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袋地とは?囲繞地との違いと通行権・再建築の可否や売却方法を解説
相続した土地が袋地だと説明された、購入を検討している土地が袋地に当たると言われた。
袋地という言葉を初めて聞き、何が不利になるのかを確かめたい方に向けた記事です。
袋地とは周囲を他人の土地に囲まれて公道に出られない土地を指します。
通常の土地と扱いが変わるのは、建築と通行の2点だけです。
読み終えるころには、自分の土地が袋地に当たるか、通行をどこまで主張できるか、再建築と売却でどの手が残っているかを判断できます。

弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。
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袋地とは他人の土地に囲まれて公道に接していない土地

袋地(ふくろち)とは、他人の土地に囲まれて公道に接していない土地です。
似た言葉に準袋地・囲繞地・無道路地・旗竿地があり、指している対象はそれぞれ違います。
5つの用語の整理から始めます。
| 用語 | 読み方 | 意味 | 袋地との関係 |
|---|---|---|---|
| 袋地 | ふくろち | 他人の土地に囲まれて公道に出られない土地 | 本記事の主題 |
| 準袋地 | じゅんふくろち | 池や崖にさえぎられて公道に出られない土地 | 袋地と同じ通行権が認められる |
| 囲繞地 | いにょうち | 袋地を取り囲んでいる周囲の土地 | 袋地と対になる土地 |
| 無道路地 | むどうろち | 相続税や贈与税の評価で道路に接しない土地を指す呼び方 | 税の評価で使う別名 |
| 旗竿地 | はたざおち | 細長い通路で道路につながる土地 | 通路の幅が2メートル未満なら袋地と同じ扱い |
袋地|他人の土地に囲まれて公道に出られない土地
袋地とは周囲を他人の土地に囲まれ、公道に出るには他人の土地を通るほかない土地です。
民法は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者に、公道へ出るために周囲の土地を通行する権利を認めています。
実務では、道路に一切接していない土地だけを袋地と呼ぶわけではありません。
道路には接しているものの、接する幅が2メートルに足りない土地も、建築の場面では袋地と同じ制限の対象です。
袋地になる原因の多くは、土地の分割にあります。
広い敷地を相続や分譲で切り分けた結果、道路から遠い側が公道に出られなくなります。
登記事項証明書の地目や地積だけでは、袋地かどうかの判別は不可能です。
判定に使うのは公図と現地の実測です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
準袋地|池や崖にさえぎられて公道に出られない土地
準袋地とは池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に出られない土地です。
著しい高低差のある崖にさえぎられて公道に出られない土地も含まれます。
民法は準袋地にも袋地と同じ通行権を認めており、周囲の土地を通って公道に出られます。
崖の高低差がどの程度あれば該当するかは、明確な数値基準のない領域です。
実際に人や車が通行できるかどうかを、現地の地形から個別に判断する運用になっています。
準袋地でも建築基準法上の接道義務は満たせないため、再建築の制限は袋地とまったく同じです。
通行権があるかどうかと、建て替えができるかどうかは別の問題だと押さえておきましょう。
水路をまたぐ橋が架かっている場合や、階段で高低差を越えられる場合は、通行できる状態にあると判断されます。
準袋地に当たるかどうかは、実際に人が安全に通れるかが分かれ目になります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
囲繞地|袋地を取り囲んでいる周囲の土地
囲繞地(いにょうち)とは袋地を取り囲んでいる周囲の土地です。
袋地とセットで使う言葉で、袋地の所有者に通行を認める義務を負う側を指します。
囲繞地は民法の条文に出てくる用語ではなく、判例と実務のなかで定着した呼び方です。
条文上は「他の土地」と表現されており、囲繞地という言葉自体を探しても法令には見当たりません。
囲繞地の所有者は通行を拒めない一方、通行によって生じた損害に対して償金を受け取れます。
交渉に入る前に、自分が通行を求める側と償金を払う側の両方に立つと整理しておきましょう。
権利だけを主張すると、話し合いが最初から止まります。
囲繞地の所有者が複数いる場合、袋地の所有者はすべての土地を自由に選べるわけではありません。
公道までの距離や地形から見て、最も負担の小さい土地が通行先です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
無道路地|相続税評価で道路に接しない土地を指す呼び方
無道路地とは相続税や贈与税の土地評価で使われる呼び方です。
財産評価基本通達では、道路に接しない土地に加えて、接道義務を満たしていない土地も無道路地として扱います。
袋地は民法の通行権を語る場面で、無道路地は税の評価を語る場面で使われます。
同じ土地を指していても、どちらの言葉を使うかで話題が変わる点に注意してください。
無道路地に当たると、通路を開設する費用に相当する額を差し引いた評価になります。
評価額が下がるぶん相続税の負担は軽くなりますが、評価額と実際に売れる価格は一致しません。
相続で袋地を取得した場合、申告のために無道路地としての評価が必要です。
評価の計算は税理士に依頼し、売却価格の判断は不動産会社の査定で行うと切り分けてください。
【参考記事】財産評価基本通達 第2章 土地及び土地の上に存する権利|国税庁
旗竿地|細長い通路で道路につながる土地
旗竿地(はたざおち)とは細長い通路部分を通じて道路に接している土地です。
上から見た形が竿のついた旗に似ているため、旗竿地と呼ばれます。
通路部分が竿、奥の敷地部分が旗にあたります。
通路の幅が2メートル以上あれば接道義務を満たすため、旗竿地は袋地の対象外です。
逆に幅が2メートルに足りない場合は、袋地と同じく建て替えができなくなります。
通路部分が隣家との共有になっている旗竿地では、舗装や配管工事のたびに共有者の同意が要ります。
購入前に登記事項証明書で通路部分の所有関係を確かめてください。
旗竿地は袋地より買い手がつきやすい土地です。
なお、通路の幅が建築基準法の条件に届いていない旗竿地は、実質的に袋地と変わりません。
