されるのに対し、集団規定が及ぶのは都市計画区域および準都市計画区域の内側だけです。
道路斜線制限は後者にあたるため、区域外の敷地であれば、高さの上限を気にせず建てて構いません。

自分の土地が区域の内側にあるかどうかは、市区町村の都市計画課の窓口で確認してください。
自治体が公開している都市計画情報の閲覧サービスでも調べられます。
多くの自治体は用途地域図をウェブ上で無料公開しており、住所を入力するだけで区域と用途地域を同時に調べられる仕組みです。

ただし区域外であっても、景観条例や地区計画によって独自の高さ制限が置かれている場合も少なくありません。
区域外だと確認できた段階で終わりにせず、自治体の担当課に条例の有無まで確かめておきましょう。

【参考】都市計画法(e-Gov 法令検索)

自分の土地で建てられる高さを調べる手順

高さの上限は次の4段階で概算できます。

1. 市区町村の都市計画図で用途地域を調べる

2. 同じ図面で容積率の限度を確認する

3. 道路管理課の道路台帳で前面道路の幅員と種別を確認する

4. 用途地域から勾配を、用途地域と容積率から適用距離を特定して掛け算する

たとえば第一種住居地域にある容積率200%の土地で、前面道路の幅員が4mだとします。
道路の反対側の境界線から敷地境界線までは4mあるため、敷地境界線上の高さの上限は4m×1.25で5mです。
敷地の奥に2m下がった位置なら6m×1.25で7.5mとなり、建物を後ろに下げるほど高く建てられます。

正確な判定には道路と敷地の高低差や隣接する道路の扱いも絡むため、最終的な数値は建築士か特定行政庁の建築指導課に確認してください。

自分の土地で建てられる高さを調べる手順

建築物の高さを制限する斜線制限は道路斜線制限など3種類ある

建築基準法が定める斜線制限は、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限の3つです。
3つは起点と守る対象が異なり、同じ敷地に複数がかかる場合は最も低い高さが上限になります。
前面道路が狭い土地では、まず道路斜線制限が問題になります。

種類起点守る対象適用される主な用途地域
道路斜線制限前面道路の反対側の境界線道路の採光と通風都市計画区域・準都市計画区域の全域
隣地斜線制限隣地境界線隣地の採光と通風低層住居専用地域と田園住居地域を除く全域
北側斜線制限真北方向の隣地境界線または道路北側の敷地の日照低層住居専用地域・田園住居地域・中高層住居専用地域

道路斜線制限|前面道路の反対側から引いた斜線で高さを抑える規制

道路斜線制限とは、前面道路の反対側の境界線を起点として敷地に向かって引いた斜線の内側までしか建てられない規制です。
起点が敷地側ではなく道路の向かい側にある点が、3種類の中で最も大きな特徴といえます。

起点が向かい側にあるため、道路の幅員はまるごと距離に上乗せされます。
幅員6mの道路に面した敷地は、幅員4mの道路に面した敷地より境界線上で2.5m高く建てられる計算です。
狭い道路ほど厳しくなるのは、幅員の分だけ距離が短くなるからです。

守る対象は道路と沿道に届く光と風で、沿道の建物が一斉に高くなって道路が暗くならないように働きます。
都市計画区域と準都市計画区域の内側なら用途地域を問わず適用されるため、3種類のうち最も広く適用される規制でもあります。

隣地斜線制限|隣地境界線から一定の高さを超える部分を抑える規制

隣地斜線制限とは、隣地境界線を起点に一定の高さを超える部分だけを抑える規制です。
基準となる高さは住居系の用途地域で20m、商業系や工業系の用途地域で31mとなります。
立ち上がりの高さが20mを下回る建物は、そもそも制限の対象外です。

一般的な木造2階建て住宅の高さは6m〜8m、3階建てでも10m前後にとどまります。
戸建て住宅の建て替えを考えている段階で、隣地斜線制限を気にする場面はまずないでしょう。
確認の優先度は道路斜線制限より低く置いて構いません。

なお第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域は、隣地斜線制限の適用対象外です。
3地域では建築物の高さ自体が10mまたは12mに制限されており、より厳しい上限が別に働いているためです。
低層地域では、隣地斜線制限を検討する場面がそもそも生じません。

北側斜線制限|北側の敷地の日照を守るために高さを抑える規制

北側斜線制限とは、真北方向にある隣地や道路の日照を確保するため、真北方向の境界線を起点に高さを抑える規制です。
対象は第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域の5地域に限られます。
中高層住居専用地域のうち、条例で日影規制が指定されている区域は対象から外れます。

起点となる高さは低層住居専用地域と田園住居地域で5m、中高層住居専用地域で10mです。
起点の高さから真北方向の水平距離に1.25を掛けた高さが上限となるため、敷地の北側に寄せた建物ほど厳しい制約を受けます。
日照を守る目的が明確なぶん、勾配を緩める仕組みがない点も特徴です。

同じ敷地に道路斜線制限と北側斜線制限の両方がかかる場合は、両方を同時に満たす必要があります。
北側に道路がある低層住居専用地域の敷地では、北側斜線制限のほうが低い上限を示す場合が多く見られます。

【参考】建築基準法(e-Gov 法令検索)

北側斜線制限 北側の敷地の日照を守るために高さを抑える規制

道路斜線制限の計算式は「道路からの距離×勾配」で求める

高さの上限を出す式は「前面道路の反対側の境界線からの水平距離×勾配」です。
勾配は用途地域によって1.25と1.5に分かれ、住居系のほうが厳しい数値になります。
起点から一定の距離を超えた範囲では、制限自体が外れます。

起点は敷地側ではなく前面道路の反対側の境界線になる

水平距離を測る起点は、敷地に接する側ではなく前面道路の反対側の境界線です。
起点の取り違えは計算を大きく狂わせるため、最初に押さえておいてください。

前面道路の幅員がまるごと距離に加算されるので、幅員の差は高さの差に直結します。
住居系の用途地域で勾配1.25の場合、幅員4mの道路に面した敷地境界線上の上限は5mです。
幅員6mなら7.5m、幅員8mなら10mまで上がります。
幅員が2m広がるごとに、上限は2.5mずつ上がる計算になります。

建物を道路境界線から後退させて建てた場合、起点はさらに道路の外側へ動く仕組みです。
後退させるだけで建物を高くできる緩和が用意されているため、設計段階で選択肢に入れておきましょう。

勾配は用途地域によって1.25と1.5に分かれる

掛け合わせる数値は用途地域で決まります。
住居系の8地域が1.25、近隣商業地域と商業地域、準工業地域と工業地域、工業専用地域が1.5です。

用途地域勾配(掛け合わせる数値)
第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域1.25
近隣商業地域、商業地域1.5
準工業地域、工業地域、工業専用地域1.5
用途地域の指定のない区域1.25または1.5(特定行政庁が定める)

例外もあります。
第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域では、前面道路の幅員が12m以上あると勾配が緩みます。
道路の反対側の境界線からの水平距離が「幅員×1.25」以上となる区域で、数値が1.25から1.5に変わる扱いです。
適用の可否は自治体の建築指導課で確認してください。

敷地が2つの用途地域にまたがる場合、道路斜線制限は過半を占める地域ではなく、用途地域ごとに個別に適用されます。
建築基準法の多くの規定は過半の地域のルールを敷地全体へ及ぼしますが、道路斜線制限は例外です。

またがる敷地では、地域の境界を挟んで高さの上限が変わります。
住居系と商業系にまたがる土地なら、商業系の部分だけ勾配1.5で計算できるため、建物の配置しだいで確保できる規模も違ってきます。
境界がどこを通っているかを都市計画図で確認してから設計に入ってください。

【参考】建築基準法(e-Gov 法令検索)

高さは地盤面ではなく前面道路の中心の高さから測る

建築物の高さは通常、敷地の地盤面を基準に測ります。
ところが道路斜線制限では例外が置かれており、前面道路の路面の中心の高さが基準点になります。

基準点が道路側にあるぶん、道路より低い敷地は不利です。
道路面より1m低い敷地なら、実質的に高さの上限が1m削られるのと同じです。
逆に道路より高い敷地は有利で、上限が実質的に持ち上がります。

道路と敷地の高低差が1m以上ある場合には、負担を和らげる緩和が別に用意されています。
高低差のある土地を持っている方は、緩和の適用を前提に計算してください。
前提を外すと上限を実際より低く見積もってしまいます。