購入前に通路の幅を必ず実測してください。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
袋地が通常の土地と違うのは建築と通行の2点
袋地の制限は、建て替えができない点と、公道に出るのに他人の土地を通る点の2つに集約されます。
建て替えができない理由は接道義務にあります。
接道義務とは建物を建てる敷地が道路に一定の幅で接していなければならないという建築基準法上の決まりです。
| 項目 | 通常の土地 | 袋地 |
|---|---|---|
| 建て替え | できる | 接道義務を満たさず建築確認が下りない |
| 公道までの通行 | 自分の土地から直接出られる | 隣地を通行する権利を使って出る |
| 住宅ローン | 利用しやすい | 担保評価が下がり融資がつきにくい |
| 売却先 | 一般の買主 | 隣地所有者・現金で購入できる買主・訳あり不動産を扱う買取業者 |
制限は所有し続ける場合にも売却する場合にも影響します。
日常生活で影響するのは通行の条件、資産としての判断で影響するのは建て替えの可否です。
どちらの制限がより重いかは、住み続けるのか手放すのかで変わります。
住み続けるなら通行の条件、手放すなら建て替えの可否が判断の中心です。
自分の土地でどちらが重いかを見極めてから、次の手を選んでください。
建築基準法の接道義務を満たさないため建て替えができない
袋地では建築確認が下りず、新築も増築もできません。
理由は接道義務にあります。
建築基準法が敷地と道路の接し方に条件を設けており、袋地は条件を外れるためです。
影響が大きく出るのは、建物を解体した後です。
更地にしてしまうと同じ場所に建て直せず、土地の使い道は駐車場や資材置き場に限られます。
一方で、建っている建物に住み続ける行為も、内装のリフォームや建築確認の要らない範囲の修繕も制限されません。
条件の中身と、どこまでの工事なら実施できるかは、再建築不可の理由を扱う章で詳しく確認してください。
建築確認とは工事に着手する前に、計画が建築基準法などに適合しているかを審査してもらう手続きです。
確認が下りない土地では、住宅の新築も建て替えも進められません。
確認が下りない状態は、建物が使えるあいだだけ猶予が続いている状態でもあります。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
公道に出るには他人の土地を通る必要がある
袋地の所有者は、民法が認める通行権によって囲繞地を通り、公道に出られます。
権利は法律上当然に発生する仕組みです。
したがって囲繞地の所有者と契約を結ばなくても通行できます。
通れる場所・幅・対価は法律で枠が決まっており、当事者の裁量の外です。
囲繞地の所有者に最も損害が少ない経路を選ぶ必要があり、通行の対価も原則として発生します。
通行権があるという前提だけで押し切ろうとすると、隣地との関係が悪化します。
範囲と対価の決まり方を先につかんだうえで話し合いに入ってください。
関係が壊れると、将来の売却先も1つ失います。
通行の条件が固まっていない土地は、買主から見ても不安が残ります。
価格の交渉で不利にならないよう、売却の前に条件を書面化しておいてください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
自分の土地が袋地に当たるかは公図と現地の2つで判定する
判定は2段階で終わります。
はじめに法務局で公図と登記事項証明書を取得し、土地が道路とどう接しているかを確認してください。
次に現地で、道路に接している部分の幅を実際に測ってください。
幅が2メートル未満であれば、袋地と同じく建て替えができません。
接している道が建築基準法上の道路に当たるかどうかは、市区町村の建築指導課で道路種別を照会すれば確認できます。
公図と現地の状況が食い違う場合や、道路種別の判断がつかない場合は、土地家屋調査士や不動産に強い弁護士に確認しましょう。
売買や隣地との交渉に入る前に事実関係を固めておくと、後の紛争を避けられます。
判定に迷う典型は、道路に接してはいるものの幅が1.8メートル前後という土地です。
数センチの差で結論が変わるため、目測ではなく実測で確かめてください。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
袋地の所有者は囲繞地を通行できる権利を持つ
袋地の所有者には囲繞地通行権が認められており、公道に出るために周囲の土地を通れます。
ただし「通れる」と「自由に使える」は別です。
通れる場所の決まり方、償金の負担、償金がいらない例外の3点を順に確認します。
囲繞地通行権とは公道に出るために隣地を通れる権利
囲繞地通行権とは公道に通じない土地の所有者が、公道に出るために周囲の土地を通行できる権利です。
民法が定める権利であり、囲繞地の所有者と契約を結ばなくても法律上当然に発生します。
登記も不要です。
袋地を買った人にも、相続した人にも、権利はそのまま引き継がれます。
囲繞地の所有者が代わっても、新しい所有者に対して通行を主張できます。
囲繞地の所有者が「通らないでほしい」と申し入れてきても、通行そのものを止める権限までは持たない立場です。
押さえるべきなのは、通行できるかどうかではなく、どこをどう通れるかという範囲の問題です。
通行権があっても、囲繞地を駐車場や資材置き場として使う行為までは認められません。
認められるのは、公道へ出入りするための通行に限られます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
通行できる場所は囲繞地の損害が最も少ない経路に限られる
民法は、通行の場所と方法について、袋地の所有者にとって必要であり、かつ囲繞地にとって損害が最も少ないものを選ぶよう求めています。
必要があれば、通路を新たに開設する行為も認められます。
自動車の通行は、権利として当然に認められるものではない点に注意してください。
従前の利用状況、周辺の交通事情、囲繞地が受ける負担を比べたうえで、個別に判断されます。
生活に自動車が欠かせない地域では認められやすい傾向です。
幅2メートルの通行が保障されるわけでもありません。
通行権が認められても接道義務を満たすとは限らず、建て替えの可否は別枠で判断されます。
通行の話と建築の話を混ぜないよう気をつけてください。
通路を開設する場合、工事費用は袋地の所有者が負担します。
舗装の仕様や排水の処理まで含めて、着工前に囲繞地の所有者と合意しておきましょう。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
通行の対価として償金を支払う義務がある
袋地の所有者は、通行によって囲繞地に生じる損害に対して償金を支払う義務を負います。