査定額が想定より低いときは、高低差の扱いを織り込んだ計算かどうかを不動産会社に確かめてください。
根拠の内訳は書面で出してもらいましょう。

適用距離を超えた範囲には道路斜線制限がかからない

適用距離とは、道路斜線制限が及ぶ範囲を指す距離のことです。
起点から適用距離を超えた位置では制限が外れ、斜線の延長線より高い建物を建てられます。

適用距離は用途地域と容積率の限度の組み合わせで20m〜50mの範囲に定まります。
容積率が大きい地域ほど適用距離は長く、制限は敷地の奥まで届く関係です。
用途地域の指定がない区域では、容積率200%以下で20m、200%超300%以下で25m、300%超で30mです。

用途地域容積率の限度適用距離
住居系8地域200%以下20m
住居系8地域200%超300%以下25m
住居系8地域300%超400%以下30m
住居系8地域400%超35m
近隣商業地域、商業地域400%以下20m
近隣商業地域、商業地域400%超25m〜50m(容積率に応じて5m刻み)
準工業地域、工業地域、工業専用地域200%以下20m
準工業地域、工業地域、工業専用地域200%超25m〜35m(容積率に応じて5m刻み)

奥行きの深い敷地なら、適用距離の外側に高い部分を配置する設計で必要な床面積を確保しましょう。
道路側を低く抑え、奥に向かって高くする段状の形は、適用距離を意識した設計の典型です。

間口が狭く奥行きが長い旗竿地のような土地では、効果がとくに大きく出ます。
斜線に当たるからと計画を諦める前に、配置の工夫で解決できないかを設計者に相談してみてください。

適用距離を超えた範囲には道路斜線制限がかからない

道路斜線制限を緩める5つのルール

道路斜線制限には、条件を満たすと起点や基準点が有利に動く緩和があります。
代表的なものは、セットバック緩和・2A緩和・公園等の緩和・高低差緩和・天空率の5つです。
斜線に収まらない計画でも、緩和を組み合わせれば実現できる場合があります。
自動的に適用されるものと、計算や申請が必要なものの2種類です。

緩和の名称効果根拠
セットバック緩和後退させた距離だけ起点が道路の外側へ移る建築基準法
2A緩和狭い道路を広い道路と同じ幅員とみなす建築基準法施行令
公園・水面等の緩和公園や川の反対側の境界線が起点になる建築基準法施行令
高低差緩和道路が実際より高い位置にあるとみなす建築基準法施行令
天空率条件を満たせば道路斜線制限を適用しない建築基準法

セットバック緩和|建物を後退させた距離だけ道路が広がったとみなす

セットバック緩和とは、建物を道路境界線から後退させた場合に、後退した距離の分だけ起点が道路の反対側へさらに移る緩和です。
後退距離が2mなら、起点は反対側の境界線からさらに2m外側へ動きます。

後退距離は、建物から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものを指します。
建物の一部だけが道路に近づいている場合、後退距離の基準は最も近い部分です。
出っ張りの扱いには注意してください。

ただし、軒の高さ2.3m以下かつ床面積の合計5平方メートル以内の物置など、一定の条件を満たす部分は後退距離の判定から除けます。
道路に面する長さが敷地の接道長さの5分の1以下で、道路境界線から1m以上離れていることも条件です。
ポーチも同様の扱いを受けられる場合があります。
小さな附属部分のせいで緩和を失わないよう、設計者と条件を確認してください。

【参考】建築基準法(e-Gov 法令検索)

【参考】建築基準法施行令(e-Gov 法令検索)

2A緩和|広い前面道路の幅員を狭い道路にも適用する

2A緩和とは、2つ以上の道路に接する敷地で、狭い道路の側も広い道路と同じ幅員があるとみなす緩和です。
名称の「A」は最大幅員を指し、緩和が及ぶ範囲が幅員の2倍であることから2A緩和と呼ばれています。

適用される範囲は、最大幅員の道路の境界線から幅員の2倍以内かつ35m以内で、なおかつ他の道路の中心線から10mを超える区域です。
区域の外側では、狭い道路を実際の幅員のまま扱います。

角地や二方向が道路に接する敷地では効果が大きく、狭いほうの道路側でも広い道路と同じ高さまで建てられます。
幅員6mと幅員4mの道路に接する角地では、幅員6mを基準に計算できる区域が生まれる形です。

2A緩和は申請が必要な手続きではありません。
条件を満たしていれば、手続きなしで効果が及びます。
角地を所有している方は、広いほうの道路を基準に計算し直したうえで建築可能な規模を見積もってください。

【参考】建築基準法施行令(e-Gov 法令検索)

公園・水面等の緩和|道路の向かい側にある公園の幅だけ起点が遠ざかる

公園・水面等の緩和とは、前面道路の反対側に公園や広場、川などがある場合に、公園や川の反対側の境界線を起点として扱う緩和です。
道路の幅員に公園や川の幅が上乗せされるのと同じ効果を生みます。

幅10mの川が道路の向かい側を流れているなら、起点は10m遠ざかります。
住居系の用途地域なら、10m遠ざかるだけで高さの上限が12.5m上がる計算です。
向かいが開けている土地は、見た目の印象だけでなく建てられる規模の面でも有利になります。

緩和の対象になるのは公園・広場・水面と、性質が同じと認められる空間です。
緑地や河川敷が向かいにある土地も対象になる場合があり、判断は特定行政庁が行います。

該当するかどうかは、道路台帳と公図を照らし合わせれば確認できます。
市区町村の窓口で両方を取り寄せ、道路の向かい側の地目まで確かめておきましょう。
判断に迷う土地は建築指導課へ図面を持ち込むと早く結論が出ます。

高低差緩和|敷地が道路より1m以上高い場合に道路の位置を上げる

高低差緩和とは、敷地の地盤面が前面道路より1m以上高い場合に、前面道路が実際より高い位置にあるとみなす緩和です。
みなす高さは、高低差から1mを引いた値の2分の1と決められています。

高低差が3mの敷地なら、3mから1mを引いた2mの半分、つまり1mだけ道路が高い位置にあるものとして計算します。
高低差が5mなら2mです。
高台の敷地では、緩和を織り込むかどうかで上限が1m以上変わります。

なお高低差緩和は、有利か不利かにかかわらず必ず適用する規定です。
使うかどうかを選べる緩和ではないため、高低差が1m以上ある敷地では計算に含めてください。

天空率で判定する場合の扱いには注意が必要です。
高低差緩和を織り込むと天空率の計算結果が不利に振れる場合があり、審査機関から適用を求められます。
高低差のある土地で天空率を使う計画は、設計者に両方の計算を出してもらいましょう。

【参考】建築基準法施行令(e-Gov 法令検索)

天空率|計算で同等以上の採光を示せば道路斜線制限を適用しない

天空率とは、建物の位置から見上げた空の広がりを数値化した割合です。
道路斜線制限に適合する形の建物と比べて天空率が同等以上なら、道路斜線制限を適用しない扱いを受けられます。

判定には専用ソフトによる計算と、確認申請での図面提出が必要です。
設計者に依頼する前提の手法であり、読者が独力で判断できるものではありません。
斜線に収まらない計画を諦める前に、天空率で通せないかを設計者に確認してみてください。

適用の条件は、前面道路の境界線からの後退距離が、比較対象とする建物の後退距離以上であることです。
後退距離の条件を満たさないと、天空率の数値だけでは確認申請が通りません。

天空率は道路斜線制限だけでなく、隣地斜線制限と北側斜線制限にも使えます。
3種類のうち支障になっている制限を個別に外せるため、複雑な形の敷地ほど検討する価値は大きいでしょう。

【参考】建築基準法施行令(e-Gov 法令検索)

天空率 計算で同等以上の採光を示せば道路斜線制限を適用しない

道路斜線制限の高さに算入しなくてよい建築物の部分

屋上に載る設備のすべてが高さに数えられるわけではありません。
扱いは2種類です。
どの高さ制限でも算入しない部分と、面積の条件を満たせば算入しない部分に分かれます。

部分扱い条件
棟飾り、防火壁の屋上突出部などの屋上突出物すべての高さ制限で算入しない条件なし
階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓などの屋上部分一部の高さ制限で算入しない水平投影面積の合計が建築面積の8分の1以内(高さ12mまで)

エレベーターの機械室や屋上への階段室は、面積を建築面積の8分の1以内に抑えれば、高さ12mまでの部分を道路斜線制限の計算から外せます。
設計の初期段階から面積を意識しておき、屋上設備のために階数を諦める事態を避けてください。

一方、広告塔や高架水槽のうち上記に当たらないものは高さに算入します。
屋上に何を載せるかによって上限の判定が変わるため、設備の配置を決める前に扱いを整理しておいてください。