通路の開設のために生じた損害を除けば、1年ごとの分割払いも認められます。
償金の額に法定の基準はなく、公的な相場統計も存在しません。
実務では、通路部分の面積と近隣の地代水準をもとに算定するのが一般的です。
当事者の合意で無償と定める例もあります。
口約束のまま通行を続けると、代替わりのタイミングで支払いの有無や金額をめぐって対立が起きます。
金額・支払時期・支払方法を書面に残しておきましょう。
話し合いがまとまらない場合は、不動産に強い弁護士に間に入ってもらう方法が現実的です。
支払いが滞ると、囲繞地の所有者から償金の請求を受けます。
通行そのものを止められるわけではありませんが、関係が悪化して交渉が難しくなります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
土地の分割でできた袋地は償金を支払わなくてよい
ひとつの土地を分割した結果として袋地が生じた場合、袋地の所有者は他の分割者の土地だけを通行できます。
しかも償金の支払いは不要です。
民法は分割の場面について、通常の囲繞地通行権とは別の扱いを用意しています。
土地の一部を譲り渡した場合も同じ扱いになります。
売却や贈与で土地を切り分けた結果、残った側が公道に出られなくなったケースが該当例です。
相続で土地を分けた場合や、分譲によって袋地が生じた場合が典型例です。
自分のケースが該当するか判断できないときは、公図と分筆の履歴を持って弁護士に確認してください。
無償で通行できる立場かどうかは、通行料の交渉に入る前に確定させるべき点です。
分筆の履歴は、法務局で閉鎖登記簿を取得すれば追えます。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
袋地で使える囲繞地通行権と通行地役権は成立の仕方が異なる

袋地で使える通行の権利は2種類あります。
囲繞地通行権は法律上当然に発生する最低限の権利、通行地役権は当事者の合意で設定する契約上の権利です。
売却時の評価に差が出るため、違いを押さえておきましょう。
| 項目 | 囲繞地通行権 | 通行地役権 |
|---|---|---|
| 発生原因 | 法律上当然に発生する | 隣地所有者との合意で設定する |
| 通行できる範囲 | 囲繞地の損害が最も少ない範囲に限られる | 契約で自由に決められる |
| 対価 | 原則として償金が発生する | 有償・無償とも合意で決められる |
| 登記 | できない | できる |
| 隣地の所有者が変わった場合 | そのまま主張できる | 登記していれば主張できる |
どちらの権利を持っているかで、通行できる範囲も売却時の評価も変わります。
囲繞地通行権しかない状態なら、通行地役権の設定を目指す価値があります。
囲繞地通行権は、最低限の通行を保障する仕組みです。
通行地役権は、当事者が納得できる条件を契約で作り込む手段になります。
両者は排他的ではなく、囲繞地通行権を持ったうえで通行地役権を設定できます。
現状の権利がどちらかを先に確認してください。
登記事項証明書に地役権の記載があれば、通行地役権が設定されています。
通行地役権とは隣地所有者との合意で設定する通行の権利
通行地役権とは自分の土地の利便のために他人の土地を通行できるよう、当事者の合意で設定する権利です。
民法の地役権に関する規定にもとづき、契約によって成立します。
内容を自由に決められる点が最大の特徴です。
通路の幅、自動車の通行の可否、水道管やガス管を埋設するための掘削の可否まで、契約書に書き込めます。
設定したら登記まで済ませてください。
登記があれば、囲繞地の所有者が代わっても新しい所有者に対して権利を主張できます。
登記がないまま所有者が代われば、一から交渉をやり直す事態になります。
設定するには囲繞地の所有者の同意を取り付けてください。
同意を得られるかどうかは、対価の条件と日ごろの関係しだいです。
通行料を支払っている場合は、支払いを続ける代わりに地役権の設定を求める交渉が現実的です。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
袋地で使える2つの権利の違いは通行範囲と登記の可否に表れる
囲繞地通行権では、通行できる幅が事前に確定しません。
最も損害が少ない経路という基準は個別判断であり、当事者間で認識がずれれば紛争になります。
登記もできないため、書面に残らない権利という弱さを抱えている状態です。
通行地役権なら、幅も自動車の可否も掘削の可否も契約で確定できます。
登記すれば隣地の所有者が変わっても主張でき、買主と金融機関が確認できる形の資料になります。
売却を見据えるなら、通行地役権の設定と登記まで進めましょう。
囲繞地の所有者が応じない場合は、交渉の入口から弁護士に入ってもらいましょう。
法的な根拠を示しながら話を進められます。
通行地役権の設定登記は、袋地と囲繞地の双方が共同で申請します。
囲繞地の所有者が登記に協力しない場合は、合意書だけでも残しておきましょう。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
袋地では水道管やガス管の引き込みにも隣地を使える
袋地では通行だけでなく、ライフラインの引き込みでも隣地を使う必要があります。
根拠は2023年4月1日に施行された改正民法にあります。
他人の土地に設備を設置しなければ電気・ガス・水道の供給を受けられない場合、土地の所有者は必要な範囲で隣地に設備を設置することが可能です。
改正前は明文の規定がなく、隣地所有者に断られると工事が止まっていました。
現在は根拠が条文にあるため、交渉の出発点が変わっています。
工事の前に必要な通知と、生じた損害に対する償金の決まりを順に確認します。
設備を設置できる範囲は「必要な範囲内」までです。
将来の増設を見込んだ大きめの配管を通したい場合は、隣地所有者との合意が別途必要になります。
設備を設置する前に隣地の所有者へ通知する
他人の土地に設備を設置する場合、あらかじめ設置の目的・場所・方法を、隣地の所有者と現に使用している人へ通知しなければなりません。
通知を省いて着工する行為は認められません。
通知は口頭ではなく書面で行い、記録を残してください。
通知してから相当な期間をおいたうえで工事に入る流れになります。
相当な期間は事案によりますが、2週間から1か月程度を目安とする例が多く見られます。
隣地の所有者がわからない場合や連絡がつかない場合の受け皿は、公示による通知の手続きです。
所有者不明土地が絡むケースでは、手続きの選択を弁護士に相談すると安全です。
通知の相手は所有者だけではありません。
隣地を借りて住んでいる人がいれば、借主にも通知が要ります。
登記事項証明書だけでなく、現地の使用状況も確認してください。
【参考記事】民事基本法制の見直し(所有者不明土地の解消に向けて)|法務省
設置場所と方法は隣地の損害が最も少ないものを選ぶ
設備の設置場所と設置方法は、隣地にとって損害が最も少ないものに限定されています。
通行権と同じ考え方で、必要な範囲を超えた利用は認められません。
生じた損害の償金は、設備を設置した側の負担です。
土地を継続的に使用して生じる損害は分割払いが可能です。
一方、工事で一時的に生じた損害は一括払いの扱いになります。
隣地所有者との協議がまとまらない場合、無断で工事を進めれば損害賠償や工事差し止めのリスクを負います。
着工前に弁護士へ相談し、通知の内容と設置計画を整えてから進めましょう。
設置後も、点検や修理のために隣地へ立ち入る場面が出てきます。
立ち入りの手順も先に決めておきましょう。
立ち入りの条件まで含めて合意しておくと、後の対応がなめらかになります。
【参考記事】民事基本法制の見直し(所有者不明土地の解消に向けて)|法務省
袋地が再建築不可になるのは接道義務を満たさないため
袋地が再建築不可とされる理由は、建築基準法の接道義務にあります。
接道義務は、火災や地震のときに避難と消火活動を確保するために設けられた決まりです。
防災上の要請から来ているため、個別の事情で緩められる余地は限られます。
建築確認とは工事の前に計画が建築基準法などに適合しているかを審査してもらう手続きです。
接道義務を満たさない敷地では確認が下りず、着工できません。
そのうえ例外の枠組みは用意されており、条件を満たせば建築が認められる道も残されています。
建築確認が必要な工事と不要な工事で扱いが分かれるため、どこまでできるかを先に線引きしておきましょう。
建築基準法上の道路に2メートル以上接する必要がある
建築基準法は、建築物の敷地が道路に2メートル以上接することを求めています。
建築基準法上の道路は、原則として幅員4メートル以上のものに限られます。
建築基準法上の道路は、42条1項が定める5つの区分と、同条2項のみなし道路をあわせた6種類です。
42条1項が定める5つは次のとおりです。
- 道路法による道路(国道・都道府県道・市町村道)
- 都市計画法や土地区画整理法などの事業によって造られた道路
- 建築基準法の適用時点ですでに存在していた道
- 2年以内に事業が執行される予定として特定行政庁が指定した道路
- 特定行政庁から位置の指定を受けて築造された私道(位置指定道路)
幅員4メートル未満の道でも、建築基準法の適用時点で建物が立ち並び、特定行政庁が指定したものは道路とみなされます。
ただし中心線から2メートル後退した線が境界となり、建て替えでは敷地を後退させる必要があります。
接している道が私道なら、位置指定の有無で結論が変わる点に注意してください。
市区町村の建築指導課で道路種別を照会してください。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
建て替えはできないがリフォームと修繕は続けられる
再建築不可の土地でも、建築確認が不要な範囲の工事は実施できます。
内装のリフォーム、水回りの入れ替え、屋根や外壁の塗り替えは制限を受けません。
制限がかかるのは、新築・増築・改築と、大規模な修繕や模様替えです。
大規模な修繕の扱いは、2025年4月1日に施行された改正建築基準法で変わりました。
階数が2以上、または延べ面積が200平方メートルを超える建築物では、大規模な修繕や模様替えにも建築確認が必要になりました。
木造2階建ての住宅も対象です。
平屋で延べ面積が200平方メートル以下の建築物であれば、大規模な修繕でも確認申請は不要です。
判断を誤ると、工事の途中で是正指導を受ける事態になります。
工事の内容が確認申請の対象かどうかは、着工前に市区町村の建築指導課へ照会しておきましょう。
リフォームで住み続ける前提に立つなら、屋根と外壁の防水、給排水管の更新を優先してください。
構造に手を入れない範囲でも、建物の寿命は大きく変わります。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
袋地を再建築できるようにする5つの方法
再建築不可を解消する手段は5つあります。
いずれも隣地所有者か行政の協力が前提になるため、確実性と費用の順に検討してください。
期間の目安は、交渉と行政手続きが順調に進んだ場合の一般的な例です。
| 方法 | 必要な相手 | 期間の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 囲繞地の一部を買い取る | 隣地所有者 | 3か月から半年 | 資金があり隣地との関係が良好 |
| 隣地と等価交換する | 隣地所有者 | 半年前後 | 購入資金を用意できない |
| 通行と掘削の承諾を得る | 隣地所有者 | 1か月から3か月 | 当面は建て替えを予定していない |
| 位置指定道路の指定を受ける | 沿道の土地所有者全員と行政 | 半年から1年 | 複数の袋地が並ぶ区画 |
| 建築基準法43条2項の認定・許可を受ける | 特定行政庁・建築審査会 | 3か月から1年 | 幅員4メートル以上の道に接している |
囲繞地の一部を買い取って間口を2メートル以上にする
確実性が高い方法は、囲繞地の一部を買い取って道路に接する幅を2メートル以上確保する手段です。
接道義務を満たせば建築確認が下りるため、再建築ができるようになります。
必要な面積は、道路までの距離に2メートルを掛けた広さが目安です。
道路まで10メートルあれば、20平方メートル前後の買い取りが目安です。
買取価格は路線価や近隣の取引事例を根拠に交渉します。
手続きでは、買い取る側が分筆の登記と所有権移転の登記を行います。
測量と分筆は土地家屋調査士、登記は司法書士が担当する役割です。
日ごろの関係が悪化していると交渉に入れないため、通行料や工事の承諾でもめる前に打診してください。
隣地所有者が売却に応じない場合でも、必要な面積を伝えておく価値はあります。
相続や住み替えの時期に話が動く例があるためです。
自分の土地の一部と隣地の一部を等価交換する
購入資金を用意できない場合は、自分の土地の一部と、道路に接する隣地の一部を交換する方法があります。
相手にとっても敷地の形が整うなら、合意しやすい提案になります。
交換する土地の面積と評価額は、できるだけ近い水準にそろえてください。
一定の要件を満たす土地の交換では、譲渡所得への課税を繰り延べられる特例が用意されています。
適用できるかどうかは税理士に確認してください。
交換する位置の選び方も重要です。
隣地の使い勝手が落ちる位置を求めると、合意には至りません。