8分の1以内という条件は、屋上部分の水平投影面積を合計して判定します。
階段室とエレベーター機械室を別々に数えるのではなく、合算した面積で見る点に注意が必要です。
設計の初期段階で合計面積を押さえておきましょう。

【参考】建築基準法施行令(e-Gov 法令検索)

道路斜線制限が土地の売却価格に与える影響

道路斜線制限は、前面道路が狭い土地ほど厳しくかかり、建てられる建物の規模を小さくします。
買主は建てられる規模から逆算して価格を判断するため、規模の縮小は評価の低下に直結します。
価格に影響するのは制限単独ではなく、接道条件や既存不適格との組み合わせです。

前面道路の幅員敷地境界線上の高さの上限建築計画への影響
4m5m3階建ては道路側が斜めに削られる
6m7.5m3階建てがおおむね収まる
8m10m一般的な戸建てでは支障が出にくい

※住居系の用途地域(勾配1.25)で、建物を後退させない場合の数値です。

前面道路が狭いほど建てられる建物が小さくなり評価が下がる

幅員4m前後の道路に接する住居系の土地では、道路側の上階が斜線に当たって削られます。
3階建てを想定していた土地で3階部分が斜めに切り取られると、想定していた延べ面積は確保できません。

結果として、容積率の上限まで建てられない状態が起こります。
容積率200%の土地でも実際に建てられるのが150%相当なら、買主の評価は150%分の価値にとどまるでしょう。
不動産会社の査定では、容積率をどこまで使い切れるかを示す消化率が価格の根拠になります。

査定額が想定より低かった場合は、消化率をどう見積もったのか、後退や緩和を織り込んだのかを確かめてください。
根拠の内訳を書面で出せない会社は候補から外しましょう。
判断に迷うときは、ベンナビ不動産売却で提携弁護士に無料相談したうえで進める方法もあります。

建築時に適法でも現行の制限に合わない既存不適格になる場合がある

既存不適格とは、建築した時点では適法だった建築物を指します。
建築後の法改正や都市計画の変更によって、現行の規制に適合しなくなった状態です。
違法建築とは扱いが異なり、使い続けても法令違反にはあたりません。

違いが出るのは建て替えのときです。
既存不適格の建物は、建て替える際に現行の道路斜線制限へ適合させる必要があるため、同じ規模では建て直せません。
買主にとっては「今の建物より小さい家しか建たない土地」であり、価格の交渉材料になります。

住宅ローンの審査でも不利に働きかねません。
既存不適格を理由に融資額を抑える運用をとる金融機関も一部にあります。
買主が資金計画を組みにくくなるため、成約までの期間は延びやすいと考えてください。

再建築不可の土地では道路斜線制限より接道義務が先に問題になる

接道義務とは、建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという建築基準法の要件です。
要件を満たさない土地では建築確認が下りず、建て替えができません。

接道を満たさない土地で高さの上限を計算しても意味がありません。
確認の順序は、まず接道条件、次に用途地域と容積率、最後に道路斜線制限です。
順序を間違えると、実現しない前提で価格を考えることになります。

なお幅員4m未満の道路でも、いわゆる2項道路に指定されていれば、道路の中心線から2m下がった線を境界とみなして建築できます。
後退により道路の幅員は4mとして扱われ、道路斜線制限の起点も同時に遠ざかる形です。

【参考】建築基準法(e-Gov 法令検索)

道路斜線制限がある土地を売るときの注意点

売却で損をしないために守るべき点は3つです。
建て替え後の規模を確かめてから売り出すこと、制限の内容を買主へ正しく伝えること、そして1社の査定額だけで価格を決めないことです。
3点はいずれも売却後の紛争を避ける効果も持ちます。

建て替え後に建てられる規模を確かめずに売り出さない

買主が最初に確認するのは、売り出された土地にどれくらいの建物を建てられるかです。
用途地域・容積率・前面道路の幅員から算出した延べ面積の目安を用意しておけば、質問に即座に答えられます。

目安の算出は建築士か、土地の取引に慣れた不動産会社に依頼してください。
建てられる規模を示す簡単な図面があれば、買主は資金計画を立てやすくなり、値引き交渉に発展しにくくなります。