相手の敷地形状を見たうえで、負担の少ない区画を提案しましょう。
交換には登記費用と測量費用がかかります。
買い取りより安く済む一方、双方の土地を分筆するぶん手続きは増えます。
【参考記事】No.3502 土地建物の交換をしたときの特例|国税庁
隣地所有者から通行と掘削の承諾を得る
通行地役権の設定と掘削承諾の取得は、所有権を動かさずに使い勝手を上げる手段です。
通行の幅と自動車の可否が確定するうえ、配管工事も進めやすくなります。
承諾書には次の4点を必ず書き込んでください。
- 通行できる範囲と幅
- 自動車で通行できるかどうか
- 水道管とガス管を埋設するための掘削の可否
- 隣地の所有者が代わった場合に承諾を引き継ぐかどうか
登記まで済ませておけば、隣地の所有者が変わっても権利を主張できます。
ただし承諾を得ても接道義務は満たせないため、再建築そのものが可能になるわけではありません。
売却価格を上げる施策と、建て替えを可能にする施策は切り分けて考えてください。
承諾を得る交渉では、囲繞地の所有者にとっての利点も用意してください。
通行料の増額や、境界の確定に協力する提案が交渉材料になります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
私道を築造して位置指定道路の指定を受ける
政令で定める基準に適合する私道を築造し、特定行政庁から位置の指定を受ければ、建築基準法上の道路として扱われます。
接道義務を満たせるようになり、沿道の土地すべてで建築が可能になります。
指定を受ける条件は、幅員・隅切り・排水設備などの技術基準への適合です。
私道の敷地となる土地の所有者全員からも承諾を得なければなりません。
分譲地や、複数の袋地が並ぶ区画で使われる手段です。
単独の袋地1件だけで進めるには費用と調整の負担が重いため、隣接する土地の所有者と共同で検討するのが現実的です。
位置指定を受けた私道は、所有者が個人であっても勝手に廃止できません。
将来にわたって通行が守られるため、資産価値の面でも効果が大きい手段です。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
建築基準法43条2項の認定または許可を受ける
接道義務には例外が2つ用意されています。
ひとつは認定です。
対象は、幅員4メートル以上の道に2メートル以上接する敷地に建つ小規模な建築物です。
特定行政庁が支障なしと認めた場合に接道義務の適用が外れます。
もうひとつは許可です。
敷地の周囲に広い空地がある建築物などについて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可した場合に適用が外れます。
認定より審査が重く、期間も長くかかります。
かつて「43条ただし書き」と呼ばれていた制度は、2018年に公布された改正建築基準法で認定と許可の2本立てに再編されました。
古い資料には旧称のまま書かれている例が残っています。
運用基準は自治体ごとに違うため、事前相談から始めてください。
隣地の同意が必要になる場面では、弁護士に交渉を任せられます。
【参考】建築基準法|e-Gov 法令検索
袋地を所有し続けると建築と資金調達の両方で不利になる
袋地を持ち続けた場合の負担は4つあります。
内訳は、建て替えができない点・融資がつきにくい点・隣地の協力が毎回必要になる点・住環境と防災面で不利になる点の4つです。
4つの負担のうち、隣地の協力と住環境は工夫である程度は補えます。
一方で建て替えと融資の制限は、接道義務を満たさない限り解消できません。
負担はいずれも、時間が経つほど重くなる性質です。
建物は古くなり、隣地の所有者は代替わりし、承諾の経緯を知る人はいなくなります。
放置するほど選択肢が減るため、早い段階で出口を検討してください。
建て替えができず建物の寿命が土地の使用期限になる
建て替えができないため、建物が老朽化して住めなくなった時点で土地の活用手段がほぼなくなります。
更地にしてしまえば、同じ場所に新築できません。
火災や地震で建物が全壊した場合も同じです。
災害を理由に接道義務が免除される仕組みはなく、再建には別の手段を検討する必要があります。
結果として、建物を残したまま売却する選択肢が現実的になります。
解体を前提に話を進めると、買主の使い道を狭めてしまうため注意してください。
賃貸に出す場合も同じ制約がかかります。
建て替えができない以上、入居者が退去した後に建物を刷新する選択肢がありません。
修繕で維持できる期間が、そのまま収益を得られる期間です。
更地にする前に、売却先の見込みを立てておいてください。
住宅ローンの担保評価が下がり融資がつきにくい
金融機関は担保評価にあたって再建築の可否を重視します。
再建築できない土地は担保価値が低く見積もられるため、住宅ローンの審査も通りにくくなります。
買主が住宅ローンを使えない以上、対象は現金で購入できる相手だけです。
買主の母集団が小さくなるぶん、売却価格にも成約までの期間にも影響が出ます。
なお、建物の修繕を目的とするリフォームローンなら組める場合があります。
融資の可否は金融機関ごとに判断が分かれるため、複数行に照会してください。
融資がつかない土地は、相続のときにも扱いに困ります。
相続人が複数いる場合、売って現金で分けようとしても買い手が見つからず、遺産分割が止まる例があります。
金融機関に相談する際は、通行権の状況を示す資料も一緒に持参してください。
通行や工事のたびに隣地所有者の協力がいる
通路の位置、自動車の通行、水道管の掘削と、生活と工事の場面ごとに囲繞地の所有者との調整が発生します。
先代同士の口約束しかない場合、代替わりで承諾の内容が引き継がれず、一から交渉し直す事態になります。
口頭の合意しかないと、主張の根拠を示せない状態です。
相手が態度を変えたときに、何をどこまで認めてもらっていたのかを証明できなくなります。
調整のたびに工事が止まれば、費用も工期も膨らみます。
給排水管の更新工事のように待てない工事では、損害の発生も直接的です。
隣地が売却されて所有者が入れ替わると、承諾の内容を一から説明し直す必要が生じます。
そのため、承諾書と登記を残しておけば説明の手間も交渉の手間も最小限で済みます。
日当たりと通風が悪く避難経路も限られる
周囲を建物に囲まれる構造上、日当たりと通風は悪くなりがちです。
採光を確保するには窓の配置や吹き抜けの工夫が欠かせず、リフォームの費用も膨らみます。
通路が狭ければ、救急車や消防車は敷地の前まで入れません。
火災や急病のときに対応が遅れるリスクを抱えた土地です。
解体工事でも重機を入れられず、作業の中心は手作業です。
工期が延びるぶん費用も上がるため、更地にする判断そのものが難しくなります。
再建築ができないため、耐震補強にも限界があります。
旧耐震基準の時期に建てられた建物では、補強できる範囲も限定的です。
防災面の不安は、売却時の価格に影響します。
避難と防犯の両面で不安が残る土地は、賃貸に出す場合も入居者が決まりにくくなります。
袋地には取得価格の安さと静けさという利点もある
袋地には不利な面だけでなく、取得価格を抑えられる点と静かに暮らせる点という利点も備わっています。
保有を続ける前提が崩れると利点も失われるため、出口とセットで考えてください。
周辺の相場より安く取得できる
袋地は建て替えができず買主も限られるため、道路に面した同じ広さの土地より低い価格で取得できます。
価格が下がる要因は、再建築ができない点、住宅ローンを組みにくい点、買主が限られる点の3つです。
隣地をすでに所有している人にとっては、話が変わります。
自分の土地と一体化すれば接道義務を満たし、まとまった1区画として価値を高められるためです。
安く買えるという利点は、裏返せば売るときに安くなる要因でもあります。
購入を検討している場合は、将来の出口も含めて価格の妥当性を判断してください。
賃貸に出して収益を得る使い方なら、取得価格の安さが利回りに直結します。
建物が使える状態なら、活用の余地は残されています。
利回りの試算では、修繕費の見込みも忘れずに織り込んでください。
道路に面しないため静かに暮らせる
道路から離れているぶん、通行車両の騒音と振動が届きにくくなります。
前面道路に面した土地と比べて、体感の静けさは明らかに違います。
半面、人目が届きにくく、空き巣に狙われやすい環境です。
防犯カメラやセンサーライトの設置で補う対応が必要になります。
長く住み続ける前提なら、静かさは利点として働きます。
将来の売却を視野に入れるなら、利点だけで判断せず建て替えの制限と合わせて検討しましょう。
庭を設けやすい点も利点です。
前面道路に接していないぶん、敷地の奥行きを住宅と庭に配分しやすくなります。
子どもやペットが道路に飛び出す心配も減ります。
静けさを重視して住み替える層にとっては、袋地も候補のひとつです。
売却の際は、静かな住環境という利点も広告に載せてもらいましょう。
袋地の通行トラブルで最初にとるべき対応

通行を拒否された、通行料でもめた、掘削を断られた。
袋地で起きるトラブルは3つの場面に集約されます。
共通する初動は、感情的な直談判を避け、記録が残る形で協議を申し入れる進め方です。
どの場面でも、先に事実関係を固めてから交渉に入ってください。
公図・登記事項証明書・現地写真がそろっていれば、交渉でも訴訟でも主張の根拠を示せます。
相手の発言も日付とあわせて記録に残しておきましょう。
トラブルが長引くほど、当時の経緯を証明する手段は失われます。
動きがあった時点で記録を取る習慣をつけてください。
写真には撮影日が残る設定を使いましょう。
通行を拒否されたら通行権を根拠に書面で申し入れる
囲繞地通行権は法律上当然に発生するため、囲繞地の所有者が通行そのものを拒む権限はありません。
最初の一手は、内容証明郵便など記録が残る書面での協議の申し入れです。
書面には、通行したい経路・幅・目的を具体的に書いてください。
抽象的に「通行を認めてほしい」と伝えるだけでは、相手も判断がつかず回答を返せない状況です。
応じてもらえない場合は、通行権の確認を求める訴えや、通行の妨害を取り除くよう求める請求という手段が残ります。
書面の作成段階から弁護士に依頼すれば、後の訴訟を見据えた内容に整えてもらえます。
通行を物理的に妨げられている場合、写真と日付の記録を残してください。
フェンスや車両で通路をふさがれた状況は、妨害排除を求める際の証拠になります。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
通行料でもめたら近隣の地代水準を基準に検討する
償金の額に法定の基準はなく、公的な相場統計も公表されていません。
実務では、通路部分の面積と近隣の地代水準を掛け合わせて算定する方法が使われます。
当事者だけで折り合わない場合の選択肢は、不動産鑑定士の評価です。
第三者の算定根拠があれば、金額の妥当性を示しやすくなります。
金額が決まったら、支払時期と支払方法まで書面に残してください。
月払いか年払いか一括かを決めずに口約束で始めると、相手が数年後に金額を蒸し返してきます。
合意書の作成は弁護士に任せるのが確実です。
相手が支払いを求めてこない場合でも、無償と決まったわけではありません。
何年も経ってからまとめて請求される事態を避けるため、合意の内容を早めに固めてください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
掘削を断られたら設備設置権を根拠に通知から始める
水道管やガス管の引き込みを断られた場合、改正民法の設備設置権が根拠になります。
設置の目的・場所・方法を通知したうえで、必要な範囲で工事を進められます。
通知が先である点を守ってください。
無断で着工すれば、損害賠償や工事の差し止めを求められる立場に回ります。
設置場所と方法も、隣地の損害が最も少ないものを選ぶ必要があります。
交渉が長引く場合は、弁護士に代理を依頼しましょう。
着工の見通しが立たないまま生活に支障が出ている状況では、早い段階で法的手続きに切り替える判断が要ります。
工事業者から「隣地の承諾がないと着工できない」と言われる場面もあります。
設備設置権の存在を業者へ伝え、通知の記録を示してください。
着工の判断材料になります。
【参考記事】民事基本法制の見直し(所有者不明土地の解消に向けて)|法務省
袋地を売却する4つの方法

袋地の出口は4つです。
価格を優先するなら隣地への売却、期間を優先するなら買取が基本の軸になります。
| 方法 | 価格の傾向 | 期間の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 囲繞地の所有者に売却する | 高くなりやすい | 1か月から3か月 | 隣地との関係が良好 |
| 隣地とまとめて売り出す | 通常の土地に近い | 半年前後 | 隣地所有者も売却を検討している |
| 仲介で買主を探す | 条件次第で幅が出る | 半年から1年 | 期限に余裕がある |
| 訳あり不動産を扱う買取業者に売却する | 仲介より下がる | 数日から1か月 | 早さと確実さを優先する |
囲繞地の所有者に売却する
囲繞地の所有者にとって、袋地は自分の土地と一体化できる物件です。
一体化すれば接道義務を満たし、まとまった1区画として価値が上がります。
ほかの買主より高い価格を提示してもらえる可能性があります。
打診は関係が良好なうちに行ってください。