規模を示せないまま売り出すと、買主は最も不利な前提で見積もります。
斜線でどれだけ削られるかが読めない土地は、買主が値引きの余地を大きく取るためです。

用意しておきたい資料は、建築確認済証と検査済証、測量図、そして建てられる規模を示す図面の4点です。
4点がそろっていれば買主の検討は一気に進みます。
制限のある土地ほど、売主側が先に数値を用意しておくと価格を守れます。

制限の内容を買主に伝えないまま契約しない

都市計画法や建築基準法にもとづく制限は、宅地建物取引業法が定める重要事項説明の対象です。
仲介会社が調査して説明する義務を負いますが、売主が知っている事実を隠すと責任は売主にも及びます。

既存不適格である事実と、高さの制約で建て替え後の規模が小さくなる事実は、いずれも買主の判断を左右する材料です。
事実を伝えずに契約すると、引き渡し後に契約不適合責任を問われかねません。
損害賠償や契約解除に発展するおそれもあります。

売主が把握している内容は、媒介契約を結ぶ段階で仲介会社へすべて伝えてください。
過去の建築確認済証や検査済証、増改築の履歴が残っていれば、あわせて渡しておくと調査が正確になります。
伝え方に迷う場合は、ベンナビ不動産売却の無料相談で提携弁護士に整理してもらう方法が確実です。

【参考】宅地建物取引業法(e-Gov 法令検索)

1社の査定額だけで手放す価格を決めない

制限のある土地は、想定する建築計画によって評価が会社ごとに割れます。
斜線を織り込んだ現実的な計画で見る会社と、容積率いっぱいの理想値で見る会社では、提示額に大きな差が出ます。

比較するときは、想定した延べ面積、近隣の成約事例、諸費用を誰が負担するかの3点を見てください。
3点を書面で示せる会社は、根拠のある価格を出しています。

査定額の根拠を口頭でしか説明しない会社は候補から外しましょう。
書面が出ない査定は、後から金額を下げられても比べる材料が残りません。

複数社の内訳を並べれば、どこが実勢に近いかを自分で判断できます。
最も高い金額を出した会社ではなく、想定した計画に無理がなく、諸費用の負担まで明示した会社を選んでください。
判断に迷う場合は、ベンナビ不動産売却で提携弁護士に無料相談したうえで決められます。

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道路斜線制限に関するよくある質問

Q

道路斜線制限は2階建ての住宅でも関係する?

A

関係します。
幅員4m前後の道路に接する住居系の土地では、道路側の2階部分が斜線に当たり、屋根の形を斜めに削る設計になりがちです。
建物を道路境界線から後退させると起点が遠ざかるため、削らずに済むケースもあります。

Q

道路斜線制限と北側斜線制限が両方かかる場合はどうなる?

A

両方を同時に満たさなければなりません。
2つの斜線が交わる敷地では、低いほうの高さが上限です。
低層住居専用地域で北側に道路がある敷地は、北側斜線制限のほうが厳しくなる場合が多いため、両方を計算して比べてください。

Q

自分の土地の用途地域や前面道路の幅員はどこで調べる?

A

用途地域と容積率は市区町村の都市計画課、または自治体が公開する都市計画情報のウェブサービスで確認できます。
前面道路の幅員と種別を確かめる資料は、道路管理課が備える道路台帳です。
どちらの資料も無料で閲覧して構いません。

Q

道路斜線制限に適合しない建物は違法建築になる?

A

建築した時点で適法だった建物は既存不適格にあたり、違法建築ではありません。
現状のまま使い続けて問題ない扱いです。
ただし建て替える際は現行の道路斜線制限に合わせる必要があるため、同じ規模では建て直せない場合があります。

まとめ|道路斜線制限は前面道路の幅と距離で建てられる高さが決まる

道路斜線制限は、前面道路の反対側の境界線を起点に建物の高さを抑える規制です。
上限は用途地域で決まる勾配と、用途地域と容積率で決まる適用距離によって定まります。
セットバック・2A・公園等・高低差・天空率の5つの緩和を使えば、制限のかかり方を緩められます。

土地を売るときは、まず接道条件を確認し、次に用途地域と容積率、最後に道路斜線制限の順で調べてください。
建て替え後の規模を数値で示せる状態にしてから売り出すと、価格を守りやすくなります。

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監修者

株式会社アシロ 社内弁護士

所属:第二東京弁護士会

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。