通行料や工事の承諾でもめた後に持ちかけると、足元を見られて価格が下がります。
断られた場合に備えて、事前に価格の目安を持っておきましょう。
複数の不動産会社から査定を取っておけば、提示額が妥当かどうかを自分で判断できます。
打診の際は、土地の面積と公図の写しを添えて具体的に伝えてください。
口頭で「買いませんか」と切り出すだけでは、相手も検討に入れません。
隣地が複数ある場合は、道路に近い側から順に打診してください。
隣地とまとめて売り出す
袋地と囲繞地をまとめて1つの土地として売り出す方法もあります。
接道義務を満たす土地として扱われるため、通常の価格帯で売れます。
隣地所有者にとっても手取りが増える提案です。
前提になるのは、売却代金の配分を先に取り決める点です。
面積比で分けるのか、路線価を反映させるのか、方式を決めずに売り出すと決済直前に紛糾します。
配分でもめやすいため、不動産鑑定士の評価を挟んだうえで合意内容を書面化してください。
売り出す前に配分を決めておけば、決済の直前に慌てずに済みます。
話し合いがまとまらない場合は、弁護士に間に入ってもらうとよいでしょう。
共同売却では、買主は1区画としてまとめて購入します。
分割して売る場合より買主の選択肢が広がるため、成約までの期間も短くなります。
仲介で一般の買主を探す
仲介は高い価格で売れる可能性がある方法です。
もっとも買主は住宅ローンを使えず、現金で購入できる相手に限られます。
母集団が小さいため、成約までの期間は長くなります。
依頼先は、再建築不可物件の取扱い実績がある会社を選んでください。
通行権や掘削承諾の説明を買主にできるかどうかで、成約率が変わります。
売却の期限が決まっている場合は、仲介と買取を並行して検討しましょう。
仲介で3か月動かなければ買取に切り替える、といった判断の期限を先に決めておくと迷いません。
買取業者への売却と違い、仲介では契約不適合責任が売主に残ります。
免責の特約を結ぶかどうかを、媒介契約を結ぶ段階で不動産会社と相談してください。
仲介では、購入希望者が現れてから決済まで1か月から2か月かかります。
訳あり不動産の専門買取業者に買い取ってもらう
訳あり不動産を扱う買取業者は、業者自身が買主になります。
買主を探す期間が不要で、契約不適合責任を免責にできる場合が多く、引渡し後の責任を残さずに手放せます。
価格は仲介より下がる傾向です。
業者を選ぶ際は、実名の比較ではなく取扱い分野で見てください。
| 業者の特徴 | 得意な物件 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 再建築不可の再生に強い業者の特徴 | 袋地・未接道・旗竿地 | 買い取った物件をどう活用するかの説明があるか |
| 権利関係の調整に強い業者の特徴 | 共有持分・借地権・底地 | 提携する弁護士や司法書士がいるか |
| 相続案件に強い業者の特徴 | 相続登記が未了の物件・空き家 | 登記費用や残置物の処分費を負担するか |
複数社から査定を取り、査定根拠を書面で出す業者を選びましょう。
根拠を口頭でしか説明しない業者は、契約後の減額交渉に持ち込む例があります。
囲繞地の所有者と通行条件でもめている場合は、査定の前に権利関係を整理しておくと価格が上がります。
弁護士と連携する窓口なら、権利の整理と査定をまとめて相談することが可能です。
買取価格は業者の再販計画しだいです。
再販の見通しが立つほど、提示額は上がります。
囲繞地の所有者との交渉ノウハウを持つ業者ほど、再建築の見込みを織り込んで高く評価できます。
袋地の売却価格に決まった相場はない
袋地の買取価格について、国や自治体が公表する統計は存在しません。
不動産会社が公表する目安には「周辺相場の5割から7割程度」といった説明が見られます。
いずれも各社が自社の取扱い実績をもとに示した幅です。
間口の幅・承諾の有無・隣地との関係が価格を大きく動かすため、目安の数字だけで判断しないでください。
同じ広さの袋地でも、条件次第で提示額は大きく変わります。
価格を確かめる手順としては、最初に条件を整理し、次に複数社の査定で幅をつかみ、最後に売却方法を決める流れが手堅い進め方です。
相場という言葉に頼らず、自分の土地の条件から価格を組み立ててください。
価格を左右するのは間口の幅と隣地との関係
価格を動かす条件は4つあります。
数字そのものより、条件をどこまで整えてから売り出すかで結果が決まります。
| 条件 | 価格への影響 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 道路に接する幅 | 2メートルに近いほど再建築の見込みが立ち高くなる | 現地の実測と公図 |
| 通行・掘削の承諾 | 書面で残っていれば高くなる | 承諾書の有無と登記事項証明書 |
| 囲繞地の所有者との関係 | 買い取りや共同売却の可能性があれば高くなる | 直近の交渉履歴 |
| 建物の状態 | 住める状態なら賃貸活用を見込めて高くなる | 建築時期と修繕履歴 |
承諾が口約束のままかどうかで、査定額は明確に変わる点に注意してください。
売り出す前に承諾を書面化しておきましょう。
4つの条件のうち、道路に接する幅と建物の状態は短期間では変えられません。
半面、承諾の書面化と隣地との関係づくりは、売り出す前の数か月で着手できます。
手をつけられる条件から順に整えていきましょう。
売り出しの3か月前に準備を始めると、承諾の取得が間に合います。
囲繞地の所有者との交渉には往復のやり取りが要るため、余裕を持って動き出してください。
承諾を得るまでに数か月かかった例も珍しくありません。
相続税の評価では無道路地としての減額がある
相続税や贈与税の評価では、袋地は無道路地として扱われます。
財産評価基本通達にもとづき、接道義務を満たす通路を開設する場合の費用に相当する額を差し引いて評価します。
土地の形が整っていない場合は、不整形地としての補正も上乗せです。
減額の幅は土地ごとに変わるため、一律の割合では計算できません。
評価額と実際に売れる価格は一致しません。
相続税の申告額が低くても、市場で同じ水準まで下がるとは限らないためです。
申告額の計算は税理士に依頼し、売却価格の判断は不動産会社の査定で行うと切り分けてください。
申告のために取得した評価額を、売却価格の根拠として買主に示すのは避けてください。
基準が違うため、交渉の材料になりません。
【参考記事】財産評価基本通達 第2章 土地及び土地の上に存する権利|国税庁
価格を確かめるには複数社の査定を比べる
袋地は個別性が高く、1社の査定だけでは提示額が妥当かどうかを判断できません。
最低でも3社から査定を取り、金額と根拠の両方を比べてください。
確認すべきなのは金額よりも根拠です。
どの取引事例と比べたのか、通行権をどう評価したのかを書面で示せる業者かどうかで、信頼度が変わります。
査定額が1社だけ突出して高い場合は、契約後の減額交渉を疑ってください。
無料査定で価格帯を把握したうえで、仲介と買取のどちらで進めるかを決めましょう。
判断に迷う場合は、弁護士と連携する窓口に相談すると権利関係まで含めて整理できます。
査定を依頼する際は、通行権の状況と承諾書の有無を最初に伝えてください。
情報を後出しすると、契約直前に価格を下げられる原因になります。
袋地を売却する前に確認したい注意点
売り出す前に済ませる確認は3つです。
いずれも契約後に発覚すると、損害賠償や契約解除につながります。
3点とも売り出す前に終えておきましょう。
通行と掘削の承諾を書面で確認する
囲繞地の所有者から、通行の幅・自動車の可否・水道管とガス管の掘削の可否について書面で承諾を得ているかを確認してください。
口頭の合意は、買主も金融機関も評価しません。
承諾書には、隣地の所有者が代わった場合に承諾を引き継ぐ旨の条項を入れてください。
条項がないと、代替わりのたびに買主が交渉をやり直す必要が生じます。
承諾がない状態で売り出せば、買主はリスクを織り込んで価格を下げてきます。
売却活動の前に取得しておくほうが、結果的に手取りの面で有利です。
承諾書は原本を保管し、写しを買主へ渡してください。
原本を紛失している場合は、売り出す前に囲繞地の所有者へ再発行を依頼してください。
承諾書がそろっていれば、買主が金融機関と交渉する余地も生まれます。
契約不適合責任の免責範囲を決めておく
売主は、契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合に責任を負います。
買主から修補・代金減額・損害賠償・契約解除を求められる立場になります。
個人が売主であれば、責任を負わない旨の特約も可能です。
もっとも、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、特約があっても責任を免れません。
宅地建物取引業者が売主となる取引では、特約の内容に法律上の制限がかかる点も見込んでおきましょう。
免責の範囲は「一切免責」と書くだけでは足りません。
何について免責とするのかを、契約書に具体的に書き込んでください。
免責の特約を結んでも、買主が個人ではなく事業者の場合は交渉の余地が残ります。
特約の文言は不動産会社任せにせず、内容を確認してから署名してください。
【参考】民法|e-Gov 法令検索
買主への告知事項を漏らさない
再建築ができない点、通行の条件、隣地との過去のトラブルは、買主の判断に影響する事実です。
つまり伝えなければ後で争いになる情報です。
重要事項説明の対象となる事項に加えて、買主が知れば取引条件を変えたはずの事実は告知してください。
過去に通行料をめぐって争った経緯や、掘削を拒まれた経緯も判断材料になります。
記憶に頼らず、当時のやり取りを書面で整理しておきましょう。
告知すべきかどうか判断に迷う事実が出てきた場合は、弁護士に確認してから告知内容を決めてください。
告知漏れは、引渡し後に契約解除まで発展する典型的な原因です。
告知した内容は、書面に残して買主から受領の署名をもらいましょう。
口頭で伝えただけでは、後に「聞いていない」と主張された際に反論できません。
袋地の売却の悩みは「ベンナビ不動産売却」で解決しよう
袋地の売却を検討しているなら、「ベンナビ不動産売却」の活用がおすすめです。
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袋地に関するよくある質問
袋地の通行権は拒否される?
囲繞地の所有者が通行そのものを拒む権限はありません。
袋地の所有者には民法上の通行権が認められており、契約がなくても法律上当然に発生します。
もっとも通れる場所と方法は、囲繞地の損害が最も少ないものに限られる点に注意してください。
経路や幅をめぐる争いは起こりうるため、合意内容を書面に残してください。
袋地に家を建てることはできる?
原則として建てられません。
建築基準法が求める、道路に2メートル以上接するという条件を満たせないためです。
囲繞地の一部を買い取る、等価交換する、位置指定道路の指定を受けるといった方法で条件を満たせば、建築が可能になります。
建築基準法43条2項の認定や許可を受ける道も残っています。
袋地の通行権で車は通れる?
自動車での通行が当然に認められるわけではありません。
従前の利用状況、周辺の交通事情、囲繞地が受ける負担を比べたうえで個別に判断されます。
生活に自動車が欠かせない地域では認められやすい傾向です。
確実に通行したい場合は、通行地役権を設定して自動車の可否を契約で定めてください。
袋地の固定資産税は安くなる?
固定資産税の評価でも、不整形地としての補正が入る場合があります。
もっとも補正の有無と補正率は市区町村ごとに運用が違うため、資産税課へ照会してください。
相続税や贈与税の評価は別の基準で計算するため、固定資産税の評価額をそのまま使うわけではありません。
袋地は売れない?
売れます。
囲繞地の所有者への売却、隣地との共同売却、仲介、訳あり不動産を扱う買取業者への売却という4つの出口があります。
住宅ローンを使える買主が限られるぶん期間は長くなりますが、価格と期間のどちらを優先するかで方法を選んでください。
まとめ|袋地は囲繞地通行権で通行できるが再建築には接道の確保が要る
袋地とは、他人の土地に囲まれて公道に接していない土地です。
公道へ出る通行権は民法で保障される一方、建築基準法の接道義務を満たさないため建て替えができません。
2023年4月からは、水道管やガス管を引き込むために隣地へ設備を設置できる権利も明文化されました。
再建築を可能にする手段は5つあります。
囲繞地の一部の買い取り・等価交換・通行と掘削の承諾・位置指定道路の指定・建築基準法43条2項の認定と許可です。
売却の出口は、囲繞地の所有者への売却・共同売却・仲介・訳あり不動産を扱う買取業者への売却の4つになります。
価格を左右するのは、道路に接する幅と、通行や掘削の承諾が書面で残っているかどうかです。
売り出す前に承諾を書面化し、複数社の査定で価格帯を確かめてから方法を決めてください。
隣地との交渉が止まっている場合は、弁護士と連携する窓口に相談すると権利関係の整理から進められます。
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弁護士登録後、東証プライム(旧東証一部)の企業内弁護士として商事契約を含む企業法務を中心に活動を行い、2025年に当社に入社。現在インハウスローヤーとして多方面から事業サポートを行う。